やめて!殺さないでっ!   作:ハラシキア

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アザゼル視点


後半に時代が本編のちょっと先に飛びます


試験的運用

シェムハザの言葉に二人を覗き見る。エネプシゴシは少し驚いた表情だな。この中では正直、頭脳という面では一番下だからな。

似た様な結論には辿り着いてはいただろうが、そこまでは考えられなかったんだな。

 

まっ、そうだな。シェムハザも言い方が悪い。それも間違いでは無いが、悲観的に物事を見過ぎている。

文句無しに優秀なんだが、結論のまでの過程を飛ばしているから着いていくのが大変なんだよなー。

 

ウェパルは流石だな。ちょっと言い方に顔を顰めてはいるが、その認識に近いんだろうな。

 

「言い方が悪いぞ。その結論で間違いは無いが悲観的過ぎる。過程も大事にしろ」

 

「失礼。そう、ですね。私の推理になりますが、語らせて貰います」

 

考えを纏めているな。ったく、世話が焼けるな。

 

 

 

 

「前提として、アルカディア様とガブリエルはルシファーの事を諦めていません。……少し考えれば分かる事でしたね。あの二人が諦める筈が無かったんですから」

 

「思い入れが強かったのよ。二人の理想を詰め込んだ最高傑作よ。あの二人にとって容姿や性格に至るまで、全てがドストライクと言って良いのよ。……そうね、リリスの件を抜きにしても何処かのタイミングでアクションを起こすと予想すべきだったわ……」

 

そうだな。その考えまでは着いて来れてた訳ね。さて、問題はここからだ。

 

 

「私の考えとしてー、人柱という表現というよりー。

んー、そうだねー。アルカディア様がールシファーと結ばれる試金石なのかもねー」

 

「俺もそこまでは考えた。だが、リリスという悪魔陣営に有利過ぎるものを渡す意味が分からん。……別に元上司を過小評価しているつもりは無い。聖書と違って悪魔陣営と俺らが協調路線なんだから、下手をすれば俺らが上に立てるぞ。仮にリリスならば、聖書同様に悪魔の数が増大するかもしれん。どう動くかを吟味しなければ、取り返しのつかない事態になっても可笑しくねーぞ」

 

「二人の意見は分かりました。それは理解出来ました。……試金石、ですか。私としてもこの可能性は否定したいのです。しかし、この可能性もあることも考慮してください」

 

躊躇っているな。俺の右腕として、何時も冷静沈着なイメージがあるコイツが言い淀む……?

愉快な話では無さそうだ。ウェパルは分かってそうか。やはり天才か……。

エネプシゴシは神妙そうに聞いている。色々と雑事を任せているコイツには情報共有しといた方が良いからな。別に頭が悪い訳でも無いし、俺らでは後回しになる客観的な意見を言ってくれるのも貴重だ。

ウェパルと仲が良いし、彼女の方向性を定めてくれる点も凄く助かってる。他の幹部陣がもうちょっとだけで良いから使い易かったからなー。皆が揃って癖が強すぎるんよ。もうちょっとだけで良いから、せめて協調性は持って欲しい……。

 

 

 

 

「リーゼロッテはアルカディア様。本人の精神を模している、その可能性は無いですか?」

 

 

 

 

 

「いや……」

 

「そうだねー、それは良い線いってるんじゃなーい?」

 

「それは……有り得るの?」

 

その可能性は……無いと言い切れなかった。有り得ないと断言出来れば良いんだが、俺とシェムハザは元上司がどれだけルシファーに執着しているかを知っている。

だが、ウェパルは違うと言いたいのか?視線が集まってにこやかに笑顔を見せるウェパル。

時々思うんだが、コイツは何億年と生きている筈なのに、なんで心がそんなに幼いままなんだ。その精神性に反比例するように頭脳は俺らの神話体系の中でも上位に君臨しているしな。普通なら精神も成熟する。相変わらず、良くわからない奴だな。

 

ウェパルが落ち着いた表情に変わる。無表情で何も読み取れない表情だ。

この状態に移行したか。そうなると信憑性が増したな。

 

 

 

「容姿、神との相違点は有り。類似点、多数存在。精神性及び行動、選択。候補者の意思が介入要素無し。結論、因子の混入の可能性大。現状における情報において、神がテストケースとして作成した可能性が高い……」

 

ウェパルの元に戻って溜息を零す。消耗が激しいんだろうなー。権能として、別の発現方法に近いからな。使いこなすという意味ではルシファーと同等だろうな。

 

 

「個人的にだけどー。元々は分霊の様にしたかったんじゃないかなー。でもーあのポテンシャルは異常じゃん?人間として生まれている以上は、アルカディア様の分霊といえ、そのまま入る事は出来ないからねー。何が原因かは分からないけど今の感じになったんじゃないかなー」

 

「流石ですね。核心に近いと思いますよ。本人に確認が取れないので、現状ではこれ以上の推理は難しそうですか……」

 

「うーん、出来ない事は無いとは思うよー。推理じゃなくて仮説になっちゃうけどねー」

 

「仮説があるんだな?それで良い。他の奴の仮説なら兎も角、お前の仮説には聞く価値はあるぜ。スマンが聞かせてくれ」

 

「個人的に確定で無い情報を語るのは嫌いなんだけどなー」

 

乗り気じゃないか。すかさずエネプシゴシがお願いをしてくれてるな。渋々、だが言ってくれるらしい。やはり、エネプシゴシは貴重だ。グリゴリの頭脳を制御出来るコイツは替えがたい存在だな。

 

「……仮説だからね。さっきも言ったけど、分霊が入ろうとしてたという件だけどー。正直、語弊があるねー。私的にはー、多分本体に近い意識を入れる器だったんだと思うよー。今はまだ実力が伴っていないように見えるけどー、ポテンシャル的には最強になれる器だと思ってるよー」

 

「それは……不味いですね」

 

「アルカディア様を限定的であっても越える可能性……仮説だとしても、その可能性は無視できないわ。ありがとね、ウェパル」

 

「んー、いいよー」

 

エネプシゴシとウェパルが百合百合しい。……そういうのは後にしてくれませんかね……。二人の趣味にどうこう言うつもりは無いが、目の保養にはなるが二人の空間を作られるとな……。なんか男がここに居るのが場違いな気がしてくる。

 

「では、我々としては現状は静観という形を取りましょう。アザゼル、頼みましたよ」

 

「まっ、そうなるわな。一番近くで見れるから俺が直々に状況を確認するわ」

 

「あー、アザゼル。動画は今後も撮り続けてねー」

 

「悪趣味だな……。見たいのか?」

 

「違うよー。どうせ黒歴史確定してるじゃん?ならーそれを利用しない手は無いでしょー?私達で見れるように編集しとくからー、ルシファーへの借りを少しでも返せるようにしよー?」

 

「なるほど、良い手ですね。私は賛成します。ただでさえ頭が上がりませんが、カードしては悪くないです。頼みましたよアザゼル」

 

ほーう?確かに悪くない手だ。俺も遠慮してたな。本来ならウェパルに言われるまでもなく、俺が提案してた筈だったな。助かるぜウェパル。

 

こうして俺たちは二人を見守ることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、アイツの指輪のデザイン知ってるか?」

 

「どうしました?あっ、そういうことですか……」

 

含み笑いをするシェムハザ。そういうことだ。

 

「アイツも結局は最初にプレゼントしたものを覚えているってワケ。素直になれば良かったものを……」

 

「私的には時間が掛かるのも無理は無かったと思いますよ。今回の発端は勢いでしたが、ミカエルの助言があっての成功と見ています」

 

「ほー、そういうもんかね……」

 

二人で内乱の鎮圧祝いに晩酌をしていた。穏やかな空間の筈だった。

 

 

慌てた様子でシュミリエルが飛び込んできた。やらかして謹慎中だったろお前。

血相を変えてるな。チラリと我が右腕を確認する。深く息を吐き出して、部下に目で催促した。

 

 

 

 

 

「ミカエルが堕天しました!!!」

 

 

 

ここから激動の時代。




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