今PCが絶賛反抗期を迎えてくれやがっていまして、しばらく更新が不定期になってしまうのですが学校のPCでちまちま書いていきますので週一ぐらいでやっていくつもりです。ご迷惑おかけしますが、付き合ってくだされば幸いです。では。
「こちら放送部。現在臨時生徒総会の第一戦,元会計のシロジロ・ベルトーニと機関部代表直政の相対戦が終了したところです! いやぁ,それにしても人VS重武神はなかなかに迫力のある対戦でしたね! そこんとこどう見ます,ご意見番の湊さん?」
「……いや,いつの間に僕が実況席に」
「いやぁ,せっかく暇そうな客寄せゲフンゲフン!……丁度いいところに相応しい人物がいたんで軽く拉致っただけじゃないですかぁ~」
「それを軽く言ってしまえる君が怖いんだけど……まぁいいや」
「では早速ですが,先の相対戦についてどう思われますか?」
点蔵達とアニメか何かの撮影のような対戦を見ていたら放送部の後輩に捕まってしまった。
右舷側の高層部に設置された臨時実況席に招かれたかと思えば,すぐに
しかしそんな疑問を抱いている暇などなく,相対戦は機関部の直政をいかにシロジロが“武蔵が聖連相手に戦える”かを証明できるかの論議を交えながらの肉弾戦の様相を呈していた。
機関部としては武蔵から降りたくはないものの,かといって聖連と戦った武蔵が轟沈するような羽目になるのはいただけない。だからこそ,武蔵でも最強に位置する重武神である地摺朱雀を最低限超えてもらわなければならない。
そして何より,ホライゾンを救いに行く上で避けられなくなるであろう武蔵が戦争状態であっても“飛び続けられるか否か”。これを提示することこそ機関部が教導院側の勝利条件といえよう。
対するシロジロは,まず地摺朱雀と相対するための術式支援として相棒であるハイディの走狗を経由した,警護隊の労働力を「レンタル」するという形でまず戦力を見せた。
彼は商人だ。だから政治や戦略については語れないが,商人ゆえにその目線からでしか見れない部分から断言してみせた。―――――武蔵は飛び続けることができると。
ホライゾンが失われさえしなければ,武蔵が居留する土地から金や力が集まるのだと,商人だからこそ金融の状況や武蔵が現在唯一,聖連から金融凍結を受けていないと点から述べて言った。ホライゾンが生き,三河松平が極東を支配下に置くことができれば,武蔵は飛び続ける。そこに金がある限り。
「何でも金勘定で考えるあたりさすがは守銭奴ってところですねぇ」
「そうだね。でも商人としての立場からでも武蔵が戦えることを証明できれば,元より教導院側の機関部が負けを認めるのはそう難しくないってことな訳だから,あの相対はシロジロがより金が多くあるとアピールできたことで信憑性は増すよね。あの術式にはレンタル代金として多くの金を消費しなければならないから,そういった意味でもさっきの相対戦はシロジロが快勝したって言えるだろうね」
「成程成程。なんだかんだでしっかり解説してくれる湊さんマジ助かります」
「いや仕事っていうならちゃんとやるよ。でもさ正直言うと,途中からあの二人の血の気がマックス過ぎてビビッてたんだよ僕」
直政もドライに見えて勢いで武神使うような奴だし,シロジロは金が絡むとテンションがおかしくなる。正気に戻ることもあるけど,大概どこかに頭の螺子を置き忘れてきているような気がする。
結果的にシロジロが己の金融力と直政の意見を論破してみせたことで相対は終了したとはいえ,人が退去した家屋が一軒ぶっつぶれたのは被害にカウントしてよいものか。シロジロが買い占めた土地とはいえ,修理を回されるのは下請けに僕とかなんだよなぁあれ。派手にぶっ壊してくれちゃってるけど,あれ装甲までぶち抜いてない? うわ今から鬱になってきた……。
「それにしても,あの労働力をレンタルする術。聖連から目ぇつけられたりしないんでしょうかと今メールが届いたんですが」
「何時の間に
確かに放送している会話とはいえ,メールが来るとか本気でサプライズし過ぎでしょうがコラ。
軽く一発だけ実況の子の頭を小突きながら,しかし仕事なのでメールの内容には対応しておく。武蔵は武装が許可されていないため,あのように武神相手にも戦い得る術式を持つことさえも制限がかけられてしまうのだが,この場合その制限はかからない。
僕たち極東の人間が使う術式は神奏術。神様に何かしらを捧げる事で,その加護を受けられるといったものなのだが他の教譜とは異なり,奉納さえ見合えば神奏している神様以外の加護を受けることもできるのだ。
その場合,契約をしている神社に仲介手数料として普段の奉納よりもより多くの代価を求められるが,言ってしまえば一種類の奉納だけで複数の加護を受けられるということだ。
つまり,一芸に秀でた極東の人間は万能の術者にもなり得る。この応用の広さから術式にも制限が設けられることになった訳だが,先の術式はその制限にかかるものでは無いので問題はない。あれはあくまでも“労働力”をレンタルしただけなので,その齎した効果はともかく武装制限とまではいかない。自衛ができる程度の装備は武蔵でも許されているので,これぐらいなら問題無いのだ。
「ほぉ~。なんだか説明だいぶ手馴れてる感じがしますが,これはやはり初等部や中等部の講師のアルバイト経験からですか?」
「なんで僕の個人情報漏れてるの…って,そのメールが初等部の子からだったのね。納得したわ」
「さぁさぁ続きます相対戦第二戦目,議会側は騎士階級代表のネイト・“銀狼”・ミトツダイラが出てくるようです! 彼女は
「いやわからないけど……でもネイトとやり合える相手ともなれば難しいかなぁ。それに……」
「? それに,何ですか先輩?」
「あっ,いやちょっと気になることがあるというか………ごめん,ちょっと僕も席外すよ。戻るかどうかはあっちで決めてくるから,それじゃっ」
「ちょっ,あの!? あ~折角ファンクラブ出し抜いて公の場で湊先輩の隣陣取れたのに~! ――――え,何,今の発言で苦情メール殺到? 知るかボケっ!」
相対戦第二戦。出てきたネイトにどうにも引っ掛かりを覚えた僕は,一時解説席から離れてクラスメイトが集まっている場所へと向かった。場合によっては,僕が出るかもしれないというか,戦闘系のスキルを持っている人間が多くいた方が選択の幅を広げられるだろうし。
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「しっかしネイトの奴ノリノリなんだけど。誰が出る?」
「うむ。自分一応毒とか持っているで御座るが……あ,ちなみに吹き矢タイプと短刀に塗布するタイプの二種類で御座るがどちらが良かろうか……?」
「離れて攻撃するなら,私が弓矢でズドンと一発……」
「拙僧的にはだな,シロジロが戻ってきたらとりあえず銀製の拷問器具を……」
「二人一組でもいいなら、ナイちゃんたちが空から安全に狙撃できるよ?」
「パス! 小生的にミトツダイラさんはストライクゾーン外なのでパスでお願いします!」
「――――お前らは何同級生相手にガチ攻略法を考えとんじゃゴラァ―――!!」
クラスメイト達の下に戻ってみればやたら物騒かつマジな攻略法をマジ顔で話しているものだから思わず取り出した『閻水』で全員の頭をド突いた。無論刃ではなく柄底で。約一名は攻略法では無かったけど,まぁ勢いだ。
「あのねぇ,揃いもそろって外道なのは知ってたけども。まちっと真面目になろうよ,次は刃でヤるよ?」
「おいおい湊はしょーがねぇなぁ……なら点蔵,お前土下座しね?」
「あ,安易に土下っちゃ駄目で御座るよトーリ殿!? 向こうはギャグの通じない相手で御座るよ!?」
「……点蔵?」
「い,今のは無効で御座ろう!? というか訂正入れただけでガチ殺気向けちゃ駄目え――――!?」
やかましいと思いつつ,一先ず皆に言われたとおりに閻水を収めて一息吐く。あちらではネイトが怪訝な顔をしているけど,それも無視。こちとら真面目にこっちに来たというのに,どうしてコイツらはこうなのか。知ってはいたけど,もうちょい何とかならんのか。
「ならば、拙僧が出るか? 拙僧異端審問官を志望している故、ホライゾンを救いに行く事になっても聖連や三征西班牙とは戦えぬのでな」
「あそっか。どっちも
「そういう事だ。だからここいらで戦力として働くこと以外に出番が少なそうなのだ」
「出番の方が大事なんかいっ!」
理由は尤もなクセしてどうしてこう………いつも通りすぎるのかなぁ皆。
また、相手が騎士という事で従士であるアデーレも存在意義が揺らぐので相対出来ない。そうなってくると順当にウルキアガを出した方が無難なのは間違いない。戦力的に見てもこの判断はそう間違っていない筈。だけど、僕が引っ掛かりを覚えたのは
「お? 湊、オメエ何か言いたそうにしてっけど、なんかあんのか?」
「あ、あぁうん。その前にちょっと……ネシンバラー、少し確認したいことがあるんだけどいいー?」
「Jud.多分、今湊君が抱いている疑問を言葉にするなら、“騎士”であるミトツダイラ君がどうして“一般人”である僕たちと相対を望んでいるのか、そうじゃないかい?」
「それも当然あるんだけど、そもそも騎士階級がこの場で僕たち教導院側、ネシンバラの言葉を借りるなら一般人、つまり守るべき立場にいる人間と対立しようとしているのかいまいちわからないっていうか」
「はいはいはぁーい! 先に言っとくけど俺馬鹿だからわからねえ」
「うん、今トーリに聞いてないしそのつもりも無いから大丈夫だよ? ――――うん、大丈夫だからね?」
「こ、コイツ今すっげえ優しい目で俺を見やがった! 憐みだな!? そうだな湊!? ちっくしょう何かゾクゾクしやがるぜ……!」
人のせっかくのシリアスを無駄にしかねない馬鹿を皆が押さえつけつつ、こちらの様子を傍観していたネイとに喜美が言う。
「フフフ、ミトツダイラ、私達の会議の内容のあまりの恐ろしさの声も出ないのねそうなのね!?」
「いえ……ただ外から見ていると大概と言いましょうか、いつもこの連中にツッコミを入れている湊の苦労がわかるといいましょうか」
「そんな同情するぐらいならネイトも手伝……目ぇ逸らすんじゃない!」
外から見た僕たちにあんまりな感想を零すネイトだったが、僕たちは浅間の合図でアイコンタクトを交し合い、
「ミトも外から見たら大概だってこと、誰か教えてあげませんか?」
「自分が思うに、それを属性の多重持ちな浅間さんがいうのもどうかと。巨乳で巫女で片目義眼って、どれか一つだけでもヒロイン属性十分満たせますし」
「そういうアデーレも貧乳ブカブカ食いしん坊と属性の三倍満だと拙僧は思うのだが」
「何を言うておるかウッキー殿。半竜なのに異端審問官志望しているお主の台詞では御座らんよ」
「フフフこの忍者自分のことも見えていないのに何言ってんのかしら? そ・れ・に、ほかにもっといるでしょ――――――大概な奴は」
『あー……』
「おいこら級友。そこでどーして僕を見て納得してんの? 大概なのはお前らだってそうだろうが!? 僕なんてまだマシな部類だよ!」
『どの口が言ってんだ!』
―――僕もそうだけど、どうしてこの教導院の皆はというか梅組はと分けるべきか、こうも味方同士で食い合うのが好きなんだろう。皆他人に厳し過ぎやしないだろうか。優しさを希望したいが、どこかに売っていたり……しないんだろうなぁ。売ってたら点蔵が買い占めてそうだし。
ただこれ以上引っ張っても話が進みそうになかったので一先ずこの話題を終わらせ、混じりたそうに服を脱ぎ始めた馬鹿を皆が真顔で沈めたのち、ようやくかといった風情のネシンバラが口を開いた。
僕やネシンバラが先に言った通り、本来騎士階級は僕たち一般人よりも立場は上であり、聖連から派遣されてきた経緯もあって彼らはこの“武蔵”で数少ない武装を許可されている。そんな彼らが下である僕たちと相対をする必要は本来無く、支配する側とされる側に既に別たれているのにこの相対は何故行われようとしているのか?
実はネイトの破壊衝動が武蔵の危機という建前で燃え滾っているのではという意見を出したウルキアガを『土星の輪』込みシャイニングウィザードを叩き込んで黙らせ、ネシンバラに話の続きを促す。
歴史再現によればこの時代、極東は未だ封建制が生きており武蔵は国軍を持たないから、聖連から派遣された騎士はそのまま封建騎士、すなわち中世の騎士の制度をそのまま則っている。
彼らやアデーレ達従士は聖連との協調有りとされた立場なためその地位を約束されているし、国軍を持たない武蔵における騎士の立場は守られるような存在ではなく、自らの手で民を守ることを旨とする時代の騎士という事になる。
「今、騎士達が守るべき武蔵住人と相対するなんていうのはその立場上おかしい……けど、じゃあどうしてそういう事をしているんだろ?」
ネシンバラ、アデーレの意見を聞いて、皆の言葉をまとめるように僕は一つ言葉を作った。が、当然騎士でもない僕達にその答えが分かる筈もない。
―――――でも。そう言葉を一つ置いて語りだしたトーリに皆の視線が集まった。
「それってさ、よーするにネイトは何かしら理由があって俺たちと相対しようとしてるってことで、その理由さえクリアしちまえば俺達の味方ってことだよな? 俺さっきの話まるで分からなかったけどさ、要するにそういうことだろ、皆」
その言葉に。何も考えていなさそうですらある、至極当たり前なことを言うように言ってのけたトーリに誰もが言葉を作ろうとして―――止めた。今ここで何を言っても無駄でしかないし、それぐらいなら他にもやるべき重要なことが残っている。
騎士同士で相対してもらうにも高等部には騎士はいないので無理だし、出るとしたらやはり一般人というくくりからとなってしまう。
「まぁ条件は明確だわな? 今の流れ的に。あとは立候補優先ってことで―――――ネイトには、ちょっと反省してもらわねぇとな」
そう笑っていったトーリに、僕達の答えは決まった。