座に来訪者が現れた。
「ここは女神の為の場所だ。故に、貴様の着席を許す訳にはいかない。さぁ、踏み込み過ぎた役者にはご退場願わねば」
誰であろうと、どんな渇望だろうと許されない。
「……お前が……お前が全部糸を引いていたのかカール先生……!俺がこうなったのも……あんたを好きになったのも……!」
五河士道。
我が女神を救うため、止む無く永劫破壊を組み込んだ新たなる使徒。
「然り然り。他力本願は私の十八番。お前の好意も私にとっては塵同然の価値しかない」
「嘘だったっていうのかよ……あの時のキスも甘い言葉も--------ッ!」
「はてさて。どうであったかな。覚えておらんなそんな事。どうであっても、ここに辿り着いた時点で潰し合う運命にあるのは自明の理。黄昏でもあるまいに、共存など出来ぬのだ」
「……----なら、俺も俺の望みを--絶望が無い世界を叶えるため、あんたを、今この刹那に
--彼の渇望が世界を塗り替える--。
「
全力で飛び起きた。
なんだこの
こんな未知いらない。
目覚めは昨日に引き続き良いものでは無かった。
私が攻略されると士道が流れ出るのか。
恐ろしい話である。
余談ではあるが、夢の原因は寝ている私の耳元で『士道さんとくっつく』などと囁いていた女神だったようだ。
女神のいたずらなら仕方あるまい。
#side 鳶一折紙
〈メルクリウス〉--世界で二番目に観測されつつも、登録されたのは七番目となった男性体の精霊。
その戦闘力は他の比ではなく、この精霊に関しては直接の戦闘を避ける事を推奨されている。
吐息で部隊が瞬殺されただとかの報告書多数。
天使は不明。
特徴として、演技がかった口調と、胡散臭い動き、神出鬼没などがあげられる。
様々な事件を裏で操っているともされ、彼が把握していない事件を探すことはおそらく困難。
最も際立つ特徴として、精霊〈ナイトメア〉を女神と呼び慕い、コレに被害を与える事を非常に嫌うこと、女神以外は塵だと言って憚らない事があげられる。
--そんな存在が教育実習とか言って現れた。
「……何を、企んでいるの……?」
決して届かない問いをこぼすが、答えは無い。
こんな場所から届いたら怖い。
そもそも届いたとして答えてくれる事は無いだろう。
五河士道には既に近寄らないで欲しいと告げてある。
どうであっても彼に〈メルクリウス〉を近づけないようにしないとならない。
彼は、私が守る。
「だから、こうして撮影しているのは必要な事。うん」
現在、ナイトメアに士道が学校案内しているのを追跡中だ。
プリンセスと共に。
「さっきから何をしておるのだ?」
「あなたには関係無い」
「むぅ……見せるのだ!」
あ、だめ、そんなロッカーの中で暴れたら--。
ばたん。
開かれた扉、倒れこむ私達。
……プリンセスに押し潰される私。
「……お前ら……何やってるんだ……?」
「仲がよろしいんですわね」
重い。どいてホルスタイン。
「ほ、ほるすた……?なんだそれは。うまいのか?」
「乳牛ですわよ」
ナイトメアのツッコミにプリンセスが泣いて逃げた。