「大丈夫ですの?随分うなされていた様ですけれど……」
「あぁ、すまないね女神。だが心配には及ばないよ」
目が覚めると女神の顔がアップであった。
表情は心配に歪み、気遣わし気に私を見ている。
「少し、昔の事を、ね」
「そうですの……」
ありがたい事だ。
しかし、申し訳なくもある。
何せ今日は転校して士道に接触を試みる日なのだ。
今日は本体が行くことになっている。
つまりは、制服だ。
「……女神よ。少し直立していただけるかな」
「はい?」
疑問をあげつつも言った通りに直立してくれる女神はまさに至高。
あまりの愛らしさに思わず鼻からも
流出--女神至高天・天元突破。
聖遺物は女神の制服(使用済み)。
危ない危ない。
「あぁ、もうよろしい。女神の貴重な制服成分を補給出来たのでな」
「殿方って制服好きですわよね……」
「真理ではあるな」
女神自慢の時に制服の話で大分盛り上がったのを思い出す。
自分でも思い出すと引く程話し合った気がする。
「カリオストロさんはどうするんですの?」
「無論、女神のそばにいるよ。このような貴重な時間を無駄にしたくはないのでね」
「……盗撮は禁止ですわよ……?」
撮影などはしないとも。
ちょっと時空間から切り離して保管するだけで。
「さて、ではいってきますわ」
この刹那も空間から切り取って保管しよう。
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「今日から教育実習で来たカール・クラフトだ。得意科目は天文学。趣味は占いと歌劇だ。仲良くしてくれるとありがたい」
そばにいるとは言ったが、影に引っ込んでるとは言ってない。
学校に潜入する為の情報操作など、運命を決めることに比べれば片手間以下だ。
憮然とした表情の女神を視界に収めつつ、私は教室の後ろに立つ。
ふふ、しかし女神も茶目っ気があるのだね。
開口一番に『わたくし、精霊ですの』とは。
分かっているが可愛いものだ。
あの笑顔は忘れない。スタンバイ時に鼻血を抑えるのが大変だった。
折紙と目があったので笑かけてみた。
職員室で合流した際にも受けたが、女神からの冷たい視線が中々ゾクゾクする。
あぁ、可愛いものだ。
家を出る時間をズラした甲斐があるというものだ。
今回最大の英断だったね。
「ど、どうしたんだ折紙?」
「……別に。なんでもない」
「……むむぅ、なんだかあのカールとかいう男、変な感じがするぞ」
プリンセスは野生の勘が冴え渡っているね。
まぁとはいえ、私の正体にまで至るわけではあるまいから放置だ。
「まさか精霊……?」
「えっ……」
プリンセスの声に士道が絶望感溢れた声を出した。
私もごめんだがね。
士道とキスなど。汚物で口をすすぐ所存である。
……女神に嫌われるので泥水にしよう。
だから女神は『面白そう』みたいな顔で見るのをやめてもらえるかね。
可能性としてはこれからの動きによっては十分あり得るのだ。
BLなど誰得だ。
恐ろしい。