GOD EATER ~堕ちた救世主~   作:elsnoir

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16話 怨念の刃

★荒野

side:心葉

 

 僕の人生は終わる。まだ希望のある人を無慈悲に殺していくだけの人生に終止符が打たれる。それで目の前の神機使いにも、僕にも一つの幸せが訪れる。向こうは仇がとれ、僕は死ぬことができる。お互いがお互いのためになる。それでいいはずだ。でも、僕はまたそのチャンスを無駄にした。

 

「…お前、何が殺してくれだ……」

 

 そう。僕はチャンスを無駄にした。僕は殺してほしかった。でも、僕自身は、生きていたいんだと思う。

 

「……神機を構えて…ふざけてんのかっ!!」

「…ふざけてるつもりなんて…一切ありません!僕は死ぬことを望んでいます!でも、僕の体はまだ生きることを望んでいる……だから死ねないんですよ」

 

 重い一撃を盾で押さえ止めた。一撃による衝撃で手が痛い。

 

「だったら、今ここで…眠らせてやる!!」

 

 神機使いは神機を振るい、心葉を吹き飛ばす。吹き飛ばされた心葉は空中で受け身を取り、着地する。

 

「お前がいなければ、今頃あいつらはっ!!」

 

 神機使いが高速で迫ってくる。重い神機を気にせず駆けてくる。

 

「救世主喰らい…お前が……シィを…セシルをッッ!!」

 

 シィとセシル。自分がカナダに行ったときにお世話になった神機使いだ。シィは堕ちた者によって殺された。セシルは堕ちた者となり、自分が殺した。

 

「シィさんはっ…あれは、単なる事故ですっ!」

「セシルは殺しただろう!!」

「確かに…確かにそうですけど…」

 

 事故。そんなたやすい言葉で済む話ではない。もう取り返しのつかないことになっているからだ。二度と帰ってくることのない命。どうしようもない現実がそこにある。

 

「人殺しにはわからないよなぁ!!仲間を殺される気持ちが!!」

「わかりますよっ!少しの間でも、仲間としてくれたシィさんが死んだときはっ」

「たった少しだよな!!長い間過ごしてきた仲間じゃないよな!!ええ!?」

 

 神機使いがさらに猛威を振るう。重い刃による一撃がさらに強くなる。心葉は盾で守り続けている。なるべくこの神機使いにけがをさせてはいけない。ただでさえ、神機使いや、堕ちた者に対抗する力が強い自分が神機を振るえば、あっという間に倒せるだろう。

 

「どうした!!生きたいだろう!!だったら神機を振るえよ!!じゃねぇと殺されるぞ!!」

「………もう僕は…人殺しなんてしたくない…!!でも…生きるには……っ!!」

 

 神機を薙刀形態に切り替え、横薙ぎに振るった。漆黒の刃は空を切り裂くだけに終わった。

 

「やっと本気になったか…さあ、殺しに来いよ救世主喰らい!!」

 

 神機使いが吠える。

 

「もう…どうなっても知りませんからね!!」

 

 心葉は神機を構え地を駆けた。自分の意志では怪我をさせる程度ではいたのかもしれないが、きっと殺すつもりでいるのだろう。神機を握る手にかなりの力が込められている。

 

「ふっ!」

 

 高速で接近し、神機を振るった。漆黒の刃と巨大な刃がぶつかり合う。ぶつかり合うたびに、金属音が響く。音が響くと同時に腕に衝撃が伝わってくる。振り下ろされる刃にあわせ、体を少し動かし、隙ができたところに一撃を叩きこむ。その一撃に対し、相手も体を動かし攻撃をかわす。今のところ神機同士でぶつけ合っているか、刃が空を切るかのどちらかだ。

 

「どうした!その程度かよ!!」

 

 神機使いが神機を高速で振るってくる。心葉はその猛攻を最低限の動きで回避する。隙を探っているが攻撃が激しすぎて一撃を叩きこむ暇がない。

 

「ふんっ!!」

 

 神機使いが神機を横薙ぎに振り回した。心葉は咄嗟に神機を地面に突き刺し一撃を受け止めた。

 

「ほう」

 

 神機使いが少し驚いたように声を出した。

 

「…救世主喰らいを…侮ってもらっては困ります!!」

 

 神機を槍形態に切り替え神機使いに突撃していった。

 

 

★フェンリル本部 技術部

 

「さて、どうなるかな」

 

 フェンリル本部にある技術部の主任がモニターを見て、一言つぶやいた。

 

「主任、あの神機はどういうことですか?」

「ああ、あの試験運用中の黒い神機か…あれ、言ってなかったっけ」

「そのような話は一つも聞いていません」

 

 秘書が冷たく答える。

 

「で、何が問題だと思ったんだい」

「神機の素材並びに試験運用中でまだ完成していないあのシステムについてです」

「ああそれね。素材に関してはまあ、裏ルートだが、システムは完成させた」

「ですが…!」

 

 運用する前は問題があった。制御しようにも制御しきれず神機のオラクル細胞が暴発していた。そのおかげで何本神機を無駄にしてきたことか。

 

「運用に失敗するには問題がいくつかあった。だが、完成させた。一日でシステムの根本をすべて改善した。時間とかオラクル細胞の量でシステムを発動させるのが問題だった。あの子の状況なら感応現象を利用して、意志の力を利用して発動させるようにした」

 

 彼女にとって意味が分からないと思う。そう思い再度わかるように説明した。

 

「あのシステムは改良した。感情を数値としてその数値が一定以上に達するとそのシステムが発動するようにした。そうすれば一時的にステータスの大幅な強化。火事場の馬鹿力というやつが生まれる」

「………それはいい結果をもたらす場合と最悪の結末を迎える場合がある可能性が」

 

 秘書の目は悲しみの色であふれていた。それに対し主任の目には狂気に満ちた色が見えていた。

 

「いいじゃないか。結局はすべて未来のためだ」

 

 

★荒野

side:心葉

 

 ガキィンと刃と刃がぶつかり合う金属音が響く。神機の刃が少しボロボロになっているような気がする。

 

「はあっ!!」

 

 神機使いが大振りに神機を振るう。心葉はそれを神機で受け止めたが、力も体格も負けている心葉は簡単に吹っ飛ばされた。ごろごろと転がっていく。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

 自分はこの神機使いを殺すつもりでいる。相手も殺すつもりでいる。だが明らかに向こうのほうが優勢だ。心葉と違い向こうは息の乱れどころか心葉みたいにボロボロになったりしていない。

 

「……ぐっ…!」

 

 力を失いつつある足に力を込める。膝ががくがくしている。このままでは走るどころか相手の攻撃をまともに受け止めることができないだろう。そのまま無様に殺されていく。そんな結末が見えた。

 

「……………こんな…ところで……」

 

 うっすらとぼやけていく視界の中で神機使いがこちらに歩いてくる。

 

「…もう終わりだ、救世主喰らい………死ねぇ!!」

 

 巨大な刃が振り下ろされる。心葉は避けることもできず立ち尽くしていた。この一撃で殺される。自分は望んでいた死を。向こうは待っていた仇討ちを。それでお互いが幸せになる。今度は自分の体が動ないからどうしようもない。すぐに死ねる。だが、振り下ろされると同時に金属音が響いた。

 

「……何のつもりだ」

 

 神機使いが声を出した。ぼやける視界の中で薄い空色の神機で自分をかばっている女性。つい最近のパートナーとなってくれた一人の味方。

 

「…咲良…さん」

「…………今すぐ手を引きなさい。さもなければ殺す」

 

 咲良は静かな声で神機使いに声をかけた。

 

「だったら……殺してみろ!!」

 

 咲良と神機使いが交戦した。お互いに刃をぶつけ合っている。金属音が再び響く。が、それも長くは続かなかった。神機使いの左手が伸び胸ぐらをつかんでいた。胸ぐらをつかむと同時に咲良の神機を神機で叩き落としていた。

 

「咲…良さ…んっ!」

 

 神機使いは胸ぐらをつかんだまま持ち上げ、右手の神機の刃を首元にあてた。

 

「っ!!」

「…心葉……逃げて…」

 

 彼女の首もとから赤色が流れるのが見えた。その時に意識が薄れていき、視界が真っ暗になった。意識がなくなるときに一つの機械音声が聞こえた。

 

「OracleRageSystem Standby」

 

side:咲良

 

 首もとが熱い。血が流れているのだろう。

 

「………ごめん、心葉」

 

 そう呟き目を閉じた。

 ふわりと風が吹いた。自然の風ではない。何かが突っ切ってきた時に生じる風。異変を感じすぐに目を開けた。自分と神機使いの横にボロボロになった心葉がいた。その心葉は神機を振りかぶっていた。

 

「心葉…?」

 

 その心葉は咲良ごと神機使いを横に薙ぎ吹き飛ばした。

 

「ぐっ!!」

「あああっ!?」

 

 心葉が吹っ飛んだ神機使いに追撃をしに地をかけた。さっきの状態からしてありえない動きだった。

 

「…心…葉…?」

 

 神機使いが起き上がった。立ち上がった時にはすでに心葉は目の前にいた。そして心葉は地を踏み込み、神機使いを蹴り飛ばした。

 

「ぐああああああっ!!」

 

 さっきまで圧倒していた神機使いが心葉に圧倒されている。何が起きているかわからないが、せめてわかることは心葉の体に何らかの状態異常が発生していることだ。

 

「………………」

 

 心葉は無言で無表情で神機使いを痛めつけていた。それも立ち上がっては蹴り飛ばし、殴りつけている。神機使いも圧倒いう間にボロボロになっていった。

 

「…………死ね」

 

 そう呟き神機を薙刀形態に切り替えていた。心葉の表情に今までの優しさはなく、目には淀んだ闇しか見えない。心葉は走りよろよろと立ちあがった神機使いに漆黒の刃を振り下ろした。その刃は四肢を切り落とし、再び神機使いを地に寝かせた。すでに神機使いは虫の息で、声も出せなかった。心葉は倒れこんだ神機使いに追い打ちをかけるかのように胸を神機で突き刺し、振り上げその体を上空に挙げた。振り上げた神機を捕食形態に変化させた。神機がオラクル細胞に包まれ、異形の化け物を作り上げる。咢を宙に浮いた体に向けた。

 

「………………………………消えろ」

 

 そう最後に言い、降ってきた体を喰らった。鮮血が飛び散り地を、心葉を、神機を真っ赤に染め上げた。その惨劇を目の当たりにしていた咲良は真っ青になっていた。

 

「…心葉……」

 

 震えが止まらない。今目の前にいる心葉はただの死神だ。恐怖の塊と言っても過言ではない。その恐怖がこちらを見た。心葉は少しこちらを見て、倒れこんだ。倒れこむ前の心葉の表情は少し哀しそうな顔をしていた。

 




大変お待たせいたしました。今回変なシステムを導入しました。詳しいことは次回説明するつもりでいます。

次にGEを更新する前に同時進行中の艦これの小説のほうを済ませようかと考えています。
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