GOD EATER ~堕ちた救世主~   作:elsnoir

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14話 一つの過去

★エントランス

side:心葉

 

「またカナダですか?」

 

 受付で聞きたくない情報を朝一で聞いた。フランも申し訳なさそうに言っている。

 

「…出発は?」

「1時間後です」

 

 カナダ。過去に出張に行き、そこで自分の目の前で堕ちた者(フォールマン)に仲間を殺された。そこでまた堕ちた者が現れたという。また数多くの被害を出しているらしい。話によれば出会った神機使いは蜂の巣状態になって見つかるという。

 

「……エアポートで待機してます」

 

 

 一時間後、エアポートにヘリが到着した。心葉はヘリに乗り込んだ。パイロットはいつもお世話になっている機長と、おなじくお世話になっている副機長。乗ってすぐにまぶたが重くなった。到着にはかなりの時間がかかるというから少し寝ても問題ないと思った。彼らの操作ミスさえなければ次に目を覚ますときは、カナダ支部のエアポートになる。

 

「少し寝ます」

 

 そう告げて眠りについた。

 

 

★カナダ 旧市街

 

 少しと言っておきながら大分寝ていたようで、いつの間にかカナダに到着していたようだ。窓の外からはすたれた街並みが見えていた。

 

「?」

 

 心葉は道路で何かを見つけた。鈍く光る何か。目を凝らす。小さくてわからないが筒のような形をしている。嫌な予感がする。いや、正確には嫌な予感がしていた。そう思った時にはヘリに衝撃が来ていた。

 

「な、何!?」

「機体に損傷!墜落します!!」

 

 どうやらその筒らしき何かが攻撃を仕掛けてきたようだ。

 

「皆パラシュートは!?」

 

 機長が叫ぶ。自分は乗る際にちゃんとパラシュートは身に着けていた。アラガミが撃墜しに来ることもよくあるケースだ。

 

「私はつけています!」

「僕もつけています!!」

「じゃあ、脱出!!」

 

 足元にある神機を握り、ドアを蹴りつけた。バコォン!という音を鳴らしドアが落下していった。

 

「心葉、任務開始します!」

 

 ドアから飛び出した。横を見ると同じように機長も副機長も飛び出していた。

 

 

 

 墜落するヘリから脱出した心葉はそのあと正体不明の襲撃者に撃墜されることなく着地した。

 

「……あの一撃、きっと…」

 

 自分が予想にするに堕ちた者。事前情報にあった出会った神機使いは皆ハチの巣になって見つかるという情報で、銃撃戦が想定されると思っていた。

 

「……………行こう」

 

 旧市街を歩き出した。色のつかない信号機、引き裂かれた看板、割れた窓ガラス、飾るもののない店。どこも一緒だ。

 

「………いる」

 

 とん。どこからか音が聞こえた。少し遠いような近いような。かち。今度ははっきりと聞こえた。後ろからの音。何かが切り替わるような音。

 

「っ!」

 

 咄嗟に横に飛んだ。轟音が響き、自分がさっき立っていたところが爆発していた。飛んでいなければ今頃消し炭なっていただろう。

 

「……お出ましですね」

 

 銀色の髪が目立つ、重圧そうな筒状の武器を持った堕ちた者が廃ビルの2階の窓際に立っていた。右腕は筒状の武器と一体化している。大体の堕ちた者は腕と神機が一体化している。その堕ちた者が飛び降り、自分の目の前に立った。よく見ると筒の先端から煙が上がっていた。先ほどの爆発はこの堕ちた者の仕業だったようだ。

 

「…覚悟っ!」

 

 神機を強く握り、駆けた。同時に堕ちた者が武器を構えた。筒がこちらに向けられる。轟音と同時に筒というより銃口から砲弾が発射された。

 

「っ!」

 

 地を蹴り飛び上がった。靴が砲弾をかすめる。飛び上がった心葉は神機を構え、斬りつけようとした。横薙ぎで叩き、その後追撃で殺す計算だった。が、堕ちた者は後ろに一歩下がり、心葉の間合いから距離を取った。かちりと音が鳴った。堕ちた者の右腕からだろう。

 

「今度は…何を」

 

 銃口がうっすらと光りだした。エネルギーをためているような雰囲気だった。

 

「……なんだか…すごくやばそうな……」

 

 危険を感じ、走り出した。同時に堕ちた者も走り出した。銃口をこちらに向けながら並走していた。そして銃口から無数のオラクルが放たれた。

 

「ガトリング!?」

 

 自分の過ぎ去ったあとを無数のオラクルが貫いていく。これなら蜂の巣になる理由に納得がいく。が、そんなことを考えている暇はない。自分がハチの巣になるのかもしれないのだ。建物の柱や、がれきをうまく盾にしながら走り抜けた。銃口はずっとこちらを向いている。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、あれに、弾切れって存在しないんですかっ!?」

 

 かれこれ数分は走り続けているが、一向に弾切れを見せない。このまま走り続けても反撃ができない。スタミナが切れ、隙を突かれてハチの巣になるだけだ。何かこの状況を打開できる策を必死で考えた。がれきの陰に一瞬だけ隠れて、過ぎ去った堕ちた者の背後から奇襲。その案で行こうとしたががれきがない。がれきがあったところで、隠れてもそのままオラクルが貫通して打ち抜かれる。失敗案。こちらもアサルトに切り替えて、銃撃戦を展開。不可。あそこまで性能は良くないし、オラクルが切れる。

 

「いったいどうしろと!?」

 

 相手は簡単にまとめると、サブマシンガンぐらいの大きさでガトリング並みの連射性と威力を兼ね備え、弾は無限というチート性能の銃を持っている。それに銃相手で挑むのは問題があった。だが、一つ気づいた。

 

「銃…そいういえばバレット……」

 

 スナイパーのバレットで一つだけ使っていないバレットがあった。正確には訓練した時に使用を控えるよう頼まれたバレットだった。バレット名は空間制圧バレット・ノヴァと名付けられていた。この状況を打開するにはこのバレットしかない。何が起こるかわからないが、これに託すしかない。即座に神機をスナイパー形態に切り替え、

 

「空間制圧バレット・ノヴァ!」

 

 声を上げ、放った。がくん、と大きな反動とともに銃口から弾丸が放たれた。反動のせいで照準がぶれた。弾丸は標的をそれて、奥のビルの壁に突き刺さった。次の瞬間、巨大な爆発が発生した。爆発は堕ちた者を巻き込み、心葉を爆風で吹き飛ばした。

 

「うわああぁっ!?」

 

 どうりで使用を控えるようにと言われたわけだ。もし訓練中で使えば自分も爆発に巻き込まれていた。黒煙が晴れると、ボロボロになった堕ちた者が立っていた。

 

「まだ…でも、今ならっ」

 

 神機をアサルト形態に切り替え、突撃した。

 

「ッッ!?」

 

 堕ちた者が気づいたころには心葉は銃口の下にある刃を胸に突き刺していた。そしてオラクル弾を10発連射し、左足で蹴り飛ばした。そして神機をエッジフォームに切り替え、吹っ飛んだ堕ちた者に追撃した。刃を振り下ろし、右腕を切断した。異形と化した右腕から鮮血が噴き出す。神機を振るいさらに慈悲の無い一撃を叩きこんだ。

 

「はあっ!!」

 

 ボロボロになり、立つのがやっとの堕ちた者にさらに追撃を叩きこむ。ごろごろと転がっていく堕ちた者にとどめを刺すべく、神機をスナイパー形態に切り替えた。そして

 

「………………ごめんなさい」

 

 伝わるかどうかわからない謝罪をし、引き金を引いた。

 

 

 動かない堕ちた者を見て、涙があふれてきた。そして簡単な十字架の墓をつくった。いつものことだ。いつも堕ちた者を殺しては涙を流してきた。どれだけ殺し、どれだけ泣いて、どれだけ墓を建てたか忘れた。墓を建てたときに堕ちた者の首もとで光る何かを見つけた。

 

「………ロケットペンダント…?」

 

 開閉式の楕円形のペンダントだ。この中に写真を入れるのが一般的だ。その中の写真が気になった。きっとこの人には恋人や家族がいる。殺した人の過去を見るのはとても嫌気がさしたが、それ以上に自分の興味が勝っていた。いままでそういったものを見たことがなかったからだ。

 そっと手を伸ばし、ペンダントを手に取った。そしてそのペンダントをゆっくりと開いた。そこに一枚の写真が入っていた。そこに見覚えのある青年と少女がいた。銀髪の長身の男性と、桜色の長い髪の少女。そしてふたの部分に「Cecile Crown」と書かれていた。心葉は英語にかなり弱い。そのためすぐに読むことができなかった。

 

「…せ、し…れ……くろ…うん………」

 

 呼んだもののわからなかった。「セシレ クロウン」どこか知っているような気がした。もう一度読んだ。確かeの字でもuと発言するケースがあったと思った。

 

「…セシ……ル…っ!?」

 

 自分の知っている名が出来上がった。「セシル クラウン」。ここでお世話になった一人の神機使い。冗談だと思いもう一度ペンダントを除いた。写真には銀髪の男性、文字を読めばセシル クラウンの文字。

 心葉は自分の知っている人を殺した。いままで見ず知らずの人を殺していたが、今度は違う。自分のお世話になった人を殺した。恩をあだで返すと同じだ。

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 心葉は悲鳴を上げた。今までにない感情が自分を混乱させる。今まで以上の罪悪感と悲壮感がこみ上げてきた。

 

 

★極東支部 廊下

 

 心葉は極東に戻ると同時にすぐに自分に部屋に戻ろうとした。そこでアリサとであった。

 

「あっ、心葉君。おかえり」

 

 そう言って彼女が手を刺しのばしてきた。

 

「………っ」

 

 ぺしっ。

 

「えっ?」

 

 心葉は差し出された手を払った。アリサは突然の出来事に驚きを隠せなかった。

 

「…………ごめんなさい。今は一人にさせてください」

 

 心葉はそう言い残し、足早に部屋に戻って行った。その時の心葉の目にいつもの明るい空色はなく、深海のように深い青色があった。

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