やめて!殺さないでっ!   作:ハラシキア

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途中からシェムハザ視点


俺は馬鹿を生贄にここから脱出するぜ

俺とアザゼルは説教を受けていた。正座久しぶりにさせらてるぜ。足が痺れる感覚は慣れんな。

目の前にいるのは、グリゴリ幹部の一部とその副総督。幹部は女性陣しかいないのが幸いか。

 

「アザゼル、良いでしょう。貴方は珍しく非が無いですね」

 

「珍しくって言うな!」

 

「総督ー。話を聞いてたけどー、ルシファーと一緒に馬鹿やると思ってたよー」

 

「少しは反省しなさい」

 

女性陣に詰められて黙るアザゼル。……。……影魔法(ミスディレクション)発動!

 

 

 

 

 

 

私はアザゼルに気を取られていた。何か違和感があった。ルシファーの様子が可笑しい……。杞憂であればいいのですが。

 

「シェムハザ」

 

「ええ」

 

アザゼルも気付きましたか。気取られないように丁寧に力を練る。

ルシファーでも避けにくい攻撃を放つ。すり抜けましたね。やられた……!

 

 

「ねぇ、何時から?」

 

「凄いねー。その隙は無かったハズだけどなー」

 

「二人がアザゼルを詰めて場面の何処かでしょう。隣に居たアザゼルの感知能力すら抜きますか……。分かっていましたが、実際にやられると心に来るものがあります……」

 

反省しなければいけないですね。知識だけでは意味が無い。理解してたつもりだったんですがね。一枚上手であったことを褒めるべきでしょうか。

 

「もういいだろ?あー、やっぱ正座はきちぃーなー」

 

「トラウマになってるだけでしょ」

 

「そうやって俺をいじめないでよっ!!!」

 

「でもー私たちの玩具じゃん。嫌だったらー反抗してみたらー」

 

「敵に回したら面倒だろうがっ!」

 

溜息が漏れる。ちょっと軌道修正しますか。

 

「はい、子供たちー。そろそろ真面目にしましょうねー」

 

「「「はーい先生」」」

 

……なんで私はこんな役回りなんだろう。不服ではありますが、こうやって馬鹿するのも楽しいものですからね。ただ、少しは状況という物を考えて行動してほしいです……。

咳払いを一つ。話を纏めますか。

 

 

「ルシファーの月を創った件は一旦放っておきますね。それで名前がリーゼロッテですか。リリスが現れた、可能性を私は考えています」

 

私の一言で場の空気が変わる。ここに居る人たちは堕天使の中でも頭脳特化の人たちだ。他にも居るが、血の気の多さという面も含めれば、最善という言葉が相応しいだろう。

 

「一応、俺の話を纏めるとそうなる。ガブリエルが事前に現れた点も気になるし、地獄でゼルエルに会った後というのも気にかかる」

 

「アダムの役割、よね。じゃあ、彼女がリリスの可能性が高いということ?」

 

「確定では無いです。……無視できないですし、些か楽観的に構えるのは悠長と言えるでしょうね」

 

アザゼルとエネプシゴシが考え込む。そこで黙っていたウェパルが口を開いた。

 

「シェムハザ。これはもしかしてだけどー、アルカディア様とガブリエルの細工なのー?」

 

喋り方で損はしているものの、その頭脳は私よりも上。一部の堕天使か知らないが、その彼女が私も考えていた事実に瞑目する。

難しいですね。確定情報では無いですが、それを無視する訳にはいかないですし。下手したら別のシナリオが進んでいる可能性もありますね……。アザゼルの持っている映像を確認してからですね。

 

「じゃあ、アザゼル。撮ってきた映像を見せて下さい」

 

「……別に良いんだが、その、なんだ。俺もさ、アイツの事が嫌いじゃねーんだわ」

 

「別に予想は出来ますよ。情報が肝心なのは分かってるでしょうに」

 

「ふーん?」

 

「あー、そういうことー。笑わないようにしないとー」

 

ウェパル?笑うとはどういうことですかね。エネプシゴシと私の視線が彼女に集中した。

彼女はクスクスと笑っていて情報を落としてはくれない。彼女の発言だ。そういうことなのだろう。

 

「あー分かった!じゃあここだけのトップシークレットとして扱う。それで良いな」

 

「やばそー」

 

「……覚悟して見ないといけないわね」

 

「良いですか。これは情報を集める為に必要なんですよ」

 

「顔が笑ってるから説得力がねーぞ。まっ、見るとすっか!」

 

楽しみですね。ルシファーの痴態。面白い寸劇を見せてくれるのでしょう!

そう思っていた私は良い意味で裏切られる事になります。

 

 

 

 

 

 

 

死屍累々。

 

堕天使の幹部全員が腹を抱えて笑い過ぎた結果、誰一人として立ち上がる事すら出来なくなりました。

 

「封印、しましょう……」

 

「そう、ね。……私たちの手には負えないわ……」

 

私たちはまだ軽傷でしたね。未だ息が荒く、地面倒れ伏す二人を見た。

 

「エネ、もう駄目そうですね。この二人は」

 

「私たちも平気では無いけどね。二人の方が長い付き合いだから……私たちはそこまで深い付き合いは無かったから、傷が浅く済んだだけね」

 

「そうですね。喜ぶべきかは分かりませんが……」

 

少し寂しさを感じた。天界に居た頃はあまり関わりが無かったですからね。それまでは業務的な会話と、軽いじゃれあいに近い小話ぐらいでしか話しませんでした。共通の友人であるアザゼルは居ましたが、彼はその友人という認識が一番しっくりくる。

本格的に仲良くなったのは、例の事件からでしょうね。堕天寸前のあの短くも決断を迫られた日。切羽詰まったルシファーが、酷い有様のアザゼルを連れて事の詳細を聞くや否や二人して仲間を引き連れて堕天しましたね。

 

皮肉ですね。聖書と同じく私が主導して堕天する道を選ぶのは。決まっていない筈なのに、逃れられないナニカを感じたのは今でも良く覚えています。

 

考え込んでいると二人が元に戻ってましたね。アザゼルは昔からの付き合いですが、ウェパルは何時からルシファーとそんな仲良くなったんでしょうね。私が把握していない時期か、個人的に会ってる事もありそうですね。天界時代からでしょうか。良く分かりませんが、ルシファーとの関わりが増えるのは良い事です。良くも悪くも彼に関わらないと、グリゴリは滅びる事でしょう。アザゼルの政治的手腕とルシファーの武力で他神話からの侵攻を躊躇わせているだけに過ぎません。私達がデカい顔を出来るのは、敵に回してはいけない核爆弾を抱えているからです。くれぐれも調子乗らない様に他の幹部達にも周知させましょうか。

 

「では、話を戻しましょうか」

 

「ああ、笑い過ぎたが、ハッキリしたことはあるな」

 

女性陣に目を向けた。茶番劇とは変わって表情が真剣なものになっていた。

もうこれは……そうですか。私の考えすぎでは無さそうです。少なくともここに居る人たちは似た様な結論に至った訳ですか。信じたくは無かったのですがね……。

 

「私から代表して言わせて貰います」

 

普通に考えてあの二人がルシファーを諦める筈が無かったんですよね。

 

 

 

 

 

「聖女リーゼロッテは人柱です」

 

 

 

 

 

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