やめて!殺さないでっ!   作:ハラシキア

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潜入は時間が掛かることも念頭に置く必要がある

良く分からん空間だな。構造がイマイチ掴めん。

結界の影響か?昼間なの筈なのに、頭上には星空が見えんぞ。建物もナーロッパ調というよりは、近代に近いぞ。その時代を知らんが、戦後暫くしたとある歓楽街に似た感じか?多分、遅かれ早かれ神の怒りでも発動してた感じかね。

 

そこ気にしてもしょうがないか。だがなー、色々とツッコミ所が多いな。すれ違う人のほぼ全員が何らかの影響か、まともに会話できる状態じゃない。ぱっと見じゃあ分からんな。他神話の技術体系は地球発祥なら何となくは分かるが、異世界発祥は見当もつかん。下手に触って爆発されても困るしな。

 

「忘れるところだったわ。はい、これ」

 

「カード?それが込められているって、荒事になるって想定してんのか?」

 

「保険だよ。そうならんことを祈ってはいるけど、脱出手段は事前に準備しといて損は無い」

 

こうやって言う事にも意味がある。どうせ監視されてるだろうしな。今の所は擬態が上手く言ってるので、そこまで重要視されてないみたいだな。

カモとして見られているのは、こちらからすれば好都合と言うべきか。酒場に行く素振りを見せとこうか。

……まだ接触してこないな。一瞬だけアザゼルと目を合わせる。

そうだな、油断を誘う為に酒でも飲んでおくか。まーしゃないな!仕方ない、これも仕事の為だ!

 

酒場に来た。うん、外の人間と違って普通の人間だな。アレは何だったんだ?ゲームで言うところのNPCみないなものを感じたが、ここに居る人物は店員も客も普通の人間っぽい。俺らみたいな観光客も居るが、この町の住人っぽい人も多いか。結構身なりもしっかりしてるな。ギャングが金を巻き上げるだけじゃなく、ちゃんと町の経済を回してんのね。褒められはしないけど、上客として立場を固めてる感じか。暴力で従わせてるだけじゃないのは、ちょっとだけ高評価だな。

 

同じことをアザゼルも思ったのか、小声で独り言の様に呟く。

 

「飲み干す必要は無いか。ちょっとだけで。それで良さそう」

 

言葉を変えたか。つまりは他神話だけ排除出来ればそれで良しとする判断か。天界や教会は潰す事を求めるだろうが、俺らからすれば下手に丸ごと組織と他神話の勢力を排除するよりかは、そこにある連中をそのまま活用した方が楽なんだよな。俺も異論はない。適当に悪魔なり、堕天使派遣するのもアリだな。そこは終わってからだな。

 

少々の間、普通に楽しんでおく。接触が無い以上は怪しまれる訳にはいかない。金払いの良い客を演じておこうか。

 

 

何も起きませんでした。風俗街に興味を持ち出した馬鹿の首根っこを掴んで、そこらへんで買った酒を反対の手で持ちつつ、ダブルベッドの部屋にチェックインすることになった。

流石に初日は無理か。天界に向けて依頼料込みの手数料を請求しておく。暫くすると小袋一杯に金貨が詰め込まれている未来が見えた。

長丁場を覚悟しておかないといけないか。手持ちもある程度はあるが、これだけじゃあ足りない可能性もあるか。ちょっと外に出て、別の稼ぎ口を探しておくとしますかね。

 

 

そんな感じで早三か月。ちょくちょく稼いだりしつつ、偶に帰ったりしながら俺とアザゼルは過ごしていた。

なんか文字通り、ここの連中が所属してた神話が滅びたが、一瞬だけ騒がしくなっただけで特に何も起きなかった。平和だった。

 

収穫が無い訳じゃない。向こうからの接触は来た。アザゼルがグリゴリに戻っていた時に、それなりの付き合いになった街の人と飲んでいた時にギャングの連中に声を掛けられた。

なんか聞けば、俺とアザゼルが良く通っている酒場とかはギャングがケツ持ちしてる店らしい。お得意様になってる事と、今後ともに良い付き合いをしたいからご挨拶に来たらしい。本当に言葉通りの意味だった。アザゼルも紹介したし、脅えない俺たちに興味を抱いたのか、結構気に入られてるっぽい。

そんな感じで過ごしてるとギャングに誘われた。丁重にお断りした。なんか良く分からん方向に行ってんな。

何時の間にか三年経ったんですがね!ヘンテコな話だが、これ以上話を拗らせても面倒だった。俺とアザゼルは二人で話し合って決めた。もうこちらで面倒を見る事にしようと思った。

あくまでこっちが勝手に言ってるだけではあるが、この街のギャングと他神話が良い関係を築けているのは間違いない。

これは結果論になるが、この街でのギャンブルは基本的に後が無いような奴とか犯罪者とかが一発逆転や減刑を賭けてたとの事。身内認定もされてたし、ギャングに誘われるぐらいには良好な関係な俺らなのだ。最初に見たNPCみたいになってたのは敗者側の人間で、奴隷以下の生活を押し付けていた事と、行動をソイツらがある程度縛っていたらしい。

俺もアザゼルもそのことに憤慨することはない。むしろ優しいと感じた。

ギャンブルで勝てばいいだけの話だ。俺らからしたらチャンスを与えるというのは、ハッキリ言って甘すぎる。そのまま問答無用でその扱いでも問題は無い。実際に外の所から引き取るなり、債権を買い取ったりしてるので、こっちでどう扱おうが何も問題は無い。生かしてやるだけ器がデカいとも言えた。

 

向こうがどういう対応をするかは分からん。向こうからすれば、俺たちは随分と過激なのだろう。

俺たちは関与してはいないが、俺たちの神話体系が自分らの神話を無くしたのだ。逆恨みとかでは無く、普通に恨まれても可笑しくない。

向こうからすれば俺たちは一番デカい顔してるヤクザみたいなもんなんだろう。気に入らないから他の組と協力して一斉攻撃。外で別のシノギしてた奴らだけが残って復讐の為に敵に情けを掛けられて、後になって復讐を果たそうとする。……アレ、どこかのヤクザもので似た様な展開見たことある気が……。まあ、そうならん様にしっかりと縛るし、盃を交わさんかったらカチコミですよ。まっ当然の話やな!

 

「結局、向こうの神話ってどういう感じなんだろうな。時代的に古い日本っぽいじゃん?……でも、こっちで出張って来れるのかっていう疑問があるんだよなー」

 

「その点についてだが、情報があるぜ!」

 

「おい、お前忘れてただろ」

 

アザゼルは目を逸らした。お前嫁さん沢山いるのに風俗街に行ったのか。俺は止めたのにな。俺はお前の嫁さんから、新たに嫁を作らない様に目を光らせてくれ、と言われて連れ出す許可貰ったんだからな。

何時の時代も嫁さんには勝てない。俺は結婚してないから分からんが、お前の嫁の数を考えたらお前の立場がゴミな事は良く分かる。

俺の言いたい事は分かるよな。下手な事をいうなよ。変な事言った瞬間に、縛り付けて嫁さんの前に連れて行くからな。

 

無言の圧にビビったのか、慌てて弁解を始めた。

 

「身請けはしない!遊びに関しては嫁も納得してる!ソープとかなら良いって言われてる!」

 

「……まあ良い。口振り的にそこらへんから来た情報か。……嘘つけねーからなお前は。どーせ俺に情報共有したら、色々聞かれて遊んでた事をバラされるのが嫌だったんだろ。で、言われたら不味いのはシェムハザとかか?グリゴリの金にでも手をつけたの?」

 

「してねーよ!あーもう、本当に察しが良すぎだな!情報収集の経費として落としただけだわ!」

 

「……実際に役に立ってんだもんなー。俺はそこは何も言わんでおくわ。ただ、聞かれても誤魔化しは難しいぞ」

 

「それは分かってる。そうなったら潔く諦めるわ」

 

シェムハザに隠せないと思うけどな。素直に自白して、結果としては情報を取れた事をちゃんと報告すれば普通に許してくれるだろ。後回しにしてもロクな事にならんぞ。男らしく、潔くしっかりと説明をする義務がお前にはあると思うぞ。

 

「脱線したな。結論から言うと、多分日本人だな。俺の予想だと元ヤーさんだと思うわ」

 

「あーなるほどな」

 

そういうことか。それなら納得が出来る。

異世界発祥の癖に、やけに見慣れた光景な事に違和感が凄かったわ。そうか、俺らと同じ枠か。

 

 

 

あれ?……マジ?

 

 

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