俺は一応悪魔もやってる。俺の権能で天使にも堕天使にも悪魔も、魔神に成ることが出来るが、悪魔としてはあまり知られていないの事実ではある。基本的に人の姿で居る事が殆どだし、最近は堕天使が多いとはいえ、一番多いのは悪魔ではある。
まあ悪魔として知られて無いのは、俺が聖書とかと違って大罪の一つも背負って無いからな。悪魔と教会連中は把握してはいるだろうが、ラミキアぐらいの上層部に居たヤツぐらいしか手に入らんし、他に知ってると言えば一部の例外連中と知り合いぐらいだろう。うん、意外と多かったわ。世間一般的には堕天使でのネームバリューがデカいかな。そんな気がするわ。
「契約ね。別にいいけど、解せん。元教皇のお前が悪魔としての俺との契約?別に罠とかでは無いとは思うが、何を望んでいる?」
「ええ、私の死後を貴方に捧げるのです。長い付き合いになるでしょうし、嘘偽り無く答えましょう」
俺は黙って店員に適当な酒を持ってこさせた。これを最後の一杯にするかね。
そう思って水も頼んどいた。酔ってる状態で聞き続ける事じゃねーしな。ゆっくりと聞かせて貰おうか。
「私の要求は二つ。一つは私の後ろ盾になって頂きたいのです」
「二つね。お前に後ろ盾が必要になるのかよ……」
ラミキアは疲れた笑みを浮かべた。
「私は教会を割ろうと考えています。理由はお判りでしょう?」
「泥船なのか。まさかそこまで深刻だったのか」
「やはり貴方たちからすれば、分裂こそしても年月でどうにかなるとお考えでしょうが、私達人間にしてみれば長すぎる時間が掛かります。急ぐつもりはありませんでしたが、貴方という札を知ってしまえば私を人柱とする事に悔いは無いのですよ」
人が出来過ぎてるな。他の人の為に天国を蹴って悪魔のパシリになる道を選んだのか。こういう奴が前世での上司だったらなー……。
「内情を聞いても良いのか?」
「構いませんよ。もう聖者が大胆に動いている以上は流出は確定しています。聖者と話をする必要がありますが、最終的な目標は聖女排除派を一掃して私たちの新しい方と聖者の聖女保護派の二つの派閥にしたいと思っていますよ」
「あー、なるほど」
カトリックとプロテスタントみたいな感じにしたいのね。それはそうとして残ってる旧体制の方は邪魔だと。事態が急に動いたからアレだが、当事者の俺が断言するが、リズを排除しようとした処で俺かリズ本人にぶち殺されるだけだからな。まさか勝てるとか思ってんのか?一矢だけでもって考えなら、それは無理だと言ってやりたいわ。本当に何を考えてるんだろうな。
俺の立場からはコイツから話を聞いてアドバイスぐらいしか出来んな。俺も契約は久々だしな。他はリズともう一人、
「現状ですね。私も姪と元部下の話しか聞いておりませんし、まだそこまで時間も経っていないので混乱は収まっておりません。現在話せる事は教会内で聖者の方に合流した信徒も出始めてる事と、今までの教会のやり方を非難している者が居るぐらいですかな。他は信仰に揺らぎが出ているぐらいでしょう」
「ほう、そういう感じなのか教会は。……お前が新しい派閥を作って、後ろ盾になる件は了承した。じゃあ、二つ目の話も聞こうか」
新しく運ばれてきた酒を一口。めっちゃ甘い酒だな。水を少し飲んで中和しておく。
「二つ目もそう難しいことでは無いです。突然、辞める事になりますからね。こちらの組織にも筋は通しておきたいのですよ。私が新しい派閥に関与しなくても良くなった時から七災厄や災厄に関わりたいと思いまして。その時点で貴方の下に行くことになっても構いませんよ」
「それで良いのか?なんか抜け道っぽい事をしているが、結局は悪魔との契約だからな。死後はずっと俺の部下として魂も縛るからな。お前なら大丈夫だと思うが、俺は色んな意味で有名だし、あらゆる所と敵対する事になることは覚悟しておけよ」
「承知の上です。はっきりと申しますが、このまま上にのうのうと上がるのは違う気がしてまして。私が教会を去って五年程ですかな。今の結果を無視できず、放っておけないと思ったからこそ悪魔に手を貸してほしいと願っている訳です。責任、いや後悔ですね。そこまで私が権力に囚われていなかった事と、後進の育成という為に早く退いたからこそ起こった事態と認識しています。思い上がりにも感じるかもしれませんが、残された知人や姪を思うと何かすべきだと感じるのですよ」
立派だなー。権力持っている奴の殆どが、その座を守ろうとするか、更に利権を求めて暗躍しているイメージが強い。偏見かもしれないが、大体の人間はそういうものだ。わざわざ上に居る人間が生活レベルを落としてまで、下の人間を救おうとするのは数少ないだろう。居ない事も無いだろうが、どちらにせよ少数派な事に変わりない。
契約はしていいな。今後の為には、ちょっとばかし面倒だとは思うが、それにしても喉から手が出るぐらいには欲しい人材だ。比較対象が悪いが、シュミリエルを見た後だと余計にそう感じる。両者とも優れてはいるんだけどな。一組織のトップになれた人間と千年近く中間管理職で燻っているヤツを比べるのは酷か。ラミキアの場合は優秀過ぎる。新たな組織に数年でナンバー2に納まる人物は早々いないだろうしなー。
「俺は契約は問題ないぞ。目茶苦茶有難い人材だしな。あんま契約していない俺が言うのもアレだが、そちら側から契約を持ちかけられる事は滅多に無いからな。他の悪魔からすれば、お前の場合は契約したいだろうけど、基本的に戦闘力が高いし相性も悪いから命懸けだし、契約まで絶対に辿り着く事は無いだろうしな。それが出来るとすれば大罪とか、有名処の連中でも一握りぐらいだろうし、そいつらはそんな危険な事をしないだろうからな。本当に今回みたいなのは、相手が俺だから許されてる部分がデカい事は理解しとけよ。……言うまでも無かったか。まあいい。で、本当にいいのね?」
「はい。別に今までと同じように信仰も許されるのでしょう?職場が異動した様なものだと認識しているので、私は問題ありませんよ」
溜息が零れた。こういう口振りの癖に、さっき酒を呷った時に全て覚悟を決めてた訳ね。ったく、本当に凄い奴だよ、お前さんは。
これで俺も眷属が三人か。す、少ないわ。なんで他の悪魔に比べてこんなに少ないんだろう。積極的に契約をした訳でも無いのと、俺が悪魔として行動をすることが少ないのが原因か。分かった所でどうしようもないな。堕天使や死臭が強い程度なら、教会の邪悪認定とか敵対されるだけで済むが、悪魔だったらそのヘイトが段違いになるからな。悪魔はどうしようもなく嫌われてる。その事実だけは悲しいが受け入れなければいけない。
さっさと契約を済ます。個室であることを配慮して目立たない程度に魔法陣を出す。手早く俺とラミキアとの間に契約を結んだ。
元教皇のラミキアが仲間になった。
これからどうっすかなー。