GOD EATER ~堕ちた救世主~   作:elsnoir

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本来次回と一つにまとめるつもりでしたが、分割しました。


9話 騒がしき平和に裁きを

★エントランス

side:心葉

 

「えっ!?祭りやってるんですか!?」

 

 唐突に聞いたことだった。本日外部居住区で小さな祭りが開かれてるそうだ。榛名が近いうちにイベントみたいなものがあるといっていたが今日だとは思っていなかった。

 

「ああそうなんだが、俺たち第一部隊は行けないぞ」

 

 コウタが言った。

 

「な、何でですか…?」

「これ…」

 

 コウタが一枚の紙を差し出した。それは他のフェンリル支部との会議で自分たち第一部隊が参加することになっているのだ。

 

「そ、そう…ですか…」

「まあ、終盤くらいは行けるだろう」

 

 心葉がシュンと暗くなった。

 

「とりあえず、行こうぜ。早く行って帰ってくれば行けるから」

 

 そう言ってコウタが歩き出した。

 

 

★外部居住区イベントエリア

side:榛名

 

 榛名はイベントエリアで子供たちを連れてコンサートを見ていた。芦原ユノまでとは言わないが有名な人が何人も登場している。どれもテレビでよく見た人たちだ。歌手もいればコメンテーター、お笑い芸人など数々の有名な人が集まっていた。

 

「すごい…」

 

 榛名は感動していた。見ることのないと思っていた人たちが目の前に集まっている。子供たちも面白がってみている。

 

「…心葉君も連れてきたかったな」

 

 ふとそんなことを言っていた。深い意味はない。ただちょっとだけ気になった。今頃どうしているだろうか。

 

 

★訓練場

side:心葉

 

「特殊装備……ですか?」

 

 会議から帰ってきた後、リッカに呼ばれ何もない訓練場に呼ばれていた。

 

「そう。これ博士からの提案なんだけどさ、ちょっと使ってみてよ」

 

 そう言って渡されたのは小さなグローブに小さな四角い筒がついたものだった。

 

「…なんですか?これ」

「アンカーランチャー。これ説明書」

 

 そして数枚の紙を渡された。その紙には大量の文章と図で説明された画像がいくつかあった。簡単にまとめるとアンカーの先にはフックがついていて、そのフックはアラガミにも刺せる。アンカーを飛ばし何かに突き刺しそこに飛ぶ。これで立体的な戦闘が可能になるということだ。グローブの手のひらと人差し指と中指の第二関節のところに小さなボタンがついていた。手のひらのボタンはアンカー射出。人差し指のボタンはワイヤー引き寄せ。中指はアンカーを外すボタンだ。

 

「えーと…これをこうして…」

 

 アンカーを左手につけ、アンカーを壁に飛ばしてみた。アンカーは鈍い音を鳴らし壁に突き刺さった。アンカーを刺したら次はワイヤーを巻く。

 

「これで…うわぁっ!?」

 

 アンカーにつなげられたワイヤーは巻く力が強く、心葉の体は簡単に飛んだ。

 

「こ、これ…うまく使えば…」

 

 壁に張り付きながらつぶやいた。その姿はまるで昔の映画にいた蜘蛛男のようだった。

 

「おおー。初めてにしちゃ、いいんじゃないかな?」

 

 リッカも納得していた。

 

「で、これで…」

 

 ガキンという音を鳴らしアンカーを外した。すとんと着地した。

 

「うまく使ってね。私、神機のメンテするから、じゃあね!」

 

 リッカが背を向け、走り出した。

 

「…これ、日常でも使えるかな?」

 

 手に付けられたアンカーを眺めながらつぶやいた

 

 

★エントランス

side:ヒバリ

 

 ヒバリは今カウンターで待機していた。特にアラガミが現れたという連絡も来ない。

 

「ずっとこんな時間が続くといいな…」

 

 誰もが望んでいることだ。

 

「…でも、続かないんですよね…」

 

 そう言って手元のターミナルに目を向けた。ターミナルにはエリアマップが表示されている。そのマップの一部分が一瞬だけ赤くなった。

 

「っ?」

 

 赤くなったところは具体的にはわからないが、アラガミ装甲壁のすぐ近くだった。

 

 

★外部居住区イベント会場

side:榛名

 

 もうイベントも終盤だ。会場の盛り上がりもピークだ。司会者が叫んだ。最後の最後で大物の登場だと。そして轟音が響いた。

 

「っ!?」

 

 轟音が響く場所がおかしい。普通会場から響くはずだが、轟音は背後から聞こえた。その後誰かの悲鳴が聞こえた。その悲鳴にこたえるかのようにさらに悲鳴が上がった。

 

「何、何が起きてるんですか!?」

 

 榛名は状況がつかめずにいた。周りの人は逃げろ逃げろと叫び、走っている。人が少なくなったところで状況がつかめた。視線の先に鈍色に光る機会の塊が見えた。一時期テレビでも話題になった、人類の希望の一つ。神機兵がそこにいた。

 

「…っ…走ってください!!」

 

 子供たちに声をかけ、走り出した。

 

 

★訓練所

side:心葉

 

 アンカーをうまく扱えるように、何度も壁に刺し、そのたびに飛んだ。20分くらいの練習でうまく扱えるようになった。ワイヤーを引き寄せながら、アンカーを外し、跳躍することができるようになったりした。

 

「よしっ」

 

 小さくガッツポーズをし、訓練場を後にしようとした。次の瞬間、

 

『緊急事態発生!!外部居住区に多数の神機兵が出現、ただちに向かってください』

 

 スピーカーからヒバリの声が聞こえた。

 

「そんなっ!今はイベント中なんじゃ!!」

 

 市民が集まる中、神機兵の襲撃。かなりの被害が予測される。

 

「心葉、すぐ行きます!」

 

 訓練所をすぐに飛び出し、神機保管庫から自分の神機を乱雑に取出し、走り出した。

 

 

★外部居住区市街地

 

「よっ…とっ」

 

 アンカーを壁に刺しては巻き上げる途中で外し、浮遊している状態からまたアンカーを打ち出しては壁に向かって飛び、そして巻き上げてはアンカーをは外してを繰り返している。これで高速で動くことができている。スタミナも消費しないですむ。ただ、失敗した時のダメージは大きい。

 

「…早く…もっと…早く!」

 

 

side:榛名

 

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

 

 子供たちは先に逃がし、今は自分で神機兵のおとりになっている。今子供たちは避難シェルターにいる。

 

「ここまでくれば……」

 

 榛名は建物の物陰に隠れていた。これで安堵できる。そう思った瞬間、すぐ近くで轟音が響いた。自分の真後ろに神機兵がいた。

 

「…ぁぁ」

 

 声が出なかった。本来希望となるはずの機械が今は絶望を振りまく災厄の機械となっている。

 

「ォォォ!!」

 

 神機兵が声を上げ武器を振り上げた。これから殺されるという恐怖で動けなかった。足が動かない。死ぬ。そう思った。これからこの神機兵に叩き潰される。そして神機兵の巨大な武器が振り下ろされた。

 

「……ごめんなさい…」

 

 ただ謝ることしかできなかった。子供たちに、そして心葉に。

 

 

■次回予告

 

 僕は守るものを守れるなら自分がどうなっても構わない。僕が神機を手にした時からその覚悟は決めていたから。

 

次回「意思/暴走」

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