GOD EATER ~堕ちた救世主~   作:elsnoir

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エンディング

★ロビー

side:詩音

 

 先日の救世主喰らいについての話し合いのあと後日、その後どうなったかについて報告した。心葉が使っていた神機は榛名が適合。神機のコアの中にはまだ心葉の意思が残っていたようだが、その神機の特殊機能、オラクルレイジシステムを使用後に全損。同時に心葉の意思も消滅した。完全に抜け殻になったのだ。

 

「……はぁ…」

「…詩音さん…」

 

 ジュリウス、ロミオが返ってきたことで皆喜んでいたが、改めて心葉の話をしてから空気が重いことがあった。コウタやロミオがなんとか持ち直しをしているが、特に詩音は落ち込んだままだった。危険性を考えて出撃には行かせていない。榛名もとても心配していた。

 

「………ごめんなさい、こういう時になんて言えばいいかわからなくて…」

「いいよ。私がずっと思い悩んでるだけだから………ちょっとお墓参り行ってくる」

 

 以前は墓参りのときは誰かしらついてくることはあったが、最近はすこしそっとしてあげようとしているみたいで、だいたい一人で行っている。今は一人でいたい。

 

 

★聖域

 

 豊かな花園にそびえ立つ無機質なモニュメント。そこにいつも通り近くで下ろしてもらい、モニュメントに向かって歩いていた。いつもどおりの墓参り。けれど今日だけは違った。

 

「……民間人…?」

 

 白いコートのような服装に身を包んだ子供?だった。神機使いかと思ったが右手にも左手にも腕輪はない。そもそも聖域に子供一人で来れるわけがない。ただ、後ろ姿のシルエットはなんだか見覚えがあった。

 

「…んん……保護して先に連れて帰ってからまたお墓参り来よ」

 

 子供に近づく詩音。その後、結局その日聖域に戻ってくる必要は無くなってしまった。

 

 

★ラウンジ

side:ユノ

 

 ラウンジに入るとなにやら準備をしているようだった。飾り付けをしている人がいれば料理を作ったりといろいろだ。

 

「えーっと、そちらの飾りは壁に。看板はあっちに設置を。あ、それはこっちに」

 

 どうやら設営は榛名が仕切っているようだ。

 

「あ、ユノさんにサツキさん」

「またパーティーでもするんですか?」

「たまたま詩音の誕生日が今日だって言うからさ、榛名がどうかなってことですぐ開くことになったんだ」

「そうだったんですね。コウタさんは今何を?」

「また司会だから一応台本を頭に入れようと思って」

 

 彼の手には少し大きめのメモ用紙が握られていた。

 

「会場は榛名さんがやってるんですか?」

「榛名はもともと孤児院育ちだからこういったことはよくできるみたいでさ。レイアウト見せてもらったらとってもよかったから指揮をとってもらってるんだ」

 

 榛名も手伝いながら会場の設営を行っていた。レイアウトを見ながら他の皆に指示を出していた。

 

「次はその飾りをモニターのところに。ああっ、その飾りは最後でお願いします。あっ、リンドウさんつまみ食いしちゃだめです!!」

「悪い悪い」

「まったくもう」

 

 さしずめ先生のようにも見えた。

 

「あ、ユノさんにサツキさん。お疲れ様です」

「榛名さんこそお疲れ様です」

「すみません、会場設営中に……あっ、よかったら作った料理の味見とかしていかれますか?」

「ううん、大丈夫だよ。始まるまで楽しみにしてるから」

 

 ちょっと魅力的に見えたが今はおとなしくしていよう。

 

「では私が」

 

 となりからサツキが動いた。榛名はそれを見逃さずに小さいお皿に盛り付けた。卵焼きのようだ。

 

「はい、どうぞ」

「ありがとう。うん、美味しいですね」

「よかったです。これ私が作ったものでして」

「榛名さん、料理もできるんですね」

「子供たちの面倒を見るために、必死になってましたから」

 

 流石といったところかもしれない。

 

「あー、でも片付けとかは…ちょっと苦手でして…えへへ」

 

 人差し指同士ををつんつんと合わせながら目をそらす榛名。

 

「まあ誰にだって苦手なことの一つや二つありますよ」

「サツキにはもう少し安全運転を学んでほしいな…」

 

 慣れてきてはいるが切実な願いだ。

 

「そういえば詩音さんは…?」

「えっと……お墓参り行ってからまだ戻ってきてませんね」

 

 詩音が動き出したのは午後3時ごろらしく、今は6時だ。いつもなら時間かかっても一時間で帰ってくる。

 

「どうしたんでしょうか?」

「ちょっと電話してみるよ」

 

 コウタが連絡をしはじめた。電話はすぐにつながったようだ。

 

「もしもし詩音?ずいぶん遅いけど大丈夫?そっか、皆でご飯待ってるからさ。うん気をつけてな」

 

 どうやらすぐ戻ってくるようだ。

 

「今から聖域から戻るって。30分すれば到着するらしいし」

「今のうちにもう少しなにかできそうですね」

 

 榛名が顎に手を当て考え始めた。つい先程レイアウト通りの形にはなったらしい。

 

「んー………あっ、そうです!」

 

 どうやら何か思いついたようだ。

 

 

side:榛名

 

 30分以内に思ったことを実行。とりあえず新聞紙を折って三角形のものを作る。全員分にそれが行き渡った時にちょうど扉が開いた。

 

「たっだいまー!」

 

 予想通り詩音が帰ってきた。そこで作ったものの出番だ。

 

「せーのっ!」

 

 掛け声とともに作った三角形のものを振り下ろす。次の瞬間、パァン!と乾いた音が何度も響き渡る。

 

「おぉっ!?」

 

 突然の音に驚く詩音。何を作ったかと言うと紙鉄砲と呼ばれるものだ。パーティーで使われるようなクラッカーの音を模したような音がでる。

 

「え、皆どうしたの…?」

「今日は詩音さんの誕生日じゃないですか」

「あ、あれそうだっけ……あはは…ごめんごめん…気を使わせちゃったよね」

「…皆心配してたんですよ」

 

 何日も暗い表情をしていたんだ。心配しないわけがない。けど今は暗い表情は見えない。吹っ切れたのだろうか。

 

「そうだよね。ごめん。えっと……これ私の誕生日なんだよね」

 

 会場を見渡しながらつぶやく。

 

「そうですね。主役が来たんですから、始めましょうか」

「ごめん!!これ…私の誕生日で祝う会じゃなくなってもいい?」

「どういうことですか…?」

「えっとね……ちょーっと待ってて」

 

 一度扉の後ろを見た後に、そう言って扉の外に出た。その後

 

「こら逃げるなー!!」

 

 他に誰かいるようだ。

 

「「「????」」」

 

 どういう状態かまるでわからず、皆首を傾げていた。少しすると

 

「…の、やっぱ…」

「大丈夫だって言ってるでしょ!極東の皆が敵になっても、世界中の皆が敵になっても、私はずーっっっと味方でいるから!!」

「って、うわぁ!?」

 

 詩音とどこかで聞いたことのある声と共に勢いよく扉が開かれた。扉からは詩音と真っ白な人影が現れ、床に顔面から叩きつけられた。

 

「うわ痛そう……けど…誰なんだ…」

 

 となりでコウタが呟いた。同じように周りから誰?知らない?と聞こえてきた。自分はしっかりわかる。その姿を知っている。皆知らなくても自分はわかっている。

 

「……心葉君!!」

 

 

side:心葉

 

 乱暴に扉を開けられ、顔から転んでしまった。ちょっと鼻が痛い。ゆっくりと顔を上げ前を見る。当然そこには極東の皆がいる。皆いい表情はしていない。驚いている。当然だ。自分の居場所はここではない。だから詩音に保護してもらって皆に会う直前で拒否したのだ。

 

「……そうですよね、ごめんなさい、すぐに出ます」

 

 すぐ逃げようとした。足早に立ち上がろうとした途端、

 

「……心葉君!!」

 

 前から一人の女性が自分に抱きついてきた。ここにいないはずの榛名だった。

 

「心葉君…心葉君…っ……このはくん……!!」

 

 榛名が泣きながら自分の力強く抱きしめる。少し痛いぐらいに力強い。ただ彼女の右手の手首あたりに違和感を感じた。あの腕輪がついていた。見なくても体に触れただけでわかる。

 

「……なんで…」

「…心葉、俺達が怒ってる顔してるか?」

 

 コウタが自分の目の前でしゃがみながら言った。そう言われ改めて皆の表情を見る。怒ってなさそうな表情はしていた。実際はわからないが。

 

「ギルは怒ってるように見えるよー」

「そうだぞー」

 

 ナナとロミオがニヤニヤしながら言う。

 

「おいお前ら……これでも表情柔らかくしてるつもりなんだがな……心葉、俺は怒ってねぇよ」

 

 ギルがぎこちなく軽く笑っていた。なぜ怒っていないのだろうか。わからない。

 

「ソーマ、他人事のように聞いてると思うが、お前もだからな」

「うるさい。言っておくが心葉、俺もお前には怒っていない」

 

 リンドウとソーマもそんなやりとりをしていた。

 

「…何で…ですか……僕は……僕は……」

 

 皆を傷つけ、人殺しまでした。そんな自分を見て、なぜ怒らない。わからない、わからない、わからない。

 

「仲間だからに決まってるんだろ」

 

 コウタがこちらの目を真っ直ぐに見ながら言う。

 

「……僕を仲間だって言うんですか……まだ……まだ仲間だって言うんですか…」

「当たり前だろ。最初出会ったときからずーっと仲間だ」

「………わからないです…なんで僕を仲間だって言うんですか………僕は…たくさんの人を殺して……みなさんを傷つけて…他の支部の方や咲良さんまで殺したのに……どうして……」

 

 それでもまだ仲間というのだ。

 

「…心葉君、何度も言わせないでください」

 

 榛名が震える声で口を開いた。

 

「もし心葉君が邪魔なら…今頃こうやって抱きしめてもいませんし、声もかけていません。心葉君は心葉君。人殺しでも関係ありません。私達の……大切な仲間で…かけがえのない人ですから……!」

「……っ…!!」

 

 目頭が熱い。涙が頬を伝う。

 

「…僕は…ここにいていいんですか……」

「…当たり前です」

「………ありがとう…ひぐっ……ございます…っ…」

 

 小さく嗚咽しながら言った。震える自分を優しく撫でてくれる榛名の手はとてもあたたかく感じた。

 

 

 しばらくしてようやく落ち着いた。

 

「大丈夫ですか?」

「…はい、もう大丈夫です」

 

 目元を袖で拭って答える。

 

「…ずっといい表情をするようになりましたね」

「……そう…でしょうか?」

「今までよりずーっといい笑顔です。空のような綺麗な表情です」

「……それ女の子扱いしてません?」

 

 頬を膨らませ目を細めながら言う。

 

「可愛い表情ですけど、心葉君は男の子じゃないですか」

 

 榛名が人差し指で頬をつっつきながら笑った。

 

「…むぅ…………でも……そんな気は…ちょっとします」

 

 前よりなんだか笑えるような気がしている。自然と表情が緩んでる気もする。

 

「さて、主役二人になったことだし、早速はじめ"ッ!?」

 

 ゴーン

 

 司会を進行しようとしたコウタの頭にどこからともなくマイクが飛んできて、直撃し反響音を響かせる。

 

「司会なんだからマイクないとだめでしょー」

「だからって投げるなよ……」

 

 どうやら詩音が投げたようだった。

 

「……ぷっ」

 

 そんなやり取りを見て自然と笑っていた。それを見た皆は一度驚いて微笑んでいた。

 笑うってこんなに楽しくて面白いことだったんだ。

 

「さ、早速始めましょう!まず詩音さん誕生日おめでとうございます!そして」

「「「おかえりなさい、心葉(君)!!!」」」

 

 皆の声に今できる全力のとびっきり明るい笑顔で声を上げて応えた。

 

「…はいっ!!皆さん、ただいまです!!!」

 

 

 

~GOD EATER 堕ちた救世主 True Ending Fin~




これで正式な全てのストーリーが終わりです。最後ちょっと乱雑なところもありますが、これにてストーリーは終わりです。苦しみ続けてきた心葉を救って終わりになります。

なのですが、ストーリーとしては終わりですが、アフターを書いていく予定です。1話につきいくつか小さいストーリーが入っているような形で書いています。これもまた不定期なので気が向いた程度で見ていただければ幸いです。

長い間読んでいただきありがとうございました

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