楽羅來ららという超能力者の話。(仮題)   作:那由多 ユラ

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ここまでが前置きです。

 

 

「改めまして、私は楽羅來ららと申します。

「八橋あられさん。あなたについて、私は一方的にですが知っていますので、自己紹介は不要です。

「話したいことが、そう、山のように、星のようにありますので、どうかまずは私の話を聞いていただきます。

「事前知識から、最新の情報まで、あなたも知っていることもあるとは思いますが、その辺りはおさらいとでも思って聞いてください。

「時は西暦二千年。二十世紀から二十一世紀に切り替わるとともに現れたオカルト的人間、異能力者。

「我が子が急に火を吹いた。隣の家で父親が大爆発を起こした。バイト先の店長がテレパシーに目覚めた。そんな異常事態が日常茶飯事だったのは、今や社会科の教科書にも載っているでしょう。そんな時代にいち早く設立された、対異能力者、対オカルトの組織が一つ。

「ええ、そう。先ほど、私達も出会った彼らです。

「名を、チーム。

「最初は異能力で悪事を働く犯罪者を暴力で叩きのめし、警察に届ける自警団のような組織でした。

「当時の構成メンバーは全員が非異能力者で、十代、二十代の少年少女です。

「しかし今となっては、多くの対オカルト組織を取り込み、世界的に活動する秘密組織です。まあ秘密というのは活動実態が表に出ないだけで、話してみれば中々に話せる方々ばかりなのですが。

「あのような目にあったおかげであまり良くない印象をお持ちになられたかもしれませんが、それは誤解です。個々人の思想はさておき、組織としての属性、方向性は極めて善性です。

「罪を犯した異能力者の討伐や捕獲だけでなく、居場所を失った異能力者の保護や、異能力を用いた事業開発なんかも行っている慈善組織です。

「しかしならばどうして、あのような過激な行動に出たのか疑問にお思いでしょう。

「彼らのやったことは確かに暴力的でしたが、動機はやはり世のため人のためなのです。

「私は楽羅來らら。お察しのことでしょうけれど、異能力者です。それもただの異能力者ではなく、世界で唯一、超能力者と呼ばれる異能力者なんです。

「超能力という言葉は二十世紀からありましたが、今の時代に異能力を超能力と呼ぶことはありません。これは単に、かつて超常だった異能力が、《人とはちょっと違う力を持っている》、という程度まで普及してしまったことを意味します。

「超能力と言われる程に異常な私の異能は、創造主(クリエイター)と呼ばれています。

「その名の通り、モノを創る異能です。

「創ろうと思えてしまったが最後、創れてしまう異能です。

「タイムマシンだろうと、不老不死の薬だろうと、人間、異能力者だろうとも。

「コストはありません。材料も犠牲も不要です。しかしリスクはあるのが我が異能、創造主(クリエイター)

「例えば、宇宙をも破壊してしまうような爆弾を創ろうとすれば、創れてしまうのです。

「ご心配なく。この異能は決してアンコントローラブルなものではありませんので、暴走の危険は無いと考えてもらって構いません。

「ここで彼ら、チームの話に戻ります。

「彼らは恐れているのです。

「私、楽羅來ららの暴走を。

「異能が暴発しなくとも、私が人類に牙を剥き、意図的に危険物を作り出す可能性は決して無い話では無いでしょう?

「いえ、そんなつもりは毛頭ありませんが、現実的な話、彼らは危惧せざるを得ないのです。護身用の銃や警棒なんかの所持が許されるご時世といえど、世界を滅ぼすことのできる力を、そんなつもりはないと幾ら私が言ったところで、彼らは信じることはできないでしょう。

「では実際どうするのか。

「ここでチームの意見は、大きく分けて二つに分かれました。

「一つはシンプルです。私を殺してしまえば、或いは殺さずとも、文字通りに無力化してしまえばいいという意見。

「もう一つは夢見がちな人間らしい発想ですが、私をチームに取り込み、有効活用しようという意見です。

「前者は不可能なので置いておきまして、問題は後者。

「有効活用とは言ったものの、具体的に彼らは私を使って何を成したいのかといえば、ズバリ人類の復興です。

「異能力者が現れ始めた二十一世紀は衰退の時代です。

「かつて五十億はいたはずの人類が、今となっては推測すらできないほどに数を減らしています。人口が減りすぎて国として成り立たず合併した国家も珍しくない。

「そんな危機的状況から脱しようと、私の異能を欲しているわけです。過去に遡ることも、人間や物資を増やすことも、敵を滅ぼすこともできますからね。自画自賛ではなく、自己評価です。

「しかし、世界というのはそう単純にはできていないんです。それを彼らは知らない。

「更に話を戻します。テセウスのパラドックスの話です。

「人間の数が減ったからとて、減った分を補充したら、それは元通りだと言えますか?

「例えば、幼い頃に両親を亡くした子供が成長し、大人になった頃になって、ちゃんと血のつながった両親が創られたとして。その家庭は、親子の関係は元通りになったと、一つの家庭が復興したと言えますか?

「むしろ、一つの人間関係が歪められたようではありませんか?

「例えば、二十一世紀の始まりまで遡り、危険な異能力者を殺して回ったとして、それで人口が維持できたとしても、それが平和な社会を取り戻せたと言えますか?

「火を吹ける我が子を殺された両親が、排泄物が爆発する夫を殺された奥さんが、水分を操れる彼女を殺された彼氏が、その後の平和を喜べると思いますか?

「世界とは、社会とは複雑なものなのです。失ったものを取り戻したところで元通りとはいえません。

「失ってしまう要因を事前に消し去った先の未来が元通りとは言えません。

「ええ、はい。復興ではなく発展ならばどうなのか、私の異能を人類の発展に活かすことはできないのか、という疑問は当然のものです。聞くまでもなく、聞かれるまでもなく答えましょう。

「不可能です。一人一体、ドラえもんを所持している社会を想像してみてください。

「なるほど、人類はそれほどに発展できたのかと思えたことでしょうけれど、でもどうでしょう。そんな社会が長続きすると思いますか?

「全人類が核兵器を持っているようなものですよ。都合よくドラえもんが危険な秘密道具は持っていなかったとしても、人間は幾らでも悪用を考えるものです。一年と保たず、地球は崩壊するでしょう。

「私の異能ならそんな世界を創り出すことは確かに可能です。創るものの加減も出来ます。

「しかし人々の発想を制限することはできません。全人類がドラえもんと暮らす社会を創るなら、まずは人類を創り直し、歴史をやり直すしかないのです。

「けれど、チームは人類を信じています。

「そんな未来はあり得ないと。

「わたしも人類のことは信じていますよ。

「私が人類に便利な道具を与えたなら、間違いなく自らの首を絞めることになるだろうなと。

「長くなりましたが、ここまでが前置きです。

「さて、これからの話をしましょう。

 

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