コズミック変態と哀れな最悪の精霊さん。   作:冬月雪乃

30 / 34
お久しぶりです。



第30話

「カリオストロさん。デートにいきますわよ!」

「……すまない女神よ、もう一度その可憐かつ麗しい声を震わせて言っていただきたい。私の矮小なる脳髄は貴女の声を記憶に刻むのに忙しく、理解できるまでに時間がかかるのだ」

「……カリオストロさんの奢りで……その……デ、デートにですわね……! ああもう! カリオストロさんのばか!」

 

羞恥に打ち震える女神というだけで凄まじい破壊力だというのに、最後のセリフは頂けないな。

ふふ、それでは可愛らし過ぎる。

女神のあどけなく、少女らしい素が良く出ていて、それを直視した我が目は潤い過ぎて爆発してしまいそうだ。

ふふ、なんたる至福。なんたる幸福。

もはやあのなんだかよく分からない理を流し出そうとしている変質者などどうでもよろしくなる。

 

「もう! 早く行きまーーひゃああ!? なんで何も着てないんですの!? あぁ、もう!」

 

女神が引っ張るので服……マントが脱げた。

目を逸らして女神が部屋の外に出て行くが、ふふ。

この写真のタイトルは【羞恥に顔を歪める女神】といった具合か。大きく印刷して冥王星あたりにでも展示しておこう。あそこは今女神博物館の様相を呈しているのだ。

とりあえず隣界にいるファントムとやらだと思われる個体を引きずり出してからグランドクロスを放ってから着替えつつ魂を感じてみる。

こちらの世界の魂が一つ増え、隣界には若干ながらも弱った魂が一つだけ残っている。

仕留めは出来なかったが、概ね思った通りだ。これでしばらく邪魔は出来まい。

ファントムにはまだ舞台に役割があるのでな。

送り込んだ転生者諸君には残念だが、仕方あるまい。

女神が最優先なのでな。これは不変の理である。

ジョンとやらには後で策を練るとしよう。

 

「カリオストロさん? まだですの?」

「すまない女神よ。今着替えを終えたのでそちらに向かうよ」

 

さて。

今はそんな事より女神との突発デートだ。

 

「今日はデパートに行きますわよ。たまには庶民的なデートも良いですわよね?」

「是非もない。女神が行きたいのならば最優先としよう」

「じゃあ、今日は色々買いますわよ! ショッピングデートですわ!」

 

可愛らしく微笑む女神に、もう隣界にグランドクロスと超新星爆発とブラックホールと宇宙開闢の衝撃を放って何もかもを終わりにしてしまいたくなるが、それで隣界が使えなくなっても困る事を放つ寸前で思い出して踏みとどまる。

あぶないあぶない。

 

「カリオストロさん? ……もしかして気乗りしませんの?」

「そんな事はないよ我が女神。少し考え事をしていただけなのだ」

 

私らしくもない。女神と共にあるというのに、その他の塵芥のことを考えるなど……!

 

「……なら、よろしいですわ」

 

少し不安な面持ちにさせてしまった。

儚くも美しい横顔ではあるが、その様な顔をさせたいのではない。

出来る限り女神には笑っていてもらいたいのだ。

……コレクションにはしたが。

 

「ふふ、どのような服を着せようか悩んでいたのだ。許されよ」

「……っ、あ、うぅ……もう! 変な想像をしないで下さいまし!」

 

脛を蹴られたが女神の顔から不安は消えていた。

 

「恥ずかしい事言った罰ですわ! 私、コアラが欲しいですわね!」

「コアラ……ふむ……着ぐ--」

「カリオストロさんのコアラコスはダメですわよ」

「……女神の--」

「私が着ぐるみ着たって意味無いと思いません?」

「……正論ではあるが、私は女神のコアラコスを見てみたいと心が叫んでいるのだ」

「……張っ倒しますわよ」

 

潔くコアラを連れてきた。

 

 

 

 

 

 

#

 

 

 

 

 

その日の深夜。

女神の素晴らしき寝顔を拝見し、起こさぬ様に細心の注意を払って布団を直しながら全力の写真撮影を行い、よほど眠かったのか、脱ぎ捨てられた衣類を回収……もとい、保護して私は自分のスペースに帰る。

--我が友よ。我が女神はなんでこんなに麗しいのだろうか。

今日だけで増えた女神コレクションを整理しながら返らぬ問いを頭の中で反芻させる。

 

「ふふ、嗚呼、もう溢れてしまいそうだ。冥王星如きでは足りないか。ならば次は海王星に飾るとしよう」

 

 --カールよ。ゲシュタポの牢にカールの指定席を用意したが。どうする。

幻聴が聞こえた気がして獣殿似のぬいぐるみを見た。

 

「……気のせいですな」

 

ぬいぐるみが若干動いた気がしたが、気のせいだろう。

隣界の魂も少し回復し始めた。

ならばここは次なる策を講じて対応するとしよう。

御誂え向きな存在もいる事だからね。

 

「さて。居るのであろう、ファントムとやら」

「……なんだ、寝首をかくつもりだったんだが」

「残念だが、そうはいかないな。我が女神の至福を見るまでは私は死なんし死ねん。そういう風になっているのだから」

 

ふん、とファントムは鼻で笑う。

私は整理を続けながらファントムを隣界に放り込む。

 

「さて、そろそろつまらぬ即興劇は終わりとしよう。こうしている間にも、我が女神は羽化の時を待っているのだ」

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。