と、勇んで言ってみたはいいが、私は女神に手出しを禁じられた身。
「仕方あるまい。なれば、私に出来ることなどここから女神の勇姿を撮影することくらいか」
屋上を埋め尽くす女神。ぱしゃり。
あっという間に真那を瞬殺。十香も折紙も拘束。勝者の余韻に浸る女神。ぱしゃり。
さて、そろそろ二つ目か。
〈イフリート〉が士道ごと女神を殺害する。
これが回帰のターニングポイント。
とはいえ、私がさせんが。
士道が死んでも女神は救うとも。
私が決意新たに屋上を見ると、その若干上に炎が舞った。
それは徐々に球形を成し、中から鬼の角のような装飾を頭につけた和装の少女が現れる。
「--琴、理……?」
折紙の視線が琴理に向く。
その瞳に映るのは、復讐の情熱。
「あぁ、万象、ここより舞台は加速する。さぁ、失望させてくれるなよ、五河士道--」
「士道。少しの間、力を返してもらうわよ。--焦がせ〈
灼熱が巨大な戦斧となり、琴理はそれを構えて女神に突貫する。
女神も興奮気味に応戦するが、その再生能力には手を焼いているようだ。
そして、ターニングポイントに差し掛かる。
破壊衝動に呑まれた琴理が我が女神に戦斧を向ける。
戦斧は形を変え、巨大な砲身へとなる。
その一撃で六人もの女神分身体が焼滅した。
さて、次だ。
「銃を取りなさい。闘争はまだ終わってないわ。あなたが望んだのよ。--立ち上がらないというなら、死になさい」
砲身に炎がチャージされる。
圧縮され、打ち出されるそれは間違いなく女神を焼き滅ぼすだろう。
「
士道が女神をかばう。
ターニングポイント通過、だ。
しかし、メギドを逸らすのが若干遅いらしく、女神の直撃コースを走っている。
ならば。
「--私が盾になるしかあるまい」
じわり。と士道の前に湧き出てみた。
「カ、カール先生!?」
「然り然り。私はカール・クラフト。そして、君たちの言うところの〈メルクリウス〉でもあり、かつて水銀の蛇と呼ばれた男でもある。五河士道。感謝しよう。我が女神をその身を呈してかばった事は借りの一つ二つでは賄えない程の偉業である」
「カリ、オストロさん……」
「うそ……砲が……片手で……」
片手で圧縮した炎を握り潰す。
座の本体であれば一睨みで消しされる訳だが、端末もしくは触覚である私には無理だ。
「あぁ、ぬるい。ぬるいぞイフリート。私を焼こうというのなら、あと一億度は温度を高めねばならないよ」
「焼くつもりなんか無いわよ!」
知っている。
「ふ、申し訳ないが五河士道。女神の攻略はまた後だ。落ち着いた頃にまた来よう」
しゃがみ込んで死の恐怖に震える可愛らしい我が女神を抱き上げる。
「ま、待ってくれ!」
「何かね?」
「あんたは、本当に精霊なのか……?」
「さて。人外である事は確かではある。そら、士道。そろそろフラクシナスに救援を呼ぶといい。折紙、真那両名共に救急車を手配した。私の事は折紙か真那がよく知っているだろう」
今度こそ私達はその場から消えるように逃げ去った。