★外部居住区
side:詩音
生ぬるい嫌な風が吹き荒れる。どうしてこうなってしまったのか。それは最初から決められた運命だったのか。それとも最初から決定していたことなのだろうか。どちらにせよ、この状況から避けられないのは事実だ。
「………やっぱり…殺すしかないのね………」
手に握る神機をぎゅっと握る。手汗で滑りそうになる。
「……………」
赤く濡れた瞳でずっとこちらを見つめる少年。今までともに笑いあってきた仲間だ。だが今は仲間ではない。敵だ。こちらには殺す気はなくても向こうには殺す気はある。一瞬でも気を抜けば遠く離れた距離で向けられた漆黒の矛が喉元に刺さっているような感じがする。
「…………ごめん、心葉君!!」
一言声を上げ、地面を強く蹴った。彼を殺すことをためらった自分を押さえ、目の前にいる仲間が最初から敵だったということと言い聞かせ、堕ちた者と出会ったと言い聞かせ走り出した。
数時間前。
★エントランス
外部居住区を映したモニターに一つの紅い丸がある。赤い丸はゆっくりと外部居住区を進んでいる。
「…ようやく見つけた。だが………」
この丸は心葉だ。だが、もう自分たちが知っている心葉ではない。殺りくを繰り返す堕ちた者同然の存在となってしまった。彼はもう自分たちのことを仲間としてみていない。
「…………待っていた最悪の事態が来た」
「…咲良君。こうなったらどうすればいいんだ?」
「…………………もう手遅れよ」
そう冷たく言う彼女の表情は悲しかった。瞳にも色がない。
「………どうするの?」
「どうするとは?」
「一人で殺すか、皆で殺すか」
残酷な言葉を並べていく咲良。でも今はためらってしまったら終わりだ。そのためらいが戦場で生死を左右する。
「強化神機使いとはいえ、あの子は神機使いに強い耐性を持つ。一撃でももらったら大けが、最悪の場合死が待ってる。一人で向かわせて被害を少なくするか、全員で行ってできる限りの被害を減らすか。私は後者の意見を尊重するけど」
どちらもどちらだ。わかりやすく言えばどっちの方が被害を減らすことができるか。一人で向かえば一対一になる。その場合どちらかが死ぬだけの話になる。複数で向かえば一対複数といった形になり有利になる。だが同時に被害が大きく出る可能性もある。
心葉の神機は槍とスナイパー。だが特殊機構により槍は薙刀に変化し、アサルトも使用可能となる。薙刀の状態であれば神機すら真っ二つになる。スナイパーには広範囲爆撃バレットがある。もしそれが放たれれば被害が大きく出る。
「………私が行きます……でも……皆の力も貸してほしい」
沈黙するなかで一人声を出したのはブラッドの隊長、詩音だった。
「……わかったわ。けど、状況をモニターさせて。もし危険な状況だったら私たちが加勢する」
こうして話がまとまった。そこからどうするべきか話し合った。どれも胸が苦しくなる話ばかりだ。仲間を殺さなければならない。それがどれだけ苦しいことか。そんな気持ちをずっと心葉は背負っていたのかもしれない。
「…………どうか…被害が出ないように…」
ただ皆を信じ、ひたすら願うことしかできなかった。
そして彼に出会った。
★外部居住区
殺したくない気持ちを抑えながら外部居住区をあるていた。オペレーターの声を聴きながら、彼の場所を探した。住民はすべて非難している。言えば思う存分に暴れられるということになる。
「……どうして……どうしてこんなことするの……」
「あなたにはわからない話です。僕のことなんて」
「…知ってるよ……心葉君のこと………強化神機使いで…それで…」
「御託は結構です」
彼から放たれるプレッシャーが一層強くなる。何を言っても無駄なようだ。つまり平行線。
「前にも警告しました。次会った時は殺すと」
赤い瞳が睨みつける。気を引き締めていなかったら足が震えていただろう。今まであった透き通った空色の瞳はない。憎悪と憎しみ、怒りに満ちた血の色がそこにあるだけだった。
「覚悟はいいですね」
「……………」
手汗で滑りそうな神機を再度握る。もう引き返せない。やるしかないのだ。かつての仲間を殺すことを。それが一つの救済だと信じて神機を構えた。
大分久々の更新です。最近GE2RBやって楽しいなと思い久々に書いてみようという形でした。