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酒!飲まずにはいられない!
やっぱ酒だな。酒は全てを解決してくれる。
「飲もうぜ!もういいだろ、一回全部忘れようぜ!」
「……私はアジトに戻らないといけないのですが」
「別にいいだろ。リズが居れば全部終わるぞ。堕天使がリズに勝つのは無理だろ。この世界じゃあ誰も勝てない以上、搦め手中心の堕天使がゴリゴリの力技で詰めてくるリズには相性が最悪すぎんぞ。俺との付き合いって言えば、アザゼルが上手い事してくれるぞ」
「そういうことなら喜んで。別に戻りたくは無いですからね」
そりゃあそうだよな。戻ったら後処理が大変そうだもんな。誰だって酒を飲めるならそっちの方がええわな。
「今更なんだが、お前って
「その言い方してるの総督と貴方ぐらいですよ……。一応天使時代からも付き合いありますし、堕天使になってからも何度かはお会いしてます……。貴方ぐらいになれば仕方の無い事かもしれませんが。シュミリエルですよ」
「?……ああ、なるほど。新しい方か」
「貴方たちのような聖書にも出てくるビックネームと一緒にしないでください。こっちで付けられた名前ですよ」
まあ、聖書の名を参考にしている場合は力量とか生き方がある程度だが縛られるデメリットがある。だからといって無名だと、力を伸ばしづらく、方向性が定まらない。無名であってもコイツの様にある程度は伸ばせるが、そこまで特化した能力がある様に思えない。上級と言えるだけの力はあるだろうから
「お前はどうする?」
「堕天使と神の敵が手を組まれても困ります。私も同席させて頂きますよ。神の信徒として監視せねばならないでしょう」
「そうですね。隠す事では無いので歓迎しますよ」
「仕方ないわな。そういうことならお前も一緒に飲むか。あー、なんでこんなことになったんだか……」
シュミリエルに軽く小突かれた。ちょっとあからさま過ぎたらしい。しょうがないじゃん!
まさか元教皇がこんな乗り気とは思わんよ。あれは酒の味を知ってる目だわ。アレは相当飲めるクチだな。
俺はむしろそんなに強くない方だ。天界時代はあんま飲める機会が少なかったし、下界では安酒を酔う目的だけの雑な飲み方しかしてなかったから、こういう飲みは久しぶりだな。
堕天使幹部連中か悪魔ぐらいか?まともに飲んだのは。
後は他神話関係者で神の敵対者側の連中と軽く世間話ついでに飲んだぐらいか。腹の探り合いしてたし、そんな楽しい感じでは無かったけどな。知り合いとかと飲むのが一番ええわ。気楽に前世とかの話題も出せるしな。
シュミリエルは何とでもなる。別にそこまで嫌ってる訳では無い。飲む上でこれぐらいなら許容範囲内だろう。
問題はコイツだな。元教皇で現在連絡会のナンバー2。トップは長年所属しているベテランだから、外部からそのポジションにお飾りじゃなく受け入れられているという時点で、明らかに優れている点だろう。
うーん、知り合い未満神話関係者以上ってぐらいか。最悪帰って貰えばいいしな。申し訳ないが、俺が金を出す流れだし、嫌とは言わせんぞ。
そう思ってたんだがなぁ。
高級酒場の一角。普段、絶対に利用することが無いと断言出来るVIP専用の個室。
提供される酒は勿論、つまみも一級品揃い。前世含めても来る機会は早々無い。長年生きてるだけあって全く経験が無い訳ではないが、根が庶民感覚が残っている俺にとって進んで来たいと思えない。
確かにまた来たいと思える魅力があることは間違いない。だが、それを踏まえて考えても値段が桁違いだ。一本のワインを空けるだけで臨時収入があっという間に減っていく。元教皇のコイツが店選びをしたこともあって、全額が俺負担では無いとはいえ心臓に悪いとしか言えない。美味いが全然酔えない。リズへの説明が控えている事もあって身体が震えるぜ……。
意外と楽しい飲み会になった。元教皇が話の分かる奴で助かる。仕事とプライベートを分けるタイプ。有難い事に俺へのヘイトは向いていない。むしろ問題なのはシュミリエルの方だった。
「もう嫌だ!
「俺もカウンセラーじゃないんだがな」
「分かってます!大体なんですか、この事態は!猫可愛がりしてた子が成長するために他所に行くことを何で受け入れられねぇんだ!何年生きてんだよ、あいつ等は!」
「これは酷い」
同意する。マジで終わってる。
元教皇もといラミキアと目配せする。お互いの認識的にシュミリエルはもう駄目だ。申し訳ないが、こういう感じになったならお引き取り願おうか。
黙ってスマホを取り出し、シェムハザの方に事情を軽く説明しつつ回収するように伝えた。直ぐに返事が来た。今すぐ部下を向かわせます、ね。オーケー、じゃあ捨てるか。
「じゃあ、シュミリエル。お前はここでお別れだ」
「えっ、まだ俺は飲めるぞ!」
「ルシフェルの言葉に便乗する形にはなりますが、私も同じ意見ですね」
「……ひ、酷い」
酷いって言われてもな。こっちの台詞だわって言い返してやりたい。百歩譲って俺に堕天使の内情含めた愚痴を零すのは分かる。だが、ここにはもう一人居る。ラミキアというグリゴリの情報を教えるべきではない人間がここにいる。ラミキアはプライベートだから聞かなかったことにしてくれるだろうな。意外と話が分かるヤツだし、大多数の人間に言い触らしはしないだろう。でもそれは甘えだ。
大体、お前は酒癖が悪すぎる。別に俺も人様に説教出来るほど、酒と良い付き合いが出来ているとは口が裂けても言えない。だからといってもお前のその行動がグリゴリ全体の危機に晒す可能性もあるし、トップのアザゼルや上司のシェムハザの評価まで影響するんだぞ。少しは空気を読めるようになれよ。お前もいい大人だろ。何年生きてんだよ。人にどうこう言う前に少しは反省しろや。だから上級止まりで、幹部になれねーんだよ。俺だったら絶対に幹部にしないわ。
丁度いいよな。上級で使いパシリとして扱き使われる原因が自分にある事を理解してないんだな。ある程度の実力もあるから色々と任せられるし、いざとなったら切り捨てても心が痛まない。
いや、俺の考えすぎか?酒で悪いところだけをピックアップしているだけか?
うーん、でもなー。天界時代もそうだけど、グリゴリの時も居た様な気がしないでもないが、幹部にある程度は興味を惹かれてたとしても、何かしらの光るものなり、有能だったりしてれば俺も記憶してるんだがなー。全くもってそれらしき人物は思いつかんな。
それに毎回コイツが連絡役でも無かった様な。連絡役つっても、基本はスマホで完結するからな。渡すものとか何か俺に直接頼み事とかある例外パターンぐらいしか無い訳だが、俺との関係が良くないと俺も良い顔はしないからな。出来れば知り合いで話の分かる連中の方が俺も気が楽だしな。
ちょっと考え事が長くなったな。どうしようかね。
あっ、ラミキアが呼んだのか。店員が丁寧だが有無を言わさずにシュミリエルを連れていく。
店員に近付き耳打ちをした。
「多分後三十分程度だと思うが、ソイツを引き取りに誰か来るから」
「かしこまりました。では、後はこちらで対応いたします」
「すまん。よろしく」
軽く微笑を浮かべて一礼し店員はシュミリエルを連れて去っていく。一流はやはり別格だな。なんか寂しそうな眼でシュミリエルが見ていたが無視をする。お前が招いた結果だ。金を出して貰ってる立場の癖に出してる側よりも楽しむアホと飲む酒は不味いんだ。少しは反省しろや。
「さて、仕切りなおしだ」
「ええ、こちらはどうですか」
ラミキアは空間魔法を使って一本の酒瓶を取り出した。白ワインかね?つか、教会所属じゃなくなったからって魔法を使えんのね。普通と違うやり方で奇跡に近いのか。なんで魔法の原点に近いやり方を奇跡を使えない剣士が使えるんだよ。魔法使いとしても才能があったんだろうな。嫌になるぐらい多才だなコイツ。
グラスに注がれた白ワインを眺める。んー、普段から白の方は飲むが安酒だからな。香りは、わかんね。軽く飲む。……飲みやすい、若干辛口でクセがあんまないかな。あー、なるほど敢えてこういうワインを選択したのか。リセットの意味もあんのね。どっかの誰かさんとは違うな。
さりげない心配りというか、分かる人にだけ分かるちょっとしたアクセント。優秀だなー。なるべく恩を売っておく様にするかね。
夜が更ける。静かになった穏やかな一幕。
特に語るべき事は無い。お互いが当たり障りのない、ただグラスを傾け、酒の共に話を少しするだけ。それで良い。先ほどの事もあってお互いがゆったりとした空間を望んだ結果だ。少しはそれで良かった。
時が経てば落ち着き、良い頃合いになっただろうか。
向こうが切り出したがっているのは分かってる。
「本題にさっさと入れよ。酒で口も回る様になっただろ?」
「……改めて実感しますよ。貴方が神の右腕であった理由が。少々問題もありましたが、結局は話が出来るのなら同じ事ですな」
緊張しているのか、グラスに残っていた酒を一気に飲み干す。気合でも入れたのだろうな。
「ルシフェル。貴方と契約を交わしたいのです」
元教皇は悪魔に契約を申し込むらしい。世も末だな……。