私はいつもメモ帳に打ってから、こっちにうpしています。なので時々文章の区切りがおかしかったりします。どうかご了承してください。
★極東支部エントランス
side:心葉
「僕に何の用ですか?」
「いや、大した用じゃないんだ」
エントランスの椅子に面接でもするかのように、コウタ、エリナ、エミール、心葉が座っていた。
「もし、よければ…な、俺たち第一部隊に入ってくれないか?」
「僕…がですか?」
「うん。無理にとは言わない」
「…僕なんかでよければ、お願いします」
「よぅし!決まりだな。じゃ、今日からよろしく頼むぜ」
コウタがガッツポーズし、手を差し出してきた。握手するつもりのようだ。
「よろしくお願いします」
心葉も手を差し出し、握手を交わした。
「よろしくね!」
コウタに続いて、エリナも手を差し出してきた。
「はい、よろしくお願いします」
心葉はエリナよりも年上だが、神機使いとしては先輩にあたる。心葉と同じ年の人は、ブラッドのシエル、オペレーターのフランがいる。
「うむ。君がいてくれると心強い!私からもよろしくお願いする!」
エミールも手を差し出してくれた。
「は、はい…こちらこそ、よろしくお願いします」
正直、今の自分が握手するのはとても気分がいいものではなかった。自分の手は汚れている。どんなに綺麗にしても落ちない汚れがついている。罪悪感と、神機使いの血で濡れているのだから。
★ラウンジ
side:コウタ
コウタは今、歌姫芦原ユノが帰ってきたことを祝うパーティーの準備をしている。ほかにもムツミ、ナナ、テルオミ、ウララがいる。ムツミとナナに料理を担当させ、コウタ、テルオミ、ウララの3人でパーティー会場を作っている。
「招待状終わりました!」
テルオミが招待状の束を持ち、机をセットしているコウタに近づいた。招待状はクレイドル、ブラッド、防衛班、サカキ、リッカ、オペレーター、そして新第一部隊に送られる。
「じゃあ、それを皆に配ってくれる?」
「了解しました」
テルオミが去って行った。
「看板はこれでいいですかー?」
看板を立てていた、ウララが声をかけてきた。
「OK!ばっちりだよ。それで、ウララちゃんはテルオミ君の手伝いに行ってくれるかな?」
「はいっ」
元気よく返事し、ウララも去って行った。
「ご飯はいつでもいいよー!」
ナナが言った。
「了解!あとは皆のところに招待状が届くのを待つだけだな」
コウタはそうつぶやいた。これはただのお帰りパーティーではない。自分たちの未来がかかっている。このパーティーは心葉を支えるきっかけになる一歩のためだ。
side:ユノ
1時間後、約束のパーティーの時間が来た。皆それぞれに招待状が届いたようで、ぞろぞろと入ってきている。その中に心葉もいた。このパーティーの司会は、コウタだ。開会式をはじめ、簡単に挨拶を済ませ、ユノにマイクを渡した。
「あの、まず最初にただいま。皆さん無事そうで何よりです。皆さんの頑張りもよく聞いています。これからもがんばってください」
会場から拍手が鳴り響いた。
「……すみません、やっぱりこういった挨拶はなれてなくて…」
「大丈夫大丈夫です。次に、このたび新しく第一部隊に入った、日暮心葉君の挨拶です!心葉、一言お願いします!」
「ふぇっ!?」
心葉が変な声を上げた。まさか自分にマイクが回ってくるとは思わなかったのだろう。
「…あの、挨拶しなきゃ…だめですか?」
「だーめ。さ、持った持った」
コウタが強引に心葉にマイクを渡し、ステージに立たせた。
「えっと…その…このたび、第一部隊に所属になりました。日暮心葉です…数か月前は各支部を転々と移動していました。……その…不束者ですが、どうか、よろしくお願いしますっ!」
ぺこりと頭を下げ、挨拶を済ませた。その直後、拍手が巻き起こった。
「はぁい!心葉君ありがとうございました!それでは、皆さん楽しんでください!」
コウタが開会式を終わりにし、皆それぞれパーティーを楽しみ始めた。コウタも食べ物をとろうと思ったとき、ユノのマネージャー、サツキがコウタを引っ張った。
「ねぇ、あの心葉って子、すごく陰気くさいね」
「サツキ!」
確かに陰気くさかったが、うちに引っ込めてればいいはずのことだ。
「…ちょっと話があるんで移動しませんか?ユノさんも」
コウタの表情が変わった。何か大事な話なのだろう。
★エントランス
「話って何?」
サツキが切り出した。
「心葉のこと。今回のパーティーを開いたのは、心葉のためでもあるんです」
「その上には楽しんでなさそうだけど」
パーティーが始まってから、心葉はラウンジの端っこで小さくなっていた。
「いや、本人が楽しめる状況じゃないんだ………救世主喰らいって知ってますか?」
「ええ。神機使いを喰らう神機使い。何をトチ狂ったのか味方を殺すなんてね…それがどうしたの?」
「………心葉が救世主喰らいなんです」
「「!?」」
信じられなかった。あの幼い子がそんなことをするとは思えなかった。
「信じられないでしょうけど、事実なんです。正確には、神機使いのなれの果て、堕ちた者を殺すのが正しいんですけどね…心葉のオラクル細胞が特殊だから、あんなことをしているんです。堕ちた者殺しはフェンリルの上層部が決めたことです…今回のパーティーを開いたのは、彼を支えるきっかけを作るためです」
「……そうね、無理やり人殺しなんか続けてれば、精神が持たないわね…」
そのあと簡単に心葉のことについて説明した。皆で支えようとしていること、彼が暴走されると極東にとって、神機使いにとって最大の脅威になることを伝えた。
「…わかりました。少し話してみます」
ユノが切り出した。
「ありがとうございます。じゃあ、戻りましょう」
★ラウンジ
「ごめんなさい、少し仕事の話があって…」
「仕事の話なら仕方ないね。さっ、パーティーパーティー!」
ユノの謝罪に、詩音が言った。
「…ユノ、慎重にね」
耳元でサツキが言った。ユノは頷き、心葉を探した。心葉は最初と同じように、一人静かにしていた。他の皆も時々心葉を見ている。きっかけを探っているのだろう。
ユノは心葉に向かって歩き出した。
「隣いいですか?」
声をかけた瞬間、心葉ビクッとし頷いた。何か話そうと思ったが、話せそうになかった。接触はしてみても、話すことを考えていなかった。いきなり救世主喰らいについて話すのも問題があると思った。
「…心葉君は何を悩んでいるの?」
考えていたつもりが、いつの間にかそう言っていた。
「……何も、悩んでいません」
「…そうは見えませんよ」
誰が見ても悩んでいるようにしか見えなかった。
「…………心葉君のこと聞いたよ」
心葉がまたビクッとし恐る恐るユノの顔を見た。心葉の目に光はなかった。あるのは闇と苦悩だけだった。彼は今にも泣きそうな表情で、ユノを見つめていた。
「…そう…ですか……」
「…皆心葉君のことを心配してる」
「………」
「…それと心葉君の少しでも支えになりたいと思ってる」
「………僕は…救世主喰らいですよ……」
「関係ない。心葉君は第一部隊の一人で、皆の仲間ですから」
「……僕は…人殺しですよ……いつか皆さんを殺すかもしれないんですよ……だから……放っておいてください…」
いずれ殺しにやってくる可能性がある。その時は心葉を殺すことになる。彼を殺すとき、少しでも感情のためらいがあれば、自分が殺されるかもしれない。だったら最初から仲良くしなければいい。それが彼なりの意志表現なのだろう。
「放っておけません」
「…………お願いです、放っておいてください」
ユノは心葉の右頬を引っ張った。
「んぅ!?」
「心葉君がなんて言っても、心葉君は心葉君。救世主喰らいでも、人殺しでも関係ない。心葉君は私たちの仲間で、友達なんだから…悲しいこと言わないで……私たちは君を見捨てない。君が暴走したら、私たちが止める」
「………」
「心葉君は一人じゃないから…私たちがついてる。辛くなったら慰めてもらえばいい。そのために私たちがいるんだから。心葉君を第一部隊に誘ったのは、君を信頼して、仲間だと思っている証拠です」
「………っ」
心葉の目に涙が浮かび始めた。
「…皆、そうでしょ?」
全員が頷いた。
「心葉君、私たちがついてます。ですから、悩んでも一人で抱えないでください。私たちが心葉君を支えます」
シエルが言った。
「俺は心葉はほんとは優しい奴だって知ってる。第一部隊に誘ったのだって、心葉を一人にさせないため。一人で悩むより、皆で悩めば、解決するさ」
コウタも続いた。
「私は、心葉君が救世主喰らいでも、関係ないと思ってます。心葉君は心葉君で一人の神機使いで、私たちの仲間ですから」
カノンも口を開いた。
「ほら、皆もそう言ってます…それでも…放っておいてといいますか?」
「………僕は……人殺し以外の何者でもありません……いつか暴走して皆さんを殺すかもしれません……それでも、僕を支えるって言うんですか?」
心葉の問いに、全員が頷いた。
「……っ…皆さん…ありがとう……っ……ございます……」
心葉は泣き崩れた。ユノは心葉の背中をさすってあげた。
★神機保管庫
side:シエル
あの後皆で楽しく会話しながら、パーティーを終えた。心葉も会話に混じり、楽しんでいた。シエルも心葉と会話した。
「お忙しいときにすみません」
今はリッカと話がしたく、神機保管庫に来ていた。
「いやいや、そんなことないよ。それで、何か用?」
「特に大したことではないのですが……心葉君に渡した特殊なバレットについて詳しく教えてほしいのです」
「えっ…それを聞いてどうするの…?」
「いえ、ただ人の体を吹き飛ばすほどのバレットです。少し仕組みが気になりまして……」
「…悪用したりしない?」
「ええ。約束します」
人間の体を吹き飛ばすバレットが悪用された暁には、この世界には地獄絵図しか残らない。
「わかった…まず対物ライフル、アンチマテリアルライフルって知ってる?」
「はい」
「その対物ライフルの弾丸を改造して、作ったの。最初は人間にダメージを与えるって話から、徐々にエスカレートして、こうなったの。バレットの仕組みは弾丸が直撃してから、小さな爆発、その後もう一つオラクルの弾丸が発射されるの」
「使い切りということになるんですね…いつかなくなるのも時間の問題というところですか」
「それが、アラガミの素材をうまく合成すれば、対物ライフルの弾丸に似た物が作れるらしいの。これの作り方は心葉君しかしらない」
「………」
さすがに弾丸の作り方までは知りたくないし使いたくない。だが、彼が使っている弾丸がよほど強力で、凶悪だということが分かった。
「博士曰く、人にあたった時の反応が、一段目で骨ごと貫き、二段目で骨を粉砕して、三段目で吹き飛ばすって言ってた。その一段の流れをコンマ2秒で終わりにする設計ね」
「…とんでもないバレットですね」
「そう。さっきも言ったけど、この話、悪用しないでね。悪用されたら、余計な死人が増えるから」
「わかっています」
シエルはそのあと、リッカに感謝し部屋に戻って行った。リッカは一つの白い神機に目を向けた。心葉の神機だ。いつも鏡のように光を反射している槍にうっすらと黒いシミとひびが入っていた。そして、コアの色は濁っていた。これは前からだった。彼が堕ちた者を殺し、帰って来ると色が濃くなっている。そしてコアは、まるで堕ちた者の怨念でも吸っているかのように、黒く濁ってきていた。
「…何事もなければいいけど……」
■次回予告
僕は歩き出す。一人じゃない。支えてくれる人たちがいる。あと少しでも皆と仲良くなれるといいな。
次回「わずかな時間」