GOD EATER ~堕ちた救世主~   作:elsnoir

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10話 意志/暴走

 神機兵の巨大な武器が振り下ろされた。生存本能が働き、目をつぶってしまった。それでも殺されることは変わりなかった。

 だが、いつになっても衝撃も痛みもなかった。恐る恐る目を開けてみた。目の前には小さな黒い影があった。

 

「何で……ここに…いるん…ですかっ!?」

 

 心葉が神機で神機兵の一撃を受け止めていた。ぎしぎしと嫌な音が響く。

 

「ぅ…ぁあ……」

 

 心葉の口から小さな悲鳴が聞こえる。

 

「……ぐっ…このぉっ!!」

 

 受け止めていた武器を地面に受け流し、隙が現れたところを、神機を横に薙ぎ神機兵の足を砕いた。情報通りもろかった。足を失った神機兵は後ろに倒れた。その神機兵に神機を突き刺し、とどめを刺した。

 

「はぁ…はぁ…はぁ………どうしてここにいるんですか!?」

 

 心葉が叫ぶ。

 

「…心葉君……」

 

 二度と見ることができないと思っていた幼い顔に、二度と聞くことができないと思っていた声。

 

「心葉君っ!」

 

 自分は心葉に抱き着いた。2度と会えないと思っていた少年にまた会えたことが本当にうれしかった。心葉の小さな体がいつもより大きく、たくましく見えた。

 

「…………」

「…ごめんなさい……子供たちを助けるのに……必死で…」

「…お願いです。榛名さんがいなくなったら、子供たちはどうするんですか…」

「…ごめんなさい…」

 

 心葉が榛名の手を取った。

 

「早く行きましょう。あとは僕たち神機使いに任せて、シェルターに避難してください」

「はいっ!」

 

side:心葉

 

 

 人気のない外部居住区を榛名の手を引っ張りながら走った。道中小型の神機兵も現れた。

 

「はっ!」

 

 神機を振り回し、襲いかかる神機兵をなぎ倒し、榛名を守りつつシェルターに移動していた。

 

「もう少しでシェルターです!」

 

 これで榛名を避難させることができる。そう安心した。が、その安心は簡単に砕かれた。

 

 

★極東支部エントランス

side:ヒバリ

 

 現在極東の神機使い、ブラッド、クレイドルが総員で神機兵の討伐にあたっている。だが、皆がどういった状況か全くつかめない。理由は先ほどから強力なジャミングが発生している。マップの状況がわからず、通信も取れる人が少なからず出ている。

 突然マップの外部居住区に赤い波紋が広がった。

 

「そんな!!」

 

 この波紋は感応波を表している。ブラッドではない。アラガミの感応波だ。ジャミングのおかげでなんのアラガミが来たかすらわからない。そしてこのことを伝えても誰に伝わるかわからない。それでも伝えなければならない。それがオペレーターの仕事だ。

 

「緊急事態発生!!外部居住区に感応種が現れました!!みなさん注意してください!!」

 

 感応種は皆強力だ。生半可な戦力では倒すことは厳しい。そしてこの極東で唯一ブラッドアーツを取得していない心葉だけが一番感応種との戦闘が不利になる。

 

 

★外部居住区

side:心葉

 

 シェルターまであと50mまで来た。もう少しだ。が、

 

「うぁっ!!」

 

 榛名が悲鳴を上げた。

 

「榛名さん!?」

 

 榛名を見た。彼女の左腕に冷気をまとった巨大な羽が突き刺さっていた。その羽は強烈な爆発を起こした。

 

「きゃぁっ!!」

「うわっ!!」

 

 二人とも爆風に飲まれ吹き飛ばされた。心葉の手は今も榛名の手を握っている。当然ともに吹き飛ばされる。ゴロゴロと転がり、廃墟にぶつかり止まった。

 

「榛名さん!!」

 

 榛名に向けて叫んだ。

 

「……………」

 

 反応がない。

 

「ッッッッッ!!!!!」

 

 今自分の目の前で死んでいった神機使いの姿が浮かんだ。何もできずただ彼女の未来を消してしまった。今もそうだ。自分は彼女を救えず未来を消した。そして子供たちの未来も消しかけた。

 振り向くと別の廃墟の上に青い鮮やかな羽をもったアラガミがいた。シユウ種によく似ているが堅そうな体はしていない。全く知らないアラガミだった。だが、そんなことはどうでもいい。今の自分には怒りと、殺意とそして目の前の敵をすべて殲滅できる力が湧き上がってきた。神機をさらに強く握った。鮮やかなアラガミに加え、さらに神機兵が姿を現した。今度は小さい神機兵だけでなかった。真っ赤に染まった神機兵もいた。

 

「………くも…………よくも、榛名さんを!!!!!」

 

 心葉の目にきれいな空色は消え、紅色に染まっていた。

 

 

★極東支部エントランス

side:テルオミ

 

「な、なんですか!?これ!!」

 

 パソコンの外部居住区のマップが一瞬にして真っ赤に染まった。これ全て何かの偏食場パルスによって真っ赤に染まっている。

 

「き、緊急事態発生!何らかの偏食場パルスが発生!みなさん大丈夫ですか!?」

 

 この声に防衛班のタツミが答えた。

 

「こっちは大丈夫だ!けど、なんか体が変だ!」

「変!?どういうことですか!?」

「いや、ただ力がみなぎってくる感じがする!」

 

 パソコンを再度確認した。どうやら神機使いのステータスに変異が発生している。どれもいい方向に。

 

「こ、これは……これを好機と見ましょう!」

「ああ!!」

 

 通信が途切れた。このまま何もないことを祈るだけだった。

 

 

★外部居住区

side:心葉

 

「……倒すッ!」

 

 神機を握る手に力を籠め、赤く染まった神機兵に肉薄した。神機兵がこちらに気付き、武器を振り上げた。だがそのころには心葉は自分の間合いに入っていた。

 

「はぁっ!」

 

 神機を横に薙ぎ、神機兵の足に槍をたたきつけた。正確には切りつけた。神機兵の足はバターを切るように体から離れた。

 

「ゥオ!?」

 

 神機兵の体が崩れ、地に叩きつけられた。

 

「ふっ!」

 

 心葉は軽く跳躍し、神機を構え神機兵のコアめがけて突き刺した。その直後、小型の神機兵が迫ってきた。

 

「くっ!」

 

 神機を素早く神機兵から抜き、迫りくる小型の神機兵に向けて投げつけた。神機は神機兵の顔面を貫いた。

 

「じゃまっ!」

 

 神機兵を蹴り飛ばしながら神機を握り引き抜いた。

 

「次っ!!」

 

 まだ数多くの神機兵がいる。そして見たことのないアラガミ。今自分はそのアラガミに一番殺意を覚えていた。そいつが廃墟から降り自分の目の前に立った。

 

「……殺すッ!!」

 

 左手につけていたアンカーを鮮やかなアラガミ向けてはなった。アンカーは高速で顔面に突き刺さった。

 

「ォォォッ!?」

 

 そしてワイヤーを巻き上げ、接近した。心葉の神機の先端には蒼いエネルギーの様なものが集中していた。そして胸部に槍を突き刺した。

 

「シャァァァァア!?」

 

 蒼い光が一層強くなる。

 

「消えろ!!!」

 

 心葉が叫ぶと同時に蒼い光がアラガミの内側から爆発した。アラガミの上半身が肉片となって飛び散った。返り血でコートや髪が赤くなる。本当に血なのかどうかわからないが。鮮やかなアラガミは倒れ、動かなくなった。

 

 

side:詩音

 

 神機兵を殲滅しているとき、突然体に悪寒の様な何かが走った。偏食場パルスではなく、もっと違う何か。少し違う気がするが、自分がブラッドアーツに目覚めた時と同じような感覚。

 

「これって!?」

「隊長!まさかブラッドアーツ…」

 

 シエルもナナもギルバートも感じたようだ。

 

「ブラッドアーツを唯一習得していない神機使い…心葉!?」

 

 極東支部で唯一ブラッドアーツを習得していないのは心葉だけになる。今ブラッドアーツを目覚めさせるカギとなる自分は心葉の近くにいない。何らかの影響ですでにブラッドアーツに目覚めていた。という可能性が高い。

 

「…なんか嫌な感じがする…気分が悪いっていうのかな…」

 

 ナナの表情が曇った。ナナだけではない。シエルもギルバートも表情を曇らせていた。

 

「ああ…なんなんだこの感情……」

 

 詩音も同じだった。この悪寒が走ってからずっと胸がズキズキする。少し苦しい。

 

「この感じ………感情の変化…?」

 

 シエルの言葉に3人が振り向いた。

 

 

★エントランス

side:ヒバリ

 

 時同じくしてエリア全体にも影響が出ていた。

 

「な、なにこれ……偏食場パルスがさらに増大!?神機使い全員にバーストレベル3強制発動!?」

「リッカのリンクサポートか!?」

 

 通信に反応したタツミが言った。

 

「違う!リンクサポートしようにも神機が動かない!!」

 

 リッカがターミナルを操作しながら答えた。

 

「みなさん!急いで原因を見つけ、この偏食場パルスを止めてください!!」

 

 このままさらに偏食場パルスが増大すれば、何が起こるかわからない。何かが起きる前に止めなくてはならない。

 

 

★外部居住区

side:心葉

 

 自分の手によって無数の神機兵が瞬く間にバラバラになっていく。神機兵のガラクタが積まれていく。神機を振り払えば粉々になっていく。そんな光景を自分の内側から見ていた。体が言うことを聞かない。自分の体はただ目の前の敵を蹴散らしているだけの存在だった。

 

(……僕は……どうなるの…?)

 

 ただ消えていくアラガミと神機兵を意識で見つめることしかできなかった。体の感覚も分からない。ただ朦朧とした意識で世界を見つめていた。

 

 

襲撃から1時間後、アラガミを殲滅した。自分の体はボロボロでところどころ地肌が見え、血がにじんでいる。コートに関しては穴だらけになっていた。

 

「…はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……っ!榛名さん!」

 

 榛名のことを思い出し、横たわる彼女に駆け寄った。

 

「榛名さん!榛名さん!答えてください!!榛名さぁん!!!!」

 

 必死に声をかけた。

 

「…………んぁ……ぁう……」

 

 傷口が痛むのか榛名が苦しそうにしていた。

 

「…よかった……急いで治療しないと!」

 

 コートの内ポケットから奇跡的にきれいに残っていた小さな救急箱を取り出し、応急処置をとった。大きな傷はなく、羽が突き刺さったことと凍傷で済んだ。念のため極東支部で適切な治療をしてもらおうと思い、榛名を担ぎ、走り出した。

 

 

 数時間後目を覚ました榛名は寒いと言いすぐに温かい紅茶をもらっていた。ちなみにエミール特製の。

 

「あの、大丈夫ですか…?」

「はいっ、ちょっと痛いですけど大丈夫です」

 

 にっこりとほほ笑む。彼女の左腕には包帯が巻かれている。少し赤くにじんでいる。突き刺さった羽と凍傷によるものだ。彼女は大丈夫と言っているが、本当は我慢しているのだろう。自分に心配させないため。

 

「少し大人しくすれば、何とかなりますから」

「そう…ですか…あ、あの、僕にやれることがあるなら言ってください!力になりますからっ」

「あ…じゃあ、その…できれば、ご飯食べさせてくれませんか…?」

「えっ…榛名さんに…ですか?」

 

 少し顔を赤くしこくんと頷いた。近くにはお粥がある。看護師が先ほど出したものだ。心葉はお粥とレンゲを手に取り、お粥をレンゲですくい、榛名の口に運んだ。

 

「あーん…でしたっけ」

 

 心葉の問いに榛名が答えたが、何か言いたそうだった。

 

「あの…もしかしてだめでしょうか?」

「その…熱そうで……その…冷ましてほしいな…なんて」

 

 要約すると息を吹きかけろという意味だろうか。そう思い榛名の表情をうかがいながらレンゲですくったお粥に息を吹きかけた。榛名は特に嫌そうな表情をしなかった。むしろちょっとだけ嬉しそうな表情をしていた。その後お粥を食べさせた後、榛名は横になった。それが体を治すのに一番いい。

 

「榛名さん、おやすみなさい」

「はい…あの…心葉君」

「はい」

「…………………ます」

 

 榛名がかすれそうな声で言った。なんていったかよく聞こえなかった。

 

「?榛名さん、なんですか?」

「…なんでも…ありません………おやすみなさい」

 

 今日は聞こえなかった言葉を訪ねる気はなくなっていた。でも、何か感謝じみた言葉だったような気がした。

 

 

■次回予告

 

 降り注ぐ冷たい刃は僕の身を凍えさせる。それでも目の前の現実に向き合わなければならない。だから僕はここにいる。いつか雨は止む。この冷たい刃と僕が降らせている血の雨は。きっと止むってそう信じている。

 

次回「斬雨(きりさめ)」




勝手ながら次回予告を付けさせていただきました。

リクエストがあった件ですが、本当にすみません!その次にさせてもらいます。本当にすみません。ケースが難しすぎて…
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