やめて!殺さないでっ!   作:ハラシキア

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決戦直前は先にある程度話しておいた方が良い

困った。

 

 

アザゼルに会いにグリゴリに向かうと昔の同僚が居た。ここに居るのがおかしい人物。

ミカエルが悲痛な顔をしてそこに居た。

 

 

「じゃあ、整理するけど良いか」

 

「構いませんよ。私かアザゼルが言うと角が立ちますし、一番この場で相応しいのは貴方でしょう」

 

皆の視線が俺に集中する。なるほどな。俺に旗印になって貰う気か。

実力的にはリズを推したい気持ちはある。だが、ここで求められているのは違う。今の現状で必要なのは知名度だ。それと実力か。リズだとちょっと知名度が弱い。身内の贔屓目で見ても、お世辞でもリーダーに向いているとは言えない。

リズの役割としては、象徴的な立場の方があっている。リーダー気質というよりは、皆の指揮を高めるポジションの方がしっくりくる。実力だけなら最前線向きではあるが、サポートとかの方が全体的に良い働きをしてくれるだろうな。今後の事は分からんが、アイリーンとかゲテモノを下につけるのも良いかもしれんな。それが一番丸い形になりそうだし、予備戦力として置いときたい。……これは俺の我が儘だな。自分より強いとしても、危険な目に出来る限りは連れ出したくは無い。俺にも男の意地というものがあるんですよねぇ。

 

 

「アルカディアが主神から陥落、ってことでいいんか?で、ミカエルとガブリエルが逃げ出せたが堕天。アルカディアはこの世界への干渉レベルが著しく下がった。今の天界陣営のトップはメタトロンで、天獄の警備兵を中心に一部の上位天使と意識を縛られた中位以下の天使が居るという現状……ってとこかね」

 

「付け加えるぜ。他神話の助力と干渉は無い。ギリシャと北欧等をメインに部下に確認取らせたが、あくまで内ゲバ扱いにされるそうだ。それに元上司の本体は無事な事も関係してる。恐らくだが、最悪この世界でメタトロンがトップに立とうが、結局は一時的に過ぎない。後で取り返せる事は確定してるから、今のところっていう前置きはつくが、積極的に動くつもりは無いと思うぜ。時間が経てば勝手にアイツ等は弱体化するからな。別にわざわざ相手の土俵で戦う必要も無いって判断なんだろうな」

 

「それに加えて私達が黙ってるはずもありませんからね。ミカエルとガブリエルという天界でも最も抑えておかないといけない二人が此方に居ます。普通に考えて小細工は出来ても、正攻法で問題なく勝てます。彼らがどうしようと結果は変わらない筈ですし……何故彼らは行動を起こしたのでしょうね?」

 

 

やはりそこが気になるか。

今回は見事にしてやられた、そうガチホモを褒めるしかないな。

タイミング的に千載一遇のチャンスといっても過言ではない。天獄という、地獄と同じく俺が創った世界だ。時空の流れが違う事も踏まえると、そこでどれだけの時間を掛けて準備した予想出来んな。

うーん、でも叛逆する意味が分からん。三日天下もいいとこだぞ。

 

現地人に転生して俺と出会って前世を思い出し、そのままの勢いで昇天、天使に成った稀パターン。アイツ以外でこのパターンは他に無い。あるとしても、人から神に成ったヘラクレスが近いか。アレは半神だから何とも言えんが、ケースとしてはそれが一番近いのかもしれない。

 

「自らの欲望を優先させただけか?勝算が無いと思うんだが」

 

「……お前が見落としてたからか。言っとくが、ここにいるメンツ以外はほぼ集められんぞ」

 

……?どういうことだ?イマイチ理解出来ん。

 

「天界に殴り込む以上は、堕天使とお前と一部例外しか連れていく意味が無い。あちらも此方を攻めるという選択肢しかない以上は防衛もある程度の戦力を残す必要がある」

 

「それなんだが、別に急襲すれば良くないか?今回は結構急じゃん?事前準備が出来ていたのならミカエルとガブリエルを逃す意味が無い。奇襲からの持久戦移行で時間を掛けて攻略もアリじゃないか?」

 

「無理です。信者たちに勘づかれます。今回はアルカディア様が別の世界へリソースを多く振りすぎた事に起因します。再発は絶対に無いと断言出来ますが、メタトロンに時間を与えてしまえばアルカディア様が返り咲いた所で影響力の減少に綻びは無視できません」

 

「戦力という面では私達二人が合流出来たのは喜ばしい事ですわ。ただ、その所為で信者からすれば信仰に篤い者ほど違和感を抱いてしまいますわ……。早急に奪還しなければ、世界の宗教間のパワーバランスが崩れることになるでしょうね」

 

「……頭が痛くなるな」

 

目線がリズに向く。思わず助けを求めてしまったか。リズも言いにくそうに追加の残酷な言葉を紡ぐ。

 

「聖気は、アルカディア様を、信仰することによって発生する。自前である程度は調達出来るけど、本領発揮、するのは、難しい」

 

「その様です。信仰対象の大元がこの世界へ降臨するのに暫し時間がかかるでしょう。叛逆に成功したと言え、周知させても受け入れられることは無いですし、自分たちに益になる見込みはありません。リゼさんの言葉に付け加えると、ここに居る人たちは問題ないですが、戦力の低下は避けられません。唯一対抗出来るのはルシファーさんぐらいでしょうか。後は出力と権能的にリゼさんとアザゼル、ガブリエルぐらいでしょうか?ミカエルは堕天した以上は権能を使いこなす事は無理でしょうし、四人でどうにかメタトロンを放逐して頂きたいですね」

 

あー、やっぱそうなるか。アザゼルもリズも問題は無い。ゲテモノ、もといガブリエルもこの際だから目を瞑ろう。

 

「で、別に倒す事は問題無い訳だな。ハッキリ言うが、流石にこのメンツで負けは有り得ないぞ」

 

「……別にお前一人でも勝てるだろ。何が言いたいんだ?」

 

「あー、説明が面倒だな。正直、向こうの狙いは一つしか無い訳じゃん。それを踏まえて放逐という言葉を使ったの?」

 

ミカエルが渋い顔、ゲテモノは感心した様子だった。

なるほどね、そうだと考えていたから堕天という手段で俺達に助けを求めた訳か。

 

「分かっていない奴の為に軽く説明するが、これはただの茶番だ。邪神の筋書き通りってことだろ?違う?」

 

「……流石ですわね。答え合わせは必要かしら?」

 

「別にいい。じゃあ引き継いで話をするわ。俺の推理だが、元々はメタトロンの可能性として俺に勝てる未来が生まれたことがキッカケか」

 

「貴方の結婚が原因ですよ、ルシフェル。貴方とリーゼロッテさんとの最初の出会いが起点です。二度目の出会いと結婚までの流れが完成したことによる弊害です。これは確定した未来ですよ」

 

何か良く分からんことをミカエルが言ってる。んー?アザゼルと一緒に行った時が最初じゃなかったの?それ以外で会っていないと思うんだが、何時の話をしてるんだろ。

 

リズを横目で見ると心当たりでもあるのか、遠くを見るような目をしていた。

もっと早く言っておいてくれよ……。多分、忘れてたんだな。

 

人が多いからか、俺の袖を引っ張った。緊張してるのね。はいはい、耳を貸せば良いのね。

少し屈むと周りから微笑ましそうな視線が俺に集中する。顔を顰めてしまうが仕方ない。一応、聞いとかないといけないからな。

 

「私が赤ん坊の頃。貴方が私に加護を与えたの。覚えはある?」

 

「……ちょっと待って」

 

記憶を探る。逆算してから脳内メモリーから該当データの検索。あ、これかぁ。うん、なるほどな。この時か。珍しいことではあったが、大して重要視してなかったから忘れてた。

俺の知らない情報も展開。皆がその先が気になるのか、俺の出したヴィジョンに釘付けだ。

 

暫く眺めていた。映像が終わってから辻褄合わせで干渉しておく。

リズと俺が干渉した。鶏と卵の問題に似ているな。どっちが先かは知らんし、真実を明らかにする意味も無い。結果だけが全てだ。因果だったな。そうか、リズが強くなり過ぎたのも今回の布石だったんだろうな。

 

沈黙が支配していた。もう皆が自分のやるべきことを理解していた。

目配せが行き交う。一人、また一人と去っていった。

 

残ったのは攻めに行く四人だけだった。

心残りは無いし、結果は変わらない。

 

 

俺たちはゲートの先へと足を進めた。

 

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