コズミック変態と哀れな最悪の精霊さん。   作:冬月雪乃

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小噺みたいなもの

——私こと、カール・クラフト、もしくはメルクリウス、あるいはカリオストロは約束を守る男である。

 

「いつか、私は犬になろうと約束したね」

「……」

「ゆえ、なってみた」

「……」

「占星術とは便利なものだね。——あぁ、感激の余り声も出ないかね。よろしい、ならばモフモフだ。存分に私をモフモフ……女神? なぜ天使を呼び出しているのだね? 女神?」

「〈刻々帝(ザアァアァフキエェル)〉ッ!」

 

蜂の巣にされた。

 

 

 

 

 

#

 

 

 

 

 

さて。

昨今の塵芥による原作再現及び女神至高天構築作戦——計画名『女神チュッチュ』は順調に進んでいる。

計画としては最終段階に入っており、後は我が本体が居座る座に女神を落とすだけなのだが。

予想外の展開によって我が計画は更に円滑に進む様だ。

なんせ、勝手に特異点の穴を作り出すのだから。

とはいえ、まだ彼、もしくは彼女も所謂力をためている、の状態なのだろう。

ちょっかいを出す様子はない。

もしくは、私の放った尖兵によって壮絶に弱っているか、だが。

 

「カリオストロさん、あのネズミ可愛いですわよ!」

「うむ? おお、アレが良いのか女神。ならば私が——」

「い、いい! 良いですわ! 何もしないで! 出来ればわたくしにだけ付いていて! そ、そうですわよ! 手を繋ぎましょう! わたくし、はぐれやすいんですの!」

 

慌てて真っ赤になってまくし立てる我が女神の愛らしい表情を惑星サイズに拡大して宇宙に浮かべること一瞬。

私は何のためらいも無く女神の柔らかくふんわりと、しかし心地よい弾力と瑞々しさを触感として持つ小さな、そして愛らしい手を優しく包む様にして握る。

——嗚呼、これだけで昇天してしまいそうだ。

 

「な、何で恋人……あぁ! なんでもないですわ! わたくしカリオストロさんとラブ握りで遊園地デートしていたいですの! 楽しい! ほぉら楽しいですわ!」

「それはなによりだ女神よ」

 

なにやらすごくヤケになっているようだが、どうしたのだろうか。

 

「あははは! カリオストロさん! 今度はあちらに行きますわよ! ほら!」

「あぁ、女神よ。そんなに引っ張ってしまっては破けて……あぁ、それはそれで素晴らしいかもしれないね?」

 

 

 

 

 

 

#side 五河琴里

 

 

 

 

 

 

私たちは現在、史上最強の精霊〈メルクリウス〉と最悪の精霊〈ナイトメア〉が遊園地デートをしている様子を見ている。

やってることは簡単だが、本当に〈メルクリウス〉が〈ナイトメア〉のことを好きであるのが見ていてよく分かる。

悪いが、士道では相手にならない。

チケットの待ち時間などは共通で盛り上がりそうな話題を絶妙にチョイス。疲れを少しでも感知したならさりげなく座らせたり、あるいは休ませたり。

〈メルクリウス〉のありとあらゆる行動の全ては〈ナイトメア〉のためにあるのだとはっきりと分かる。

 

「それじゃ、困るのだけどね……」

 

ぽつりと呟く一言に、反応する人はいない。

デレさせろと宣言したからか、士道がパートナーとして一緒に来ていたのだが、今はトイレだ。

いつの間にか恋人繋ぎをして密着度が増した二人を見て危機感を覚えるが、どうにかする手段なんかそこにはない。

なんせ相手は最強と最悪。

こちらにある札全てを切っても〈メルクリウス〉には対応出来ないだろう。

下手をすれば全世界が相手でも平然としていそうな——?

一瞬、白銀に輝く双頭の蛇を幻視した。

もちろん、そんなものは見たことがないのだが。

 

「どーしたものかしらねー」

 

ずずぞぉ、とため息と一緒にジュースを一気に啜り込んだ。

士道はまだ帰ってこない。

 

 

 

 

 

 

#

 

 

 

 

 

ま っ た く !

溜まったものではありませんわ!

カリオストロさんと遊園地——は別に良いとして! 

どうしてこんなに紳士的なのに変態行為や明らかにおかしい行動を平気で、しかもおもむろに取ろうとするんですの!?

 

「女神よ、あぁ、女神よ……!」

「どこからそんな立派なカメラを取り出してますの!?」

 

貴方自分が注目の的であるの気づいているでしょう!?

 

「やはりデートとは素晴らしい……! 女神のこのような姿が見れるのだから——」

「……カリオストロさん。わたくし、そろそろ普通のデートを楽しみたいのですけれど」

「是非もない」

 

スイッチの切り替えは早すぎますのよ! 

わたくしが対応し切れませ——ああっ!

 

 


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