★外部居住区
side:詩音
地面を強く蹴って心葉に肉薄する。感情を殺し、ただ殺すことを考える。そうでなければ自分が殺される。
「やあっ!」
「はっ!」
振り下ろされる白銀の斬撃に対し、振り上げられる漆黒の突き。ガキィン!と音を鳴らし弾く。弾かれればすぐに体勢を立て直し、再び振るう。今度は横薙ぎに振るうが距離を離される。振り終わると同時に心葉が神機を振り上げる。地面を後ろに蹴り心葉から距離を離す。自分がいた位置に槍がたたきつけられる。反撃しようと神機を構えるが、一瞬で構え直し神速の突きを繰り出す。矛先は首もとを向いている。かわすことができなければ首が吹き飛ぶであろう。
「っ!?」
とっさの判断で神機を振り上げる。突き出された矛先は振り上げた神機をとらえるが、体勢が不安定ゆえに大きく吹き飛ばされた。
「きゃあっ!?」
地面をずさあと滑りながら、左手を手に付き体制を整える。整えている最中でも心葉は迫ってくる。表情を変えずこちらにかけてくる。再び立ち上がり、神機を構え突撃する。振るう神機が漆黒の神機をとらえる。嫌な金属音が鳴り響く。防がれればすぐに離れ、再度振るう。横に縦に斜めに。お互いがお互いの攻撃を的確に受け止めている。
「…心葉君!」
届くかどうかわからないが彼に声をかけることにした。
「今更なんですか!!」
「どうして…どうしてこんなことするの!!」
「同じことを言わせないでください!!あなたには……あなた達には絶対にわかるはずのない理由があるってことを!!」
彼が今こうして神機を振るっている理由。それは自分の存在意義を見出すための行為。人を殺すことが……世界を壊すことが彼の存在意義だ。
「私たちは心葉君を助けたいだけなの!!私は…心葉君を殺したくない!!」
「口だけの意志は………たくさんです!!!!!!」
空気が一瞬で凍りつくかのような声。だが体には湯水が湧くかのように力があふれてくる。彼を興奮させてしまったがゆえに、彼の力を動かしてしまったのだ。
★エントランス
side:ヒバリ
「外部居住区にて神機使い全員にバーストレベル2強制発動!!心葉君の感応現象が始まってます!!!」
彼が起こす感応現象がどういうメカニズムで発生し、神機使いに影響を与えるかは不明。だが、この効果が神機使いに力を与えるということは彼を倒す力になるということにつながる。
「………やはりか」
ブラッド隊長のステータスを見る限り、全体的なステータスは上昇しているが先ほどより心葉に押されている。彼が力を発すると同時に彼自身が強化されているのだ。それもバーストなんかでは追いつけないレベルで。
「そろそろ動かさないとね」
「……はい」
一つの決断をし、マイクに触れた。
「各神機使いに通達です。これより、日暮 心葉の討伐任務に当たってください」
震えそうな声でそう叫んだ。
★外部居住区
side:詩音
自分が強化されているというのにさっきより押されている。吹き飛ばされることも多くなり、体が悲鳴を上げ始めている。だが、一人ではの話だ。ついさっき通信で救援が来ることになった。
「……心葉…」
「…………………………今更…僕を助けてどうするつもりなんですか」
矛先をこちらに向けたまま、長い沈黙の後に口を開いた。助けて彼をどうするか。
「そんなの…決まってる!!心葉君を助けて、また一緒に戦おうって」
「甘い考えは…捨ててください!!!!」
神機を構え、地を蹴ってきた。彼の言うとおり甘い考えではあるかもしれない。彼はかつての仲間だ。だが今は敵だ。そしてこちら側は助けたいと言っている。だがそれは仲間としての未練があるということになる。その未練が自分を殺すことになる。それはよく理解できたことだった。
「僕を殺すか皆さんが死ぬか。それだけの話に今更別の話をつけようっていうんですか!!」
「違う……違う……」
「何が違うっていうんですか!!僕はあなたたちの敵で、殺そうとしている。それを助けるっていうんですか!?ブラッドの隊長でもある人はとうとう敵の区別も出来なくなったっていうんですか!!」
神機を振るった一瞬の隙に、腹部に蹴りがたたきこまれる。つま先がめり込む。
「ごふっ」
大きく吹き飛ばされ、地面を転がる。口の中が地と砂の味で広がる。
「なんで……なんでなの………」
神機を杖にして立ち上がる。彼はいまだに息を切らさず立ち続けている。赤く濡れた瞳は相変わらず冷たく見ている。
「「「「「詩音!!!」」」」」
背後を見ると無数の人影。ソーマを筆頭に極東の神機使い、ブラッドの神機使い。さらに他支部から応援に来た神機使いがこちらに向かってきていた。
「それでいいんですよ。僕を殺す。それだけの話で………さら、殺しに来てくださいよ。人の皮かぶった化け物を殺しに」
「言われなくても!!」
自分の隣を抜けたソーマが吠え、白銀の巨大な神機を振り上げた。
side:ソーマ
堕ちた者を殺したことは指で数えられるが、まだ意志を持った神機使いを殺すことは初めてだ。だが分類は堕ちた者に該当するのかもしれない。
「ふん!!」
重圧かつ鋭い一撃を振り下ろす。いくら神機使いに対抗する力を持っていたとはいえ、神機がなければ戦うことはできない。そして神機さえ破壊してしまえば簡単な話になる。だが、
「っ!?」
力を込めて振り降ろしたはずの神機は彼の華奢な左手で止められている。何もつけていない素手で。
「神機がなければ戦えないって思っているかもしれませんが、僕単体で神機使いに対抗できるんですよ。だからこうやって止めることも出来る」
赤い瞳が怪しい光を放ちながらこちらを見る。すぐに引き戻そうとしたが戻らない。あの華奢な腕にどこまでそんな力があるのかと疑うほどに動かない。
「!」
手に持つ神機ごと振り回され、心葉の右側に投げ飛ばされる。彼の右手には攻めようとしていたギルバートがいた。彼ごと吹き飛ばされた。
「次は……誰ですか…?」
声をかける。だが誰も答えはしない。
「……………なら……死にたい方から前に出てください」
心葉が放つプレッシャーが今まで以上に強くなった気がする。空気が冷たく、胸がつねられるように苦しい。だが、そんなことで止まっている場合ではない。彼を殺さなければ明日はないのだ。
「…言われなくても」
「やってやるよ!!」
ギルバートとソーマが走り出した。彼らに続いて他の神機使いも走り出した。銃を構えた神機使いも彼を照準に定めた。今は仲間という意思を捨てる。そうでもしなければまともに戦うことはできない。そう改めて重い、走りながら神機を構え直した。