目が醒めると、黄金があった。
「ここは……」
「私の城だよ
男性の声。
落ち着いた声だ。
声の出た先、そこには気だるげに玉座と言うべき椅子に腰掛け、肘をついてこちらを見る『獅子』がいた。
いや、獅子ではない。人間だ。
頭を振って今しがた見た幻覚を打ち消し、礼を失しない程度に注意深く観察する。
周囲は城というように、確かに豪奢で美しいが、瓦礫だらけだ。
そして、城主であろう黄金もどこか、疲れ、ボロボロであるように見える。
「あぁ、すまない。我が城はもはや崩れる寸前でな」
いわば魂の残滓というべきか。
そう皮肉げに笑う彼はそれでも美しさを損なわない。
人体の黄金比。あの人に出会っていなければ心を塗りつぶされてしまっただろう程の色香。
そしてこの滅びかけた城ですら、この男が背景にしているというそれだけで一枚の絵画にしてしまえるほど美しく見える。
彼が口を開く。
それは似つかわしくないほど人間臭い表情で、
「ーーカールを頼む」
答えは言えず、急速に覚醒した。
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ーーふむ。懐かしの波動がしたからつい女神の部屋にニュルリニュルリと侵入したが……。なるほど。貴方はどこまでも愛に殉じ、私を友として呼んでくれるのだな。
いつの間にか女神の眠る傍にある獣殿のぬいぐるみを見ながら感慨に耽る。
「……カリオストロさん? なんで私の部屋にいますの? 殺しますわよ?」
ちなみに女神は寝るときは裸族だ! ふははは! これは! わが世の春であるぞ!!!
ーーカール。
全身に均一に広がる衝撃を味わいながら諌めるような声を聞いた気がする。
「カリオストロさんの!!! ばかぁぁぁあ!!!」
ーー卿は相変わらずなのだな。
「えぇーー偽りであれ、積み重ね生きた時に嘘はつけない。私はいつしか『私』と胸を張って主張出来るようになったし、私だけの女神も見つけた。我が友や息子には悪いと思っているが……これは『どうしようもないもの』なのだ」
ーーふ、どうしようもないナマモノ筆頭が口にするとは、実に説得力がある言葉だとは思うが……。これだけは伝えておこう。我が城の牢獄はいつでも卿の帰還を待ちわびているぞ。
「……カリオストロさん? なんで全弾全身で受け止めてわけのわからない事を笑顔で演説しつつ悶絶してますの? ちょっと? 演出みたいな光を窓から入れないでくださいまし!?」
「あぁ、いや、やはり女神は至高だなと、そう再確認していただけだよ」
返事は赤面怒り照れ顔ローリングソバットだった。
とても可愛らしい。実に良い。エンジンがかかってくるようだ。
とめどなく溢れる女神への思いを口から迸らせようと口を開いた瞬間。
流れるように続くコークスクリュードライバーで意識は刈り取られた。