GOD EATER ~堕ちた救世主~   作:elsnoir

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また久々の投稿です。待ってた方遅れて申し訳ありませんでした。


5話

★防衛ライン

side:榛名

 

 ノヴァのお陰で第一波の60%は消し飛ばすことに成功した。これから20分の間は冷却が必要になるため使うことはできない。感覚では1派に付き、1回だ。他の手持ちのバレットにそれ以外の広範囲に影響するバレットはない。

 

「……あと40%…!」

『皆さん、後4派あります。体力の温存も考えてください!』

「榛名!無理だけは絶対にするなよ!!お前が死んだら心葉になんて説明したらいいかわからねぇからな!!」

 

 ヒバリの無線、リンドウの叫び声が聞こえる。この後も考えながら戦っていかねばならない。だからといってペースを緩めることはできない。いかに体力を残しながら眼の前のアラガミを処理するかだ。

 

「そんなの……わかってます!!」

 

 神機を変形させ、アサルト状態に変形させた。トリガーを引きながら自分の目の前に半円を書くように振り払った。すると目の前にはオレンジに光る球体ができていた。その数10。数秒後球体が爆ぜ、弾丸が一直線に放たれた。扇状に広がっていった弾丸はそれぞれアラガミを貫いた。

 

「次っ!!」

 

 神機を形態変化。槍にしたあとに薙刀に。迫りくる小型のアラガミを切り捨てる。

 

『第一波、残り3%!』

「これで、終わりっ!!」

 

 中型のコンゴウの顔面に神機を突き刺す。血が吹き出し、動きを止めた。

 

『第二波、残り3分で作戦エリアに到着します!』

「今のうちに回復錠剤を使っておけ!!」

 

 リンドウの指示に従い、ポーチから錠剤を取り出し噛み砕く。

 

『みんなおまたせ!!リンクバースト、全部起動するよ!!』

 

 リッカの通信だ。長期戦になることがわかっていたため、第一波が終了してから起動をすることにしていたそうだ。

 

『皆さんにリンクバーストレベル3の効果、並びに一時的にステータス上昇の効果が付与されます』

『第二波、残り1分で到達します』

 

 ヒバリ、ハルオミの通信。体に力が溢れ出すような感覚がする。だが、アラガミが迫っている。まだ半分にすら行っていない。

 

「…すぅ………ふぅ……」

 

 ゆっくり息を吸い、吐き出す。

 

「心葉君は…アラガミと戦う時…どんな気持ちでいたんだろう…」

 

 彼も少なからずアラガミとは戦っていたはずだ。倒すことだけだろうか。それとも何か別の感情を抱いていたのだろうか。

 

「………心葉君、貴方は…殺意を抱いていましたか?それとも守ることを思っていましたか?」

 

 意志とは裏腹に、そんなことを呟いていた。

 

『第二波、作戦エリアに到着!!』

 

「行くよ!!」

 

 詩音が声を上げた。だが、

 

『っ!?アラガミの群れとは別に高速で移動する個体を捕捉!!』

『外部居住区に侵入!!射撃班、対応できるか!?』

 

 ハルオミ、ツバキが声を上げた。唐突な事態に誰もが対応が遅れた。

 

「榛名、外部居住区に向かいます!!」

『その距離じゃ遅い!!射撃班にまかせ』

「私なら…この神機ならできます!!」

 

 神機を銃形態に、今度はスナイパー。銃身を地面に向け、外部居住区の方を向く。

 

「お願い、上手くいって…!!」

 

 祈りながら引き金を弾いた。直後乾いた音が鳴り響き、体が宙に飛び、あっという間に射撃班がいるアラガミ装甲を飛び越えていた。

 

「「なっ!?」」

 

 隣を過ぎ去っていったシエルとジーナは目を丸くしていた。使用したバレットはまた特殊なもの。作戦エリアの超長距離移動用の為に開発されたもので、跳躍弾と名付けられていた。仕組みは圧縮された空気の弾丸を地面に撃ち、その逆風で飛ぶ仕組みだ。これを逆に至近距離で相手に撃って飛ばすこともできる。ちなみに威力は3種類に分けられていて、弱中強の3種で今のは強のタイプだ。

 

『射撃班、榛名の援護に回れ!!榛名、危ないと思ったらすぐに引け。いいな!』

「はい!!」

 

 速度がが弱まってきた。バレットを切り替え、跳躍弾、弱に切り替え垂直に向けて地面に向けて撃つ。空砲が鳴り響き、自分の体がまた浮く。上空から市街地に侵入したアラガミを見る。

 

「赤い…!」

 

 真紅に染まった個体で、背中には巨大な翼のようなブースターしなやかな尻尾。腕にはなにか箱のようなものが付いていた。

 

『接触禁忌種…ルフス・カリギュラ…!!しかも、大きい!?』

「よりにもよって特殊な個体…!」

「榛名、足止めだけでもいい…生きることだけに専念して…!!」

 

 少しだけ座学で見た。ハンニバル種の第一接触禁忌種の変異体として見ている。通常のカリギュラですら凶悪なものが更に凶悪になった種だ。移動速度、攻撃力、凶暴性のどれをとっても上である。

 

「わかりました!!」

 

 宙に浮きながらバレットを変換。今度は跳躍の弱だ。体をルフス・カリギュラに向け、銃口は宙に向けたまま。そして引き金を引く。再度空砲が鳴り響き、体が飛ぶ。こんどはルフス・カリギュラに向けて一直線だ。神機を変形、槍形態に。そのまま跳躍弾の速度に乗ったまま、ルフス・カリギュラのブースターめがけて突き刺した。

 

「やあああああああああああああああああ!!!」

「シャアアアアアアアアア!!??」

 

 突然の襲来に驚くルフス・カリギュラ。漆黒の槍は深々とブースターに突き刺さっていた。

 

「先に…いかせるもんですか!!」

「シャアッ!!」

 

 ルフス・カリギュラはすぐに気づいた。そして巨大な手で榛名をつかみ、そのまま地面にむけて叩きつけた。行動が早く、逃げることもできなかった。

 

「きゃあっ!!」

「榛名さん!!」

 

 シエラが声を上げた。後方からスナイパーの弾丸が無数に飛んでくる。だがルフス・カリギュラはそちらに見向きすらしなかった。

 

「くっ…!」

 

 神機を杖にして立ち上がる。そのときにはルフス・カリギュラはブースターから氷を吹き出し宙にういていた。

 

「あ…やばいかも……」

 

 すぐにわかった。今どれだけヤバイ状態か。痛む体にムチをうち、すぐに神機をスナイパーに変更。

 ジャキンと音が鳴ると、ルフス・カリギュラの腕から薄い紅色の鋭い刃が展開していた。そのまま飛びかかってきた。

 

「間に合って…!!」

 

 跳躍弾を地面に放った。体が後方に吹っ飛び、自分がいた場所にはあの拳と一緒に刃が突き刺さっていた。間一髪だった。ゴロゴロと地面を転がりながら体勢を整える。だが

 

「…あっ…」

「榛名さん!!」

「榛名!!」

 

 立っていたときにはもう右手を振りかぶったルフス・カリギュラが目の前にいた。銃を構える時間すらなかった。何をするにも間に合わず、そのままルフス・カリギュラの振り下ろされた一撃をもろに食らってしまった。そのまま住宅の壁に勢いよく叩きつけられた。

 

「…がはっ…」

 

 骨をやられたかもしれない。内蔵もだ。

 

「…ごほっ……けほっ……」

 

 吐血が止まらない。一度引いて体勢を整えたくても、体が動かない。

 

「…ごめん……っ」

『榛名!?榛名!!』

 

 ツバキの声が聞こえる。だがその声すらも薄れて何も聞こえなくなっていった。視界も真っ暗にそまっていった。

 

 

side:詩音

 

 その頃詩音達は順調にアラガミの群れを処理していた。現在第三波の50%程を処理したところだ。

 

「榛名ちゃん…大丈夫かな…」

「…わからねぇ…」

『榛名!?榛名!!』

 

 通信でツバキが声を上げているのが聞こえた。

 

「榛名ちゃん!?」

『榛名さん戦闘不能!!ルフス・カリギュラ、止まりません!!』

「隊長、すみません、このままでは…きゃぁっ!?」

 

 通信だけでわかる。最悪な状態になっていた。榛名は戦闘不能、避難させようにもルフス・カリギュラが暴れているためそれができない。シエルとジーナの二人ではほんの少し動きを止めて精一杯だ。

 

「そんな……誰か、戻れる!?」

「エリナ、エミール!俺達は榛名たちの救援に行くぞ!!」

「はい!」

「わかった!」

 

 コウタ、エリナ、エミールが全力で走り出した。彼らが到着するまでに間に合えばいいが…

 

「お願い、無事でいて……!」

『緊急事態発生!第四派、予測より動きが早い!!作戦エリア、侵入します!!』

「そんな…!!」

 

 まだ第三波が残っている状態で第四派が来てしまった。前も後ろも最悪の状態になってしまった。

 

 

★???

side:榛名

 

 真っ暗な場所にいた。体の感覚はあんまりない。むしろ無いに等しいだろう。

 

「……ああ…だめだったんだ……私」

 

 あの時ルフス・カリギュラの一撃をもらい、気絶。そのまま死にいったったようだ。

 

「………あの時、他の誰かが行っていて、私が前衛にいればよかったんだな……」

 

 今更後悔しても何も起こりはしない。ただ無があるだけだ。

 

「……それにしても…ここどこだろう……初めて神機と適合した時もこんな場所だったかな……」

「それもそうですよ。ここは神機のコアの中ですから」

 

 自分の後ろから冷たい声がした。

 

「えっ……うそ……でしょ……」

 

 振り向けば自分と同じように黒いコートに身を包んだ、小さな影があった。

 

「心葉…くん……」

「何で、この神機と適合したんですか」

 

 彼は感動の再開も無いようだ。怒っていた。

 

「……せめて、貴方の後を継ぎたかった」

「人殺しの後ですか」

「違います!!神機使いとして…みんなを守る人として…!!」

「この神機、僕の偏食因子。どういうものかわかってそれを言ってるんですか?」

 

 もともと心葉の特殊な偏食因子が変わって自分が適合できるようになった。だが偏食因子の変異が完全に終わったわけではない。故にまた神機使いに特攻性のある偏食因子に変異する可能性もある。同時に、神機。無数の神機使い、市民の墓を元に作られたものだ。そしてOracleRageSystem。使用すれば火事場の馬鹿力とも言える自身の潜在能力を最大限まで発揮できるシステムもある。もちろん後遺症の可能性もあったりする。

 

「今はまだいいかもしれませんよ。いずれ偏食因子の変化がある。僕はこの神機に喰われたみたいですし、この神機のことはわかります」

「………」

「どんな変化を起こすかはわかりませんが、最悪の結果に繋がる場合もある。それこそ、惨劇を繰り返します」

 

 惨劇。心葉による咲良、派遣された神機使い数名の死亡、同時に極東全神機使い戦闘不能まで至った暴走。今度はそれ以上の被害になる可能性だってある。

 

「………」

「………嘘、ついてますね」

「……ごめんなさい」

 

 本当はもっと別の意味があった。後でわかった。最初は罪滅ぼしのつもりで適合したつもりだった。だが自分の本心は違った。

 

「………そんな生半可な覚悟で適合したんですか……史上最悪の神機と」

「………」

「……戦闘中ではありますが、貴方の体が弱まっている今なら適合を切り離すことはできます」

「…待って」

 

 震える声で言った。

 

「………せめて、私の…適合した理由だけ言わせて」

「……あの時もそうだ。口だけだ。聞きはしますが」

 

 彼の目に光はなかった。透き通った空色の瞳は曇り空だった。

 

「…………本当は……貴方のそばにいたかった」

「………」

「…この神機を使っていれば、少しでも貴方の近くにいられると…思ったの」

「……そんな……そんな理由で……貴方は……!!」

 

 心葉の声も震えていた。今にも掴みかかりそうなぐらい怒っていた。

 

「ふざけているんですか!!それだけの理由で、この神機と適合したんですか!!人を殺し続け、仲間を傷つけた最低最悪の血に濡れた神機と!!」

 

 心葉は小さな体で迫り、榛名の胸ぐらを掴んだ。

 

「ふざけてなんかいません!!」

 

 胸ぐらを掴まれているが、逆に彼の両肩を掴んだ。

 

「私は本気です!!」

「っ!?」

「………だって……だって……あのままじゃ……心葉君が…可愛そうです……」

「榛名……さん…?」

 

 いつの間にか目頭が熱くなり、涙が溢れ出していた。

 

「…知ってますか?人って一人の時や、忘れ去られたときが一番辛いんですよ……?」

「………」

「…心葉君が使っていた神機は他の人の神機とは隔離されて、ちょっと離れた場所に置いてあって………もし私が適合しなかったらそのまま暗い場所で一人で……みんなに忘れられて……そんなの…あんまりですよ……」

「……なんで…そこまで…」

「……だって…貴方は………神機使いになってから…何一つ救われていないじゃないですか……死んでも救われないなんて…そんなことって…」

「榛名…さん……」

 

 この神機に適合した後、心葉のことを神機使いになってからのことを全部教えてもらった。ずっと茨の道を歩き続けていた。一人で堕ちた者を、救われない神機使いを殺し続け、誰からも慰めも、支えもしてもらえずに。ある時に仲間ができた。それでも仕事のときは一人にならざるを得なかった。あるときは他の支部に少しでも仲間ができた。でもその仲間は目の前で堕ちた者に殺されてしまった。あるときはその神機使いの仲間が堕ちた者になり、その人を殺した。あるときはその堕ちた者に殺された神機使いと堕ちた者になってしまった仲間に逆恨みされた。そしてその神機使いすら殺した。それから、また一人になって、本当の自分を知って、仲間を傷つけ、見ず知らずの神機使いも殺し、パートナーだった神機使いも殺してしまった。そして……自殺した。

 心葉は沢山の人を救われない人を救ってきたのだろう。でも、彼が救われることは生涯で1回もなかった。むしろ救われるべきは彼のほうだった。

 胸ぐらを掴んでいた手の力が緩み、だらんとたれた。

 

「……だから……せめて……私だけでも…貴方のそばにいたかった……そうすれば…わからなくても…少しぐらい救われるかなって……」

「なんで……そこまで……」

「…だって……私は…心葉くんのことが…大好きだからです」

「……僕は…人殺しですよ……?自分のことで絶望して、みんなを傷つけた最低な人ですよ…?」

 

 こんなことを前にも言われたことがある。自分は人殺しだ。普通の神機使いとは違う。そう。でも、

 

「…前にも言ったじゃないですか。心葉君は心葉君で…私の救世主だって」

 

 あのときは抱き寄せた。けど、今度は違う。抱きしめてあげた。力強く。でも痛くないように優しく抱きしめてあげた。

 

「……あったかい…今まで…こんなの…感じなかったな…」

「…よかった…」

 

 いつの間にか心葉も自分の背に手を回し抱きついていた。ここはコアの中で、意識だけの世界かもしれない。それでも、温かった。

 

「………ねぇ、私は死んだの?」

「…いえ、まだ気絶してるだけです」

「……すぐ起きれる?」

「はい」

「………力を…貸してくれる?神機を通して貴方といたい。それに、守りたいものがあるの」

 

 まだ死んではいない。それにすぐ立てる。ならまだ可能性はある。

 

「………今出せる全力の力を。オラクルレイジを使いましょう」

「…できるの?」

「僕と…榛名さんなら…一緒にならできるはずです」

 

 

★外部居住区

side:コウタ

 

 なんとか間に合ったが、最悪の状態だった。射撃班のシエル、ジーナも戦闘不能。エリナ、エミールも重症をおってしまった。なんとか自分が抑えられている状態だ。

 

「くそっ…長くもたねぇ……」

 

 がら。と瓦礫が崩れる音がした。音の方をみるとゆっくりと立ち上がる榛名がいた。

 

「くっ…榛名…!ダメだ!!君だけでも逃げろ!!」

「……少しでも…やれることがあるなら…やります……!!」

 

 

side:榛名

 

『僕に合わせてください。そして貴方の願いを…強く思ってください』

 

 頭の中に心葉の声が響く。自分の願い。守るものを守れる力を。救済の力を。

 

『準備はいいですか?』

「うん……大丈夫」

 

 神機を強く握り、強く思う。

 

「………もう、大丈夫だから……信じてる……貴方の力を」

『…貴方ならできます。貴方の願いを…僕に見せてください』

 

「「オラクルレイジシステム、起動!!!」」

 

『OracleRageSystem Standby』

 

 今度こそ守れる。そう思った。できると思った。否、できると。だって彼がいる。二人なら、どんな困難でも乗り越えられると、そう思った。

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