ウマ娘にムリナール擬きをぶち込む

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供養


むりおじ

 転生というのはどういうものだろう。勿論死んでから産まれ直すことだ。

 だが、自宅でダラダラしている時に急に視界が飛ばされたら? 顔も身体も別人として変化していたら? 

 それは果たして転生と言えるのだろうか? 

 

 現実逃避をしつつ広げた新聞を読む振りをしながら周囲を見渡す。

 一見なんの変哲のない公園。だが、前世では見なかったピコピコと動く可愛らしい耳をつけた少女たちが幼子としてはありえない速さで追いかけっこをしている。

 

 ここまではいい。ウマ娘の世界に転生? したということなのだから。ありえない事だとしてもまだ分かる。

 

 立ち上がり公園のトイレでもう一度鏡を見る。

 

 若かった頃はもの凄くモテたのだろうと判断できる程の整った顔立ち。歳をとった事でそのイケメンさが衰えることなくむしろ色気がマシかっこいい老け方をしている。

 

 この世界ではあまり目立たない美しく輝く金髪。そしてその上から生えている耳。

 

 そう、ムリナールである。ウマ娘の世界ではウマ男は存在しない。少なくとも俺は聞いたことが無い。

 

「クソが」

 

 何故ムリナールなのか。若いトレーナーでも良かったじゃないか。俺のポップな内面をムリナールの顔でやったら間違いなく化け物扱いされるだろう。

 

 ムリナールになった理由も謎。仕事も謎。家の場所も謎。戸籍があるのかすら謎。

 

 あるのは新聞と使えない携帯、そして剣のみ。銃刀法違反じゃないか。

 

 どうしようも無いのでトイレから一旦出てみるが周囲からの視線が痛い。そらそうだ。

 仕事着で剣を持ってウマ耳の生えたイケおじが公園のベンチで昼間から新聞をよんでいるんだから。

 

「おじさん昼間から何してるの?」

 

 こっちが聞きたいわ。

 先程からチラチラと此方を見ていた子供が尋ねてくるが視線を少し向けただけで怯えた様な表情となった。

 どう答えたものかと黙っていると子供はさらに怯えた様子で体を震わしている。

 理由はすぐ分かった。単純に目つきが悪いのだ。勇気をだして話しかけたおじさんが睨んできたらそりゃ怖い。そのつもりはないんだが。

 

 このままだと大変なことになるのでこの場から居なくなろうと立ち上がったら子供はものすごい速さで逃げていった。ちょっと悲しくなった。

 

「ちょっと待ったー! ウマ娘のコスプレをしたおじさん!」

 

 暫くしてやることも無いためそこら辺を歩き回るかと公園から出ようとしたら呼び止められる。

 コスプレ……そうかコスプレか。

 誰かと思い振り返るとそこには1人のウマ娘、トウカイテイオーが先程の子供を連れて此方を睨んでいる。

 

 案の定俺が視線を向けるとビクッと怯えた様子をみせたが子供がいるためかすぐさま強気な表情に戻った。

 

「おじさん! この子虐めたでしょ!」

 

 虐めた覚えも無いしその子も少し戸惑った顔をしている。つまり彼女の早とちりなのだろう。

 この場を彼女の面子を潰さずに収めるためにはあれをやるしかないのだろう。

 

「申し訳ない、少し待ってくれ」

 

 そう言ってポケットから携帯を取り出し電話をする振りをする。

 

「ええ……はい。その件に着きましては……はい。非常に申し訳ございません」

 

 情けなく社畜のような電話をしているとトウカイテイオーも子供もえぇ……といった微妙な表情をしている。

 

 そうして少しすると子供も誤解を解いたのかいつの間にかトウカイテイオーだけが私の前に立っていた。

 

「ごめんなさい!」

 

 申し訳なさそうに頭を下げてくるトウカイテイオーに罪悪感が凄い湧いてくる。

 

「気にするな」

 

 自分の罪悪感を無くすため無難な一言を彼女に伝えるがその場から立ち去ろうとしない。他にも何か用事があるのかと思い此方も留まっていると彼女は不思議そうな顔をしながら尋ねてきた。

 

「なんでおじさんはウマ娘のコスプレしてるの?」

 

「……コスプレでは無い」

 

「ワケワカンナイヨー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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