「ゼロ、先駆者について理解しているか?」
「多少はな。アレは種族の概念的に存在しているものだろう?」
「違う。他者の認識も必要だ。それと飛び級で見せられても身につかない。俺を参考にしようとしても上手くいかないように、レベルが離れすぎていると模倣の段階にも辿り着けない」
「だが、一度到達してしまえば道筋は出来るだろう」
「再現性が無いという言葉の方が近いか。知っていても、結果だけしか分からないなら、それは一から模索するのと変わらん。ある意味でレシピに似てる。完成品だけ見せられても同じものを作るのは難しいだろ。大雑把な説明だが、大体はそんな感じだ」
「……何が言いたい?突拍子の無さ過ぎるぞ」
「大したことじゃない。一応説明しておこうと思ってな」
「何を?」
「『
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奇襲しかない。
ゲートでの入り口をガチホモの目の前に設定。構えられてはいたが、それを無視して愛剣で一閃。
属性としては最上級の魔剣だ。元のモデルがダーインスレイヴだ。一撃を喰らえば邪神すらも戦闘不能に持っていける。まあ、流石に避けるか。十八番の手段だから手は割れてたか。挨拶代わりだったが、決まってくれれば楽だったな。
他の三人がガチホモの手勢と戦闘を始めていた。サシのタイマンか。理想は全員で封殺まで持っていきたかったな。そんな旨い話は無いか。アイツの目的としては負けても良いだろうが、それが負ける理由には成り得ない。こちらで勝って目的を達成しても良いからな。
……奴の目的は何だろうな。当たってると思ってたが、イマイチしっくり来ない。
俺とかの身体目当てかと思ってたが、その答えに違和感を抱いてしまう。
ちょっと考えるか。
一旦、考える時間が欲しくて時の流れを操作。俺だけ時間の流れを早くする。
とりあえず三倍。そのアドバンテージを維持し、魔法での遠距離攻撃で飽和状態を保つ。
うーん、この前もそうだったが、奴の権能を使っていないのが気になる。この前の戦闘でなんで攻撃を無条件で受け続けた?俺かアザゼルぐらいしか出来ない戦法だぞ。
即死攻撃が多いからオワタ式のゲームと同じく数を撃たせて攻略法と敵の持久力を削るやり方。実質的に残機が無限に等しい俺らしか出来なかったハズ。むしろアイツは耐久型の王道タンクだ。シンプルに防御力が高く、ガブリエルほどでは無いが回復能力が高い。
本人の気質もあって、ヘイトが高くなる。RPGではあまり居ないタイプだが、古きMMOとかにヒーラーと同じく必要だけど花形では無いから人気が無い。そしてヒーラーと違って敷居が高いイメージもある。
実際問題、タンクはヘイト管理が死ぬほど面倒だ。攻撃手段よりも皆が傷つかない、最大限の働きを維持するために駆けずり回るポジション。無茶な要求にも応え、全体の動きを把握しながら
だからこそ不気味だ。今のアイツはタンクの風上にも置けない。タンクというよりは……なんだろうな。言葉で説明が難しい。
やっていることは邪神に近い。ん?もしかして、そういうこと?
様子見終了。即座に距離を詰めて接近戦に移行した。
今までの貯金を全額ぶっこむ。その俺の動きにリズとアザゼルが気が付いた。リズは敵を蹴散らして最短距離で、アザゼルは相手を拘束して俺の援護に来てくれた。
ガブリエルは、無理か。ヒーラーだからか、結界の外から困り眉でこちらを眺めていた。気が付いてるか?多分、何かちょっとしたズレは感じてたっぽいな。
「どうしたルシファー!」
「やべーぞ!アイツ、邪神に成り替わろうとしてる!今は少しでも遅らせる事だけを考えろ!」
「分かった。手は緩めない」
言葉を言い終わる前からリズが魔の属性と魔法を連続して攻撃してくれてる。アザゼルは敵全体に色んな
俺はそのまま接近戦を続けて集中できないように時間を与えない猛攻を仕掛け続ける。
どうだ?このまま、相手の都合を考えずに狭間の世界に落とせるか?いやぁ、流石にきちぃー。リズとアザゼルのお陰でダメージも入ってるし、動きが悪くなってるから攻撃も通りやすい。
奴の部下が徐々に戦線復帰してるから二人の援護もこれ以上の要求は難しそうだな。
さて、そろそろ時間かな。明らかに奴の気配が変貌していく。若干だが神気が身体から漏れ出している。
恐らく俺の言葉通りの変化か。邪神が居ると誤認させたまま、その信仰を自分が掠め取る算段だったんだろうな。
空間固定。時間軸をズラし、外部の影響を受けないようにしておく。
一瞬だけ動揺したな。その隙に懐に入り込み、最小限の動きで胴体を貫く。そのままの勢いで通り過ぎる形で横っ腹に穴を作って駆け抜けた。
ハッキリと分かる形の一撃がようやく入った。再生しようとしていたが、剣の効果もあって上手くいってないようだ。
打つ手を間違えたな。戦闘において重要なのは自分が優位の状態を維持する立ち回りだ。回復自体は悪い選択では無いが、俺の武器のことが頭から抜けてたな。
この場面でタンクとしての役割を咄嗟にしてしまったな。長年染みついた癖は抜けねーよな。後はこの優位性を維持すれば良いが、これで終わってくれる訳が無い。
個人的にタンクという存在は不遇職と思っている。一般的なアタッカーやヒーラーと違って分かり易く貢献できるような訳では無い。
居れば安定するが、絶対に必要かと言われたら首を傾げる事しか出来ない。何せ、前世という歴史の積み重ねで、それを証明してしまっている。
タンクもとい盾、防衛力と言えば良いか。大きな城は無意味だった。都市レベルで壊滅する兵器が存在した前世。核と言う悪魔から見ても恐ろしすぎる兵器。似た様な事は一部の上位ティアの存在なら可能だ。だが、それは禁じ手だ。量産してしまってる時点で取り返しがつかない。
使わないという人間の善性に期待するしかない。その兵器は大多数の人々を一瞬で滅ぼしてしまう力がある。
その時にタンクは必要だろうか。いや、むしろ余計なヘイトを稼いで欲しくない。
あくまで俺個人の見解だが、タンクという役割は誰かに貧乏くじを引かせる行為に近い。ある意味で人柱だな。被害を一点に集中させることによって、他を効率良く円滑、安全に動けるように舞台を整えてるだけだろう。
俺はそう思っている。だが、邪神からその立場を一時的とはいえ奪取することが出来てるんだ。タンクの
見落としがあるような気がする。気のせいという事にしたいが、楽観的に考えられる程の余裕は無い。
眼を凝らした。未だに再生をしようとしている奴が気にかかった。
あまりに隙だらけだった。何というか、ついさっき出会った時と比べて違和感がある。
喋っても無い。……もしかして、嵌められたか?
奴の身体に微かにノイズに似た綻びがあった。それを認識し、しっかりと
やられた……。懐かしい同僚だった。ウリエル。四大天使の一人。
茶番だったのだろう。俺が気が付いたことに胸をなでおろしていた。
嫁でも人質に取られてたか。コイツが素直に加担しているとは思えん。
「ウリエル。とりあえずは終わりで良いか?」
「そうしてくれると助かる。……嫌々従ってた奴らに指示を出した。これで落ち着くだろう」
「あの馬鹿は逃げたの?」
ウリエルが嫌そうな顔をしつつ、怒りを滲ませてた。やっぱ、俺の勘も捨てたもんじゃねーわ。
「そうだ。ラフィーの身柄を向こうに抑えられてな……!」
うん、お前は嫁が大好きだもんね。さっき戦ってた時以上のプレッシャーだわ。
正直な話、ウリエルが本気出してた方が面倒だったな。俺との相性が最悪だし、コイツの嫁と組まれたら物凄く厄介極まり無い。ガチホモ側ではないと確信していたが、囮にするとは奴も思い切ったな。どうせロクな事を考えてねーだろうな。
凄くだるそうな未来を想って、俺は自然とため息が零れた。