1話
もう一つの可能性の話。彼女が手に取らなかった神機をもし手に取ったときの物語。
★神機保管庫
side:榛名
彼が残した呪われた神機の適合試験を辞退しようとした。
「……それでも…私は…戦います」
「!?」
迷いは無い。彼がいなくなった分の埋め合わせというわけでもあるが、彼の罪滅ぼしとして戦いたかった。
side:サカキ
「博士、ほんとうにいいんですか……」
「我々がダメ。といっても聞くような目では無かったよ」
彼女は覚悟を決めていた。目でわかった。
「……今は…見守っていくしかない」
ホールのような試験室のモニター室で彼女の適合試験を見守ることしかできなかった。万が一に備え、神機使いは待機させてある。
不安ではあるが、適合試験が始まった。榛名が機械に右腕を置く。その後、機械の蓋が閉じられ、腕輪が付けられる。彼女の悲鳴が響く。適合試験の悲鳴はいつ聞いてもなれない。
「……適合…成功…ですか?」
「…いや、様子がおかしい…」
機械から神機を引き抜いたが、まだ苦しみが収まらないようだ。
「適合するまでの時間があまりにも長過ぎる!!バレットの準備を!」
やはり並の人では到底扱えるような代物では無かった。いや、そもそもの神機の存在自体が危険すぎた。
side:榛名
オラクル細胞が体に流れ込んでくる。オラクル細胞は体に馴染め始めた。苦しいのは神機からと思われる声だ。様々な声で悲鳴や叫び声が頭のなかに響く。
「…うぅ…いや……!」
左手で頭を抑えながら小さく悲鳴を上げる。
『榛名君、すぐに神機を離すんだ!!』
サカキが叫ぶ。このままでは自分が危ない。神機に乗っ取られる可能性がある。でも彼は
「……これぐらい…耐えられる…!」
一人でずっと耐えてきていたんだ。
「…辛いのも…痛いのも…悲しいのも…苦しいのも……皆わかるよ……」
『榛名君!!』
「…今度は…私が受け止める……私が皆の声を受け止めるから………今は…私を信じて!!」
叫び声と共に神機の刃を地面に突き刺す。その直後に声は止んだ。
「…はぁ…はぁ………止まった……」
冷や汗が吹き出していた。
『適合…成功か…?』
「…みたい…です…ね…」
急に体から力が抜け、視界が真っ暗になった。
side:サカキ
神機に適合した直後、彼女は気を失って倒れた。
「救急班の手配を!!」
ホールの中に神機使いと救急班が駆け込む。万が一のことを思ったが、彼女は気を失ったまま動かなかった。そのまま救急班にメディカルセンターへと運ばれた。
「……何事もなければいいが…」
「サカキ博士、彼女適合するときに皆の声を受け止めるって…」
「……きっとあの神機の声が聞こえたんだろう……」
あの神機の素材は遺品や墓から作られたものだ。それに残っていた霊かなにかであろう。榛名は元々協会で孤児院をしていた。何らかの繋がりはあるのかもしれない。
「……次起きたときに普通だといいですね…」
お互い不安のまま適合試験が終わった。
★???
side:榛名
『起きて…』
声が聞こえる。女の子の声だ。でもどこからだろうか。
『起きて…』
まただ。こんどは大人の男性。どちらの声も聞いたことはない。
「……ん……ここ…どこですか…」
重いまぶたを開けると真っ暗な世界が広がっていた。そこに薄っすらと人影のようなシルエットが見える。それも無数に。そして皆じっとこちらを見ているようなきがする。
「……あ…あの………そんなに…見られると…恥ずかしいです……」
『…ありがとう』
「えっ」
影から感謝された。それも一人ではなく皆から。そもそものこの影は何なんだろうか。
「………もしかして…私が適合した神機の霊……さん?」
問いかけると頷いたように動く。
「そ…そうでしたか……」
今まで神に信仰はしていたが霊と対面したり話たりするのは初めてだった。
「……えっと……よろしくお願いします」
『よろしくお願いします』
ぺこりと頭を下げると皆同じように頭を下げた。
『…挨拶…いかないと』
「挨拶?」
『神機使いの…挨拶』
もしここが夢みたいなものだとすれば、更に目を覚まして皆に挨拶をしなければならない。
「わかりましたっ!」
霊達に乗っ取られるんじゃないかと思ったが、皆協力的で良い人?のようだ。
★ラウンジ
side:詩音
「なぜ試験の許可を出したんですか!!」
先ほど例の神機の適合者が見つかり、試験に成功したという報告を聞いた。ラウンジにいる神機使いの皆は当然いい顔はしていない。
「…私達だって止めはした……」
「だったら、何故!!」
左手でサカキの胸ぐらを掴んだ。
「ぐっ……」
「おい隊長!」
ギルバートが声を上げる。
「…また……あの事故を引き起こしたいんですか!!」
声を上げ、右手を握りしめ殴ろうとした。その直後
バァン!
「「「!!」」」
勢い良く扉が開けられた。
「…お、遅れました!!」
そこにはフェンリルの正式採用している白い軍服に身を包んだ緑の髪の女性がいた。
「暁 榛名、本日付で採用になりました!至らないところはあると思いますが、よろしくお願いします!!」
あの神機と適合した彼女がごく普通にいた。皆その光景に唖然としていた。
もしも榛名が神機を手に取ったときの物語として書きました。
完全に終わらせたつもりが結構長くなりそうです