説明回
思考が止まる。少しの間だけだったが、脳の処理が出来なくなった。
深呼吸をした。いや、これは俺が悪い。その可能性を除外していた。良くも悪くも俺らの世界は参考にされやすい。そこに何か感じるものがあって参考にしたケースも多い。俺はその可能性が高いと思っていた。だからこそ、俺らと同じ転生者且つ日本人の可能性を除外した。
言い訳として、確かに転生者は日本人が多い。それは色々と都合が良いからだ。
フィクションとはいえ、異世界転生や転移に関するものは溢れていた。それは参考になる可能性もあるし、そこに自己投影等をする人々も多い事だろう。
それに神々にとって駒としての使いやすい。イレギュラーが少ないというべきだろうか。
俺らの元居た世界を起点として、新たに世界を創り上げた以上はそこに居た人を使うのは理にかなっていた。相性が良いとも言うべきか。兎も角、使いやすい人材だった。
異世界発祥の神話というのが俺をその選択肢から除外していた。こっち側に嚙みついてくるような考えなしの神話だ。元々、そういう神話というのは地球発祥の神話関連と仲が悪い。元も子もない話をすれば、そもそもこの世界を創ろうとしたのは邪神で、地球関連の神話を参考にした奴らと一緒になって創っていった感じだ。
スケールが違い過ぎるが、ある意味でTRPGだったりする。個人的にはスト●ラが一番しっくり来る。
ある意味でおままごとの様なものだ。そういうものだが、上手くいきそうだからと後から参入してきたのが奴らだという訳だ。当然だが仲が悪いのは仕方の無い話だ。
それは一旦置いとくか。今、考えてもしょうがない。
「お前さぁ、なんでそんな重要な事を黙ってたんだ?」
「怒んな。俺だって自分の保身の為だけにこんな情報を隠してた訳じゃねーよ」
宥めつつも、何か思案した表情を浮かべていた。ほう、俺を納得させれる材料があんのか。
「お前は幾つか見落としてるぞ。三年もバレずに潜入出来ている時点で可笑しいだろ」
「?……お前は何を言ってんだ?入った瞬間から監視されてるようなもんだろ。お前は擬態が上手いが、俺は何時までも隠し通せるものではないじゃん」
「あっ、うん。気が付いてたのね」
「は?普通に考えて、外から急に来た奴を監視しない理由が無いだろ。お前も擬態が上手いとは言ったが、金が無限に出る奴に対して疑問を思わん方が可笑しい。早い段階でバレるとは思ってたぞ」
「じゃあ、分かっていて行動してたのか?」
「相手の出方次第だったからな。下手に藪をつつきたく無かったんだよ。変な地雷があるかもしれないから、敢えて探りも入れんかったのにな。日本人だと分かっていたなら、丁寧に接していれば問題ないだろ。相手からのアクションも穏便な手段が多かったしな。当初通り、ギャンブルに行ける見込みが無いから、俺はやり方を変えてたって訳だ」
アザゼルが項垂れた。
「俺は信用されて無かったのか……。お前も黙ってんじゃねーよ!」
「確かにお前に言った方が良かったかもしれないが、やはりネックなのが嘘を付けない点だな。そこがやっぱり不味かったな」
「あー、なるほどな……」
納得した様子を見せるアザゼル。草臥れた様子で口を開いた。
「元上司や他神話の反応も気になってたんだよ。目的が果たせない以上は、様子見に徹するしか無いと思ってな。実際に元上司から迂闊にお前に情報を渡すなという言葉も頂いてたからな」
「相変わらずあの邪神は……。どうせ天秤でも使ったんだろ。それでその選択の方が良いと判断したのね」
「俺は従う事しか出来ねぇ……!」
「金貰ってるんだろ。諦めろ、受け入れたお前が悪い」
お前の嫁と子供の数が原因だろ。堕天したのに、何故天界からの仕事を積極的に受けるのか。実質、フリーランスみたいなもんじゃねーか。……アレ?でもそっちの方が金も貰えるし、休みも自由に取れる。しかも、嫁も子供も居る!?
え、認めたく無かったけどコイツって勝ち組じゃん!実は高収入だし、言ってしまえば大企業の長みたいなもんじゃん!
気づきたくなかった……。俺はコイツに負けてるんだ。ちくしょー!!!
「……どうした急に。なんか落ち込んでるけど、俺がお前に貶されたんだが?なんで勝手にダメージ喰らってんの?」
「結局さ、家庭持った人間には勝てねぇんだ。散々お前のことを馬鹿にしてきたけど、お前がナンバーワンだ……!」
「あー、でも結構大変だぞ。俺の場合は嫁が多すぎるからな。頻繁に刺されるし」
「自慢か!?俺には相手も居ねーよ!!こっちに来て千年経つのに、未だに彼女の一人も出来ねぇ!どうした、笑えよ!!!」
「その気になれば直ぐに出来んだろ。お前は顔が良いんだから、適当に声かければ一発だろ」
それは確かに。でもなー。
「鏡で探したけど、俺よりも美しい顔の奴居ねーんだわ。ちょっとそこ越えて貰わんとな。邪神の呪いもあるし」
「お前も大変だな。そうか、そうだったな。お前って元上司が考えた
「しょうがないじゃん!俺だって苦労してんだよ!」
なんで童話の魔女みたいな事を男の俺がやらないといけないのか。……ナルシストでは無いが、事実として俺の容姿は世界一!と言っても過言ではない。邪神が頑張ってキャラクリしてくれたからな。あの女、多分自分の姿を創った時よりも気合入れてそうだわ。
ってな感じなので容姿には自信がある。それは邪神が保証している。
そんなことはどうでもいい。問題は呪いだよ!
邪神の呪い。厳密に言えば呪いではない。天使時代からあったものもあるし、堕天してから追加されたものもある。
言ってしまえば、ハウスルールに近い。某ハンターの念能力に似ている。
力を持つ者には責任がある、という訳では無い。力を持つ以上は制限を掛けないと世界が壊れるから、それを守る必要があるという話だ。
俺は色んな制約がある。犯罪者とか、敵対勢力じゃないと殺す事は出来ない。愛したら責任を取らないといけない。権能を無制限には使えない。堕天してはいけない。この世界で本気を出してはいけない、など色々と注文を付けられている。
だが、この制約は邪神の匙加減で多少は変動する。邪神が俺を赦す事があるかは分からんが、もしあったら今までよりも強くなれる事は確定だろうな。
またこの制約も絶対に守る必要性は無い。だが、破ればペナルティーがある。破った内容次第な所はあるが、堕天した場合とかは比較的軽く済む。普通はその筈だった。アザゼルやシェムハザや堕天使幹部連中の受けたペナルティーは神に逆らうな、という追加の制約が課されただけ。悪魔まで堕ちた俺とかだと、絶対に許さないに変わる。制約が宣言に変わり、聖なるものが特攻状態へと変わる。やってられねーよ。
でも、実はこちらにもメリットがある。実際曖昧なものだが、守っていれば力が無条件で上がる。これはちょっと面倒な話で、世界の理とかが関係している。
そもそも、俺の場合は天使時代に与えられた権能が時空干渉だ。説明するまでも無く最強の能力に挙げられる筆頭格と言える。後は天使特権と言われるもので、元居た階級に応じて使える力が違う。まあ一応元セラフだからな。邪神やミカエル程では無いが、今でも大体は使える。まあ、そこまで使いたい訳でも無いが、便利ではある感じだ。
その与えられた権能は文字通り強力だ。正直、何も考えずに邪神に勝とうと思えば勝てる。その方法をしたら世界が滅ぶので絶対にしないが、やろうと思えば出来てしまう事が問題だ。
だからこそ、制約である程度縛る必要がある。そんな危険な能力を渡すなって話でもあるが、他神話とやりあった時にこちら軍のトップになるのは自動的に俺になる。そうなれば、他の神とも対抗できるレベルの力を持っていないと話にならない。それも俺の場合は徒党を組まれても、返り討ちに出来る程度に仕上げられてる。結局、神話と同じく堕天した訳だが、考えたくないがあの女は俺の事が相当気に入ってたんだろうな。それが反転したから、追加で制約を課せられた訳なんだが……。
脱線したが、制約は世界を壊さない為の目安的な部分もある。なら、何故制約を守っただけで力が増していくかは、単純にリソースが後ろに回っていってるだけだ。
制約はノルマというか、節約するための方法みたいな感じだな。強い反面、やっぱりノーリスクで使えるほど甘くねーんだよなー。
基本的にローコストで運用するのが正解だな。便利だけど、何も考えずに使うとあっという間にガス欠だ。権能についても制約を付けられてる所為で燃費も悪くなったしな。高級外車を普段使いしてるようなものだな。維持費とかだけが嵩むから、使うだけで湯水の様に消えていく。税金だったりガソリン代が安くなればなー。全盛期だったら使い放題に近かったんだけどなー。
本当に儘ならんわ。