機動戦士ガンダム WEREWOLF WARS   作:ゼビル将軍

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勝利の栄光を、君に/勝利の裏側にある現実を、僕たちに

 

「ケーン! 無事に戻ってきたな!」

 

「それはこっちの台詞だよ、レイモンド。ガスとコネリーは?」

 

「ガスは医務室で休んでる。コネリーは先にパーティー会場で楽しんでるよ」

 

「パーティー? どういうこと?」

 

「祝勝会に決まってるだろ! ワーウルフ隊の初陣を勝利で飾ったんだ! 騒いで遊ぶに限るぜ!」

 

 戦いを終えて帰還したケーンは、先に戻っていたレイモンドの言葉に怪訝な表情を浮かべる。

 確かに勝利こそ掴みはしたが、まだ友軍が戦っている状況でパーティーとはいささか浮かれ過ぎなのでは……と考えるケーンは、急にレイモンドに肩を組まれ、驚きの色にその表情を変えた。

 

「それにしても、よくやったな! 巡洋艦と戦艦を1隻ずつ落としたんだろ!? 流石の腕前だぜ!」

 

「あ、ああ……偶々だよ、運が良かっただけさ」

 

「謙遜するなよ、ケーン! 今回の作戦で一番活躍したのは間違いなくお前だ! スーパーエースの誕生だな!」

 

 そう、肩を組みながら自分を褒めてくれるレイモンドへと、ケーンが苦笑を浮かべながら言葉を返す。

 そのまま、祝勝会の会場となっている部屋まで案内される中、レイモンドは楽し気な雰囲気を崩さないまま、話を続けた。

 

「これでエース部隊への転属は決まりだな。寂しくなるぜ」

 

「なに言ってるんだよ。まだ一度出撃しただけじゃないか。僕だって、次はどうなるかわからないさ」

 

「次なんてねえよ。アイランド・イフッシュをジャブローに落として、それで戦争は終わりだ。小競り合いはあるかもしれねえが、ワーウルフ隊が出張るような戦いはもうないだろうよ」

 

 コロニー落としによる攻撃で地球連邦軍総本部が設置されているジャブローを破壊、そのままジオンに有利な休戦条約を結ばせる……それが、上層部が描いているこの戦争の絵だ。

 ブリティッシュ作戦が上手くいけば、戦争はその時点で終わる。そして、先の戦いの快勝を見るに、万が一にも作戦が失敗することはない。

 

 そういった先の情勢を見ている友人の言葉に僅かに俯いたケーンは、搾り出すような声でレイモンドへと言う。

 

「……なあ、レイモンド。僕たちは――」

 

 親友へと何かを言おうとしたケーンだったが、間の悪いことにそこでちょうどパーティー会場の前にやってきてしまったようだ。

 レイモンドも小さなケーンの声を聞いていなかったようで、自動ドアが開くと共に大声で中の面々へと叫びかける。

 

「お~い! エース様の帰還だぜ! 盛大な拍手で迎えてやれよな!!」

 

 その叫びから一拍間をおいて、どっと響いた歓声にケーンは面食らってしまった。

 レイモンドに背を押されて部屋の中に押し込まれた彼へと、仲間たちの手荒い歓迎が襲い掛かる。

 

「ケーン、この野郎! 思いっきり目立ちやがって!!」

 

「サラミスとマゼランを落としたんだって!? マジかよ!?」

 

「いててててて……! タイム、ちょっとタイム……!!」

 

 ぼこぼこと背中やら頭やらを叩かれたケーンが待ったをかける。

 そこで仲間たちも満足したのか、すうっと潮が引いたように離れていく中、逆に1人の少女が彼へと近付いていった。

 

「ケーン! お帰りっ!!」

 

「おわっ!?」

 

 両腕を広げ、彼を迎え入れるふりをして自分から飛びついてきたフィオナを何とか受け止めるケーン。

 飛び込んできた彼女はケーンの首に腕を回し、思い切り抱き着いてくる。

 

 ノーマルスーツに覆われた豊満な乳房がぐにゅりと形を変える感触にケーンが戸惑う中、キスもしてしまえそうな至近距離で弾ける笑顔を浮かべたフィオナが口を開く。

 

「助けてくれてありがとうね! それと、本当にすごかった! 間違いなく今日のエースはケーンだよ!!」

 

 ぴゅーぴゅーと口笛が響き、仲間たちが再び歓声を上げる。

 どうにもこういう雰囲気は苦手だと……友人たちから囃し立てられる状況に困惑するケーンであったが、その雰囲気を打ち砕くようなバンッという音が響いた。

 

「……おめでとう、ケーン。あなたがこの戦闘の戦果第1位よ。エース部隊への転属も決まったようなものね」

 

「アンナ……その、ありがとう」

 

 机を思い切り叩き、全く祝福する気を感じさせない表情と声で話しかけてきたアンナへと、困りながら返事をするケーン。

 小さく舌打ちを鳴らしながら、すれ違うその瞬間まで後ろのノラと一緒に憎悪と怒りを込めた眼差しで睨みつけながら、会場を去っていったアンナを見送ったケーンへと、コネリーが言う。

 

「あ~……気にすんなよ。あいつら、嫉妬してるだけさ。レックス隊長と一緒にサラミスを落として得意になってたところに、お前が1人でそれ以上の戦果を挙げたって話を聞いちゃったからさ……」

 

「1人じゃないです~! サラミスはあたしも協力しました~!」

 

「マゼランはケーンが1人で落としたって認めてるじゃねえか。にしても、本当に異次元の戦果だよな……」

 

 アンナたちには悪いが、彼女たちが盛り上がる雰囲気に水を差してくれたお陰でちょうどいい空気になってくれた。

 少し落ち着いた会場の中、わざとらしくため息を吐いたコネリーが大声でこんなことを言う。

 

「あ~あ! アンナもノラもご機嫌斜めだし、あいつらより戦果を挙げたって言い切れる奴もいないし、賭けは無効かな~? こうなると、ケーンが羨ましくって仕方ないよ!」

 

「確かに! エースとして認められて、栄転もほぼ確定で、その上フィオナとベッドインする権利までゲットしちまったんだからな~!」

 

「いや、僕はその権利を行使するつもりなんて――」

 

「え~? 本当にいいの~? あたし的にはお礼もしたいし、ケーンが相手なら文句ないんだけどな~!」

 

 おおお~っ、とフィオナの発言に男子たちがどよめく。

 またしても空気が良くない方向に盛り上がり始めてるじゃないか……と考えたところで、ケーンがはたとあることに気付いた。

 

「……バランスは?」

 

「え? なに? どうしたの?」

 

「バランスは、まだ戻ってないのか……?」

 

「えっ……? 戻ってくるのが一番遅かったの、ケーンでしょ? バランス、一緒じゃなかったの?」

 

 こういう時、真っ先にからかってくるお調子者のバランスの姿が、どこにも見えない。

 彼の性格上、祝勝会に参加しないなんてことはあり得ないと違和感を覚えたケーンがその疑問を呟けば、それを聞いたフィオナも困惑したようにそう答えた。

 

「……わからない。僕は整備士や副隊長と話してたから、ここに来るのが遅くなっただけだし……」

 

 戦果を報告した際にシーザーと話をしたり、整備士にザクの乗り心地について報告したりしたせいで時間がかかった部分がある。

 もしかしたら、自分が見逃しただけでバランスも一緒に帰還していたんじゃないかと、そうケーンが嫌な感覚を覚えながらも納得しようとした時だった。

 

「少し、はしゃぎ過ぎだぞ。友軍が戦闘を続けていることを忘れるな」

 

「れ、レックス隊長!? 申し訳ありません!!」

 

 不意に扉が開き、シーザーを伴って隊長であるガルドが姿を現す。

 驚いたワーウルフ隊の面々が大慌てで敬礼する中、ガルドはため息を吐いた後で彼らへと言った。

 

「……これが初陣で、若いお前たちがはしゃぎたくなる気持ちもわかる。今回は大目に見てやろう。それより、誰でもいい。バランスとトッドの荷物を整理するのを手伝ってくれ」

 

「……何故、ですか? どうして、そんなことを……?」

 

 ――多分、質問をする前から、ケーンにはその答えがわかっていたのだと思う。

 それでも……この答えが間違っていてほしいと、そう願う彼へとガルドが僅かに目を伏せてから、残酷な現実を告げた。

 

「……2人は、先の戦闘で戦死した。荷物をまとめ、家族の下に送り返してやらねばならない」

 

「っ……!」

 

 しん……と、空気が静まり返った。

 ついさっき、アンナとノラが部屋を出ていった時のような生易しい雰囲気ではない。もっと暗く、冷たく、重い空気がこの場を支配している。

 

 勝利の感動に浮かれ、酔い、はしゃいでいたワーウルフ隊の面々に突き付けられた、戦場の現実……仲間の死という事実は、あまりにも重過ぎた。

 特に、ムードメーカーであったバランスが死んだという現実が、どうにも本当のことだと受け入れられないのだ。

 

「2人は、どうして……?」

 

「トッドは連邦軍艦隊の一斉射撃の後、孤立したところをセイバーフィッシュに撃破された。バランスは……流れ弾を受け、そのままだ」

 

 呆気なさ過ぎる……それが、ケーンが思ったことだった。

 激しい戦闘の末、壮絶な戦死を遂げたのではない。2人とも、誰にも看取られずにあっという間にその命を散らせたというガルドの話に、ケーンが声を詰まらせる。

 

「……今回は、我々もお前たちを守り切れなった。だが、覚えておけ……これが戦争というものだ。戦場では常に死と隣り合わせだということを、決して忘れるな」

 

 誰も、何も、言えなかった。ただ黙って、ガルドの話を聞くことしかできないでいた。

 ケーンもまた、俯くと共に……もう戻ってこない友人の笑顔を思い浮かべ、唇を噛み締める。

 そんな彼の横顔を、すぐ傍でフィオナが静かに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いつまで残るつもりなの? もう、休んだら?」

 

「……ああ」

 

 祝勝会は、そこで終わった。仲間の死を伝えられた状態で、先ほどと同じように騒ぐことなど誰もできなかった。

 ガルドと一緒にバランスたちの荷物の整理に行く者、部屋に戻って休む者、怯えのせいか、医務室に体調を確認しに行く者など、解散したワーウルフ隊は会場からいなくなり、ここにはケーンとフィオナだけが残っている。

 

 椅子に座り、苦し気な表情を浮かべるケーンへと声をかけたフィオナは、生返事をしてきた彼へと、少しだけトーンを落として質問を投げかける。

 

「2人が死んだこと、そんなにショックだった?」

 

「……ああ。まさか、あれが最後の会話になるだなんて思ってもみなかったから」

 

 出撃前、下らない賭けについてバランスと話したことを覚えている。

 いつも通りだった。バランスはふざけていて、楽しそうで、普段の彼と何も変わらない態度で……それが、ケーンが見た彼の最後の姿になった。

 

 トッドもそう。決して親しい友人というわけではないが、一緒に切磋琢磨した仲間だ。

 その2人が、呆気なく死んでしまうなんて……と、戦場の現実に胸を貫かれたケーンが、呻くようにして言う。

 

「エースって、なんなんだろうね。沢山の敵を殺せても……たった2人の仲間を守ることすらできなかった」

 

 艦隊に突っ込んだのは、手柄が欲しかったからではない。あれを落とせば、仲間たちを助けられると思ったからだ。

 だから無茶をした。恐怖を飲み込んで、手を汚すことを受け入れて、敵の艦を落とした。

 

 それでも……守れなかった命がある。

 戦闘で挙げた多大な戦果よりも、エースとしての名誉よりも、その事実が何よりもケーンの心に響く中、彼の話を聞いていたフィオナが口を開く。

 

「ケーンは、あたしのことを守ってくれたよ。ケーンが来てくれなきゃ、あたしは死んでた。それとも、あたしを見捨てて2人を助けに行けばよかったって、そう思ってる?」

 

「そんなこと――っ!?」

 

 その言葉に大声を出して振り返ったケーンの頭を、フィオナが優しく撫でる。

 普段の快活で、無邪気な笑みではない。ケーンを慰めるような、諭すような、優しい笑みを浮かべた彼女が、静かに言う。

 

「敵を倒すのも、味方を守るのも、任務を遂行するのも……1人じゃ全部できっこないよ。だから、抱え込まないで。ちょっとでいいから、ケーンの悲しみとか苦しみをあたしにも分けてよ」

 

「………」

 

 フィオナの言葉に、ケーンは少しだけ肩の力を抜いた。

 自分よりずっと小さいのに、とても大きく感じられる彼女に頭を撫でられながら、心を慰められながら……口を開く。

 

「その、ありがとう。フィオ……レイク、さん……」

 

「ふふふ……っ! フィオナでいいよ。ホント、童貞丸出しなんだから」

 

 上手く名前を呼べず、苗字にさん付けという逃げ方をしたケーンを笑顔でからかうフィオナ。

 そんな彼女の反応に顔を赤くしながら、ケーンは搾り出すような声で言う。

 

「……あのさ。賭けと、約束のことなんだけど」

 

「うん? どうしたの?」

 

「……権利は放棄するって、そう言ったけどさ……撤回してもいいかな?」

 

 静かに顔を上げ、フィオナの目を見つめながらケーンが言う。

 その言葉に僅かに息を飲んだフィオナは、そっと彼の頭から手を離すと……頬笑みを浮かべながら頷いた。

 

「……いいよ。あたしも、そう言ってくれるのを待ってたから」

 

「……ありがとう、フィオナ」

 

 寂しかった。つらかった。苦しかった。仲間の死という現実に直面して、怖くなってしまった。

 童貞のまま死にたくないとか、そういう気持ちではない。

 ただ……誰かに抱き締めてほしいと、そう思ってしまったのだと思う。

 

「……ケーンの部屋、行ってもいい? ダメなら、あたしの部屋でもいいけど……」

 

「大丈夫だよ。その……行こうか」

 

 少しだけ緊張しながら、ケーンが椅子から立ち上がる。

 そこから、2人は言葉を交わすことをしないまま、ケーンの部屋へと向かうのであった。

 




ここからおせっせのシーンを入れるかどうかで迷ってる形です。
最初はR18小説にしようと思ってたんですが、あらすじに書いてある通り、オリキャラのエロなんてあんま興味ないかなと思って、考え中です。

よろしければ、意見を聞かせていただけると助かります。
感想でそういうアンケートするのがダメっぽいなら、集計用のアンケートを用意しておきますので、そちらにお答えいただけると嬉しいです。

この小説にエロ描写は……?

  • いる(R18にしてほしい)
  • いらない(ぼかして全年齢のままで)
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