すこしばかり短いですが。
ーー見渡す限りの焦土。
全ての生命が死に絶えた地獄の様な絶景。
「あぁ、この光景はかつての世界創造の時を思い出す。あの時と違うのは、あちらはありとあらゆる可能性の塊だったのに対し、こちらは全ての事象の収束点ーー滅びに向かっていることくらいか」
「半分は貴方のせいでしょうカリオストロさん。どうしますのコレ。向こうで士道さんが仰天してますわよ」
「我が女神よ。案じることはないよ。私が全てどうにかしよう」
とはいえ、まずは苛烈さを増した折紙の攻撃をどうにか生かさず殺さず無力化しつつ均衡を保たねばならないのだが。
飛来する光を両手で打ち払い、お返しとして重力を差し上げる。
叩き落された黒衣の天使は地面に這いつくばるように五体を地面に預けるが、何も感じないかのように速度に特化させた羽を形成。射出した。
「ふむ。やりにくいね。女神よ。如何か」
「士道さんなら先程もう一度『あの瞬間』に向かいましたわ。わたくし達の事でしたらあなたの張った結界で無傷ですわよ」
「それは僥倖」
現在、矢面に立っているのは私だけ。
それ以外はぶっちゃけ邪魔なので女神と共に結界に閉じ込めた。
女神のみ三重結界なので何があっても折紙は女神を傷付けられない。
こうしている間にも折紙の攻撃は止まらない。
「その執着は感心するがーー残念ながら相手が悪いと言わざるを得ない」
一撃一撃が放たれる度に研ぎ澄まされ、洗練されていく。
その黒い閃光はいつかの白い狂犬を思い出す速度を既に叩き出している。
幾星霜、那由多の果てまで繰り返すならば弱小の神程度ならば打ち破ることが出来るのではないか。
しかし、それらは永劫、私に傷を付けることはない。
追いつくには時間が足りない。強度が足りない。思いが足りない。何よりも、渇望が足りない。
「次の見世物はーーあぁ、物量戦か」
視界を覆う程に配置された羽が照準を私に合わせる。
「しかし、すこしばかり遅かったな」
歴史が修正される。
街はあったであろうかつての可能性をいくつも模索し、精霊達は煙のように掻き消えていく。
私と女神は近くに生えたビルの屋上に退避した。
瞬く間に修正を終えた歴史。
完成したのは修正前と殆ど変わらないが、間違いなく違うパラレルワールド。
「さて、女神よ。歴史がーー世界が変わった感想はあるだろうか。あるならばお聞かせ願いたい」
「最高ですわね。わたくしの実験も殆ど最良の状態で終わりましたし、こうして歴史は変えられるという認識を得られーー……? なんだか同じような会話を交わしたような気がしますわね」
「気のせいだろう、我が女神」
既知感……なのだろうか?
だとしたならばマズイことになるのだが。
策だけでも練ることとしよう。