GOD EATER ~堕ちた救世主~   作:elsnoir

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26話 さようなら

★外部居住区

side:詩音

 

 お互いに暴走状態になりながら神機を振るった。一撃がぶつかつと同時に衝撃波が生まれ、周囲の瓦礫を吹き飛ばした。それと同時に戦闘不能状態になっている仲間たちも吹き飛ばした。

 

『神機暴走率上昇中…!?1100……1200……このままじゃ……!!』

 

 体が恐ろしい速度で蝕まれていくのがわかる。神機を持つ右腕の感覚はとうに無くなっていた。今自分の体を動かしているのは殆どが意志だ。彼を救うというたった一つの意志だ。

 

 救うんだ……絶対に………!!

 

「…かはっ!」

 

 血を吐きながら神機を振るう。お互いに一歩も引けを取らなかった。

 

『くっ……援護しようにも偏食場パルスのお陰で近づくことができない……!』

 

 サカキが悔しそうに言った。今この場に立っている方が不思議な状態だ。視界が真っ赤に染まり、体に感覚が残らなくなってきた。長い時間続いているバーストレベル5、神機の極限暴走。この体が自分の神機に乗っ取られるか、アラガミになるか、そのまま息絶えるのか。それは考えたくなかった。でももう持たないのはわかっていた。

 

「……はぁ…はぁ…けほっ…ぐっ!」

 

 また血を吐きながら神機を振るう。甲高い金属音が鳴り響き、空気が響く。体力も限界に近い。だが心葉はそうでもなかった。まだ殺意の炎を灯し、殺そうとしていた。

 

「……いい加減……死ねよ!!!」

 

 横薙ぎに強く薙ぎ払われ、神機が弾かれた。体勢を崩してしまった。致命傷を避けるため、少し後方にとぼうとした。だが体力が低下しているため、動作が遅かった。飛ぶと同時に心葉の神機が上から振るわれ、自分の左肩から右斜に浅く切り裂かれた。

 

「がっ……あ……」

 

 致命傷は避けられたが、今の一撃で体全身に力が入らなくなった。限界を迎えたんだ。もう動かない。

 

「……ははっ………心葉君……強いな……」

 

 勝てなかった。後は死ぬだけだ。終わりを悟った自分には涙を流し、笑うことしかできなかった。

 

「……もう…終わりです」

 

 心葉の神機が変形した。全てを切り裂く薙刀状態の刃が向けられた。

 

「………ねぇ、心葉君」

「…命乞いですか」

「ううん…………2つだけ言いたいことがある…せめてそれだけさせて……」

「……………」

「………極東の皆、ごめんね……守れなかった……」

 

 ボロボロの体でなんとか声を出しながら通信をした。

 

「………あと1つ……心葉君……」

「…なんですか」

「……いつか……こんなズタボロな世界じゃなくて………天国でもいいから……平和な世界で君と話がしたいな………」

「……くっ………今更……何を……!!」

 

 柄を短く持ち刺す体制に入った。

 

「……さようなら、皆」

 

 目をつむり、一言呟いて死をまった。

 

 ざくり

 

 生々しい音共に神機が突き刺さる音がした。痛くない。体の感覚が無いからだろうか。恐る恐る目を開けてみる。そこには一人の女声が立っていた。咲良だった。そして彼女の胸元には漆黒の刃が深々と突き刺さっていた。

 

「咲…良……!?」

「げほっ………随分暴れたな……心葉…」

 

 血を吐きながら少し笑う咲良。

 

「……自分から……」

「…はっ………強化神機使いでいるのも……けほっ…嫌になってな……」

「咲良……なんで……」

 

 

side:咲良

 

「………言ったところで…無駄だ……理由は……自分で考えろ……心葉…」

 

 深々と刺さった神機の刃に触れようとはしない。そもそも心臓を的確に貫いている。もうすぐ死ぬ。それはわかる。だからあと少しか時間は無い。鈍い体を動かし、一歩前に出て

 

「…っ!?」

 

 彼を抱きしめた。

 

「心…葉………ごめんね………君を……愛せなくて……救えなくて」

「……ぁ…」

 

 最後の言葉を言いきると、体から力が抜けた。視界が真っ暗に染まり、音が聞こえなくなった。

 

 つまらない人生だった。本当に。やり直しがしたいぐらいに。

 

 

side:心葉

 

 今まで堕ちた者をたくさん殺してきた。普通の神機使いも殺してしまった。そして今、自分の仲間を……パートナーを殺した。今までとは違う感覚に襲われた。

 

「……僕は………っぁ……」

 

 目の前には膝をついた詩音と死体になった咲良。その二人を見て、我に返った。

 

「……………っ!」

 

 何をしていた。誰が皆をボロボロにした。誰が彼女を殺した。自分が皆ボロボロにした。自分が彼女を殺した。

 

『殺せ…!』

 

 またあの声だ。頭を殴りつけるように響く忌々しい声。

 

「…心…葉」

 

 かすれた声で自分の名を呼ぶ詩音。

 

『コロセ…!』

『心葉…』

 

 誰かが呼ぶ自分の名前と忌々しい声が交互に言う。頭が痛い。

 

「…………ぐっ」

 

 右手に握る神機に力を込めた。

 

 

side:詩音

 

 再び心葉が自分を殺そうとしていた。やはり彼の意志は変わらなかった。自分が殺されたあとは他の皆が死ぬ。そして……

 

「……」

 

 また目を閉じた。閉じる前に心葉が神機を振るう姿が見えた。今度こそ終わりだ。

 

 ざくり

 

 また生々しい音。自分の心臓は貫かれて、息絶えた。

 

「…………ぇ」

 

 はずだった。ゆっくりと目を開け、状況を見る。自分の胸元どころか体に刃は刺さっていなかった。刃は

 

「……何だよ……やれば……できるじゃないか………」

 

 心葉の腹に突き刺さっていた。自分の手で刺していた。

 

「心……葉……!?」

 

 理解ができなかった。状況を理解する前に心葉が腹に刺さった神機を引き抜いていた。引き抜くと同時に大量の血が吹き出した。

 

「……げほっ……」

 

 血を吐きながら神機をゆっくりと持ち上げる。刃は自分の首元に向かっていた。

 

「待っ………て………!!」

 

 かすれた声で叫んだ。

 

「…さようなら」

 

 手を伸ばしやめさせようとした。ただ遅かった。

 

 ごとっ、どさっ

 

 ばしゃばしゃと血が吹き出し、2つ重い音が鳴る。

 

『偏食場パルス……収まりました………』

 

 ヒバリから通信が来た。ただ彼女の通信にはすぐには応えられなかった。

 

「………ひぐっ……っ……」

 

 これで終わった。全部。でも救われなかった。守れなかった。虚無感だけが残った。ボロボロの居住区に強い雨が降る。その雨に打たれながら静かに泣き続けることしかできなかった。




次で最後になります。最後と言ってもあと二話ぐらいの予定
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