境界線上のホライゾン~火影を継ぐ少年   作:イイ日旅立ち

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女装少年の通常業務《ツッコミ》

 

 

 

 

 

 

「―――――何だかんだで試作品の試し撃ちが出来たのは良かったよね、うん」

 

 

 

 

 

 ストレスのあまりちょっくら暴れてしまった。てへぺろっ……で、許してくれるだろうかあのおっちゃん。

 

 

 

 きっと未だ品川では魔神族のヤクザがのびているところだろうけど、まぁいい。僕を慰み者にしようとか言ってたし、因果応報。相手が悪かったと思ってもらおう。

 

 

 

「久しぶりに『閻水』以外の魔導具使ってみたけど、やっぱり色々使っとかないとダメだね、うん」

 

 

 人間対異族であれば、種族的観点からでも明らかに後者が有利だしうちの担任ぐらい常識を止めてないとまず勝てる相手ではない。

 

 そこで勝てる要素を盛り込むとしたら、人間側はやはり“技術”か“道具”。そのどちらかを使わなければならない。

 

 

 先生はその“技術”とそれ以上に“力”があるからいいけど、僕は生憎あそこまで人間を辞めてない。むしろどうやったら人間辞めれるのか知りたいぐらいだけど、そんな事言ったらまさしく『死亡フラグ』成立である。

 

 

 となると自然、僕が用いる手段は“道具”に限られてくる。

 

 

 足りない肉体や技術を“道具”という第三のファクターで埋める以外に、僕には碌に戦う手段が無い。

 

 

 芸人としても中途半端だし、武芸者というには僕はあまりに道具に頼り過ぎている。器用貧乏、そんな言葉がよく似合うのが自分だと自負している。

 

 

 

「………」

 

 

 

 例えばトーリ。彼は無能とまで揶揄される人だけど、確かに僕や武蔵の住人皆が彼を口を揃えて『馬鹿』と言うけど、それだけが彼の全てじゃない。

 

 

 むしろ彼は自分が馬鹿だと認識しているからこそ、どの人ならばそれが出来るのかを見抜く事に優れている。自分は馬鹿だけど、コイツはそうじゃないのだと彼は人を見る目に関してはおそらく、この武蔵ではトップクラスだろう。

 

 

 そんな人間に一応は認められているのだ、僕は。だからこそ、足りない物ばかりが目に見えてたとしても、結局はこうする事しか出来ないし、するつもりもない。

 

 

 

 ―――――“不可能”ばかりに目がいってしまうのは、諦める事に繋がるから。

 

 

 それじゃあ駄目だと、僕は教えてもらった。

 

 

 多分そういう事を言いたかった訳じゃないんだろうけど、少なくとも僕はそのお陰で今の道を見つける事が出来た。トーリには感謝してるけど、口に出したら何言われるのか分からないので絶対に口外するつもりはない。

 

 

 それに口に出さなくたって、僕には僕に出来る事でそれを示す事が出来る。

 

 

 

 ……『神格武装』と呼ばれる武具がある。

 

 これは流体、世界を構築するエネルギーを利用して固有技能を行使する武装の事で、その中には歴史再現におけるかつて名を馳せた武装を襲名したものもある。有名どころで言うと“蜻蛉切”や“雷切”、“村雨”などがそうだろう。

 

 僕はこれを、独自に造り上げる事で武蔵の、トーリの力になる事を誓った。

 

 

 『大罪武装(ロイズモイ・オブロ)』『聖譜顕装(テスタメンタ・アルマ)』にも負けない戦えるだけの力。

 

 

 武蔵は武装が許可されていないけれど、そこはそれ。裏道なんて幾らでも用意出来る訳で、建前として別の物を造りあくまでも“武装としても転用出来る”物として、僕は“それ”を作り上げた。

 

 

 名前に「武装」や「武器」のようなニュアンスをつけると睨まれるので、一応準神格武装から神格武装の中間ぐらいの性能を有していると思うのだが、それでも名前もある程度考えないといけなかった。

 

 

 そこで名付けたのが『魔導具』。

 

 

 大罪武装を開発した三河の技術や魔術(テクノ・マギ)の術式を必死こいて勉強しながら、武蔵の神奏術で漸く形を見た道具。

 

 外面上では“五行を用いた術式増幅具”という名目で開発及び所持が許されているけど、それでも武蔵の武装所持は禁止となっているため今のところ身内相手以外で使った事は無い。

 

 今回はその良い練習台がいたからよかったものの、テストを出来る相手が武蔵じゃ限られてるからなぁ。流石にクラスメイト相手に魔導具ぶっぱは良心が痛いし。

 

 

 

「(でも点蔵とウルキアガはシバく)」

 

 

 

 ……無論、例外はある。僕は聖人でも仙人でも無いので、下着をガン見された恨みは思う存分晴らしてやる。具体的には、二人が大事にしてる伝纂器ゲームのデータを改竄してくれるわククク。

 

 

 他にもブランドまで特定してくれた巫女がいたけど、報復が怖いのであちらは放置だ。それに術式関係でお世話になりっ放しな事もあるので、ここは引くしかない。決して泣き寝入りでは無い。

 

 

 

「……っと、ボケっとしてないで早く教導院に戻らないと」

 

 

 サボり扱いでもこの際良いかなーと思わなくもないけど、それはそれで罰ゲームが怖いのでさっさと行こう。先生はガッチガチの肉体派必罰主義だからなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・

 

 ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「――――戻ってきたはいいけど、今度は橋に集まって皆何してんのさ」

 

「お、おぉぉ湊殿! いいところに来て下さった早速いつものフォローミーで御座る!」

 

「オラァッ」

 

 

 

 

 戻って早々、授業では無く何やらクラスメイト達が橋に集まって何事かの話し合いをしていた。

 

 

 まぁ僕も僕で荷物を家に置きに帰ったり、今度は機関部ではなく近所のおばちゃん家の調理器の調子が悪かったので修理もしていたから授業をまるまるサボタージュしてしまった訳だけど、まぁまだいない人もいる………訳無いよね、遅刻すいません。

 

 

 それはともかく、トーリを中心に一体何の話をしているのだろう? そして当たり前のように近づいてきた点蔵には“大地からの流体供給を利用した身体機能向上”を目的とした試作魔導具その二である『土星の輪』ブーストをかけた一撃の名の下に沈める。決め技は膝の裏蹴り。そのまんまだ。

 

 

 

「オイオイ、忍者が一発で沈んじゃダメじゃね? 全然忍べてなくね? 忍耐どうしたー!?」

 

「おぉぉぉ……! み、湊殿、いきなり何を……そしてトーリ殿マジで煩いで御座るよ……っ」

 

「いや、下着ガン見されたから見た奴全員シバこうかなって。とりあえず、君とウルキアガは最優先で潰す」

 

「いつもの口調―――――!? 代演で湊君は仕草の女性化を捧げていたでしょう!?」

 

「『私以外に見られるのはムカつくので超――――――有りですby神様』というコメント貰ったから大丈夫!」

 

「巫女の私が言うのもアレですけど、大概神道アバウなんでもないですよーう? 本当ですよー?」

 

 

 そりゃまぁ、代演となる奉納に女装と舞が入るぐらいだし、神様以外の前で舞を見せるのが禁じられているし僕。

 

 

 つまりはそれだけ僕の舞を神様が評価してくれているという事だけど、出来で言えば遠く踊り子である喜美には及ばないし芸能神を奉納している人よりも舞自体の技術力は低いと自負している。

 

 

 それでも神様が僕の舞と女装を気に入っているのは、正直分からない。神様のフェチにも困ったものだと思うけど基本神道、アバウトなところが多いから別に気にならなくなった。

 

 

 

「いや違いますよー? 湊君がだいぶ特殊な例ってだけで、神道はちゃんとしてますからねー?」

 

「……ゴッドモザイクとかやってる時点でしっかりもなにもがぁ」

 

「もう湊君ったらどうしたんですかー? そんなにジタバタしてたら髪型乱れちゃいますからね、今なおしますからねー」

 

「おぉぉ。浅間の胸に湊の顔が挟まったぞ」

 

「フフフ浅間、そのままその乙女男の首をこう『コキャっ』としちゃいなさい! 恨むのならその髪と肌の維持する秘訣を教えなかった自分のケチさ加減を恨む事ね!」

 

「何時になく直接的な暴力できたなぁオイ狂人――――――!」

 

「おっ、復活早いで御座るな」

 

 

 失言らしかった物を無理矢理塞がれた挙句、浅間のあり得ない大きさの胸に潰されて口ごと潰されるところだった。

 

 

 というか普通ならここで男子の嫉妬なり入るところなのだが、僕の場合割とセクハラの守備範囲が広いらしいので嫉妬の視線は少ない。その代わり、同情的な視線が多いのが今でも納得いかない。

 

 

 しかしこのままクラスのノリに合わせていてもきっと本題を誰も教えてくれなさそうなので、とりあえず普通にしてれば無難なクラスメイトだと信じる眼鏡厨二病少年、ネシンバラに尋ねてみる事にした。

 

 

 

「はぁ……で、今何やってたの?」

 

「Jud.今開いているのは生徒会兼総長連合会議で、題目は『葵君の告白を成功させるゾ会議』で」

 

「待った待った待った待てやオイコラ」

 

「ん? 何か質問があるのかい?」

 

「あらいでか。何その告白って、僕何にも知らないよ?」

 

「フフフ乙女男、一人場に乗り遅れた哀れなアンタのためにこの賢姉が教えてあげる。明日、うちの愚弟がホライゾンに告白するのよ! これはもうクラスどころか武蔵住民総出でフラれた後の宴会をするべきよね!?」

 

「色々とツッコミどころはあるけどまず――――失敗前提は止めろよそこは成功を祈れよ姉だろお前!?」

 

 

 

 初耳過ぎてビックリしてるのに、つか告白て。しかもホライゾンて。

 

 

 “ホライゾン”という名前を梅組の生徒ならば誰もが忘れられないものとして認識している筈だ。

 

 

 それは既に死去した少女の名前であり、彼女の死を切欠に一時期そこで点蔵と何やら手紙談義をしているトーリが一度死にかけた事があったから。

 

 

 既に死んだ人に告白かとも思ったが、喜美の表情を窺う限りどうやら性質の悪い冗談という訳ではないらしい。

 

 

 ……だとすると、幼馴染としてここはやっぱり。

 

 

 

「――――そっか。なら、僕にも協力出来る事って無い? 折角の告白なんだし、記憶に残るような素敵イベントになるよう精一杯手伝うからさ!」

 

 

『―――――――――』

 

 

「……あ、あの。何でそこで皆黙る訳? え、別に今何もボケてないよね? セージュンみたいに滑った訳でも無いよね!?」

 

 

 

 おかしい。ここは普通に応援する場面の筈。なのにその『うわコイツマジで言ってやがる』的視線はなんだ。点蔵と同じ目に遭わせるぞ特にウルキアガ。

 

 

 訝しみながら首を捻っていると、ちょいちょいと裾を引っ張られ先の事もあり過敏に反応して振り返ると、そこには同程度の身長であり稀に朝のランニングに付き合わせてもらっているアデーレがいた。

 

 

 

「あの、自分思いますにさっきの仕打ちを受けたのにそんな善人マックスな発言をした事が信じられないんじゃないかと」

 

「え? 善人ってそんな大袈裟な。普通じゃないの?」

 

『ええ子や……』

 

「はいクラスメイト! そこで我が子を慈しむような眼で僕を見ない! 同い年!」

 

 

 

 鈴さんじゃあるまいし、僕まで持ち上げる言い方は止めて欲しい。皆とは対等でいたい………というか、弱みを見せたら重点的に攻めてくるのが武蔵住民だし、上にいる王様なんてむしろ軽く苛めレベルの悪戯をされている。こないだ『友達ツクール』を送りつけるのを止められなかったのは今でも後悔している。

 

 

 それはさておき、クラスメイトや騒ぎを見ていた他のクラスの視線が妙に痛かったので顔を逸らしてトーリの方に顔を向けた。

 

 

 

「ところでトーリ、今どんな感じに方向できてんの?」

 

「おう湊! ――――『オッパイは 揉んでみないと わからない』って結論に至ったんだけどーべるんっ」

 

「ちったぁ真面目にしろやこのフルスロットルおバカ――――――!」

 

 

 

 真面目に告白考えてんのは僕だけか! ていうかその告白する張本人がなんで胸の話題で盛り上がってさらには慕情歌まで作ってるんじゃないよトゥルーバカ!

 

 

 

「……あぁ、やはり湊殿がツッコミを入れてくれないと自分の被害が増えるので御座るなぁ。偶に見せるバイオレンスが無くて性別が逆で胸さえあれば嫁にしたいランク殿堂入りしていそうなもので御座るし」

 

「あっ、湊君って一人暮らしが長いせいか料理もかなり出来るんですよね確か。トーリ君と以前共同で作ってた『青雷亭』の限定お弁当とかすっごく美味しかったですし」

 

「あの女装用の制服も貰った物を自分で改造しているぐらいですもんねー。手先の器用さは疑うまでもありませんし」

 

「その上この武蔵にいながら武蔵色に染まってないさね。本人には悪いけど、アレを見てるとまだ立ち戻れるって分かる良い指標さ」

 

「本人無自覚でアレだもんねー。ナイちゃん思うに、ミナちんって神奏してる神様から私達の空気から守られてるんじゃないかな?」

 

『あぁ、一理あるある』

 

 

 

 分かっていたけど、分かっていたけど僕の知人に碌な人間はいない。人格的な意味というよりは、キャラの濃さや常の芸風がとことん僕と相性が悪いというか。

 

 

 お陰でこちらは四六時中ツッコミに大忙しだし、基本的に味方と呼べる人間はいない。何だこのアウェー感。

 

 

 毎度変わらないそんな光景は、不思議そうにしながらも大凡の事情を掴めているであろうネイトと酒井学長が来るまでの間、ひたすらボケるクラスメイトに僕がツッコミを入れる形で続くのだった。

 

 

 

「なんだよ湊! お前そんなに文句言うならお前のオッパイ揉ませろよ!」

 

「男にある訳ないだろ!? それに膨らんで見えるのはそういうブラしてるからだよ! 最近女装のクオリティ上げろって神様に催促されて仕方なくつけてんだよ文句あっか!?」

 

「オイオイマジかよ……てっきり俺ぁ、お前がついに『えへっ、実は私女の子だったの☆』的展開が来ると思って豊胸ブラ用意してきたのに……」

 

「その先見をもっと別のところで活かそうね!? あと今膝を突いてる男子全員並べぇ! ぶっ飛ばしてやらあああああああああああああ!!」

 

 

 

 ガチで残念がってた男子は全員、土星の輪ブーストのコークスクリューをねじ込んでおいた。ざまぁみさらせ。

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