★外部居住区
side:心葉
多数の神機使いの視線の先には自分。今は神機使いの敵となった。
「どうしたんですか?殺すつもりじゃないですか!?」
「言われなくても」
「殺すつもりだ!」
ギルバートとソーマを筆頭に神機使いたちが駆けてきた。振り降ろされる神機を一閃、薙ぎ払い弾く。つづけさまに迫る一撃を弾く。
「それで殺すつもりですか!?」
一瞬の隙を突き、振り払う。視界に入った人から叩くことにした。最初に目に入ったのはギルバートだった。
「あの時は感謝してますけど、今は敵。倒させていただきます」
ギルバートへ肉薄。同じ槍使いではあるがキャリアは全く別。だがそれは神機使いとしての、対アラガミとしてのもの。対堕ちた者(フォールマン)としてのキャリアは話は別になる。数多く殺してきた心葉の方が圧倒的に有利となる。人との戦い方だって知っている。
「まだこんなことを続けるのか!てめぇは!!」
「それがどうしたっていうんですか!世界を壊すために作られたのなら、そうするのが普通じゃないですか!?」
「なら、てめぇは本当に世界を壊したいっていうのか!」
「だからあなた達を殺そうとしているんですよ!!」
神機を振り続け、火花を散らす。お互いの意志と意志がぶつかり合う。だが和解することはない。
「いい加減にしろ!!」
「うるさい!」
地面を強く蹴り上げ、足を空へ向け、とんぼ返りをするかのように足を宙に向ける。蹴り上げられたつま先はギルバートの顎へ直撃し、宙へ上げる。サマーソルトキックと呼ばれるものだ。着地し、浮かび上がったギルバートに追撃をかける。
「沈め!」
全力で神機を横薙ぎに振るい、ギルバートの腹に叩きつける。
「ぐああああああああっ?!」
地面にたたきつけられたギルバートはそのまま動かなくなってしまった。だがあれぐらいでは死にはしない。さらに追撃をかけている暇はない。他の神機使いが迫っている。
★極東支部 エントランス
side:ヒバリ
心葉との戦闘が始まってから三十分経過した。状況は劣勢どころか不利。負傷者どころか死者すら出ている。
「…そんな……これだけの状況で……」
こちらからできるサポートは施した。だが、それすらも無駄となってしまった。心葉の感応現象によってリンクサポートは起動しない。そして支援として呼んだ他の支部の神機使いすら殺されてしまった。残ったのは極東の神機使いとブラッド、クレイドルだけ。皆熟練の神機使いだ。だがそれでもかなわない。神機使いとして対アラガミとしてのキャリアは上でも、対人間としてのキャリアは圧倒的に心葉の方が上。あの中で一番堕ちた者を殺したのは彼である。
「………このままでは……!」
戦力は次々に減っていく。心葉の手によって戦闘不能になった人はすでに9人。ギルバート、ナナ、ソーマ、アリサ、タツミ、ブレンダン、カレル、シュン、ジーナの9人。すでに防衛班は全滅。残ったのはブラッド隊長の詩音、副隊長のシエル、クレイドルのリンドウ、そして強化神機使いの咲良の4人。たかが心葉一人の手によってかなりの戦力が削られたのだ。
「ヒバリ君」
「サカキ博士…」
「このままでは危険だ。一度撤退して体制を立て直したほうがいい…」
「……それが…できないんです……」
その考えはあった。だが逃げている暇が一切ないのだ。心葉の猛攻を防ぐのに精いっぱいなのだ。スタングレネードのアイテムを使用する暇すらない。だが使用したとして心葉が怯むかどうかすら不明。本人が使ったことがあるのだ。防ぎ方ぐらい知っている。
「くっ………一体……どうすれば……!」
「…心葉君……」
★外部居住区
side:心葉
神機を振るい続け、攻撃しているときに頭の中に声が響く。いろんな声で「殺せ殺せ」と言ってくる。低い声、高い声、渋い声、叫び声と様々だ。他の支部の神機使いを殺した時はその声が少し嬉しそうな声に聞こえた。この声は自分が世界の敵になるときから聞こえていた。かすかに聞こえていた声は神機使いと出会った瞬間にはっきりと聞こえるようになった。
「…………殺せ…か………どうして殺せないんですかね」
他の支部の人は殺せた。だが自分の知っている人は殺すことはできなかった。殺すタイミングはいくらでもあった。最初のギルバートを止める一撃の時に矛を首か心臓に突き刺していれば彼は死んでいた。だがそれはせずに、地面にたたきつけることを選んでいた。
ほんの少しだけ、まだ仲間と思っているところがある。そう感じた。だがその考えはすぐに捨てる。もう仲間ではない。自分の敵だ。だから今は頭の中で響く「殺せ」の声に耳を傾けた。
side:詩音
戦況は圧倒的に不利。今残っているのは自分とシエルとリンドウと咲良の4人のみ。他の皆は戦闘不能。気絶している。銃にして距離を離そうとしても一瞬で距離を詰められる。その時点で接近戦しかできない。
「心葉君!」
「……いい加減僕の名前を呼ぶのも聞き飽きましたよ!!」
何度声をかけても帰ってくるのは吐き捨てられた怒声。耳を傾けてもらうのは無理だろう。
「せめて聞かせてください!どうしてこの世界を壊そうとするの!!」
「理由………」
神機同士がぶつかり合い、火花を散らす。だが心葉の動きは止まった。言葉を受け入れた瞬間だった。
「…………こんな理不尽な世界が……大っ嫌いだからですよ!!!!」
再び心葉の動きが始まる。さっきよりも激しく、強力である。一回でも防がなかったら、致命傷は免れない。
「理不尽な世界……確かにそうだけどッ」
「僕はそんな世界が大っ嫌いだからあなた達を殺して、この世界を壊そうとしているんですよ!!」
「それだけの理由で……たったそれだけの理由でなの!!」
「大きな理由ですよ!!!!」
自分の中で力が湧き上がる感じがした。心葉の感応現象がさらに上昇したようだ。
『心葉君の感応派、さらに増大!!神機使い全員にバーストレベル3の効果!!』
自分が強くなると同時に向こうはさらに強くなっている。怒りと悲しみと絶望の炎を灯し、殺しにかかってくる。
「人は不公平に愛されて、不平等に運命を歩かされて、理不尽に殺され、死んでいく!!それが嫌なだけですよ!!」
「そんなことない!」
「どこがですか!!!!なら僕とあなたは同じ神機使いだって言いたいんですか!!??」
「違う……違うけど……!」
心葉の言っていることは間違ってはいない。理不尽、不公平、不平等。この世界で存在しないことはまずない。自分と彼の差。運命に左右され一人の英雄となった自分。同じように左右されて血塗られた道を歩くことになった少年。
「私と心葉君は同じ人でしょ!!同じ神機使いでしょ!」
「うるさい!!人々の希望となるブラッドの神機使いと、神機使いのなれの果てを殺す救世主喰らい…その二人が一緒だとも!?」
「そうじゃない…そうじゃないの……!」
「だったら、なんだっていうんですか!」
心葉の握る神機が勢いよく振り下ろされる。ガキィン!という音を響かせ、後方に吹き飛ぶ。ずさぁと音を鳴らしながら止まる。
「……………私たちは……」
歯を食いしばり、手に握る神機にさらに力を込める。そして一気に駆けだす。彼に自分の思いを、意志を伝えるために。
「私たちはこの世界で生きる人で、同じ神機使いで、同じ仲間で……大切な友達だから!!!」
間合いに入った瞬間に手に持つ神機に意志を込める。神機が紅い光を放つ。
「これが私たちの意志だから!!!!」
振り下ろされる漆黒の斬撃を弾き返すかのように神機を全力で振り上げる。振り上げられた一撃は心葉の神機を大きく打ち上げた。
「ッ!?」
今心葉の手には神機は握られていない。漆黒の神機は空を舞っている。
side:心葉
神機から手が離れると同時に頭の中に響いていた声が一瞬で消えた。同時に体から力が抜けるような感じがする。立つこともままならず、そのままがくりと膝をついた。
「心葉君!」
「……僕は……僕は………」
意識が朦朧とする。今までの記憶がはっきりとしない。ただ暴動や殺りくを繰り返していたのは覚えている。頭の中に響いていた「殺せ」の声に意識を傾け、動いていた。
「心葉君…帰ろうよ……もう終わりにしよう…」
「……ぁ…」
目の前にいる詩音から手が差し伸べられる。ぼやける視界の中、自分も手を出す。震えながらにゆっくりと詩音の手に触れようとする。
「……っ」
もう少しで詩音の手に触れる。そう思った瞬間、閉ざされた。打ち上げた神機が自分と詩音の間に振ってきたのだ。
『殺せ!!!!!』
同時にあの声が頭に響く。
「ッッッ!!!!」
今までとは違う。音響するかのように響く。頭が痛い。左手を頭に当て、痛みをこらえる。
「心葉!?」
咲良の声が聞こえる。それすらも響く。ずっと頭の中に残るかのように聞こえる。
「心葉君!」
『殺せ!!』
「……もう……やめ……て………!」
声がずっと響く。自分の名と殺せがずっと響く。鐘を鳴らすかのようにずっと響き続けている。
「心葉君!目を覚まして!!」
「心葉!!」
「心葉!!!!」
「心葉君!」
『殺せ!』
『殺せ!!』
『コロセ!!!』
『ころせ!!!!』
「……さ…い…………うる………さい………!!」
さまざまな声で頭を殴りつけてくる。
「「「「心葉(君)!!!!!」」」」
『『『『『殺せ!!!!!』』』』』
「黙れえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
自分の中で何かが割れるような音がした。