私もかつては成り代わり転生者として苦労したものだ。
悪夢みたいな世界で、原作を壊したくないからこそ必死に立ち回り、黄昏を愛するフリを続け、時折はっちゃけてストーカーしたりして黄金や刹那に張り倒される。
そんな殺伐とした日常は第六天によって打ち砕かれ、友人などを一気に失った私は原作のようにもう一度第六天と戦う気力すら起こらず。
黄金には悪いが、私は疲れたのだ。
水銀である事に。
折れた心を立て直すことも出来ずに敗走した。
幸いにして第六天はこちらから触らなければ害をなさない。
ならば世界を飛び越え、遠く、遠くに逃げていればいい。
……申し訳ない。申し訳ないが、私は水銀になれなかった。
勝手に水銀に作り変えて送り込んだ神様を恨んで欲しい。
跳んで、飛来して、逃げて。
そうして辿り着いた幾つか目の世界で。
--私は女神と邂逅した。
あぁ、原作水銀よ。君の言いたいことが何よりもわかる。
一度など第六天に触れるリスクを侵してまで原作水銀らしき水銀に黄昏のコレクションを渡しに行ってお互いの女神について六回帰分くらい語り合ったくらいだ。
水銀が二柱もいると世界がすぐダメになっていかんね。
多分あっちの水銀は気にしてないどころか世界の一つ二つと引き換えに黄昏コレクションが増えたことを喜んでるが。
最初はなんだ貴様と言わんばかりな敵意全開だった彼が懐かしい。
『私だ』
『お前だったのか』
とかリアルな神がやるもんじゃないね。
しかも如何にも暇を持て余してるニート神が。
真面目な話。
君が黄昏を愛したように。
私は私の女神を愛そう。
我が女神の名前は時崎狂三。
身長は157cm。
スリーサイズはB85W59H87。
好きなものは動物。
嫌いなものは人間。
体重はどうやっても教えてくれなかったが、おそらく四十前半。
身長とバスト、ウエストから見たカップ数はD。
アンダーバストは66。
などと如何に私が女神を知っているのかを本人に知らしめたら時を止められて蜂の巣にされかけた。
腐っても第四天『永劫回帰』水銀の蛇の時間を一介の精霊が止めたのは快挙に近いだろう。さすが我が女神。記念日にして国民に知らしめたいね。
ともあれ。
幾星霜もの時間を共にした世界と友を見捨てた先で、私は真実の未知を知った。
こんな激情、私は知らない。
もっと知りたい。
彼女の全てを私が得たい。
ありていに言えば劣情で、けれども叶わぬ夢と知っているために片思いの思春期君みたいなモジモジ感を私は楽しんでいる。
既に座には私が座っているので、女神が目的を達成したらすぐ様回帰しているが。
女神を幸せに出来るのは、多分あの本来の主人公だけだ。
それまでいくらでも回帰しよう。
既視感に悩まされる人もいるだろうが知るか。
我が女神の幸せ以上に大事なものはない。
それ以外は塵だ。
さぁ、どうやら女神が目的を達成したようだ。
今宵もまた回帰しよう。
あぁ、最後に一つ。
おめでとう、我が女神。
そして、残念だ。