やめて!殺さないでっ!   作:ハラシキア

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新たな仕事は気が付いたら増えている

指輪は良いよ。認めたくないけど、この世界で一番作るの上手くなった自信がある。一週間とはいえ、俺の持てる全てをアザゼルと協力して創った逸品だ。協力してくれたのは事実だから、またアザゼルに貸しが増えるが、ある程度なら協力しても良いと思ってる。

 

「で、お前の嫁さん何人だっけ?」

 

「108人!頑張ってくれよな!」

 

黙って顔面に右ストレートをブチ込む。煩悩の数も嫁を作ってんじゃねーよ。嫁たちもそこまで許容すんなよ。どうやって折り合いつけてるんだ、コイツ。

 

「私も彼女にあげたいので……。グリゴリで家庭を持ってる人は皆欲しがっているが現状です」

 

「シェムハザ。百歩譲って創る事は良いわ。でも、創り続ける気は無いぞ。幹部限定とかにしてくれ」

 

「充分過ぎます。とりあえず私が思っているのは、幹部の方々を高級品みたいなイメージで、他の堕天使達には我々がノウハウを会得して創る試作品的な扱いにします」

 

「あー、それで事業みたいにすんの?」

 

「貴方も知っての通り、今後はこの世界で天界の方から仕事が来ることは減少することでしょう。選択肢としては次の世界に行くという方法も有り得ますが、この世界での基盤を整えておいて損は無いでしょう」

 

「それが指輪事業というのは、ちょっとアレだとは思うが」

 

シェムハザは肩を竦めた。コイツはアザゼルと違って一人しか愛していないし、痛みに喘いでる馬鹿とは違って信用できる奴だ。ぶっちゃけコイツがグリゴリのナンバー2だから組織として保っている所はあると思う。アザゼルのカリスマも一応あるが、方向性は違うもののミカエルに近いものを感じる。

ミカエルは邪神のしたい事や、進めたい事を相談しながら着地点を決めつつ調整していくのに対して、シェムハザはトップがしたい事を後からフォロー出来るように、一歩後ろで良い着地点に誘導する。過保護な親みたいな行動だ。……上が酷いと下が優秀になるのは世の理か。

 

「俺は魔法を使って生み出したが、一から普通に作るのは駄目なのか?」

 

「そちらの方が難しいのでは?一から技術を覚えて加工して行く作業を否定するつもりは無いですが、剣を作るのとはまた別の難しさがあると思います。一朝一夕で身につくものでもないでしょうし、一先ずどのようにして創ったのかと把握しておきたいのです」

 

「なるほど」

 

つまり、今後はそういう手段を取る可能性もあるが、まずは俺のやり方を知っておきたい訳ね。確かに直ぐに出来る訳でも無いから、現状で前例があるやり方のノウハウを学びたいのと、自分たちでは量産体制に進むのが何時になるか分からないから外注すると。そういうことかね。

 

「金額は金貨三万枚。加えて、天界から依頼もグリゴリもサポートに入るということで受けて頂けると嬉しいのですが……」

 

「……大丈夫か?金額もそうだが、サポートまで入るのはそちらにとっては結構な痛手じゃないの?」

 

「流石に一括では無理です。ですが、この選択肢が最良だと確信しています」

 

ん?どういうことだ。疑問符を浮かべる俺にシェムハザが微笑を浮かべて続きを言った。

 

「アザゼルは今から自分と幹部の全員分を一気に作って頂こうと企んでいるでしょうが、現実的とは思えません。それに一度に大量に創った事で品質のバラつきを私は懸念しています。折角ですので、高品質で満足の出来る品物を私は要求します。何度も頼むべきものではないからこそ、時間を掛けてすべきだと私は思うわけですよ」

 

「ほー。サポートも一応付けるが、連絡とか催促の役割もあるわけか」

 

「そちらも考えているのですよ。七災厄がどのようなものかを我々は把握できていません。神ですら全てを知っていないなど、正直言って異常極まりない事態です。一部の神が情報を秘匿していることも関係していると思われますが……。我々としても七災厄の把握と今後の世界の情勢は知っておいて損はありません。ルシファーさんが動くなら時間はかかっても、何れ変化は起きる事は明白。そうなれば、近くで見れるというのは、他勢力よりも先んじて状況を理解し、直ぐに行動できるという凄まじいアドバンテージを我々は得れる。そう考えれば私の提案も最良だと分かると思いますよ」

 

「あーうんそだねー」

 

シェムハザは頭が良いから正直言って意味が分からない。言葉の意味は勿論理解は出来るが、こうも説明されると混乱してしまう。立ち直ったアザゼルも引き攣った顔をシェムハザに向けてるし、リズに至ってはまるで理解が出来ていない様で、俺の服の袖を引っ張って説明を求めてくる。後で説明してあげるから、大人しくしてなさい!

 

視線をアザゼルに向けた。流石に痛みを引いたか。組織の長としての表情を見せていた。

 

「シェムハザ。こちらが出す人員はあの子にするんだな」

 

「はい、あの子は確定です。まだ経験の浅い人員をメインでローテーションを回すイメージです。連絡要員とバックアップ等はある程度の中堅で、いざという時はベテランや幹部も出張れるように考えてます」

 

「そうだな。今回は今後グリゴリの活動方針を決める指標になるだろう。最終的には全面バックアップも考えれるし、別の事を新たに始める可能性もあるな。経験不足もそうだが、幹部連中だけが把握するのも違うからな。これで周知させる一因にするつもりだな」

 

「ええ、グリゴリも基本的に幹部がそれぞれ稼いでいただけでしたらね。組織運営としては健全と言えなかったですし、幹部ぐらいでしかどうやって稼いでるか理解していなかったのでは?」

 

面倒くさいのでリズと離れる事にした。転移で適当な街に移動した。俺らは同じ組織の人間じゃねーんだぞ。そういうのはやめろ。心を開いてくれるのは有難いが、組織の内情を関係者以外に話すんじゃねーよ。

適当な宿屋に入った。リズは黙って指輪を眺めていた。……嫌な予感がした!

 

「ねぇ、ルシ。私のこの指輪ってどういうつもりで創ってくれたの?」

 

あー、もう、やっぱりそういう話になったか。くそだりぃわ。

……あの馬鹿共が居ないから今なら良いか。何時までも隠せるわけでも無いし、どっかでバレるとは思ってたんだ。何なら、当日にバレる覚悟はしてたんだ。このまま隠せるかと思ったが、俺が言わなくてもアザゼルやミカエル辺りに聞かれたら同じだしな。アイツらはどうせニヤニヤしながら語るんだろうなー。それなら俺が言った方がまだマシ、と思い込もう。

溜息を一つ。やっぱり深夜テンションでやるべきじゃ無かったよ。何故俺は時を止めれるのに、休息するのに使わないのか。……邪神に扱き使われた過去を思い出すからしていなかったが、やっぱりすべきだったな。時間は無限に等しいんだから、その使い方ぐらい上手く使えばよかったよ……。

 

「これは俺の前世の世界での宝石に込められた意味だ。花言葉的なやつな。で、指輪も月をイメージしてる。この世界と違って月は一つしかなかったし、最も身近な天体だったからな。不変や神秘って意味もある。宝石は表が愛、純粋。裏が永遠と幸福だ。……その、なんだ。そういう感じです……」

 

「ありがとう。凄く考えてくれたんだね」

 

「やめろよ!」

 

く、クソが!とんだ羞恥プレイだよ!リズは凄い笑顔です。顔が熱すぎる。顔が赤くなりすぎだわ多分。

なんかそういう空気になった。リズから野獣の気配がした。

新たに借りた宿屋の一室。新婚ホヤホヤの夫婦が密室で二人っきり。何も起こらない筈も無く……。

 

 

 

 

ぼく、ねれなかったよ……。

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