GOD EATER ~堕ちた救世主~   作:elsnoir

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19話 たどり着いた先は/想定されていた未来

★廃村

side:心葉

 

 早朝。あれから少し眠り、少量のご飯を食べて日記に書いてあった研究所を探し始めた。父と母の住んでいる支部の方向は知っているが、研究所については近くとしか書いてなかった。ただわかることはここに来るまでの道中、建物らしきものは一切なかった。ずっと平原が続いているだけだ。もし地下だけとか隠し通路という形でなければ、進んできた道と同じ方向を歩いていれば見つかるはずだ。早速神機を持ち出し、歩き始めた。あたりをきょろきょろして目を凝らして、探した。建物らしきものは近づいて、隠し通路がないか探して、無ければまた歩き出してを繰り返した。

 そしてずっと歩き続け日が暮れるという所である建物を見つけた。

 

「……今日はこれで終わりにしよう。まだ大丈夫だと思うから」

 

 いい加減変色因子の投与をしなければならないが、かれこれずっと投与していない。長期間外出するときは変色因子を持ち歩くケースが多いが、それが原因で堕ちた者(フォールマン)化するケースも多発している。かといってこのまま変色因子を投与しなければ自分も堕ちた者になりかねない。どちらにせよこれが最後かもしれない。この後は堕ちた者になって誰かほかの神機使いが自分を殺すことになるだけだ。

 

 

★平原

side:ハルオミ

 

 午前十時ハルオミとカノンが出撃を開始した。現在防衛班を残し、クレイドル、咲良を含めた第一部隊、ブラッド、第四部隊で活動している。真っ先に第一部隊が動き出し、その後をクレイドルとブラッドが動いた。こちらは最後ということになる。

 

「じゃ、カノンちゃん、さっさと心葉見つけて帰ろうか」

「はいっ」

 

 笑顔で捜索を始めた。すぐ見つかるそんな期待を持ちながら。

 

 

★研究所?

side:心葉

 

 家を出たのが七時。それから9時間。ようやくそれを見つけた。ボロボロになった壁面に塗装が剥げたフェンリルのエンブレムが塗られていた。

 

「…もしここならば…」

 

 錆びたフェンスをどけ、入り口に向けて歩き出した。

 

 

★研究所 玄関

 

 研究所の電気は生きていた。入って薄暗いことを想定していたが、電気がつきっぱなしだった。中は散らかってはおらず、きれいになっていた。せめていうなれば机の上に埃がほんの少しかぶっている程度だった。

 

「……やっぱり家に来た時と同じ感覚がする……僕は…ここに来たことがある」

 

 体は覚えている。この場所を。その体に従い、研究所内を歩き出した。

 

 

★研究所内 個室

 

 自分の体が行く末についた場所は一つの個室だった。個室というよりは大きな牢屋と言っても過言ではなかった。扉は鉄格子だ。その先には小さな机、ベッド、トイレ、水道など、生きるために必要なものは整っていた。カギは空いている。きぃと嫌な音を鳴らし、鉄格子を開けた。まず目についたのが机の上にあった本だった。その一ページ目をめくってみる。そこには

 

「…僕がここにきてからのこと………フェンリルに連れていかれてからここで何が起きたか…それがわかる」

 

 2ページ目をめくってみる。最初の文だ。「フェンリルに連れてこられたのはよくわからない。でもここで起きている時間は辛いことばかり。まずは体力づくりと言ったけど皆倒れてた。僕も倒れた。子供がやるようなことじゃない」。3ページ目、「体力づくりの時間が減った。でもその分新しく座学が増えた。いや、座学じゃない。単なる洗脳だ。頭に何か機械をつけてずっとモニターの映像を見せていた。集中力が途切れたりすると機械から電流が流れて……とにかくひどかった」などと書いてあった。ここから先もずっと同じようなことが書いてあった。訓練、洗脳教育、投薬などが繰り返されていた。

 

「…そんな…………こんなことって……」

 

 それから痛々しい記録が続いてある日それが変わった。「隣の人が適合試験に移った。僕はいまだに神機が見つからないから適合試験を受けられない。でもその適合した人は死んだ。神機に適合してから暴走した。上の人も殺すことをためらわなかった。失敗作だと言ってた。僕もいずれああなってしまうんだろうか」

 

「……失敗作…」

 

 選ばれた人を適合させて暴走すれば失敗作扱い。そんなことがあっていいのか。歯を食いしばりながら次のページをめくった。「僕はどうやら特殊な人らしい。投薬の中に変色因子をほんの少量混ぜていたらしい。その変色因子のおかげである力が現れたという。簡単に言えば僕の声が皆を強くするらしい。上の人は感応現象だといっていた」

 

 感応現象。自分にそんな力があるとは思っていなかった。過去にサカキに「君には何か特殊な力でもあるのかい?」と聞かれたことがある。そんなことを思い出し次のページをめくった。次のページは驚愕の内容だった。「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」

と、同じ言葉がノート一面に書かれていた。

 

「な、な…何…これ……」

 

 いつもの自分の字で呪うかのように書かれていた。その次のページには「どうしてこんな目に合わなくちゃいけないの?僕が何をしたっていうの?誰か…助けて」と。痛みが伝わってくる。胸が苦しくなってくる。日記はこれで最後だった。どのページにも苦しいことしか書いてなかった。

 

「………所長室だ。そこに行けばある程度のデータがあるはず…」

 

 

★研究所 所長室

 

 ジャキンジャキンと何かを切り裂く音が響く。音に続いてロックのかかったドアが心葉の神機によって切断されドアとしての機能をしなくなった。セキュリティがなくなった所長室に足を踏み入れた。いかにも偉い人が座るような机の上にパソコンが置かれていた。心葉はパソコンの前に立ち、キーボードを打ち始めた。奇跡的にロックがかかっておらずデータは簡単に覗くことができた。デスクトップ上には大量のフォルダがあった。その中に二つだけ目に入ったものがあった。一つは「日暮 心葉」。二つ目は「世界喰らい」というフォルダだった。最初に自分の名前の付いたフォルダを開いた。そこにはいくつかのテキストファイルと、動画があった。まずテキストファイルに目を付けた。個人情報、実験データ、投与した薬、変色因子ぐらいしかわからないが、まだまだほかにある。そして動画ファイル。その動画を再生してみた。まず現れたのはオウガテイル一体、その視線の先には目隠しをされ椅子に座った人がいた。その人の手や足には枷がしてあった。オウガテイルと人の間には何枚かのアラガミ装甲壁と思われる壁が置いてあった。

 

「何……………ッ!!」

 

 急に吐き気と頭痛が襲ってきた。立つことすら難しいレベルだ。息が苦しい、呼吸ができない。コートの上から胸を握りしめた。

 

「…はぁ………ぐ……はぁ………くる……しぃ…………ぁぁっ…………ぅぐっ……」

 

 画面上で何が起こっているかわからないが、悲鳴が聞こえる。幼い声で必死に助けを求めるかのような悲鳴が聞こえる。何が起きているか確認しようにも確認できない。

 

「……はぁ…はぁ………ぁうっ………ぐ」

 

 動画が終わってから少しした後、ようやく息が整ってきた。さっきの動画を見ればまた同じことが起きる。そう判断し、自分のフォルダを閉じた。そしてもう一月になっていた「世界喰らい」というファイルを見た。そこには自分でも信じられないことが書いてあった。自分の存在意義を疑った。

 

「………僕は…何のために神機使いになったんですか…?」

 

 神機使いや堕ちた者を殺すことが目的の神機使いだけでなく、もう一つの使命があった。その使命ひとつで世界が変わって見えた。

 

 

★平原

side:咲良

 

「どうして心葉が私たち神機使いや、堕ちた者に強く力を発揮するか。その理由は詳しくわかっていないけど、大体の原因は彼に投与した変色因子に問題がある。彼に投与した変色因子は神機使いから抽出したオラクル細胞を加工して変色因子にした」

 

 心葉を探しながら心葉について自分が知っていることを改めて話していた。

 

「なあ、どうして心葉のことを詳しく知っているんだ?」

「いい質問ねコウタ。あの研究所が潰れて誰もいなくなった後そこのデータをすべてコピーしてきた。そのコピーしたデータを全て話しているだけよ」

 

 パスワード入力が面倒だったからパソコンのパスワードを解除して、次の人がパスワードを打ち込まなくても使えるようにしてやった。私優しい。

 

「……心葉、早く見つかるといいね」

 

 エリナが心配そうにつぶやく。

 

「そうね…あの子は、いや強化神機使いは皆変色因子を投与しなくても平気な体質をしているから大丈夫だけど…」

 

 

★廃村

side:心葉

 

 研究所から歩いて自分が住んでいた家に戻ってきた。

 

「ただいま」

 

 薄暗い部屋が心葉を出迎えてくれた。壁にある証明のスイッチを一つだけ入れる。暗い部屋が明るくなる。机の上にあるペンをとり、黒い日記の最後のページに文章を書き込んだ。

 

「お父さん、お母さん。ごめんなさい。お父さんとお母さんに会いたいけど、もう会うことはできない。」

 

 安らぎを与えてくれた数少ない場所、温かい記憶が残った居間、どんなにつらくても忘れさせてくれたベッド、自分の存在を残すために記した日記、家族との記憶が全て残ったアルバム。それらに背を向け家を出た。その時心葉は、

 

「さようなら」

 

 と一言言った。

 

 

★荒野

side:ハルオミ

 

 あれから探し続けて結局心葉どころかアラガミすら目撃しなかった。単なるピクニックになってしまった。

 

「楽しかったですねー」

「あ、ああ……まあ、明日にしようか、もう遅いし」

 

 外はもう太陽が半分沈みかけていた。これ以上は探索するにも危険だ。夕日に背を返し、歩き始めた。が

 

「あ、あれ…?」

「ん?カノンちゃん?」

 

 カノンが何か見つけたようだ。ハルオミも背後を振り向き、カノンの視線の先をとらえる。黒い小さな人の影があった。ボロボロのコートを身にまとい、右手には槍のような武器が握られている。そして腕に例の大きい腕輪がついていた。夕日のせいでよくわからないが、シルエットだけで大体姿がわかった。突然姿を消した一人の仲間。

 

「心葉君!」

 

 日暮 心葉がこちらに向かって歩いていた。ようやく見つけた。これでいつもの日に戻れると思った。

 

「心葉君…?」

 

 様子がおかしい。いつもなら声をかけられるとすぐに声を返すのに何もしゃべらない。何よりも彼の放つ覇気だ。柔らかな空気とかそう言ったものは一切ない。

 

「カノンちゃん…………」

 

 心葉が足を止めた。彼の持っている神機が鋭い楕円型の槍から三日月の薙刀に切り替わった。切り替わると同時にハルオミはリッカにもらったバレットを装填していた。

 

「カノンちゃん……神機を構えろ」

「ふぇっ!?な、何を言っているんですか!?」

 

 最悪の結果は少しだけ予想していたが、まさかこうも早く来るとは思っていなかった。目の前にいる心葉は神機を構えた。

 

「……カノンちゃん……残酷な現実だが……」

 

 そういうと同時にハルオミも神機を構えた。心葉の目が紅く光る。

 

「……アイツはもう…………………俺たちの知っている心葉じゃない」

 

 

★極東支部 エントランス

side:詩音

 

「……遅いですね」

 

 現在時刻は午後八時を回っていた。ブラッド、クレイドル、第一部隊皆収穫はなく極東に帰ってきた。だが、第四部隊のみ帰ってきていない。さっきから電話をかけているのだが応答しない。通信すらダメだった。

 

「…隊長、探しに行きたい気持ちはわかります。ですが、この状況で探しに行くのは危険です。捜索をするなら明日の早朝にしましょう」

 

 シエルが口を開いた。こんなことをしている間に二人が生きているかどうか心配になった。

 

「…二人とも…ぶ」

 

 無事にいて。と言いかけた瞬間、ドアが勢いよく開けられた。そこにいたのはボロボロになったカノンを左肩に乗せたハルオミだった。ハルオミもハルオミでボロボロになっていた。

 

「ハルオミさん!カノンちゃん!」

 

 皆が二人に駆け寄った。カノンは気絶していて目を閉じたままだった。ハルオミもハルオミでダメージがひどいのか顔をしかめていた。

 

「大丈夫ですか!?早く救護!」

 

 医療班が駆け付けてきた。一度ハルオミを座らせ、カノンを寝かせた。医療班が応急治療をしている間に何があったか聞くことにした。

 

「…………この…………は………が………」

「な、何?もう一回言ってっ!」

 

 ハルオミの声は小さく聞き取ろうにも聞き取れなかった。

 

「心葉…………が……心葉が…やった…………アイツは……俺たちの……知ってる…心…葉……じゃ……な………」

 

 言葉を言いかけて、気絶した。

 

「ハルオミさん!ハルオミさん!」

「…………まずい……こんなにも早く……」

 

 咲良が歯を食いしばっていた。

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