楽羅來ららという超能力者の話。(仮題)   作:那由多 ユラ

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駄目だろ、人として。

 

 なし崩し的に、やむを得ず、成り行きで、会ったばかりの小学生ほどの年齢の少女と行動を共にしなければならなくなった時、大人の男はどうするべきなのだろう。

 少女、楽羅來ららの目的は分からないが、何やら僕に話したいことがあるらしい。僕は目的のようなものは特に無いけれど、幼児誘拐の疑いで警察に捕まるような展開は断じて御免だ。逮捕まで行かずとも、職務質問だけでも面倒臭いというか、現状僕もイマイチ何が何だか分かっていないのだから、質問されても答えられることの方が少ない。人権を構成するいくつもの権利の中でも有名な黙秘権をもちろん僕も持っているけれど、黙秘権を行使して怪しまれない筈もあるまい。

 

「人目の無い場所をお探しのようでしたら、あなたの自宅でいいのではありませんか?」

 

 ホテルに匹敵する最悪の選択が少女から支持されてしまった。いや、駄目だろ、人として。というか社会人として、会ったばかりの子供を自宅に連れ込むのは。

 

「銃を向けられた後だというのに、随分と悠長なことを考えますね。……しかし、問題ありませんよ」

 

 楽羅來ららは、笑ってみせた。自虐的な、苦々しい笑みだ。

 

「世間的に、というか世界的に、私の扱いは非人間、非生物なんです。有り様としてはそこらの石ころと同じでして、誰一人として所有権を主張こそすれ、持っていません」

 

 なら、さっきの奴らは石ころに銃を向けていたとでも言うつもりか? マクドナルドの店員さんは、石ころから金を受け取り、ポテトを渡したと?

 

「自分を石ころだと自虐したわけではありませんよ。もちろん、今まで会ってきた方々を、石と会話するような異常者だと言いたいわけでもありません。石という表現がノイズなら、ロボットでも幽霊でも昆虫でもいいのですけれど、要するに、私には戸籍も人権も無いんですよ。だから持ち帰ったところで、あなたはカブトムシを捕まえて持ち帰るのとなんら変わりありません」

 

 ……僕は虫を家に持ち帰るような趣味を持ち合わせてはいない。

 

「少女を連れ帰るような趣味も無いと? 頑固な人ですね。意固地にならないでくださいよ。あまり頑なになられると、周辺住民の方々に返ってご迷惑をお掛けしてしまいますよ」

 

 確かに、未だ僕達はマクドナルドの前に陣取っていた。陣取るというには、さほど邪魔にならないくらいには入口がオープンな作りのおかげで、迷惑にはなっていないが(そも、さっきの騒ぎで人が殆どいない。それはそれでお店のご迷惑だけれども)、それでもさっさとこの場を去るのが得策だろう。……仕方ないか。

 最終手段に僕の住むアパートを据えた上で、人目につかない場所を探すとしよう。

 

「往生際が悪すぎやしませんかね。まあそんな都合のいい場所がこの町にあるとは思えませんが」

 

 うるせえ。

 

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