★ラウンジ
side:榛名
勢い良く挨拶をしたものの、皆戸惑っていた。
「…………」
皆ぽかんとした表情でこちらを見ていた。中にはこちらを見たまま後ずさりする人もいた。
「えっと………」
この状況、どう見ても入っていいタイミングではなかった。それどころか間違えた可能性すらある。
「……し、失礼しました!!」
ラウンジの扉を閉め、全力で逃げた。
★エントランス
神機使いになって初日からやらかしをしてしまった?榛名はエントランスの隅っこで膝を抱えて小さくなっていた。
「…あぅ……初日そうそうから……」
『榛名は悪くない』
霊達が慰めてくれる。
「…こんなんじゃ心葉君に笑われちゃうよ……」
『大丈夫。笑わない』
「……そうですか……?」
『うん。笑わないと思う』
思う。とのことだ。
「……笑ってる可能性もあるぅ……」
「あ、あのー…榛名…さん?」
「ひゃいっ!?」
突然後ろから男性に声をかけられた。服装からしてオペレーターだ。名札にはハルオミと書いてあった。
「お、驚かせてしまってすみません……皆さんちょっと驚いて先ほどのような状態に……」
どうやら間違ってはいなかったようだ。
★ラウンジ
改めてラウンジに戻った。
「先ほどは申し訳なかった。皆驚いちゃってね…」
サカキが言った。
「えっと…暁 榛名です。改めてよろしくお願いします」
頭を下げ改めて挨拶をした。
「「「よろしくお願いします!!」」」
他の皆もご丁寧に頭を下げていた。
「み、皆さん礼儀正しいんですね…」
「い、いつもはこんなんじゃ無いんだけどね………」
リッカが目をそらしながら呟いた。
「あ、あの………ふ、普通で、大丈夫…ですので……」
とことん警戒されているようだ。皆体はこちらを見ているが、自分の顔や目を見てくれない。こういうプレッシャーにはかなり弱い方だ。
「……えっと……その……あ、あの…」
「………」
「……………………ふぇ…」
プレッシャーに負けて泣き出してしまった。
「ああっ、ごめんごめん!私詩音っていうの!ブラッドの隊長やってますっ!」
詩音が慌てて挨拶をすると、彼女に続いて他の皆も挨拶をした。
「…ぐすっ…皆さんよろしくお願いします…」
リッカに背中を撫でられ、慰めながら挨拶が終わった。簡易的な自己紹介が終わった後、訓練になった。
★訓練ホール
神機の適合試験を行った無機質なホールに来た。
「まずは神機の扱い方だけど」
「これ、特殊な神機でしたよね…?来る前にマニュアルを読んでおきましたが…」
一般的な神機とはまるで違う。槍なのに薙刀になったり、銃身が2つあったりと。
「よし、まずは動かないダミーを配置するよ」
リッカが指示を出すと同時に、小型のアラガミのダミーが置かれた。
「始め!」
彼女が声を上げたときには体が動いていた。無意識のうちに。
ガシャン、ジャキン!
状況を理解した頃には手元から音が機械音がなった後に、目の前のダミーの上半分がずれて地面に落下していた。
「なっ……」
「………あれ?」
驚くリッカ。疑問符を浮かべる榛名。
「………あ、あれれ…?」
いつの間に動いていたのかわからない。それどころかいつ神機が槍から薙刀に変わって、ダミーの上半分が無くなっているのもわからなかった。
「…まさか……次、攻撃するダミーを3体配置するよ!」
リッカの声と共に同じ小型のダミーが3体設置された。その直後また体が動いていた。神機が変形し、銃携帯になっていた。砲撃音が鳴り響き、ダミーの1体が文字通り破裂した。
「ッ!」
背後からダミーが攻撃しようとしていた。神機をまた変形させ薙刀形態(エッジフォーム)にし、薙ぎ払った。刃はダミーを捉え真っ二つにした。最後に目の前にいるもう一体のダミーを槍形態(スピアフォーム)に変えた神機で貫いた。
「…く、訓練終了……お疲れ様…」
スピーカーから聞こえるリッカの声は震えていた。
「…あ、あれ……私……何を……」
気がついた頃には破壊されたダミーが転がっており、訓練が終わっていた。
★サカキの研究室
side:詩音
リッカに声をかけられ、サカキの部屋に詩音、シエル、リンドウが集まった。
「リッカ君、そんな青ざめた顔でどうしたんだい………」
「とりあえずこの映像見て欲しい……さっきの榛名の訓練の映像なんだけど……」
映像が再生される。ダミーが配置された直後、破壊されていた。その後3体新たに配置されるがそれもあっという間に破壊された。
「…これは……」
「凄い……っていうにはおかしい…よね?」
唖然とする全員。
「なあ、確かあの子外部居住区で孤児院やってたんだよな?」
「そうだね…」
「そんな人がここまでできると思うか…?」
普通に考えて無理。
「…マニュアルを読んだとは言ってたけど…」
「あれだけ複雑な機構を、マニュアルを読んだだけでここまで動けるのはありえない話ですね…」
「ついでに一ついいか?」
リンドウが口を開く。
「……あの子、オッドアイだったか?」
「え?」
「もっかい映像流してくれ」
リンドウの指示にしたがってもう一度再生する。
「止めてくれ」
映像を一時停止する。ちょうど薙ぎ払っているときだ。彼女の顔が映っているが、
「…右目が赤い」
「彼女はオッドアイじゃないね……」
いつもは黒い瞳だが、この時は真っ赤になっていた。病気的なものではない。
「……あの瞳、心葉を思い出すな…」
「…だね……憎悪に満ち溢れたような、怖い目…」
ここにいる3人は暴走したときの心葉と敵対している。
「…まさか……いや、戦闘時、神機…心葉君に乗っ取られているのでは…」
「……」
シエルが口を開いた。それについて誰も否定しなかった。
「明日、戦場に出してみて要観察。といったところかな」
「了解。またこの3人で見ていこう」
サカキの提案に乗り、翌日の予定が決まった。不安が残るまま、榛名が神機使いになって一日が終わった。