イベスト後時空でセオドリクの株をなんとか上げられないかとこねくり回した話 作:秋雨涼雷
ここからいろいろと独自解釈と独自設定オンパレードです。んで、だいたいフェニックスが害鳥ムーブしてます。でもアイツならこれぐらいやると思う。
ではでは、どうぞ。
グランサイファーが去った後の島で。
去っていく騎空艇を眺める姿があった。彼は去っていく艇を見つめ、ふっと笑みをこぼす。
「これも予測通りかい?」
問いかけながら、彼は後ろを振り返る。そこには、いつの間にか赤々とその身を燃やす不死鳥の姿があった。
「えぇ。こうなることはわかっていたわ」
「その後始末まで僕にさせる算段だったとはね」
「私はどちらでも構わなかったわ」
事実、この不死鳥は今回の騒動が起きなくても良かったのだろう。なにせ、不死鳥と彼女の約束は、ポート・ブリーズでの再会が果たされた時点で終わっている。
「……サブリナは、この現代で生きた女性だ。その人生は、間違いなく彼女の物だ」
「……」
「だが、そこに前世の記憶が蘇った。それだけでなく、同時にサブリナの精神状態自体が悪化してしまった」
「そうね」
「このままでは戻った記憶に、前世に、サブリナが押しつぶされてしまう」
普段の彼女ならともかく、弱った状態ではどこまでが自分で、どこまでが前世なのか分からなかっただろう。
確固たるサブリナという自我がない状態で、同じ魂とはいえ、違う人生を歩んだものの記憶を手に入れればどうなるか。
「それは、もはやサブリナではない。ましてや」
いって、彼は不死鳥から目をそらした。
何の因果か。自分も、そして彼も。中途半端な存在としてこの地に居る。それすらも、この不死鳥の思惑通りか。
「君の妻でも、なくなってしまう」
「……」
そこにいる大柄の男は、ファルハナと同じく額に一本の角を持っている。
アブラメリン。不老不死を与えられ、そして、不死殺しの力で息絶えた男である。
セオドリクとアブラメリン。彼ら二人は、生者ではない。だが、何の因果か、俗にいう幽霊という存在としてここにいる。
アブラメリンは、自分たちの人生を狂わせた元凶ともいえる不死鳥を、厳しい目でにらみ続けている。
「だから、どうにかしてサブリナを回復させる必要があった。だからこそ、僕は一時的に彼女にとりついて、無理やりブラギの意識空間に入ることにした」
「それは、必要だったのか?」
「もちろんだとも」
ブラギは、そもそも戦場で深いトラウマを負った兵士たちを癒やすために対話の機能を与えられた星晶獣である。であるならば、ブラギに任せていればセオドリクが出張る必要はなかったはず。
そう問いかけるアブラメリンに対し、セオドリクは笑う。
「サブリナとは、子供のころから一緒だった。どんなに似せていても、彼女は僕を間違えない」
「とんでもない自信だな……」
「君だって、同じことを言うだろう?」
言われて、それはそうだと頷く。自分だって、ファルハナが自分を間違うはずがないというし、自分だってファルハナを間違えない。
であるならば、サブリナと対話するためには、どうにかしてかの星晶獣に自分の価値を認めさせなければならなかったのだ。
「幸いにも、ブラギもその方が効率的だと納得してくれた」
そうして、セオドリクはブラギの力を借りてサブリナと対話していたのである。サブリナの記憶から作られたはずの彼が、時折サブリナの知るはずのないことを話していたのは、そういうわけだった。
「君だって彼女らに会いたかっただろうに、すまなかったね」
「俺では、お前の言うサブリナに語り掛けるには弱すぎる。適材適所だろう。それに、会えないことには慣れている」
隙あらば惚気てくる。何度かあったやりとりなのだろう。セオドリクもすっかり慣れたものだ。
「フェニーに対して声を荒げた時は、手が出そうになったがな」
「すまないね。だが、あれは彼女にも必要なことだ」
フェニーはあの騒動の際、自分の行いがサブリナを苦しめたことに気付いていた。900年飛んだといっても、その精神性は幼いものだ。純粋で、物事をそのままに受け止める。
だからこそ、フェニーは物事に他の側面があることを見落とすことがある。
今回の件で言えば、彼女自身はサブリナとファルハナを同一視している。同じ魂なのだから、問題がないといえば問題がない。
だが、彼女とサブリナは、ファルハナであった時間よりも遥かに短い時間しか過ごしていない。ファルハナの記憶があるとはいえ、この時代を生きたサブリナにとっては、求められているのが自分なのかどうか分からなかったのだ。
故に、サブリナは少しずつ壊れかけていた。気づける人間はいない。シエテは気にかけてくれるが、普段は艇にいないことも多い。グランたちは、そもそもサブリナとの付き合いが短い。
あの艇に、この時代を生きたサブリナを知るものは、いない。
「悪役は、悪役らしく、違う価値観があることを教えるのが役目だからね」
だから、サブリナを知るものとして、セオドリクは動いた。器が壊れれば、中身もあふれ出す。そうなれば、ファルハナにもどんな影響がでるか分からない。アブラメリンも、何かあったときの補助役として同行した。
結果、何とか彼らの目論見通り、サブリナは調子を取り戻したのだ。『サブリナ』であると同時に『ファルハナ』でもある。両者のバランスを吊り合わせてその認識に持っていくことこそ、彼らの目的であった。
しいて言えば。両者とも、気に食わないことがあるとすれば。
「だが、俺達にそれを教えて、お前に何の得がある」
サブリナの状態や、ブラギのこと。それらの情報の出どころが、この目の前にいる不死鳥であるということだろうか。
「予測を外さないためよ」
「なに?」
いったいどういうことだろうか。
「計算では、2万5千年後、アブラメリンとファルハナの魂はまた出会うことになるわ」
「そう言っていたな」
「私は予測した。なら、外すわけにはいかないわ」
理由になっていない。なぜ予測を外さないために今回のことが必要だったのか、それを聞きたいというのに、まったく会話になっていない。
「だから、私は貴方たちの前に姿を現したの」
フェニックスが、口を開く。何故だろうか。喉が渇く。
「貴方たちの魂が出会うためには、その魂が輪廻しなければならないわ」
「だからなんだというんだ」
「聞きなさい。アブラメリン」
静かな口調で、しかし、厳かなそれに、身動きがとれない。
「魂が輪廻するとき、元の記憶は失われるわ。輪廻の際、魂が浄化されることから、起きていることよ」
「浄化……?」
「えぇ。その魂が持つ罪や業、その魂にしみついたすべてを、一度まっさらな状態にするの。その時に、記憶も一緒になくなるのよ」
それだけでなく、魂が傷ついたりしていれば、その傷を治すためにも、浄化は必要なのだという。
「けれど、問題があるわ」
「問題だと?」
「魂に修復不可能な傷がついていた場合や、異物が混じっていた場合よ」
「……どうなるというんだ」
「その魂は、浄化の力に耐え切れず魂ごと消えてしまうわ」
傷が酷ければ、そもそも耐えられず。異物があれば、その異物を取り除こうとする力で魂ごと消えるのだという。
「なぜそんなことが分かる」
「私の瞳には見えるもの。こうして、貴方たちが見えているように」
であれば。なぜ、今、こんな話をするのか。
「ふむ。話の流れからすると、サブリナの魂はこのままでは輪廻に耐えられなかった、と。そういうことだろうか?」
「違うわ」
セオドリクの予想は、しかし。フェニックスの一言で簡単に否定される。
「輪廻に耐えられないのは、貴方たちの魂よ。アブラメリン、セオドリク」
「!」
動揺で、体が硬直する。幽霊であっても、いや、幽霊だからこそだろうか。精神的な動揺が、すぐに表に出てしまう。
「貴方たちは、私の力を受け入れた。だから、その魂には私の力という異物が混じっているの」
「……」
「このままでは、貴方たちの魂は輪廻することなく消滅するわ」
なんだ。それは。
「それでは、お前の計算と違うだろう!」
「えぇ。その通りよ」
だから、私は貴方たちの前に姿を現したの。
先ほどと、まったく同じ言葉。だというのに、重みが全く違うように聞こえるのは、気のせいだろうか。
「待ってくれ」
そこに待ったをかけたのは、セオドリクだった。彼は、告げられた事実に驚愕しつつも、フェニックスに問いかける。
「このままだと彼の輪廻ができない、というのはわかったよ。そして、そのために彼に何かをするつもり、というのもだ」
「正しいわ、セオドリク」
「では、どうしてそれに僕まで含まれているのかな。僕は彼らの約束とは、関係がないはずだ」
「いいえ、それは違う」
セオドリクの言葉は、再び否定される。それは、自分も彼らの約束に関わるものだと、そう告げる言葉で。しかし、心当たりがないセオドリクは、困惑するばかりだ。
「なぜなら、アブラメリンの魂を元に戻すためには、彼の欠けた魂が必要だからよ」
欠けた魂。話の流れからすると、つまり、アブラメリンの魂は、欠けてしまっており。その欠けた魂がなければ彼は輪廻に戻れない、と。そういうことだろうか。
「俺の魂が欠けている、だと? どういうことだ」
「そうね。魂を一つの球体と考えなさい。傷一つない球体よ。魂に異物が混じる、というのは、その球体に別の物を混ぜるの。でも、元の球体よりも大きな形にはなれないわ」
「……なるほど、つまり」
「えぇ。アブラメリン。貴方の魂は、私の血を受け入れた時、私の力の分だけ欠けたのよ」
ということは、やはり目の前のフェニックスがだいたいの原因ではないか。アブラメリンは、不快感を隠そうともせず、フェニックスをにらみつけている。
一方で、セオドリクは。元来、考えすぎる質の彼は。
「……待ってくれ、では、その欠けた魂というのは」
「貴方よ、セオドリク」
「!」
反射的に、アブラメリンはセオドリクへと視線を向けた。セオドリクもまた、目を見開き、アブラメリンを見つめている。
「魂には浄化が必要だけれど。でも、例外はあるの」
尋ねるよりも早く、フェニックスは告げる。
「浄化の必要がない魂。それは、浄化を受けることなく、次の輪廻へと向かうわ」
「だが、先ほどの球体の話でいうならば、欠けた魂はとても浄化が不必要な状態ではないはずだ」
「えぇ。そのままでは、そうだったでしょうね」
言って、フェニックスはアブラメリンを見る。まるで、お前は答えを知っているはずだと、そう言われているようなその視線に、知らずアブラメリンは思考を巡らせる。
欠けた魂そのまま、ではない。では、どこかで、浄化の必要がない魂になったのだ。
それは、どこで。どうやって。
自分から零れ落ちた魂だというのなら、それは――まて。
「フェニー……?」
「正解よ。貴方から零れ落ちた魂は、私の欠片と同じように、一瞬だけ命を得たの。でも、その魂はあの欠片とは違い、自我を得る前にその命を落としたわ」
彼の、彼らの、愛娘。フェニーと同じように、自分から欠け落ちた魂が、命を得て。
「魂の大きさは、肉体に比例するわ。そして、ある程度の大きさ以下の魂は、浄化をすり抜けるの」
「では、その魂は……!」
「えぇ。その魂が輪廻した先こそが、セオドリクよ」
呆然と、彼を見つめる。彼の方も、突然の事実に、動揺を隠せない。
サブリナだけではなかった。一部とはいえ、自分の魂も、彼女の近くに輪廻していた。
「では、不老不死にならなければ、俺の輪廻の先は」
「えぇ。もし6000年前に貴方が死んでいたなら、その輪廻の先はセオドリクだったわ」
ただし、と告げる。
「私の予測は、創世神が倒されるという前提あってのものよ。それが成されないのなら、まったく違うものになるわ」
「……」
つまり、アブラメリンが不老不死を受け入れなかったとして。それでは、ファルハナとの再会も保証されないのだ。
アブラメリン自身は知る由もなかったことであるが、フェニックスは承知している。そうなったならば、あの手この手でアブラメリンに力を受け入れるよう迫ったに違いない。
「だから私は、あの日のポート・ブリーズに、貴方を呼んだのよ、セオドリク」
「どういう、ことだ……」
「彼がフェニーの延命を願うことは分かっていたわ。そして、平等であるためには、選択肢を与えないといけない。そうなれば当然貴方は自分が死ぬことを選ぶわね」
「当たり前だ」
「そう。そして、その時。ファルハナは必ず私に聞くのよ。次に貴方と出会えるのは、いつのことだと」
フェニックスの言葉に、その先に告げられる真実に。セオドリクも、アブラメリンも、思い至っている。だからこそ、フェニックスの言葉を、無視できない。
「だから私は答えるわ。2万5千年後だと」
ただし。
「輪廻が正常に行われた場合は、だけれど」
そういって、フェニックスは二人を見やる。セオドリクも、アブラメリンも、告げられた真実に、思考が働かない。
「魂の消滅を告げれば、ファルハナは私に襲い掛かったでしょう。そうなれば、止まった戦いが再び繰り広げられるわ。私はそれを望まない」
予測なのか。はたまた、どこかで起こりえた過去なのか。彼らには、区別がつかない。
「だから、貴方の魂が輪廻して、いつかファルハナの魂とめぐり合う日を予測したのよ」
そして、そのために。
「そのためには、貴方の魂を完全なものにしなければならないわ」
フェニックスは。
「だから、貴方の魂の欠片であるセオドリクには、貴方と同じ日に、同じ場所で、限りなく近い状態で死んでもらうことにしたの」
セオドリクを、サブリナに殺させる算段を付けたのだ。
フェニックスは語る。
今のアブラメリンの魂には、フェニックスの力が混じっている。それを取り除かなければ、アブラメリンの魂は輪廻の際に起こる浄化に耐え切れず消滅する。
だが、フェニックスの力だけを取り除けばいいというものでもない。取り除いたならば、その箇所に補填するものが必要なのだ。
そして、それこそが6000年前に欠け落ちたアブラメリンの魂の欠片、その輪廻したセオドリクの魂なのだと。元は同じ魂なのだから、浄化の際に異物と判断されることもない。
しかし、当たり前の話だが、生きている間には魂を同化させることはできない。故にアブラメリンとセオドリクには、死んでもらう必要があった。
それも、同じ魂とはいえ、違う人生を歩んできたのだ。だからこそ、同じ日に、同じ場所で、どちらもフェニックスの力を与えられた人間として、死んでもらうことにしたのだと。そうして、二人の魂をより一つに戻しやすくしたのだと。
「フェニックス、貴様ぁっ!!」
アブラメリンが、フェニックスにつかみかかる。だが、元より霊体の体。よほど特別なものでもない限り、生けるものへ物理的な接触は適わない。
一方で、セオドリクの方はといえば。衝撃は大きかったようだが、今はずいぶんと平静さを取り戻している。だが、気にかかることはあるようで、彼はアブラメリンを制止するとフェニックスへと問いかける。
「気になることがあるのだけれど」
「いいわ。教えてあげる」
「あの少女は魂を見分ける瞳を持っているという話だったね。なのに、なぜ僕を見てもアブラメリンの欠けた魂だと気づけなかったんだい」
「欠片は彼の魂が零れ落ちたことに気づいていない。普通、同じ魂をもつものは存在しないもの。気づかないのも仕方のないことだわ」
それに、と続ける。
「欠片の瞳は、私の瞳よりも見えるものがずっと少ないもの」
そういって、フェニックスは翼を広げる。
「アブラメリン、セオドリク。貴方たちに渡した私の力、返してもらうわ」
「っ!」
体から、何かが抜け落ちていく。至る所から、虚脱感を覚える。
なぜだろうか。本能的に、それを埋める何かを求めていることが分かる。その何かを、ずっと、ずっとまっていたような。
ふと、隣りを見る。彼もまた、こちらを見ていた。どちらからともなく、フッ、と笑みがこぼれる。
なるほど。同じ魂ならば。彼女が彼に惹かれるのは当然だったのだ。おそらくは、彼の方もいずれ、惹かれるようになったに違いない。いや、無自覚であった可能性すらあるだろう。
差し出された右手を見つめる。先ほどまで、驚愕で頭が回らなかったというのに、今は酷く穏やかだ。
右手を重ねる。違う時を生き、そして、何の因果か同じ魂をもって、同じ日に死んだ者同士。
「2万5千年か、すぐに会えるだろうが、待たせてしまうかもしれないな」
「なに、彼女はせっかちだからね。案外もっと早いかもしれないよ」
軽口をたたき合う。いつの間にか、自身の体も、薄れていた。
事ここに至っては、疑うべくもない。目の前の自分が、自分自身なのだと。分かたれた魂が、こうして一つになろうとしているのだと。
そうして。二人は消えゆく。ものこの世界に居ないものとして。本来あるべき魂の姿で、輪廻の先へと。
フェニックスはそれを、じっと見つめていた。
やがて、二人の姿が完全に消えてしまい、一つになった魂が輪廻の先へ旅立ったのを見て、フェニックスもまた飛び立った。
輪廻の先へ。本来あるべき魂の姿で。
彼らは、再びめぐり合うのだ。
――それは、誰も知らない、未来の話。
★サブリナが助けを求めた→この時代に生きたサブリナが弱っており、ブラギの対話が必要な対象になっていた。そのため、ブラギは対話することに。セオドリクはそれに便乗。ブラギからそっちの方が効率的だな、と判断され、サブリナと対話していた。
★フェニーが感じたなつかしさ→アブラメリンがファルハナに向ける顔と同じものを、セオドリクがサブリナへ向けた顔から感じ取った。二人が同じ魂であることの伏線。
★ブラギ騒動→サブリナもだが、セオドリクたちも霊魂であるため時間がなく、一発勝負だった。なのでいつもの対話時間よりも長く時間を取っている。ブラギ自身は弱ってもいないのでめちゃくちゃ元気。ルリアからはひたすら隠れていただけ。
★覚悟→この島で対話が必要なのは、心が傷ついた人々が対象。その後復帰するかどうかは対話された人々次第だが、当然リタイアする者もいる。なので、この島に住まうのはそういった傷を負った果てにリタイアした者たちである。
そんな感じです。ブラギの詳しい設定とかは、また別でつくろうかな……あとこねくり回したあれやこれやとかそのきっかけとか。
ではでは、お付き合いありがとうございました!!