今回は短めです
完全不可視化を解いたアザゼルが珍しく怒りと焦りが混ざった表情をしていた。
胸倉を掴まれた。何も抵抗せずに受け入れる。
「お前!わかってんだろ!?存在ごと消えるぞ!?」
心配の色が強い。俺は彼の言葉を素直に受け入れる必要がある。そんな薄情者ではない。言葉で説得しよう。そうしなければ、アザゼルにも眼を見開く小さな少女にも失礼だろう。
「この色ボケがっ!世界がソレを受け入れる事は無い!!……お前の恋路を邪魔する気はねぇが、億年来の
「落ち着け。俺も策が無い訳じゃない」
「どんな策だ。生半可なモンで世界は騙せない」
「世界を騙せ。別に悪魔を辞める訳じゃないぞ」
俺は天使化してみせた。アザゼルは険しい表情を崩さない。
さて、聖女にお願いをするとしよう。
「なあ、奇跡で俺を攻撃してみてくれないか」
困惑する聖女。天使にその攻撃は通用しない。何の意味が無い行動だ。
胸倉からようやく手を放してくれた。驚愕の表情で俺を見つめるアザゼル。
「いや、それは……無理じゃないのか?」
「お前が信じる俺を信じろ。ガブリエルの置き土産だ。賭ける価値は充分にあるぜ」
「分かった。じゃあ、すまないが嬢ちゃん。奇跡を使ってくれ」
コクリと頷き、聖女は奇跡を発動させる。結構、本気だな。ん、待て、歴代最高は間違いなかったが、
「えっ?……おい?ルシファーくん?大丈夫、だよね」
「……ハッ!やべー、急がねぇと」
慌てて俺は禁じ手を使う。魔法と奇跡を同時に使用する。
「あー、そういうことか。心配して損したわ」
「そうだ。これをすることによって属sぐふぅ」
「……何で、効くの……?」
俺は死んだ。これで何時でも会いに来れるぜ!待っててくれよな!
「どういう、こと、なの?」
「そんなことより君の名は?」
「答えてやれよ。……アレ、俺も催促したみたいになってね?いや違うよ!俺はルシファーが聖女ちゃんの疑問に答えろって言ってるだけで!」
雑音が酷い。権能で音をシャットアウトした。ちょっとの間だけ黙っててなー。
困っている姿もかわいい。助けを求める様にキョロキョロしているね。いいね!
「リーゼ、ロッテ……です」
「良い名前だな。これからよろしくなリズ!」
「……コイツ、童貞の考えそうな自分だけが特別感出したいからって、おかしな愛称してるし。……どっちが先だ?明らかに偶然とは思えんが……」
雑音が戻るのが早いな。小賢しい奴。
握手を期待して手を伸ばした。黙ってその手を見ていたが、クルリと身体を反転させて俺の下から消えていく。腰まで伸びるロングの髪型、似合ってるぜ。
名残惜しいな。触れる事は出来なかったか。
「また来るからな!今度はプレゼント持ってくるよ」
「来ないで……」
諦めてなるものか。俺の実質初恋だ。なんで俺はあんなヤバい奴らに惚れていたのか……。惚れた弱みって酷いな。それが無かったらもっと早く堕天してたのになー。
去ろうと思い翼を消してみると、何か匂う。これは死臭か?
やはりノーリスクは駄目か。普段の地上への行動が制限されるな。一時的なものとは思えんな。今までも短期間に殺され続けたら、そうなったことはあったが、今回はペナルティーに近いんだろうな。今後一生消えないデバフね。いいだろう、受けて立つ!
「……これからも諦めずに通う訳か?」
「リズは長生きするだろう。時間という概念は俺の掌の上だ。いずれ俺の隣に来ることになるさ。俺のリリス……」
「お前って女見る目無いよな。……俺も別に良い訳じゃないけどな」
「しょうがねぇ。で、アザゼル。手伝えよ」
げんなりとした表情を隠さずに項垂れた。
「……プレゼント選びか。教会の女は面倒だぞ。分かってると思うが、頭がバグってるお前には必要な忠告だぞ」
「助かるぜアザゼル。お前って頼りになるな」
「駄目だ聞こえてない」
数多の女を墜として来た男だ。流石だな、面構えが違う。あの地獄を知ってるんだもんな。それでも手を伸ばし続けるその姿勢には、同じ男としてリスペクトしざるを得ない。
「夜空が綺麗だ……」
「どうしようコレ。完全頭がイっちゃてるわ」
そうだ。良い事を考えた。良いプレゼントを思いついたな。
視線の端のアザゼルが驚いている。俺はそれを無視して空に手を伸ばした。
「おいおいおい馬鹿やめろふざけんなそれはイカれてる!!!」
俺は魔法で幻想の月を創った。
世界が混乱した。