邪神から面倒な仕事を押し付けられたとしても、それは急ぐ話ではない。遅かったら邪神も手伝い寄越すだろ。
多分、邪神は新世界の方に集中するだろ。こっちの事は恐らくミカエルに任せてるだろうから、邪神が見てないのは確定か。
これからは全力を出しても問題は無いな。問題は無いが、持てる全てを使った所でリズには負けるのは事実。嫌になる。俺が守られるのは正直言って情けない。い、一応世界でも上から数えた方が早い実力者なんですよ……。本当だよ!!
それはともかく。俺とリズは魔法使いが集まる協会に来ていた。この世界では別の単語だが、日本語では読み方は一緒なのは邪神に対する当てつけだ。俺命名だし。
俺を神として崇めているが、魔法使いの数がそこまで多くないし、信仰心で言えば教会の方が人数も上だし、何もかも負けている。改めて考えると、こんなので勝てる訳が無かった。悲しい現実が俺を打ちのめす。
協会に来たのは、リズの紹介もある。それとリズも魔法体系に組み込んで信者の獲得という下心もある。
リズは見た目はそこら辺の神より良いからな。邪神は芸術系の美だから、例外としても人が好きな容姿のトップは間違いなくリズだろう。それは俺が自信もって言えるわ。
「ルシファー様と……その奥方様ですか。ここに来られるとは。珍しい事もあるものです」
「久しぶりだな。今はお前がトップか」
「相変わらず時間の感覚が可笑しいですね。最後に会ったのが30年以上前ですよ。貴方と直接会ったことがある人は少ないですから。そういう人が上にいけてしまうのは仕方がない事ですよ」
「そうか。で、今日はちょっと嫁も体系に組み込もうと思って」
考え込む協会の長。俺がリズから逃げ回っていた頃に出会った若者だ。流石に今も歳は重ねてはいるが、俺の加護の恩恵を直接受けた甲斐があったのか、まだ二十代と言われても通用するぐらいの容姿だ。やはりね、魔法の威力が上がったり、長寿が約束されるならって入ってくれる信者は多い。隠しているが教会の信者でも入れるからな。貴族とかが黙って入っていることもある。
「有難いことですが、属性は何になさる予定で?」
「聖と闇。前者は邪神より上だ。後者は俺が居るが、アザゼルより出力は上だし申し分ないと思うぞ」
「では、そのように。奥方様、こちらの魔法陣へお乗りください」
リズがコクリと頷き、魔法陣に乗る。お前は人見知りを少しは治した方が良いぞ。……いや、俺が嫉妬するな。やっぱりやめとこ。レヴィアタンを大罪から降ろしたくないしな。俺は大罪じゃないし。別になりたくはないからな。
特に何事も無く儀式は完了した。ぶっちゃけここは大した事は無い。この後の方が面倒だ。俺らには関係ないが、詠唱とか考えたり、新たな属性が使えるようになったことを周知させる必要がある。本当にお疲れ様。頑張ってね。
「折角だから、加護を掛けておこう。……酒飲みすぎだな。気持ちは分かるから治しておく。今後はなるべく控えろよ」
「ルシがするなら私も」
リズは聖気を協会本部の建物中に撒き散らす。雑にした割には結構な人がその恩恵を受けている。
下が狂乱の嵐が起こっている。ノリでそんなことをするな!俺にはノーダメだから良いけど、割ととんでもない事をしてるからな、お前!
「御二方、ありがとうございます。先ほどの魔法陣にお乗り下さい。転移の術式に書き換えておきました」
「流石だな。仕事が早い」
頼れる部下ですわ。さっさと逃げたいが、聞きたい事があるので扉を隔離しておいた。あまり長時間は出来ないが、ひとまずこれで大丈夫だろう。
「そうしたいが聞きたいことがある。七災厄についてだ」
「ふむ……。あまり参考になるかは知りませんが、一応私が知る範囲でよろしいなら」
軽く事情を説明しておく。長は頷くと話してくれた。
「狂戦士病は知ってますよ。あれは魔法使いも感染します。感染する確率は低いですし、悪化することはほとんど有り得ませんが、厄介な事は変わりません」
「発生原因とかって分かるか?」
「いえ、アルカディア教がある程度信仰されていれば発生はほぼしない事と、他の神でも強く信仰されていれば感染する事は少ないそうです。個人的には悪魔関係と思いますが、該当する大罪は居ませんし。大罪以外の悪魔がここまでの事を出来るかという疑問はあります」
「邪神を信仰していると予防になるのは、悪魔関係だから信仰されていれば邪神の影響下にあるから比較的安全になるという推理か。大罪ぐらいしかこれは起こせんのは事実だし、悪魔が第一候補なのは分かる。まあ、でも悪魔は違うな」
「そうですね。動機が無いですし、規模から考えても無理でしょう」
大罪が無理な時点で悪魔の線は消えた。元から分かってはいたけど、こうやって確認は大事だ。見落としがあるかもしれないからな。
「ところで、リーゼロッテ様の聖気で解決は出来ないのですか?」
「見てからの判断だけど。進行していないなら、そこまで難しくは無い、と思う」
「なるほど。根本的な解決は難しそうですし、原因が分からない以上は難しそうですか……」
「連絡会に話は通せないのか?」
「あちらとは別に極端に仲が悪い訳では無いですが、あくまで別組織ですし、こちらが貴方を一番上にしていることを快く思っておりません。そもそも今の上の人たちの内、全部の災厄を知っている人間がいるかも疑問です。全てを知っていて七災厄としたのではなく、数が七になったから七災厄と彼らが言い出したのが発端ですし。大罪とかと同じ数だから言い出したんですかね……」
溜息をつきたくなる。ある意味ではあるが、教会の連中よりも面倒だ。何故把握をしていないのか。把握ぐらいしとけよ……。なんで一番わかる筈の邪神すら把握出来ないんだ?隠すのは結構だが、身内にも伝わって無いなら七災厄とか言う意味が無いと思うんですが。馬鹿なの?アイツら。
急ぎでは無いとはいえ、どうしたものか。出来れば、一つぐらいは解決まではいかなくてもある程度の情報を集めときたかったわ。まさかここまで苦労する事になるとはな。というか、本当に残り二つもあるのかよ。不安になるわ。
そこでリズが帰りたそうにしていたので、帰る事にする。……こういう場面を何度も見て思うけど、コイツは聖女時代の時はどうしてたんだ。元聖女なんだから多少は取り繕う事も出来た筈だろ。どうだったかな。出会って速攻殺された場面が強すぎて、他の事を覚えてないんだよなー。
多少は改善した方が良いと思うぞ。幾らなんでも酷すぎる。
「じゃあ、またな。これからはちょくちょく顔は出すから」
「有難い事です。遅くなりましたが、結婚おめでとうございます」
「おう、ありがとな」
俺たちは用意してくれた魔法陣に乗って移動した。街から離れた場所にある草原だった。あまり遠くはやはり難しいか。いや、あの一瞬で出来たなら世界としては一流といっても過言ではないのか?基準がいまいち分からんな。比較対象が世界有数の強者だから分からんな。
「ルシ。どうするの?」
「悩み中」
「そう、一応言っとくけど、眠り姫は会いに行ったことがあるわ」
あっ、そういえばリズに邪神からの話するの忘れてたわ。ごめん、それは俺のミスだわ。
「どうにかできそうか?」
「無理ね。私が女性だから入れただけみたい。貴方でも近く行ったら速攻で眠る羽目になると思うわ」
無理か。リズでもどうにもできそうに無いか。
そもそもの条件がだりぃ。ロマンスプリンセスと言われているだけあって、王子様のキスで目が覚めるとかいう童話チックなんだが、くそ迷惑なことに周囲の人間を問答無用で眠らせるメンヘラちゃんだ。……リズは何故会えたんだ?男女関係なく、無条件で眠らされる。俺も一度行ったが死ぬまで眠らされた。
色々と試したが、コミュニケーションすら取れなかった。メンヘラの琴線に触れたものでもあったか?
「貴方に逃げられていた時に行ったの。暇みたいで会話に飢えてたみたい」
そっと目を逸らす。ごめんなさい。
目を逸らした先に変な奴が見えた。アザゼルが部下と一緒に走ってきた。
「ルシファー!探したぜ!お前に頼みたいことがある」
「すいませんルシファーさん。これは
どうせ大したことじゃないんだろうな。そんな気がする。絶対に面倒くさいやつだ!
「一応聞く。何?」
「指輪をまた作ってほしい!嫁たちに頼まれたら俺は……」
「他の堕天使達も欲しがっている有様です!どうかお力を!」
思わずリズと顔を見合わせた。リズは不思議そうな顔をしていた。
分かってないんかい!えっ、この流れって指輪を作る流れ?
しかも、あれじゃん。リズに作った指輪の説明をさせられる流れじゃん!
俺は心から逃げたいと思った。アレは一生に一度だから出来た代物だ。なんで、アザゼルとか他の連中の為にやらないといけないのか。
「お前は出来ないにしても、俺が作ったのを近くで見てたんだからアドバイスぐらいは出来るだろ」
「見てたけど、権能を定着させることを考えていたからな。指輪本体の作り方は難しいが出来るが、宝石選びだとか、完全不滅の存在は作れない。お前は誇って良いのか知らんが、指輪作りとしては世界に名が知られたからな」
「え?なんで?」
「あれ?……お前、知らんかったのか。あの聖者が新たなプロパガンダの一環で、あの指輪云々を広めたぞ。アイツ多才だな。宗教画とはいえ、クオリティー高い絵画を作ってたぞ」
「……えっ」
ごめん、理解したくない。マジで意味不明だわ。
ちょっと世界ー。もうちょっと手加減してよねー。