やめて!殺さないでっ!   作:ハラシキア

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最初が聖騎士ちゃん視点
後半が主人公視点です


ヤンデレに直ぐに生き返るおもちゃを与えてはいけない

死臭がする男だった。誤魔化していたが、感覚の鋭いものならソレに嫌悪感を抱かせる程度ではあった。

だが、そう誤認させているだけだとは直ぐに分かった。

 

問い詰めれば、あっさりと白状した。

自分は七災厄に数えられていて、暇つぶしに街に居た、と。

信じられなかった。信じたくなかった。

故に殺した。

七災厄と言っておきながら、兵士程度の実力しかなく強く違和感を感じた。

 

死臭が強くなった。死んだから偽装が無くなったのか。

凄まじいほどのモノ。生物として身体が離れたがっていた。

 

私は勘違いをしていた。

七災厄と言ったが、虚言だったと思っていた。

死臭が凄いが、それだけで七災厄に数えられる程ではないし、自分でなくても他の騎士なら誰でも倒せるだろう。

七災厄はそんなものではない。世界に災いをもたらす概念のようなものだ。いくつか知っているからこそ、そう思っていた。

 

益々強くなる死臭。違和感が強くなる。

 

彼が七災厄なのではないか。その疑念が強くなる。

鞘に戻した聖剣を構えた。世界の敵に近づくと発光する聖剣。その筈だった。今まで見た事の無い程の輝きだった。

 

確信した。まだ終わっていない。

 

「あー、やっぱり痛いな」

 

思わず後ずさった。馬鹿な、確かに殺した筈だった。

むくりと、奴は何事もなかったかのように立ち上がった。

 

「えーっと、あの、まだやる感じっすか」

 

確認した彼は挑発するように嗤っていた。

私は躊躇いも無く一閃を放った。

 

「えっ、ちょっ!うぎゃぁぁぁ!!!」

 

斜めの斬撃。上半身と下半身を分けた。だが、先ほどの事もあって念入りに殺す必要がある。

聖剣の力を収束させる。滅多に使えない一撃で、溜める時間もかかる奥の手だ。

浄化する一撃を丁寧に練り上げる。

 

油断もあった。気が付けば、奴は再び身体を構築して逃げ出していた。

しかも、驚くことに徐々に速度が上がっていった。

その最高速度は装備していない聖騎士に匹敵する程の驚異的な速度。

 

不味い。技の都合上、その場から動くと今まで練り上げた聖剣の力は使えなくなる。

更に最悪なのは、この一撃の発動の有無に関わらず、次に使えるのが少なくとも三日はかかる。

攻撃を辞めて追うのか、このまま完成させて無理を承知で遠距離の攻撃に移るのか。悩む選択を私は強いられた。

 

唐突に確信めいた考えが浮かぶ。もしや、奴は聖騎士との交戦経験があるのではないか。

恐らく、奴は何度殺しても生き返る事が出来るのだろう。

この一撃を見て逃げ出したという事は、少なくとも避けなければいけないという認識を持っている。

 

気が付けば、技の発動を辞めていた。

無益な闘いだった。そして何よりも私自身が殺しきる自信を失っていた。

 

七災厄。

それは世界にとっての災いで、その全てを知るものは少ない。

聖騎士である私であっても、知っているのは一般人でも知っている有名なもの三つと上から教わった汚点の一つで合計四つ。

つまり、奴が七災厄に数えられているのであれば、残りの三つ枠の一つではある筈だ。

……情報が全く無いわけではないし、奴らしき異名もある。

 

罪屍人(ノスフェラツゥー)

最も歴史が長く、七災厄候補の中でも有名で、一番有り得ないとされた人の形をした生血を啜る化け物。

その存在を脳裏に掠めたからこそ、追跡を諦めた。仮に奴がソレならば奥の手の一つや二つはあるだろう。

加えて、最も古い文献で存在したとされるのが、千年以上前だ。そこまで長年生き延びてきた化け物に対して唯の聖騎士である私が殺せると思う程、私は自惚れていなかった。

それに奴が去った後には血も何も残らず、先ほどよりも強い死臭だけがあり、私は判断を誤っていなかったと確信する。

 

ふと、疑問に思った。

だとするならば、奴は何故私の一撃を見て逃げたのだろう。

防ぐ手段なり、多少の代償はあるだろうが、また復活出来た可能性が高い。

 

心底疑問に思いながら、私は報告を挙げる為、教会へと足を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

この世界に来て何年が経ったのだろう。とうの昔にカウントするのを辞めたが、まあ大体千と二三百年ぐらいだろう。

それと多分年数の十倍以上は死んでいる事だろう。その半数が教会に逆恨みされた、ここ二三百年であることからは眼を逸らしておく。

 

七災厄という世界の敵に認定されて何年経っただろうか。教会なり連絡会に行けばご丁寧に教えてくれるだろうが、絶対に確認と称して殺されるので絶対に行かない。本当になんで死んで生き返るだけで何故こんな目に遭わないといけないのか。

大体、この世界の文明は終わってるわ。千年以上見てきて、中世ナーロッパがそのまま千年も続くとか、お前らは何をしてたんだというレベルだ。

……まあそれも俺では無い七災厄の仕業なんですがね。邪神が文明レベルを一定越えると国ごと亡ぼすから劇的な変化は消されるんだよね。邪神のゴミみたいな行動と俺が同じ七災厄として数えられているのに、全くもって納得いかない。そして、その行為より俺の方が有名ってどういうことだよ。

公式に七災厄と認定されている邪神よりも、権力者が不老不死を求めまくるから、一応非公式になった俺の方が七災厄の代表格になっているのが、全くもって理解できない。こんなの絶対におかしいよ!

 

さて。

俺は暇だ。

暇人だ。

 

時間は文字通り腐るほどある。腐るほど眠ったこともある。ついでに腐った飯を教会の馬鹿どもに食わされたこともある。アイツらマジで絶対に許さねぇ……!

だが、教会の連中は怖い。コスト削減の為に死臭をまき散らさない程度にちょっとだけ強化した一般人ぐらいの実力では文字通り瞬殺だ。そして、レアパターンだが、一部の聖騎士はその死臭で俺を邪悪認定して七災厄と知らない筈なのに俺を全力で殺しに来る。やっぱアイツ等頭おかしいよ……。

なので、暇なので適当な賊をぶっ殺して手に入れた小金で俺は酒を飲む。昼からの酒は最高だな!駄目人間という自覚はあるが、やっぱり手軽に現実逃避出来るものは重宝する。葉っぱも良いが、手軽さで言えばこっちが上だな。まあどっちもアル中やヤク中になってもリセットで(死ねば)解決できるので、問題は無いが葉っぱは手に入れづらいのが難点だ。こればっかりはどうしようもないな。

 

 

 

 

ある日の事だった。代わり映えしない日常。教科書に出てくるような典型的な駄目人間。

そろそろ懐が心許ない。何時の時代も金が貯まらない気がする。終わることが無いし、年を重ねる事も無いので将来の不安も糞もないし、一度貯めてた金を全部捨てる羽目になったことも理由だ。

あの頃は使う暇も無かった。面倒な奴に付きまとわれていたので、金の使い道など選択肢が無かったに等しい日々だった。

まあ、それが原因で教会に逆恨みされいるので、本当に思い出したくもない。女って怖い。

 

俺は自由を求めていたのかもしれない。あの女、未練が残るほどには良い女だった。その女に一番殺されたけれど、容姿だけは女神といっても過言ではないので、なんだかんだで許してしまう。一応、俺も未だに好意を抱いているし、多分世界で一番愛されているとは思う。監禁とかするから全力で逃げるんだが、怖いもの見たさなのか。どうしようもなく彼女が欲しくなることがある。まあ絶対にブチ切れた彼女に殺されることは間違いないんですがね。

 

そうして日々を怠惰に過ごしていると運が悪いのか、面倒な奴に遭遇した。

聖騎士。教会の犬。ゴミ。

しかも、聖剣まで装備している。若い女だし、出世頭で次期教皇候補である事が伺える。

 

踵を返そうと逃げようとしたら絡まれた。強制エンカウントとかマジでやめて欲しい。本当に人生はクソゲーだわ。

やっぱり死臭でバレたらしい。もうこうなったら話を聞かないので、とりあえず七災厄とかましておく。おいおい死んだわ俺。

案の定、即死した。良いけどね。一回殺されるぐらいは覚悟しておいたし。

なのに、このアマ動きやがらねぇ。一時間は粘ったが、死臭も隠せなくなったので余裕かまして起き上がる事にした。

 

「えーっと、あの、まだやる感じっすか」

 

駄目元で聞いてみた。駄目だった。というよりも、話した瞬間斬られたんだが。

若干怒ってたので、煽った事にされたらしい。本当にこいつら思考回路おかしいだろ。

 

とりあえず、また死んだふりをする。流石にもう生き返らないだろうと思って去るか、もう一撃死体蹴りされるぐらいだろう。過去の経験からそんなことを考えているとなんか強い光の力を感じた。思わず逃げた。全力で逃げた。

 

俺のトラウマだった。あの女を思い出す。初対面で十回殺されたあの女を思い出した。

追ってはこなかった。心底安堵した。いや、なんでそんな酷い事が出来るのか。本当にやめて欲しい。

 

油断していた。何故、コストを下げて死臭をかなり抑えて弱体化していたのか忘れていた。その女にバレるからだ。文字通りのヤンデレで、俺の死の匂い頼りに世界中を探し回る女がいるから弱体化してまで隠していたのに……!

 

当然だが、今の俺はそんなこと思っていなかった。とんでもない厄日なのに、それを理解せず、ただ呑気に逃げれたことを喜んでいた。

嫌な事がこれからもあるというのに、酒をひっかけようと歓楽街に向かおうとしていた時だった。

 

「見つけた」

 

聞き覚えのありすぎる可愛らしくも恐ろしい、安堵の声だった。振り返りたくない。けれど、確認しないといけない。覚悟して振り返った。

 

そこに女がいた。女神のような容姿の女が居た。前世の奴なら全員がヤンデレと認定するであろう眼の光を無くした女がそこにいた。

しかも、何故か涙を流していた。はじめてみた。えっ!三百年ぐらいの付き合いなのにホンマに初めて見る涙なんだが。

 

女が近寄ってくる。黙って俺は見つめる事しか出来ない。両手を俺の顔に伸ばしてくる。とりあえず俺は微笑んでおいた。

 

彼女も美しい笑みを浮かべた。俺の勘違いか。五十年も逃げれば、ヤンデレも少しは改善したんだ。そうして彼女はゆっくりと俺を顔を抱えながら抱きしめた。

 

ああ、やっぱりなんだかんだ良い女だ。身体がなんか震えているけど、なんかすごくしあわせなんだ。やっぱりかのじょはいいおんだなんだ。

 

「もう逃がさない」

 

俺ってほんとばか。

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