嬉しいけど困る。どうしようかね、ホンマ。
なんかいい感じに別れたのが三日前やぞ。前日に教会を抜けて来た?つーか、どうやって俺の位置を把握したんだよ。
駄目だ、頭が回らん。ツッコミ所が多すぎる。
……元々、教会とは悪くない関係だった。悪魔という天敵ではあるが、地上に悪魔が来る以上はどうしても関わりが出来てしまう。
他悪魔と違って地上に居る事が多く、魔法という技術を広めた俺は教会にとって無視できない存在だ。ダイモールという悪魔の都市等を放っておいてる時点で問答無用で滅ぼないことが、その証明になってるからな。で、外交みたいなのを俺が担っていた。
その点でいえば、堕天使は教会に目の敵にされていないのがデカいな。実質アイツらは仲介業者みたいな感じだな。グリゴリって政治力で生き残ってるようなもんだな。そっち関係はアザゼルが有能だから、その点を踏まえればトップはシェムハザだと離反してた奴も出てたな。意外と有能なんだよな、アザゼル。
「あー、大丈夫か?一応まだ引き返せるぞ。現時点だと俺の権能で戻すことも可能だぞ」
「大丈夫、問題ない。これが、私の選択」
「……うん。そう……。で?なんで護衛が居るの?」
「貴様がリゼ様を誑かした悪魔か!死ねぇ!」
護衛のリーダーっぽい奴が斬りかかってきた。普通に剣を壊しといた。
「やるなっ!だが、我々は貴様がリゼ様に相応しいか見定めさせて貰うぞ!」
「我らの命を賭けて見届けるつもりだ!」
無言でリズを見た。顔を背けるな。お前が連れて来たんだろ。元居た場所に返してきなさいっ!
「あの、邪魔なんですが。つか、お前ら程度だと足手纏いにしかならんぞ」
「その点は理解している。認めたくないが、我ら親衛隊では肉壁としても不十分であることは承知の上だ」
「うん、帰れや」
「だが!集まればこんな事も出来るぞ!皆のもの!アレをやるぞ」
「「「「応っ!!!」」」」
なにこれ。聞けや。コイツらのせいで素直に喜べねぇよ。
ん?は?なにそれ。は?マジで意味不明なんだが?
コイツら正気かよ。様々な制約を重ねてるが、神の領域の攻撃だぞ。
俺に放とうとしてやがる。……受けてやるか。
聖騎士四人による聖気の放出。聖気を合わせるという、ある意味で人間にしか出来ない合体技。恐らく信仰対象が邪神では無くリズになっているからこそ出来る稀少なケース。
日頃の鍛錬の成果だろう。絶妙としかいえないバランスで三人が一人に扱える限界値に近い量の聖気を剣に送る。聖剣に一時的に変質したのか。おい、馬鹿やめろ。誰がそこまでやれって言ったんだよ!
名剣とはいえ、ありふれた剣だろうが!属性を勝手に変えるな!
天才一人がその領域に辿り着くのは分かる。こいつ等、自分らが何をやってるのか理解してねぇだろ。理論上、聖騎士を集めれば聖剣の量産を出来る可能性がある。永続的には流石に無理だとは思うが、一時的にも可能なら教会の危険度が跳ね上がる。ほんと、こいつ等だから出来た、とかなら良いんだけどな……。
天才だから辿り着けたのと、凡人が工夫して辿り着いたのは価値が違い過ぎる。当たり前だが、世の中の大多数が凡人だ。誰でも手順を踏めば可能なのがヤバい。そうすればもっと洗練される。ハードルが下がり、ノウハウが積みあがる。やめてほしい。悪魔はそんなに悪い事をしていません。もっと手加減してください。
大きすぎる白い斬撃が飛んできた。月牙かよ。横向きだが、こっちの方が避け辛い。
秘蔵の魔剣を即座に取り出し、今出来る最大出力で闇の力を込めた斬撃をこちらも返す。
拮抗したのは一瞬だった。普通に押し負けた。四人には勝てなかったよ……。
「どうだ!少し時間はかかるが、お前すら一度は倒せるぞ」
「足手纏いなんて言わせないぜ」
「……邪魔なんだよなぁ」
「無論、我らはリーゼロッテ様を応援している。だが、覚えておけ。我らは何時でも死ぬ覚悟は出来ている。もし、悲しませたら……」
僅かに属性が残る剣が銀色に輝く。……脅しか。クソがっ!手が出せねぇ。前と違って制約を上手い具合に誤魔化せねぇだろうし、素直に殺されないといけないじゃん!
何処まで気が付いてる?一点に大量の聖気を集中させた結果だろうな。属性が変質仕掛けている。なるほど、完全に属性を半永久的に固定するのは人間では無理。でも、恐らくだが繰り返せば属性に寄っていくんじゃないか?
こいつ等の狙いが分からんな。
この技を見せる以上は俺に有用性と警告の意味が強いのは分かる。良く分からないんだが、これを見せ札とする理由が無いと思うんだがな。
これが切り札か。うーむ、腑に落ちないな。この方法ではなく、四人同時に斬撃を一斉に飛ばすとかも可能そうなんだよな。
全員が聖騎士っていうのも破格だし、聖気をここまで使いこなしている以上は上澄みなんだろうな。軽く使えるだけでも聖騎士にはなれる筈。ここまで磨き上げてる奴らだし、合体技まで完成させてるんだ。他に手札を隠し持っていても不思議ではないな。
だが、シンプルにいらんわ。頭おかしい集団は必要ない。邪魔、帰れ。リズだけでもおなかいっぱいだわ!
「お前らは何で着いてきたの?ぶっちゃけた話、俺がその気になって撒こうとすれば、お前らは着いて来れんぞ。文字通り、世界の果てまで一瞬で移動できるし、世界を渡ったらその時点で終わりじゃん。露払いとしては価値があるかもしれんが、戦力過多ではあるし。着いてくるのもお前らの我が儘だし必要ないんだよね。大体、付き合い始めた恋人たちの旅路に着いて来ようとしてる神経が理解出来ん。もうリズは教会に追われる身だし、お前らが居れば足手纏いにしかならん。戦闘能力はあるかもしれんが、護衛を連れて何故わざわざ目立つような真似をしないといけないんだよ。どうだ、反論してみろやっ!!!」
「言わせておけばっ!」
すぐに全員が剣を抜いたな。馬鹿が。ほう、高性能の湯沸かし器だな。
「反論しろって言ってる意味も分かんねぇか。……茶番は終わりだ」
「舐めるなっ!」
同じような事しか言えないのか。斬りかかってきてる奴らの時を止めた。
一応、確認の為にリズに視線を向ける。別に荒っぽい手段を取るつもりは無いが、俺だって腹は立つ。どうするか。リズの反応次第かね。
「逃げよ……?」
「そうだな!何処か希望はあるか?」
「何処にでも……。貴方が、居るなら。私はずっと一緒に……」
何故、俺はここで気が付かなかったんだ……。リズと結婚して別に後悔は無いんだが、その、なんだろうな。もうちょっと上手いやり方があったのではないかと思う。
この親衛隊も利用が出来た筈なんよなー。リズのストッパーとしての役割も出来ただろうし。
俺も早計だった。こいつ等は意外と有能で、ここで転移して姿形も残さなかったのに数か月と経たずに見つけられたしな。もうホント、こいつ等とリズに殺されまくりだったな。当初の実力がバトル漫画並みに上昇して、複数人前提だった技を一人で使えるようになるし、その技自体も昇華させんな。
こいつ等のやべー所は、ただの剣を聖剣に完全に変質させることが出来てしまった点だろうな。制約を色々付けたとはいえ、ただの人間が出来てしまったのがヤバい。まさか執念で凡人が天才に追いつくとはね。この俺の目をもってしても見抜けんかったわ。……割と節穴なんですけどね。
今では地獄でゼロと同じく教育側に回ってる。実力はラミキアより上だからな。
ゼロよりは弱いが、地獄で研磨し続けた日々は彼らの糧となっている。上位の神程度なら、四人揃ってという条件にはなるが良い勝負になるだろうな。思わぬ掘り出し物だわ。過去はアレだが、強い事には変わりない。使えんだよなぁ……。
こうして、俺とリズは二人で行動することになったわけだ。何故、俺は保護者の方に着いて貰わなかったんだ……。もうちょっとマシな感じになってたと思うんだけどなぁ……。