圧倒的な英雄となるため、雄英高校の入学試験へと向かう黒彦。破壊の権化たる彼は果たして英雄を発掘する試験に合格することが出来るのか・・・
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雄英高校に到着した黒彦。バカみたいな大きさを誇る校門を前に思わず感嘆の声を漏らす
「ほぅ、流石は天下の雄英というべきか。ふふふっこれこそ我にふさわしい学び舎だ」
呟く黒彦
ちなみにこの時黒彦は周囲の視線をほぼすべて彼に集めてた
それも当然。そもそも黒彦は195センチという長身であり、顔が良いため嫌でも目立つ。また、地面を割ったりなどはしていないが彗星と見まがうほどのスピードでやってきた人物に注目するなという方が難しいだろう
そんな視線など気にする価値もないと校舎内へと歩み始める黒彦に周りの生徒たちは無意識に道を開けてしまう
「うむ、ご苦労」
そう周りに言い渡し、黒彦は雄英高校に入っていった
後にその場にいた生徒や監視していた教師たちは彼の様子をこう語る
「周りなど意に介さず、悠々と歩む姿はまさに王であった」と
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『今日は俺のライブにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!』
広大な広さの講堂にボイスヒーロー”プレゼント・マイク”の声が響き渡る。流石はボイスヒーローというべきか、ものすごい声量だ
「ふふっ凄まじいな轟竜の咆哮を思い出す」
『オーケ!オーケ!緊張してるんだな?それじゃあ気を取り直して実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!!?』
入試前という状況で、ノリノリに答えられるはずもないだろう。しかしそこはラジオ番組も持っているプレゼント・マイク。そんなことは微塵も気にしていないというように説明を始める
ここからの説明は長いためまとめると
制限時間は10分
指定の演習会場へ分かれ、1~3ポイントの仮想敵を行動不能にしてポイントを稼ぐことが目的
ようするに模擬市街地演習というわけだ。説明を終えたマイクにある受験生が大きな声で質問をする
「質問よろしいでしょうか!?プリントには四種の敵が記載されております!誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!!我々受験生は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!!ついでにそこの縮毛の君!!先ほどからボソボソと⋯気が散る!!物見遊山のつもりなら即刻雄英から去りたまえ!!」
周囲からはくすくすと笑い声が聞こえ、縮毛の受験生は周囲に小さな声でぺこぺこと謝っている
『ふむ、豪胆であるな』
受験前で緊張しているにもかかわらずどこまでも通るいい声と良い姿勢で質問し、ついでに迷惑な受験生に注意までするとは・・・並みの精神ではできないだろう。そんなメガネの受験生を黒彦は素直に認めていた
『オーケー オーケー 受験番号7111くんナイスなお便りサンキューな!そこに記載されてる四体目は0P!そいつはいわばお邪魔虫だ』
マイクの説明によると0Pは各会場に一体配置されており、ほぼ破壊は不可能とのこと。障害から逃げることも大切というわけだ
「有難う御座います 失礼いたしました!」
質問したメガネの受験生は腰を90度に曲げてお辞儀をする
『俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校”校訓”をプレゼントしよう かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!! ”Plus Ultra”!! それでは皆 良い受難を』
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説明会が終わり、動きやすい服装に着替えて実技試験の会場に移動したのだが
「ほぅ、素晴らしいな」
そこに広がっていたのはまさに市街地。戦闘が想定されているのかところどころ壊れている。この規模の会場を多数用意できるなど天下の雄英はやる事が違うと黒彦は心の中で笑う
『ふふふっこの世に転生してきて久々にまともな戦闘が楽しめそうだ』
パキパキパキ
耳や眼を変形させながら黒い鱗を纏っていく。眼は爛々と輝き、その視線を向けられずとも威圧を感じる。その変形によって飛躍的に上昇した視覚と聴覚で前方の瓦礫の小さな動きや、スピーカーからのモスキート音を感じ取る黒彦。それを開始の前兆だと考えた黒彦はスタートラインに立つ
『はい、スタートー』
突然プレゼントマイクからスタートの合図がかかる。あまりに突然の事で他の受験生はうろたえるが、黒彦はしっかりと反応し、足での蹴りだけとは思えない加速力で目の前に現れた仮想敵に一瞬で接近する
『目標発見!ブッ・・・
仮想敵が何か物騒なことを言い切る前に加速力そのままに二体の仮想敵を粉々に粉砕。その音につられて現れた数体の仮想敵も続く尾の薙ぎ払いですべて破壊された。他の受験生がスタートするころには、すでに黒彦は15ポイントを獲得していた
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『目標はっ・・・バキッ!!
「・・・」
驚異的な身体能力と翼で移動し、視界に入った仮想敵をすべて粉砕しながら進む黒彦。すでにポイントは溜まっていたので落ちることはないだろうと思っていたが、一つ不満があった
「・・・・つまらん」
そう、退屈なのだ。仮想敵は皆彼の前ではただの獲物に過ぎず、力の一端を出す価値すらない。途中までは久々の戦闘という事で色々と楽しめたが、ここまで相手が弱いと嫌でも飽きてくる。誰が鹿を狩るのに兵器を使うだろうか、誰が兎を狩るだけなのに命を削って汗を流すか。もはやポイントも取る気にすらならなくなった黒彦は瓦礫の上に座り込んだ
「お邪魔虫とやらもいつ来るのだ?このままでは退屈で耐えられんぞ」
説明会でマイクが言っていた0ポイント、お邪魔虫。破壊不能で逃げる対象と言われているそれなら自身を少しは楽しませられるかもしれないのに、すでに実技試験が始まってからそれなりの時間がたっているがまだ出てこない。そんな黒彦の思考にこたえるように、地響きと共に巨大な仮想敵が姿を現した
「・・・あれか!」
ビルに匹敵する巨大な仮想敵。到底かなうはずがないと逃げ惑う受験生達。他の受験生からしたら他の仮想敵ですら脅威になりえるのだ。あんな巨大な仮想敵、恐怖の象徴でしかないだろう。しかし黒彦だけはその流れに逆らうように仮想敵に向かっていた
「あぁ、ここまでとは」
仮想敵のその剛腕が振るわれ、黒彦に襲い掛かる
「何という事だ」
圧倒的質量の拳が地に叩きつけられ、砂埃が舞う。見ていた生徒が悲鳴を上げ、直撃した黒彦の身を案じる
砂埃が晴れた時、そこに立っていたのは
「・・・本当につまらん」
片手で拳を抑える黒彦の姿だった
黒彦はそのまま仮想敵の片腕を引きちぎる。轟音と共に投げ捨てられる仮想敵の腕。周りがあぜんとする中、黒彦は翼を広げて仮想敵の眼前に浮かび上がる
「破壊不能、逃げる対象というから期待したというのに・・・このような大きいだけの鉄くずなど。今更障害にすらならないだろうに」
「よかろう。この鉄くずが貴様らにとっての力というのなら、我が本当の力の一旦というものを見せてくれよう」
そう呟き、息を吸う黒彦。そして目を見開くと口から燃え盛る炎が噴き出る
炎の凄まじい温度とその勢いに仮想敵だけでなく周りの建物もろとも消し炭になる
地面の一部が融解するほどの威力に周りがもはや恐怖を抱きかける時
『しゅーりょーー!!』
プレゼントマイクのアナウンスが鳴り響き、ぎりぎりで恐怖を抱くことはなかったのだった
こうして波乱の実技試験は終わりを迎えた
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試験を見ていた雄英の職員たち。プロヒーローでもある彼らは受験生達を評価していた
「いやー今年は豊作だね」
「あぁ。まさか0ポイントが一日に二体も壊されるなんてね」
彼らが見ているのは二つの映像
一つはおどおどした緑髪の少年。そしてもう一つは龍の角を持つ黒髪の生徒・・・黒彦だ
「しかし敵ポイント0で8位とはな」
「全員がライバルといえど、それが人助けをしない理由にはならん。そんな奴はヒーローになる資格もない」
受験生達には知らせていないポイント・・・
《救助ポイント》
文字通り、救助活動に対しての追加得点
彼・・・緑谷出久は敵ポイントは0。しかし救助ポイントが60ポイントで合格というわけだ
「ずっと典型的な不合格者の動きだったけど最後のはしびれたぜ!」
「まさか0ポイントをぶっ飛ばすなんてねぇ。まぁ残念ながらインパクトは”彼”の方が上だけどね」
「今年の受験生の中でも”彼”は頭一つ抜けているよ」
職員の目はもう一つのモニターへ移動する
「龍ヶ崎 黒彦。敵ポイント100、救助ポイント50、合計150ポイント・・・ホントに中学生かい?」
「手や足、それに尾や翼まで利用して戦うとは・・・」
モニターが移すのは次々と仮想敵をなぎ倒して粉砕していく黒彦の姿
「俺のスタートの合図に唯一反応したのこいつだったしな!」
「目や耳も変化できるとみて間違いないだろうね。個性の扱いがとても上手い」
「仮想敵の中には音に反応して集まるやつもいる。そんな特性も見抜いてわざと音を立てる場面もあった。状況理解も上手だ」
絶賛する職員たちだったが別の意見も出てくる
「しかし後半は戦闘その者に飽きている様子」
「それに仮想敵を倒したあの炎、あまりに威力が高すぎる」
「会場の一部が熔解していた。一端の中学生が出せる威力じゃないよ」
などと騒がしくなる中、そこに一つの声が響く
「まぁまぁ、なんにせよ。彼は文句なしの合格だ!色々と考えるのは彼が入学した後にして、しっかりと導いてあげよう。それが教師というものサ!!」
ネズミ――根津校長の言葉に教師達は頷きあうと、次の受験生へと映像を変えて行くのだった
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次回予告
雄英高校に入学した黒彦。ヒーロー科として周りの生徒と交流しながら挑む戦闘訓練!頼む黒龍様、どうか生徒に手加減してあげてね!
次回、黒龍入学