境界線上のホライゾン~火影を継ぐ少年   作:イイ日旅立ち

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今週中に三本あげると言いながらやっとこ二本目。おせぇっての私の阿呆……!

今回のお話の設定としましては、時間関係はかーなーりテキトーなので、あくまでもネタとして見て下さい。

頂いたネタによる『湊君完全女体化ネタ』。こんな感じで本当に良いのかと思いながら、結局はこんな形になりました。期待に添えなかった場合はすいません。ではー。



番外編 ある意味DB的ぷろろーぐ?

 

 

 

 

 

 ―――――古今東西、ありとあらゆる時代においてまず絶対に欠かす事の出来ないもの。

 

 

 

 それは一寸の疑いを挟む余地も無く、『人』だ。

 

 時代を、歴史を紡ぐのはいつも『人』だった。

 

 名君が築き上げた栄光の歴史であれ、愚者の汚泥に塗れた最悪の歴史であれ、それらを紡いできたのは『人』であった。

 

 

 『人』が長きに渡ってその歴史を続けてこれたのは、やはりその営みを継続していく上でのシステムが秀逸であったからだろう。

 

 

 男と女。言葉にすれば陳腐で有り触れた、意識することすら無い差異に思われるかもしれないが、んなこたぁない。

 

 特に思春期を迎えた男女にとっては性別の違いというのは一大イベントだ。

 

 今まで意識せずに遊んできた相手が自分とは違うというだけで一緒にいることを恥ずかしく思ってしまうし、それを無視しようとしても周囲の視線からは逃れられない。

 

 

『わー、アイツ女と遊んでるー!』『男の子と遊ぶなんてどうかしてるよねー』

 

 

 子供の言葉というのはいつも無邪気で残酷で。それ故に無意識に零れた言葉が尋常じゃ無く刺さってくることもあるが、だからこそ思春期を迎えた男女は男は男、女は女というように別れていく。

 

 

 

 

 

 ……が、しかし。ここで我々は一石を投じたい。

 

 

 ではあの当時、我々が気になってしょうがなかった【男】とは? そして【女】とは一体何なのだ?

 

 それは性別の違いだけなのかもしれない。だが世には“オカマ”“オナベ”というように男ながらに女の意識を有する者、或いはその逆の者も存在している。

 

 昔じゃあるまいし、肉体的に♂の特徴を備えていたとしても、心が女である者に男としての生き方を強要するのはナンセンスだ。

 

 それは教育者が大好きな『個性』を殺す行為に他ならないのだから、その心が自由に持つ性別に忠実であるべきだ。

 

 

 ―――つまり、肉体という外見の器に囚われない中身にこそ、人の本来の性があるのではないだろうか?

 

 

 そこで、我々が注目したのは三年梅組に在籍しているとある生徒だ。

 

 この“武蔵”にてあり得ない良識を有し、外見内面共に前髪枠こと鈴さんと同レベルの天使であらせられる我らがエンジェルこと、湊先輩。

 

 彼は自身を“男”だといつも口を酸っぱくして述べているが、我々はそれを彼の存在に与えられた『枷』だと考える。

 

 天女が如き清純な精神とあの美貌の持ち主が、果たして本当に“男”であろうか?

 

 外道の巣窟と恐れられる三年梅組において尚あの在り方。鈴さんとは異なり弄られ役として大変なポジションに置かれているにも関わらず、また特定の味方が存在せずにも折れずにいる姿は道端に咲く一輪の蒲公英を彷彿とさせる。嗚呼あの頭をナデナデしたいぃぃ(以下三十行に渡り妄想が爆発したため削除)

 

 

 ……とまぁ梅組には勿体ない存在であるところの湊先輩であるが、我々は断固として先輩を男とは認めない。否、認めてなるものか。

 

 きっとあの人の中身は誰よりも乙女であり、どこぞのヨゴレ巫女(ズドン)や狂人、同人屋や商売根性丸出しの守銭奴の片割れなんぞに比べて明らかに女性的である事は間違いない。

 

 であれば何故先輩は無意味にも“男”と言い張るのか? そこに我々は、常識という名の『枷』に嵌められ、先輩が本来の性格を表に出せないだけなのではないかという結論に至った。

 

 

 肉体面はあくまで男なのかもしれない。だが、きっと湊先輩は誰よりも乙女チックである筈であるッ!

 

 

 そこで我々、真なる道を探求する者達による有志を募り、ある方法を探し出す事に成功した!

 

 この方法さえ使えれば、湊先輩をくだらない性別という名の枷から解放し、我々はそのあかつきに先輩を(以下百行に渡る『みせられないよ!』展開につき削除削除削除ォ!)

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・

 

 ・・・・

 

 

 

 

 

「――――これが、先日摘発したカルト集団のアジトから押収した計画書の一部です」

 

「これは、何と言うか……」

 

「うぅむ。元はファンクラブという事で御座るが、何とも……」

 

 

 

 三年梅組。その教室の一部にて、やたら重たい雰囲気に包まれている空間が展開されていた。

 

 武蔵アリアダスト教導院の風紀委員長を務める浅間によってもたらされた“ある計画の概要”が記された書類に目を通したウルキアガ、点蔵、その他被害者(・・・)にまだ良心的な態度をとれる存在が一同、何とも言えないといった顔をありありと浮かべていた。

 

 当然だ。何せこの文章、浅間がだいぶ要約してくれているとはいえ、書かれている内容の八割以上がろくでもないどころか彼の同人屋をして『ネタキター!』と喜ぶ始末なのだ。つまり、ここに書かれている内容は最悪に近いということ。

 

 

 ……主に、被害者にとってではあるが。

 

 

「湊殿にファンクラブがあったのは承知していたとはいえ、まさかこのような行動に出る馬鹿がいるとは思わなかったで御座るよ」

 

「点蔵様、あの、つまりどういうことなのでしょうか? まだどういう事なのか私には分からないのですが……」

 

 

 被害者の友人であり直接現場に居合わせた点蔵に、たった今教室にやってきた彼の妻(!?)であるメアリが恐る恐る尋ねる。

 

 その視線に向こうには、主に異族とされているインキュバスのイトケン、HP3ぐらいはありそうなスライムのネンジ、そしてある意味異族っぽいオールシーズンバケツヘルメット装備のペルソナに囲まれている、桃色の影があった。

 

 

「気にしちゃダメさ湊君! いや、今は湊さん(・・)!」

 

『そうであるぞ。たかが容姿が変わった程度で泣くようではいかん。もっと大きく構えるのだ!』

 

「………!」

 

『いや今ぐらいキャラ壊して激励してもよくね!?』

 

 

 手を振り足を動かし必死に何かを伝えようとしているペルソナだが、膝に顔を埋めている桃色の頭が一向に動く気配は無い。そりゃ視えてないのだから当たり前である。

 

 

「――――ふむ。やはり先ほどのホライゾンの一撃がトドメになったようですね」

 

「ホライゾンホライゾン! お前分かっててさっきから何で手をワキワキさせてんの? つか何か楽しそうじゃね?」

 

「ホライゾンにも分かりかねているのですが………何かこう、あの時の瞬間が未だに焼き付いているというか……これがトーリ様がエロゲを辞められない理由なのだと、理性ではなく本能に近い何かで理解できるような気がします」

 

 

 無表情でありながら何かを思い出すかのように手をワキワキと怪しげに動かしている武蔵の姫君、ホライゾンに笑顔で話しかけているのはそんな彼女を救いだすために世界に喧嘩を売った“武蔵”の代表トーリ。ある意味この二人に関しては無視した方が被害者のためであろうことは、既に一部を除く全員の認識である。

 

 

 

 ――――さて、散々引っ張ってきたが、ここらで事態を把握するために、視点を被害者であるか……いや、元“彼”に送ろう。

 

 

 

 

「うぅぅ、うぅぅぅぅぅ………!」

 

「あー、ほら、アンタも何時までもメソメソしてるんじゃないさね」

 

「あのマサ、今の湊君は術式の影響もあるので精神的にも不安定なので今はそっとしてあげた方が……しかも何処かの誰かのせいでいらないダメージまで負った状態ですし」

 

「うぅぅっ!?」

 

「あ、あれ? 今私なんか地雷踏みましたかね!?」

 

「分かってるなら言わなくていい」

 

 

 最悪だ最低だ何が無くとも最悪で最低で死ぬほど死にたくなってきた。。

 

 

 朝、いつも通りに家を出て教導院に向かっている途中の襲撃。

 

 寝惚けていたこともあって対応が出来ず、ファンクラブを名乗る変態集団に十人がかりで術式をかけられた結果、遅れてやってきた点蔵に姿を見られた瞬間、彼は自分の彼女の名前を叫びながら『誤解で御座るー!』とのたうちまわっていた。それはどーでもいいから、もっと早く助けて欲しかった。

 

 どうしてこんな目に遭わなきゃならないのか。僕ばっかりが不幸な気がしてならなかったのだが、今回のはとりわけ酷い部類と言えた。

 

 別に害意を持った術式では無かった。術式を用いようとした連中の大半が下心満載のヨゴレメーター全壊な変態だったとはいえ、彼らが僕に使った術式は攻撃的な意図があるものではなかった。

 

 

 それは襲撃犯である十人以上の内燃拝気と祈祷を代演とし、神奏する神様へと嘆願する術式。

 

 

 『あるべきものをあるべき姿に』というひたすらに真っ直ぐでひたむきな願い×三十人分が込められたその術式は、彼らの意に違わない形で結実した。

 

 術の内容としては、歪められたものを神様に頼んで直してもらうという単純なもの。例えば禊祓などに術式を用いるような物をより複雑にしたようなものを考えてもらえればいいが、個人で発動する術式ではなく大勢によって発動された術式であるところがこの術式のミソ。

 

 本来であれば叶わないレベルの正調を可能としたその術式をかけられた者は、術者達の最も強く望む『純粋な姿』として神様によって調整を受ける。

 

 神様によって願い通りの姿こそがその者の『最も相応しく自然な姿』であると規定されることによる、強制術式。

 

 三十人分ものの願いを一つの統一したこともよっぽどの事なのだが、この術式を成功させてしまったのには僕にも原因がある。

 

 

 要するにこの術式、“湊という存在が『女』であることが自然な姿である”と神様に再定義させる事が目的なのであるからして、より目的の人物が女性に近ければ近いほど、より自然な姿として神様に誤認されやすくなってしまう。

 

 

 僕の場合、元々の顔立ちと普段の代演による女装が災いして、神様からお墨付きとして『お前は女だ』と言われてしまったようなものだ。これが凹まずにいられようか?

 

 容易くその術式にかかってしまった僕は、神様が再定義した僕の最も相応しい姿として………

 

 

「ひっく、うえぇぇぇ………」

 

「お、おい元気出せよ…な? ほら、飴あるぞ?」

 

「……せーじゅんが子供扱いするぅぅぅ……!」

 

 

 ――――――女装を抜きにしても、肉体から完璧に“女性”になってしまった。

 

 

 しかもこれ、神様の認識が変わらない限り術が解けない仕様であるため、解くためにはこの術式の参加者である三十人の認識を改め再び同じ術式を使わせないといけない。

 

 彼らの意識を、僕が『男』であるという認識の下に同じ術式を発動させなければ、僕は元には戻れない。

 

 そして今し方浅間が持ってきた書類の内容を聞く限り、僕が元に戻れる可能性は、絶望的に絶望的だった。

 

 

「おい葵姉! お前も何時までも隅でしゃがんでないでコイツ宥めるの手伝え元凶!」

 

「それは……少々無理ですわよ、正純」

 

「確かに様子が変だが……それ以上に今はコイツの方が重症だぞ?」

 

「それはそうなのですが……その、何気に湊が本物の女性になって一番ショックを受けてるのって、喜美ですから………」

 

「……あー、確か肌がどうこう髪がどうこうと言っていた気はするが」

 

「喜美ちゃんミナちんが男だったから弄れた部分が、ミナちんが本格的に女の子になっちゃって負けてると分かって今すんごく凹んでるところだからねー」

 

「いの一番で服の下に手突っ込んで体中まさぐって髪まで散々触り倒してましたからねー喜美さん。だから実感として湊さんの肌ツヤとかキューティクル具合に打ちのめされたって感じです。そして私も…………胸が」

 

 

 体が女体化して、特に何かが変わったという訳じゃない。

 

 ただ、髪ツヤがいつも以上に櫛通りが良いものになっていたりとか。

 

 ただ、いつも以上に化粧の乗りが良くて化粧水を使うまでもなく肌がプルプルしてることとか。

 

 ただ、同じぐらいの身長である鈴さんやアデーレと比較すると結構胸が出てたりとか。

 

 精々それぐらい性徴してしまったぐらいだ。むしろそれぐらいだからこそ、元々の自分の女度の高さを思い知らされてメゲそうになる訳だが、周囲にも凹んでるのがちらほら。

 

 

 朝教室に着いていの一番に僕の異変を弄りネタにしようとした喜美は何か教室の隅に行ったっきり戻ってこなくなったし、アデーレは僕を親の仇のような眼で見てくる。今一番誰が傷ついてるのか分かっての反応なのだろうかコイツら。今一番絶望してるのはまず間違いなく僕だというのに、

 

 

 そしてより最悪だったのは、喜美に弄られ制服が乱れきった時にやってきたトーリとホライゾンのコンビだった。

 

 

『……あ゛』

 

『あれ? 湊お前何胸隠して……おひょー! オメェなんだよ! やっぱ胸あるんじゃねぇかなぁホライゾン!』

 

『トーリ様。とりあえず、後ほどしばくとして………湊様?』

 

『ひぅっ、こ、これはそのっ、あのっ、本当は術式でこうなってるだけでほんとうはこんなんじゃなくふやぁぁぁあっ!?』

 

『『『『『『『『!!!!!!』』』』』』』』

 

『こら男勢! 何全員総立ちなんですか! い、今の二人を見たら射ますからね!?』

 

『あぁぁ、ほ、ホライゾンいきなりにゃにをひぃん!』

 

『……ふむふむ。浅間様よりも感度は高いようですね、ニセチチの可能性は無し。ではもう少し調査の程をば……』

 

『ふやぁぁぁあああああ! やぁああん!? ちょっ、そこはぁ……っひゃぅっ!? さ、さわっちゃだめだったらぁぁぁぁぁぁ!』

 

『………!』

 

『ガっちゃんガっちゃん! 今のミナちんをネタにするのは色々と複雑というか流石に駄目なんじゃないかな!?』

 

『大丈夫よ。もうネームは終わったから』

 

『あっ、製本できたらうちで流通やっていいかな? ついでに音声データと動画データ残してるから纏めて全国に流せば……』

 

『――――つまり金だな!? よしホライゾン、そのままソイツを限度一杯まで引き出せ!』

 

『湊の何を引き出させるつもりさねアンタは!? ホライゾンもコイツの言う事なんて聞く必要はないよ!』

 

『Jud.では、湊様……御覚悟を』

 

 

 

 …………うん、思い出す限り最悪なのは二人じゃなかった。

 

 

 結局、梅組でも一番良心的だった正純に終始面倒を見てもらいながら徐々に正気を取り戻してった僕は、この時の記録を消すために東奔西走する羽目となる、

 

 映像と音声の方は記録していたハイディとシロジロを説得し、後日別撮という事で手を打ってもらったが、少数の限定本として製本された五つの『にょた湊百合&凌辱本』を回収すべく、大罪武装の回収とは別に命がけの戦いをする羽目になるのだが、それはまた別のお話――――――。


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