2018年にTwitterであげて、2020年にdiscodeのグルチャにアップした、ひなもにさっちゃん。

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誕生日

《ラッキーガール》

 

 二○一八年三月十日。

 本日は久々の快晴、そして……

 

「ひなっち、誕生日おめでとう~」

 

 桃色の髪を持つモニカは、手を降りながら近寄ってくる。

 ひなっち、と呼ばれた本人・降神陽奈は、照れ臭そうに笑った。

 

「昨日寝る前にもお祝いしてくれたじゃん!」

「いやぁ、寝たら忘れられてるかと思って」

「ほら、ちゃんと貰ったアクセつけてるよ」

「お、いいねー、忘れられてない!」

 

 モニカはスマホを取り出すと、パシャパシャとカメラ機能で陽奈を撮る。

 

「でも、なんでアタシの所に、主役のひなっちがきた訳?」

「あ、あぁ、そのことなんだけど……」

陽奈はもじもじする

「モニカ、ちょっと、手、握ってくれる?」

 

 いきなりのことで、モニカはスマホを落としそうになる。思わず、へ?、と声が溢れた。

 

「いや、変なことじゃなくて! ひなの誕生日終わったら、次にさっちゃんの誕生日でさ」

 

 陽奈は恥ずかしがりながら、モニカに言う。

 

「え? 自分の誕生日に友達の誕生日のこと考えてたの?」

「う、うん、だめ?」

「いや、だめじゃないけどさ」

モニカは小さく笑う

「友達思いだねぇ」

「そういうの良いから! でね、今、コンビニでクジ? とか言うのやってて、そのクジの一等が、さっちゃんの好きな物らしくてさ」

 

 モニカは、ははーん、とにやつく。

 

「アタシのラッキーな力を請け負って、そのクジひくんだ? だったらさ、アタシがひけばよくない?」

「だめ! そしたらモニカからの誕プレになっちゃうから、ひながひかなきゃだめ!」

 

 あまりの陽奈の剣幕に、モニカは後ずさった。

 

「ま、まぁ、そこまで言うなら……」

 

 モニカは、陽菜の右手を両手で胸の前で包み込む。

 

「ひなっちが、一等、取れますように」

 

 柔らかなモニカの手の感触と温かな温もりに、陽奈がまた一瞬紅潮した。

 

「あとは、ひなっちが、さっちゃんのことを思って引けば、いけるよ」

 

 にこっとモニカは陽奈に微笑む。

 

「な、なんか、ひける気がしてきた……」

「でしょー?」

「よし! ひな、今から行ってくる!」

「健闘祈るよ~」

 

 モニカは、いたずらっ子のように、陽奈に笑って見せ、手をヒラヒラとふった。

 陽奈は、意気揚々と、コンビニに向かって歩みを進めるのであった。

 春の日差しを浴びて、今日の主役・降神陽奈は、一層輝いていた。

 

 

 

 

 

 

《依頼》

 

 ぽかぽかの春の陽気が漂う今日この頃。

 春の日差しがあるというのに、黒髪の前下がりな髪型の澄原サトカと、同じく黒髪のポニーテールの田中幸子は、某ファミレスにいた。

 

「では、和風ハンバーグセットとポークカレーとポテト大盛りでとりあえず、お願いするです」

「え? 私、そんなにお腹空いてないですよ」

「いや、これは私の分ですので、そちらはそちらで頼んでください。あ、お勘定は、今日の依頼料として、田中さんにお願いするで、相違ないですよね?」

 

 幸子は苦笑いをしながら、はい、とだけ答える。

 どうやら、幸子の方がサトカに探偵依頼を持ち込みにきたらしいことがわかる。

 

「じゃぁ、私は、チョコレートパフェを一緒に……」

 

 幸子もオーダーを頼むと、ウエイトレスは下がった。

 まだ昼前ということで、だいぶ店内は空いているようだ。

 

「では、話を聞くですよ。何ですか? 探偵依頼は」

 

 料理が来る前に、サトカは幸子に問う。

 

「あ、そのですね、最近……」

幸子は俯きながらもじもじと話す

「陽奈さんの様子が、おかしいと思うんです……」

 

 陽奈、という子は、先日誕生日を迎えた、いかにもギャルな女性である。

 メンバーでお祝いをしたのもつい最近のことだ。

 

「と、言うのは?」

「陽奈さんの誕生日前くらいから、なんだか私をつきまとっていて……かと思ったら、誕生日当日はずっとモニカさんと過ごしてたみたいで……」

 

 ふむふむ、とサトカは顎に手をあてる。

 

「その後は、ずっと私に素っ気ない態度で……私、何かしたでしょうか……」

 

 今にも泣きそうな声で、か細く、幸子は言った。

 

「それで、陽奈さんの様子を探ってほしいと?」

 

 はい、と会話が一段落した時に、オーダーしていた、パフェとポテトが到着した。

 サトカは、幸子に向けていた視線をポテトへと向ける。

 

「依頼は承ったですよ。でも、今日明日で成果はでるものではないので、一週間から十日、時間をいただくです。それよりも、パフェ、食べないと溶けてしまうですよ」

 

 サトカは、そう告げるとすぐにポテトを食べ始めた。

 

「そうですね……では、三月二十日、またここで結果報告としましょう。報酬として、またご馳走してもらうで、よろしいですか?」

 

 ポテトを頬張りながらサトカは言う。

 幸子は元気なく、はい……、と言葉を吐くとパフェを少しずつ食べ始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

《追跡》

 

 あたしが歩くと、追って誰かが歩いている気配がある。

 もちろん、あたしが止まるとその気配も止まる。

 でも、誰かがあたしの後をついていることだけは、わかった。

 

「そろそろ出てきたらいいんじゃない?」

 

 あたしは後ろを向かずに、少し大きめの声で言ってやる。

 誰がついてきてるかはわからない。

 でも、なんとなく勘で相手が誰かはわかっていた。

 西部劇のように、風が吹き抜ける。

 

「三数える間に出てこなかったら、撃っちゃうよー? いーち……」

「ままま、待つのだ!」

 

 地面にズサッと足を擦るように現れたのは、高嶺アコ、という情報収集人だった。

 まぁ、予想はついていたけれど。

 

「ようやく出てきた……で? あたしに何かよう?」

 

 アコは作り笑顔で、にゃはは、と笑って見せる。

 

「用というか、ちょっと確認事があって……」

「確認事?」

「そうなのだ! モニカっち、陽奈っちとなんかしてたりした?」

 

 あたしは空を見る。

 思い当たる節は一つ、陽奈っちの誕生日の時だろうか。

 

「特になにもー?」

「なんだか、モニカっちと陽奈っちが手と手を取り合って、イチャイチャしてたって情報が流れてきてるんだけどさ?」

 

 あたしは、あー……、とだけ呟く。

 誰か見てたのか、アレ。

 

「イチャイチャっていうか、女子高生のただの絡みだよ。カメラで撮影する時に手でハート作ったりするじゃん? あんなノリだよ」

 

 今度は、ふーん、とアコが言う。

 

「さっちゃんそれ見て悲しんでたよー?」

「あちゃー……」

 

 見てたのはさっちゃんでしたか……。

 あたしは地面に目を落とす。

 

「いや、違うんだよ。あれは……」

 

 そう、あのアコの言葉を鵜呑みにしたあたしは、あの日のことをアコに伝えてしまった。

 まさか【調査】されていたとは知らずに。

 春にしては暑すぎるくらいの気温であった。

 あたしも変な汗をかいてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

《調査結果》

 

 生憎の雨模様。

 春だというのに、まるで幸子の心の中のような天気である。

 

「ピザとドリアとボロネーゼとチョリソーをまずは頼むです」

「えっと……これはサトカさんの分、ですかね?」

「はい、勿論ですよ」

「あ、あはは…じゃぁ、私はチョコレートパフェで……」

 

 前回同様、オーダーを先にし、サトカは「さて」と切り出す。

 

「単刀直入に言うですが」

サトカは幸子を見る

「取り越し苦労だと思うですよ」

 

 取り越し苦労?、と幸子は言葉を繰り返す。

 

「えぇ、今回の調査中、アコさんにも頼んで毎日、降神陽奈さんを張っていましたが、決定的な瞬間を見つけることはできなかったです」

 

 幸子は、せっかく依頼をしたのに、なんの情報もないことに半ば落胆した様子であった。

 

「まぁ、そんなに落ち込まないでほしいですよ。情報がない訳ではないです。実は……陽奈さんの誕生日、その日にモニカさんと陽奈さんは手と手を取り合っていた、という情報を入手したですよ」

 

 幸子は固まった。

 まるで灰と化したかのように、真っ白になって。裏返った声で、へ、へぇ……、とかき消されそうな声をあげた。

 

「何故手を握っていたかの理由も把握済みです。モニカさんのラッキーパワーで、運試しに行ったらしいです。私はここで一つの仮説を立ててみたですが……」

 

 そこまで言うと、お待たせしました、と言う声と共に料理が運ばれてくる。

 

「お? 田中さん今回もチョコレートパフェですか。それ、美味しいですか?」

 

 幸子はまだダメージを負っているようで、果てた顔になっている。

 

「はい、おいしい、ですよ……サトカさんも、一口食べますか?」

 

 幸子はそのダメージもあってか食が進まないらしい。

 とりあえずすくってみせたスプーンをサトカの方に見せてみた。

 

「おぉ、それではいただくですよ」

 

 サトカは、その幸子のご厚意を受ける。

 なんの躊躇もなく、パクリといただく。

 自分から差し出したスプーンであったが、いきなりの食らいつきに、幸子は顔を赤らめてしまう。

 

「お? どしたですか?」

 

 いえ!、と突発的に叫び、幸子は慌てて視線をサトカから外す。

 

「そですか? にしても、確かに美味しいですね、今日のデザートにあとからそれも頼むですよ」

 

 サトカは幸子の様子は一先ずおき、まずはパフェの感想を言った。

 

「そそ、それよりも! なんですか? サトカさんのいう、一つの仮説とは!」

 

 幸子は話の軌道修正を試みた。

 

「それですがね……」

サトカは思い出すように上の方をみる

「もうすぐ、自然と解決すると思うですよ。私の入手した情報では、明後日までには、解決するです」

「明後日までにですか?」

「はい、明後日までには、です。理由は言えませんが」

 

 サトカはモグモグと自分の頼んだ料理を口にする。

 幸子だけが、未だに空模様と同じモヤモヤした気持ちになっていた。

 

 

 

 

 

 

《前日に》

 

 昨日は調査結果を聞いた私ですが、あまり良くない結果で、今日の私の気持ちを写しているかのような雪混じりの雨が降っています。

 私はその風景をため息をつきながらみていました。

 

「さっちゃん、どうしたのー?」

 

 いきなり背後から声をかけられ、私は小さく悲鳴をあげます。

 

「ひ、陽奈さん?!」

「何そんな感傷的になっちゃってる訳?」

 

 陽奈さんが私の顔を覗き混んできます。

 私は、ふるふると頭を横に振りました。

 ポニーテールの私の髪の毛もそれにならいます。

 

「大丈夫そうには見えないけど」

陽奈さんは訝しげに見つめます

「ま、さっちゃんがそういうなら良いけど」

 

 私は、今度は縦に大きく頷きました。

 

「そ、それより、私に何かようですか?」

 

 まだ鼓動が早い私ですが、なんとか頑張って話題を出します。

 すると陽奈さんは、そうなんだよ!、とその言葉に反応してくれました。

 

「明日から協力戦じゃん? ひな、スタメンいりして、明日からバタバタしちゃうと思うんだよね」

 

 私は、ハッとしました。

 そういえば、昨日の依頼結果で、明後日……つまりは、明日になんらかの結果がわかる、と。

 もしかしたら、協力戦のために、陽奈さんは特別な訓練をしていた? だからモニカさんも一緒だった?

 点と点が結ばれていきます。

 だとしたら、確かに取り越し苦労だったのかもしれない、と、私は陽奈さんを見つめました。

 陽奈さんは、にこっと笑って見せます。

 私の心とは真逆で、それはとても明るいものでした。

 

「だからさ、今日のうちに渡しておくよ」

陽奈さんは箱を差し出す

「ほい」

 私は、キョトンとしました。

 思っていた流れと違う、と。

 私の目の前に差し出された箱、それは、私が好きなライダーシリーズのコンビニで開催されたクジの商品でした。

 

「いやー、一等取りたかったんだけどなくてさぁ。二等とラストワン賞とか言うやつらしいんだけど」

 

 私の視界がぼやけていきます。

 私は違う取り越し苦労をしていたのですね。

 

「さっちゃん、1日早いんだけどさ、誕生日おめでとう!」

「ひ、ひにゃひゃん……」

 

 喉に何か熱いものが突っかかって、上手く言葉がでませんでした。

 眉をハの字にして、口をへの字にして、感激のあまり号泣です。

 

「さっちゃん、すごい顔! 笑って笑って!」

 

 ずっと続く雨はない。今日は雨でしたが、私の心は晴れ模様となりました。

 

 

 

 


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