コズミック変態と哀れな最悪の精霊さん。   作:冬月雪乃

10 / 34
いってきます

「大丈夫ですの?随分うなされていた様ですけれど……」

「あぁ、すまないね女神。だが心配には及ばないよ」

 

目が覚めると女神の顔がアップであった。

表情は心配に歪み、気遣わし気に私を見ている。

 

「少し、昔の事を、ね」

「そうですの……」

 

ありがたい事だ。

しかし、申し訳なくもある。

何せ今日は転校して士道に接触を試みる日なのだ。

今日は本体が行くことになっている。

つまりは、制服だ。

 

「……女神よ。少し直立していただけるかな」

「はい?」

 

疑問をあげつつも言った通りに直立してくれる女神はまさに至高。

あまりの愛らしさに思わず鼻からも(ことわり)的にも流れ出そうになる。

流出--女神至高天・天元突破。

聖遺物は女神の制服(使用済み)。

危ない危ない。

 

「あぁ、もうよろしい。女神の貴重な制服成分を補給出来たのでな」

「殿方って制服好きですわよね……」

「真理ではあるな」

 

女神自慢の時に制服の話で大分盛り上がったのを思い出す。

自分でも思い出すと引く程話し合った気がする。

 

「カリオストロさんはどうするんですの?」

「無論、女神のそばにいるよ。このような貴重な時間を無駄にしたくはないのでね」

「……盗撮は禁止ですわよ……?」

 

撮影などはしないとも。

ちょっと時空間から切り離して保管するだけで。

 

「さて、ではいってきますわ」

 

この刹那も空間から切り取って保管しよう。

 

 

 

 

 

#

 

 

 

 

 

 

「今日から教育実習で来たカール・クラフトだ。得意科目は天文学。趣味は占いと歌劇だ。仲良くしてくれるとありがたい」

 

そばにいるとは言ったが、影に引っ込んでるとは言ってない。

学校に潜入する為の情報操作など、運命を決めることに比べれば片手間以下だ。

憮然とした表情の女神を視界に収めつつ、私は教室の後ろに立つ。

ふふ、しかし女神も茶目っ気があるのだね。

開口一番に『わたくし、精霊ですの』とは。

分かっているが可愛いものだ。

あの笑顔は忘れない。スタンバイ時に鼻血を抑えるのが大変だった。

折紙と目があったので笑かけてみた。

職員室で合流した際にも受けたが、女神からの冷たい視線が中々ゾクゾクする。

あぁ、可愛いものだ。

家を出る時間をズラした甲斐があるというものだ。

今回最大の英断だったね。

 

「ど、どうしたんだ折紙?」

「……別に。なんでもない」

「……むむぅ、なんだかあのカールとかいう男、変な感じがするぞ」

 

プリンセスは野生の勘が冴え渡っているね。

まぁとはいえ、私の正体にまで至るわけではあるまいから放置だ。

 

「まさか精霊……?」

「えっ……」

 

プリンセスの声に士道が絶望感溢れた声を出した。

私もごめんだがね。

士道とキスなど。汚物で口をすすぐ所存である。

……女神に嫌われるので泥水にしよう。

だから女神は『面白そう』みたいな顔で見るのをやめてもらえるかね。

可能性としてはこれからの動きによっては十分あり得るのだ。

BLなど誰得だ。

恐ろしい。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。