GOD EATER ~堕ちた救世主~   作:elsnoir

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11話 斬雨(きりさめ)

★アラガミ装甲壁 外部エリア

side:心葉

 

 この日は雨だ。空には分厚い入道雲が見える。神機を握る手が濡れ、何度も握り直している。なぜ、神機を握っているかだって?だって目の前に堕ちた者(フォールマン)がいるからだ。

 

「………っ」

 

 神機を構え、戦闘態勢に入った。目の前の堕ちた者の右腕は神機と同化し人の腕らしきものは見えない。それは巨大な剣のような武器だった。それを肩に担ぎ立っている。いかにも一撃が重そうに見える。この手のタイプは火力型と心葉は呼んでいる。動きが少し遅い代わりに一撃が強力である。一撃でビルをたたききることも出来る。心葉とは少し相性が悪い。だが、動きが遅い分丁寧に立ち回り、一瞬のすきを見つけ突き刺せば勝てる話だ。

 堕ちた者が武器を構えだした。

 

「…来るっ!」

 

 堕ちた者が動き出した。武器を引きずりながら高速で駆けてきた。

 

「…許してくださいねッ…」

 

 心葉は地を蹴り、堕ちた者に肉薄した。心葉と堕ちた者の接近する速度は圧倒的に違う。たった3秒でお互いがお互いの間合いに入った。堕ちた者が振りかぶる。そして振り路される武器に対して、地を蹴り横に避けようとした。だが体は横ではなく下に倒れて行った。

 

「なっ!?」

 

 雨で地面がぬかるみ、ちゃんと地を蹴ることができなかった。隙だらけになった心葉に、堕ちた者が重圧な一撃が振り下ろした。武器を横に構え受け止めようとしが、まともな体制がとれていないため、受け止めることができず簡単に吹き飛ばされた。

 

「うわぁっ!!」

 

 心葉の軽い体はゴロゴロと転がり、手を地面にあて吹き飛んだ体を止めた。コートや顔が泥だらけになった。

 

「ぐっ!」

 

 神機を握り直し、再び肉薄した。神機に力を込めた。その時、槍の先端が分かれ、さらに鋭い矛先が現れた。これがチャージスピアの本当の姿。これにより威力がまし、さらに間合いも広がる。

 

「一気にっ!」

 

 神機を握る手にさらに力を込め、駆けた。堕ちた者が再び構える。

 

「はあっ!!」

 

 神機を振り上げ、接近した。堕ちた者も同時に武器を振り上げ、槍を弾こうとした。心葉は反撃が来ると予測していて、一度武器が届かない距離までバックステップをし、回避した。空振りをし、隙ができた堕ちた者に神速の突きを繰り出した。神機は深々と胸部に突き刺さった。だが心臓は貫いていない。まだ甘い。そう思った矢先、右腕をつかまれた。

 

「!?」

 

 心臓を突き刺してなくても致命傷のはず。それでも目の前の堕ちた者は平然としていた。堕ちた者は突き刺さっていた神機ごと心葉を投げ飛ばした。

 

「ぐあっ!」

 

 体が地面にたたきつけられる。何度も転がり近くにあった岩にぶつかり、ようやく動きが止まった。

 

「こほっ…こほっ………血…?」

 

 自分の手元と地面が赤く染まっていた。どうやら内臓をやられたようだ。視界が少しだけぐらつく。神機を握り直し再び接近した。二度と一撃を喰らうものか。そう思った。ぬかるんだ地を踏み、間合いに入った。そして槍を構え突き刺そうとした。次の瞬間、堕ちた者が地面を蹴った。空振りでもなく、心葉を蹴ろうとしたわけでもない。だがそれが狙いだった。堕ちた者が蹴った地面から泥が飛び散った。その泥が目に視界を奪った。

 

「っ!?」

 

 前が見えない。それが一瞬の命取りで最大の隙だった。堕ちた者が隙のできた心葉に強烈な横なぎをした。

 

「ああああああああああああああああ!!」

 

 奇跡的に握っていた神機の柄の部分に武器が当たり直撃は免れた。それでも威力はかなりのものだ。体が吹き飛ばされ、はるか後方にあった、アラガミ層後壁にぶつかった。

 

「かはっ」

 

 血を吐き出した。視界がゆがむ、意識が朦朧とする。体全体が痛む。足元がおぼつかない。

 

「ああ…っ………」

 

 死ぬ。そう直感的に思った。悲鳴を上げる体に鞭をうち、走り出した。ここで下がるわけにはいかない。下がれば無数の命が危険にさらされる。堕ちた者がゆらりゆらりと近づく。間合いに入った堕ちた者が再び武器を振るった。

 

「もう…やられる…もんかっ!!」

 

 心葉も神機に力を込め、振り下ろした。神機と武器がぶつかり、みしみしとひびが入るような音を響かせた。負けていられないとさらに力を込めた。次の瞬間、ガラスが砕けるような音が響き、一瞬にして神機が軽くなった。

 

「ッッッ!!!!」

 

 ちらりと神機を見ると、白い破片が空を舞っていた。自分の神機が力負けしたのだ。

 

「くっ……そぉ!!」

 

 柄と砕けた神機パーツだけになった神機を全力で振り、堕ちた者の足を叩いた。堕ちた者は体制を崩し、後ろに倒れこんだ。これが最後だ。そう思い、空を舞っていた一番大きく、鋭い白い破片をつかんだ。チャージスピアの先端に隠されている矛だ。倒れこんだ堕ちた者を踏みつけ動きを止め、破片の先端を心臓部に突き刺した。鮮血が飛び散る。生暖かい血が顔にかかった。堕ちた者は体を一度震わせ、動かなくなった。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ………あぅっ…」

 

 膝の力が抜け、心葉も倒れこんだ。コートの中から回復錠を取り出し、口の中に放り込んだ。あくまで応急措置でしかないが少しだけ体が楽になった。

 

「…………ごめんなさい……」

 

 自分の隣を見て、横たわる死体を見て涙があふれた。自分が生き残る結果がこれだ。彼らを殺さないと生きていけない。自分が殺される。これが現実だ。空が泣くかのように雨は土砂降りになった。

 

 

★外部居住区

 

 心葉は土砂降りの中外部居住区の道を傘をささず一人歩いていた。コートが雨を吸い重くなる。ただでさえ足が重いのに動かなくなりそうだ。

 

「心葉君?」

 

 数分くらい歩いたところで声をかけられた。自分が知っている数少ない外部居住区に住んでいる女性。暁榛名だった。

 

「は…るな…さん?」

「心葉君!?」

 

 榛名が傘を捨て駆け寄ってきた。

 

「大丈夫ですか!?」

「僕…のことは…いいですから…」

 

 口があまり開かず、うまく声が出ない。

 

「そんなことありません!」

 

 榛名に手を引っ張られ、教会の中に連れて行かれた。

 

 

★教会 孤児院

 

 榛名に教会に連れて行かれ、すぐに手当てを受けた。榛名の手際はよく、治療はすぐ終わった。心葉は外傷だけでもかなりの大けがだった。頭、腕、胸部と体の至る所に包帯が巻かれた。手も絆創膏や包帯まみれになった。

 

「これでよし…」

「…ありがとうございます」

 

 榛名に一言お礼をし、砕けた神機とボロボロになったコートを手に取り立ち上がろうとした。が、

 

「今行っても外は土砂降りですよ?」

 

 そう榛名に言われ止められた。

 

「傘がなくてもいいとか言ってはダメです。心葉君が風邪を引いたら困りますから」

「…すみません」

 

 神機とコートを置き、椅子に座った。

 

「…なんで僕なんかを助けてくれるんですか?」

「何でって…」

「僕たち神機使いは外部居住区の方から見て、邪魔者。それでいてあなた達とは違う生活をしています。なのに何でここまでしてくれるんですか?」

 

 外部居住区では神機使いへの風当たりは強い。無数の人から冷たい目で見られる。それは生活環境、食糧その他もろもろ。外部居住区にはなく、支部にはあるものがそろっているからだ。

 

「それがどうしたんですか?私と心葉君が違う生活をしていても、同じ荒廃した世界を生きる人間です。私たちは心葉君たち神機使いにいつも助けてもらっています。この前の神機兵とアラガミの襲撃だって心葉君が助けてくれたじゃないですか」

「…………」

 

 言葉がでなかった。彼女は知らない。自分が何者か。自分が神機使いの中で最も最低な神器使いだってことを。

 

「…あなたは僕のことを普通の神機使いとしか見てないんですよね…」

「ううん。心葉君は私の命の恩人。それでいて私たちの救世主。そう見ています」

「…………僕はその救世主を殺す神機使いですよ…」

 

 唐突に発言したことに榛名が止まった。

 

「…僕は普通の神機使いとは違う。アラガミよりも神機使いや、アラガミ化した神機使い、堕ちた者に強く対抗できる特殊な神器使いなんです」

「………」

「……………僕は…もう数えきれないほど殺してきました。それでも普通の神機使い……救世主というんですか?」

「………はい」

 

 榛名の答えに心葉が凍りついた。

 

「……………心葉君は心葉君。人殺しでも救世主。心葉君が私や仲間を避けているのはわかります。でも私たちはあなたのことを必要としています」

「…堕ちた者を殺してもらうためですか?」

「そうじゃありません。人として神機使いとして仲間として、私たち住民の救世主としてです」

「………それが人殺しでもですか?」

 

 心葉の問いに榛名は力強くうなずいた。

 

「もし心葉君が邪魔な人なら、私は君を手当てしていません。それに心葉君のそばにいる同じ神機使いさんは、どうでしょうか?あなたを信頼して、そばにいてくれるじゃないですか」

 

 榛名の言うとおりだった。皆心葉のことを人殺しだと知っていても皆近くにいてくれる。いつの日にかアリサに自分が怖くないのかと聞いたことがある。それに対しアリサは怖くない。だって大切な仲間だからと答えた。

 

「………本当に…邪魔じゃないんですか…?」

「…当たり前です」

 

 そう言って榛名は心葉を優しく抱き寄せた。

 

「わわっ」

「…私は心葉君のことを信じてます。あの時私を救ってくれたのは心葉君でした。だから人殺しでも私たちのことを救ってくれる、救世主だと信じてます」

「………僕はいつ牙をむくかわかりません。そして救世主を喰らう者です……それでも僕を…救世主としてくれるんですか…?」

「はいっ」

 

 榛名がニコリとほほ笑んだ。彼女の微笑みが少しだけ気持ちを楽にさせた。

 

「…ありがとうございます」

「いえいえ………雨、止んだようですね」

 

 いつの間にか雨の音は消え、ステンドグラスから光が差し込んでいた。

 

「前にも言ったかもしれないですが、時間があったらまたここに来てくれませんでしょうか?」

「…僕でよければ、また来させていただきます」

 

 榛名のようにニコリと笑ってあげた。コートと神機を手に取り、扉を開けた。

 

「またね、心葉君」

「はいっ、またいつか」

 

 扉を開けると、数十分前の入道雲はどこかに行き、透き通った青空が広がっていた。

 

 

■次回予告

 

 未定




大分長らくお待たせしました。何かリクエスト(こんな話をしてほしい)等のことがありましたら、感想またはメッセージお願いします。極力答えられるようにします。リクエスト等で期待したような作品が出来上がらない可能性が高いのでそこはご理解お願いたします。
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