GOD EATER ~堕ちた救世主~   作:elsnoir

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エンディング

★神機のコアの中

side:榛名

 

 時間はあまりにもなかった。選び直すことのできない選択肢を決めるには時間がなかった。

 

「………後どれくらい…時間はありますか…?」

「…わからないです。けど、そう長くは無いと思いますよ……貴方の意志は今神機のコアの中にあります。あっちの体はただの抜け殻……徐々に衰弱してるはずです」

「………そっか……私が生きるか、一緒に死ぬかの二択なんですよね…」

 

 簡単に言ってしまえばその二択だ。

 

「……僕は…貴方に生きていてほしい」

「…皆さんの約束もあります…でも、それ以前に……僕が…生きてほしい。そう思っているんです」

 

 彼の目はまっすぐにこちらを見つめていた。

 

「………結局…だめなんですね………心葉君とは…一緒にいられない…」

 

 自分が神機を手にとったのは心葉と少しでも近くにいたかったから。だが、そういうわけにはいかなかった。すべての物事に終わりがある。ずっといられるわけではない。

 

「……でも…貴方の願いなら…受け入れます……」

「……それで…いいんです……」

 

 お互いに抱きしめあった。

 

「……心葉君は……これで…すくわれた…?」

「…わかんないです…でも、心地よく終われそうです…」

 

 ふと彼の体をみると、徐々に透け始めていた。

 

「………あぁ……」

 

 もう時間が無い。どんどん心葉の体が透けていく。

 

「……そんな声…出さないでください…上で…見守ってますから」

「………ずっと…見ていてくださいね……」

「…はいっ」

 

 最後ににっこりと笑った。その笑顔で、彼は消えていった。同時に目の前が真っ暗になっていった。

 

 

★???

 

 目が痛い。眩しいのだろうか。体も重い。右手はずっと何かを握っている。

 

「………戻ってきたんですね」

「榛名ちゃん!!」

 

 目を覚ますと詩音を始めに、皆がかけよってきた。

 

「………神機……」

 

 右手にずっと神機をにぎっていたようだ。神機のコアを見ると元々はオレンジ色に光っていたものが、今では色がなくなり黒色に。そしてコア全体にヒビが入っていた。心葉の言ったとおりだった。

 

「………榛名ちゃん?」

 

 詩音が声をかけた。

 

「……ごめんなさい、今日は……一人にさせてくれませんか……」

 

 神機の柄を杖にしながらベッドを降りた。

 

「…えっ、ちょっと待ってって」

「隊長、今はやめておけ」

 

 行こうとしたところを、ギルが止めた。そして無言で首を横に振った。

 

「………ごめん」

「……いえ………すみません、少し行ってきます」

 

 かすれるような声で一言告げ、ゆっくりと歩き出した。

 

 

★心葉の部屋

 

 神機を保管庫にしまい、おぼつかない足取りで、心葉の部屋に来ていた。心葉の部屋といっても、自分が使っていいと支持された部屋である。普段は別の場所で寝ていたから、入ったのは初めてだった。入ってすぐに崩れ落ちるかのようにベッドに倒れ込んだ。

 

「……………ひぐっ……」

 

 大粒の涙がこぼれ始めた。彼がもうどこにもいないと改めて自覚した。ここにいても彼がいるわけでもなく、彼の残り香がするわけでもない。彼がいたという形しか残っていない。

 

「…心葉君っ……心葉君っ……っ……うあああああああああああああああああああああっ!!!!!!」

 

 初めて大声を上げて泣いたかもしれない。涙は止まること無く、ベッドを濡らし、彼女の声は静な部屋に響き渡るだけだった。どんなに叫んでも、どんなに泣いても、彼はもういない。

 

 

 

 それからのこと。

 榛名はあったことをすべてサカキに話した。神機のコアの中に心葉の意識があったことを。そして1週間待機命令が出された。この前の後遺症があるかどうかの検査も含めの待機だ。後遺症があるないにもかかわらず、神機のコアを修復するのに2週間はかかるらしく、動けるようになるまでそれぐらいかかる。他の皆はいつもどおりにやっていた。榛名も…変わらずにやれていた。強いて言えばお墓参りの時間が前より長くなったことぐらいだ。回数も増えた。朝と夕方に必ず行っている。

 

 

★ラウンジ

side:サカキ

 

 上への報告等が終わり、ようやく一息付けるようになった。

 

「…はあ…これで終わりだ…」

 

 ムツミからコーヒーをもらい口にする。

 

「……サカキ博士」

「なんだい?」

 

 隣にいたリッカが口を開いた。

 

「…榛名君の神機、治ったんだけど……」

「なにかあったのかい?」

「……オラクルレイジシステムが全壊していたの」

「……そうか…それは…良いことのはずだ…」

 

 オラクルレイジシステムは、使用者に大きな負担がかかる。体にも意識にも。心葉の件もあり、設計者の上層部はデータ含め今あるものをすべて破棄したそうだ。そして心葉と榛名が使っていたものも壊れた為、もう存在しなくなった。

 

「………榛名君にはブラッドのような血の力もない。心葉君みたいに特殊な人でもない。あの時感応現象が使えたのも、きっと……」

「…そうだろうな……リッカ君」

「なんですか?」

 

 ふと思ったことがあった。心葉について。

 

「………君は…あの子がこれで救われたと思うかい?」

 

 血塗られた道を歩み、仲間を殺して、自分で死んだ。そして神機のコアの中に残ってしまい、榛名と会話をした。そして最後に消えた。成仏した。といったほうが正しいかもしれない。

 

「……私は…救われたと…思う」

「…………私は…そうじゃないと思うんだ。科学者が根拠もなしに言うのはどうかと思うがね」

 

 本当に彼が救われたかどうか、定かではない。もう彼を縛るものは無い。けれど、未練は沢山あったかもしれない。もっとやりたい事もあったかもしれない。笑っていたかったかもしれない。幸せになりたかったかもしれない。どれも叶わなかった。

 

「…せめて、今亡き彼のぶんまで、我々が精一杯生きよう。そして彼のような悲劇や惨劇を起こさないためにも、我々が注意するべきだ」

 

 

 榛名がもとに戻った時に、とある動きがあった。堕ちた者をこれ以上出さないためにするための運動。詩音とユノを筆頭に、その活動をしていた。各支部に行ったり、CMを流してみたりした。ただ注意するだけじゃない。日暮 心葉という人がどれだけ辛い目にあったか。そのことも含めながら離していた。二度とその惨劇も出さず、その辛い目に合わないためにもと。榛名もその活動に参加していた。泣きながら訴えていた。

 

「……死んだ心葉君の為にとはいいません…!ですが…今聞いてる皆さん自分自身の為に…仲間の為に…どうか…よろしくおねがいしますッ!!」

 

 

 

 今自分にできることは守るべきものを守ること。そして、心葉のぶんまで精一杯生きる。それだけは必ずすると。彼が願ったのだ。自分には生きていて欲しいと。その願いに答えるために、今日もまた榛名は歩き出した。

 

 

GOD EATER ~堕ちた救世主~ If Ending fin




急ぎ足のような終わり方になりましたが、榛名神機使いルート、If Endingがこれにて終わりです。

可能性からつながる物語。次が最後になります。救われなかった少年が救われる物語

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