一週間ほどの時間が掛かったが、何とか完成した。
「やった……!出来たぞ!」
「やれば出来んじゃねーか……!」
ミカエルの脳破壊とか、もうどうでもいい。何度迷走したか分からないけれど、結局はシンプルに纏まった気がする。これなら俺へのダメージも最低限……にはならんけど良いわ。もういいよ!俺は嫁への愛を世界に叫ぶぜ!
「で、世界の時を戻せば良いんだろ?」
「だな。一時間が元上司の指示だ」
一時間か。リゼにプロポーズしたタイミングじゃねーか!えっ、あの邪神にプロポーズの瞬間見られたのか。……おい、ミカエル云々の話が怪しくなってきたぞ。
「ん?どうした?どっか気に入らない点があったのか?」
「いや、舐めてくれたなー、と思ってな」
「ミカエルの事か?アイツは昔からそうだろ」
はい確定。誰もミカエルと言ってないなんだよなー。なるほどな。コイツらは俺が試練をするように仕向けたかったのね。
目の前の馬鹿に印をつけておく。これでお前は隠れられない。何時でも時は止めれるからな。
「もう言っとくわ。逃げられんからな、お前」
「……なんでバレたの……?」
「お前は小細工は出来ても、肝心な所が駄目だな。俺と違って嘘をつけないのも原因だ。邪神が把握しているなら、ミカエルも把握出来ていないのがおかしい。その時点でミカエルが俺の嫁を狙ってた発言がおかしい。ミカエルがそんな隙をお前に見せない訳がねーだろ。そして、お前にどれだけ貸しがあると思う?それらを蹴ったと考えれば、自ずと答えが見えるもんよ」
アザゼルは絶句していた。まさかこんなにも早くバレるとは思ってもいなかっただろうな。項垂れてる肩に手を乗せた。
「裏切者には罰が必要だよな。お前ぶち殺し確定な」
「い、いやだ!」
「だめ、罰だから」
嫌がるアホを尻目に懐にある箱を弄ぶ。一息入れて俺は世界を戻した。
◇
ロドリゲスは白い空間に居た。真っ白い、何も無い空間。神聖な空気は感じた。
彼は何故、自分がここに居るかを理解していた。時が巻き戻る瞬間、彼は自らが信仰する神に導かれたのだと、聖者である彼は説明されずとも容易に予想が出来た。
『良く来てくれました。貴方には知る資格がある』
そこに神が居た。自らが信仰する神を前に、彼は自然と膝をつき、黙って祈りを捧げていた。
『よろしい。貴方の信仰に感謝を。堕天使ルシフェルの権能により、時が戻りました。貴方が教会に所属しなかった訳を私は知っています。その貴方にしか頼めない事を私は頼もうとしています』
『聖女リーゼロッテは今幸せを掴もうとしています。ルシフェルと結ばれるのは癪ですが、あの子が選んだのならば私は何も言えません。私をまた信仰してくれるのなら私は文句を言うつもりは無いのです』
『貴方にはルシフェルが聖女リーゼロッテを悲しませた時、その槍を使い貫きなさい。彼の者が悲しませた時、その服は黒く染まるでしょう。またその服が白く戻るまで、貴方はその槍で彼を苦しませるのです』
『頼みましたよ。貴方が二人の結び目になり、リーゼロッテに私では出来なかった事をさせてあげてください』
『ロドリゲス。私は何時も貴方を見ています。貴方も自らの幸せを大事してくださいね』
神は言い終わると、この空間が溶けていく錯覚に陥る。意識が元に戻ろうとしているのか、抗いようの無い眠気に襲われた。
気が付けば、ルシフェルとリーゼロッテのプロポーズの瞬間に戻っていた。彼は一度神に祈った。そして、二人の門出を祝福することを誓ったのだった。
★
戻った。目の前はリズが凄い笑顔でそこに居た。やっぱり、お前は記憶がリセットされないよね。
チラリと辺りを見渡す。聖者は祈りを捧げた後に俺だけは凄い形相で睨んだが、リゼを見て祈りを捧げていた。
なるほど。リズが聖女時代に助けた子孫とかか?だから聖者になっても教会には所属していないイレギュラーが誕生したわけね。
あの様子だと、邪神が説明したみたいだな。俺はもう一度、周囲を見渡す。不可視化した状態で宙に浮くアザゼルがニヤニヤしていた。ついでにミカエルと邪神も隣に居た。は?
「リズ!リズ!後ろ、後ろ!」
「何?……!!!!!????」
俺たちは思わず二人で抱きしめあった。勿論、お互い身体が震えている。邪神は分霊じゃねーじゃん!あれ、本体じゃん!くそが!何、微笑ましそうにこっち見てんだよ!帰れや!
「ルシ、ごめん」
「いいさ、気にすんな。そ、その……俺もなんだかんだ、お前が好きな事は変わんねぇ。観客が増えただけと思っとくよ」
リズが黙ってキスをしてきた。直ぐに離した。今はそういう場合じゃねーじゃん!
あっ、もうほら!アイツ等、すげーニヤニヤしてる。邪神まで笑ってる。アザゼルは腹抱えて笑ってる。アイツ、マジで後覚えとけよ……。
しかも聖者もなんか柔和な笑み浮かべて頷いてるし!お前はなんなんだよ!お前はあのバカ共と同じ土俵に立つな。
すげー気が乗らないけどやるか。マジで嫌だ。
俺は堕天使の状態になる。
周囲がざわめく。一瞬だけ教会関係者らしき殺気を感じた。
その瞬間、聖者が槍で地面を叩き、神具の力を使って無理矢理黙らせた。
「聖者ロドリゲスがこの堕天使を預かる!皆のものに命ずる、黙って見届けるのだ!」
【神アルカディアが告げる。堕天使ルシフェルの発言を聞き届けなさい】
聖者と邪神のコンビプレー。やってらんねー。
おい、邪神。気が抜けてんのか、口調が神託する時の口ぶりじゃねーぞ。ミカエルに軽く注意されてんぞ。俺は覚えとくからな!
【堕天使ルシフェル。早く皆に告げなさい】
何やってんだ、お前ぇ!急かす為だけに神託を落とすな!おい、ミカエル笑うな。アザゼルは笑いすぎて痙攣していた。本当に君は愚かだね。もうアイツは開き直って笑い貯めするつもりらしい。本当に後が楽しみだね!
仕方ねぇ。俺は覚悟を決めた。この状況じゃあ、やらないと一生終わらん。バンジージャンプに似てるな。こっちは紐なしだし、飛ばんかったら無理矢理押されるし、下は全く見えんし。……仕方ねぇ。俺は覚悟を決めた。
【堕天使ルシフェルが全世界の理性あるものに告げる。我が伴侶が決まった事をここに宣言する】
【堕天使ルシフェルが誓おう。伴侶以外は愛さず、あらゆる苦難の道を共に歩むことを】
【我が伴侶は七災厄であり、神の愛し子である
【伴侶が害される事を我は認めはしない。伴侶が害されるのなら我が盾となろう】
【改めて堕天使ルシフェルが宣言しよう。我が生涯は伴侶以外を愛さぬ】
【永久の時を未来永劫、傍に居ることを我は誓おう】
終わった。全てが終わった。リズはまだ何かを期待したよう目を向けてくる。ミカエルは感極まった様子で涙を堪えてる。何故?
アザゼルは……?アイツ何やってんだ。何か邪神に伝えている?スマホをなんで今取り出したの?
≪ルシフェル聞こえているでしょう≫
!?邪神の声!?あのバカ!邪神に俺の連絡先教えやがった!しかも、脳内に直接語りかけてくるタイプのヤツだ。これは邪神がスマホを起点に新たに術式を作ったんだな。相変わらず器用だな。
……一方通行なのね。新たに作った術式だからか、まだまだ問題があるようだな。
≪まだリーゼロッテは満足していませんよ。その懐にあるものを何時出すのですか≫
……やっぱり、二人っきりの状態で渡せんかったか。ほんま、この邪神は……。
ここからが本番って訳ね。だりぃわ、マジで。
やはり俺の公開プロポーズは間違っている。
恐らく明日は更新出来ません