コズミック変態と哀れな最悪の精霊さん。   作:冬月雪乃

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夢は荒唐無稽だからこそ夢

座に来訪者が現れた。

 

「ここは女神の為の場所だ。故に、貴様の着席を許す訳にはいかない。さぁ、踏み込み過ぎた役者にはご退場願わねば」

 

誰であろうと、どんな渇望だろうと許されない。

 

「……お前が……お前が全部糸を引いていたのかカール先生……!俺がこうなったのも……あんたを好きになったのも……!」

 

五河士道。

我が女神を救うため、止む無く永劫破壊を組み込んだ新たなる使徒。

 

「然り然り。他力本願は私の十八番。お前の好意も私にとっては塵同然の価値しかない」

「嘘だったっていうのかよ……あの時のキスも甘い言葉も--------ッ!」

「はてさて。どうであったかな。覚えておらんなそんな事。どうであっても、ここに辿り着いた時点で潰し合う運命にあるのは自明の理。黄昏でもあるまいに、共存など出来ぬのだ」

「……----なら、俺も俺の望みを--絶望が無い世界を叶えるため、あんたを、今この刹那に超越(こえ)る----ッ!」

 

--彼の渇望が世界を塗り替える--。

 

Lux. (光よ。)

Sanans vulnera,(傷を癒し、)

Sum disciplinam, et mente(心を育む)

Lucem sanctam.(聖なる光よ。)

Et absterget Deus tenebris(暗闇を拭う)

Salus autem mea in luce quae a calido.(暖かな光こそ我が救い。)

Etiam hic nocere eggplant,(ここでは害なす人も、)

Tum abest auctor.(蔑む人もいない。)

Cum turbæ irruerunt in sacrum characterem(聖なる印を押された民は)

Semper beate vivere,(永劫幸せに暮らし、)

Ego pacem.(安寧を約束される。)

Coniecto desperes quia nunc(きっと今の絶望は)

Eadem illa felicitas(いつか来たる希望への過程なのだと)

Et habebis fiduciam.(信じていられる様に。)

Promissio(私は皆に約束しよう。)

Quisque et nunc(これより誰一人として)

Non laedas(傷付ける事叶わん。)

Atziluth(流出)--

Ullus lux(光あれ)--Lux in tenebris ut(絶望掻き消す一筋の光)

 

全力で飛び起きた。

なんだこの電波(未知)

こんな未知いらない。

目覚めは昨日に引き続き良いものでは無かった。

私が攻略されると士道が流れ出るのか。

恐ろしい話である。

余談ではあるが、夢の原因は寝ている私の耳元で『士道さんとくっつく』などと囁いていた女神だったようだ。

女神のいたずらなら仕方あるまい。

 

 

 

 

 

 

#side  鳶一折紙

 

 

 

 

 

〈メルクリウス〉--世界で二番目に観測されつつも、登録されたのは七番目となった男性体の精霊。

その戦闘力は他の比ではなく、この精霊に関しては直接の戦闘を避ける事を推奨されている。

吐息で部隊が瞬殺されただとかの報告書多数。

天使は不明。

特徴として、演技がかった口調と、胡散臭い動き、神出鬼没などがあげられる。

様々な事件を裏で操っているともされ、彼が把握していない事件を探すことはおそらく困難。

最も際立つ特徴として、精霊〈ナイトメア〉を女神と呼び慕い、コレに被害を与える事を非常に嫌うこと、女神以外は塵だと言って憚らない事があげられる。

--そんな存在が教育実習とか言って現れた。

 

「……何を、企んでいるの……?」

 

決して届かない問いをこぼすが、答えは無い。

こんな場所から届いたら怖い。

そもそも届いたとして答えてくれる事は無いだろう。

五河士道には既に近寄らないで欲しいと告げてある。

どうであっても彼に〈メルクリウス〉を近づけないようにしないとならない。

彼は、私が守る。

 

「だから、こうして撮影しているのは必要な事。うん」

 

現在、ナイトメアに士道が学校案内しているのを追跡中だ。

プリンセスと共に。

 

「さっきから何をしておるのだ?」

「あなたには関係無い」

「むぅ……見せるのだ!」

 

あ、だめ、そんなロッカーの中で暴れたら--。

ばたん。

開かれた扉、倒れこむ私達。

……プリンセスに押し潰される私。

 

「……お前ら……何やってるんだ……?」

「仲がよろしいんですわね」

 

重い。どいてホルスタイン。

 

「ほ、ほるすた……?なんだそれは。うまいのか?」

「乳牛ですわよ」

 

ナイトメアのツッコミにプリンセスが泣いて逃げた。

 


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