これはそんな1つの妄想を具現化した世界の話
⚠️注意⚠️
この物語は某所スレの妄想から発想やヒントと言った欠片を拾い集めて結集化したものです
「――強さとは、絶対的な勝者の証。圧倒的な力を持つ者は必ず勝利し、正義となる」
ぐしゃあと言う音が鳴り響き、割と大きかった鉄球はジェンティルドンナの手のひらに包み込まれるくらいの大きさまで圧縮されていた。
乙名史記者もこれにはドン引きである。
「これでは筋力トレーニングにならない。はぁ……先に取材を終わらせましょう。着替えてまいりますわ」
「……ちょっとトレーナー?言ったでしょう、もっと固い鉄球でないとトレーニングとしての意味が無いと」
「これでも前より固いのを頼んだんだけど……こうなったらちょっと時間掛けてでも特注品を頼むしか無いか」
「私は日々精進しないとならないのです。貴方も私のトレーナーならそうした細かい配慮まで行き届かせられるよう精進しなさい、良いわね?」
「そうだな。俺だってもう2人同時に担当持ってるんだしもっと頑張らないとだな」
俺の担当ウマ娘、その内の1人であるジェンティルドンナは圧倒的上品さとオーラ、デビュー前にも関わらずGIIIウマ娘に既に比肩する程の脚力、技術力、そして他のGIウマ娘と比較しても規格外の怪力の持ち主である。
対して俺は19からトレーナーをしていて今年5年目、初年度から面倒を見てきた初代担当が去年初めてGIを勝ってそのまま引退し新しく担当を探そうとしていた時にこの子に出会った。
まあ、普通なら去年やっとGIを勝たせてあげられたようなトレーナーよりもGI勝利の豊富なベテランやエリートがジェンティルドンナには向いているだろうしこの子自身もそういうトレーナーを選ぶだろうと思っていた。
「ふんぬぬ……ぐぐぐ……」
「あ、うん。シオンは無理しないでね?」
「うう……まだまだ追いつけない……でも頑張ります!」
何故そう思ったか。
俺は彼女の幼馴染だ。
小さい頃からずっと見てきている。
それこそ小さい頃なんて、彼女は大人しい性格でここまで強気な事を言う未来は想像付かなかったが、勝利への執念だけは人一倍大きかった。
そんな子が、一応GI勝利トレーナーとはいえまだ1勝のトレーナーよりかは安定してるトレーナーの元の方が彼女を勝たせてあげられると感じたからだ。
だが、それは間違っていたとあの日気付かされたのだ。
「今日の模擬も1着はジェンティルドンナですね」
「ああ。これで3レース中3連続1着。彼女はやはり間違いないだろう……本格的なスカウト合戦が始まるぞ、気を引き締めていけ」
彼女……ジェンティルドンナが俺の小さい頃からの幼馴染と気付いたのは彼女を初めてトレセンで見た時からだった。
確かに纏うオーラや姿は小学生の時遊んでいた大人しい性格で小柄なドンちゃんとは全くもって違っていた、だが横顔やふとした仕草、フォームに既視感があった。
名前を知る前に既にほぼ確信し、名前を見て99が100へと変わっていた。
「……俺には手が届かないな、今のあの子へは」
だが、だからこそ。
未デビュー勢でも歴代最上位の強さを誇る彼女に関して、まだまだ成熟してるとは言えない俺が手を出せないと感じていた。
『あのね、ボクね、いつかおっきくなったらにーにのたんとーウマ娘になりたいの!だからにーににおいつけるように、たくさんたくさんがんばるね!』
その思い出の言葉に『ごめん』と謝りながら俺は違うウマ娘のスカウトに向かう――
「あら、そこのトレーナーさん?少し宜しいかしら?」
「…………え、俺?」
「そうよ。ちょっと話があるのだけれど、良いわよね?」
「ア、ハイ」
はずだったのだが。
運悪く彼女に見つかり、公衆の面前にも関わらずジト目で人目の付かない場所まで連行され。
「ちょっとショウ兄様!?私をスルーなんてどういう事ですの!?」
「……い、いや、その。今の俺なんかじゃドンちゃんとは釣り合わないと……思いまして」
「はいカッチーン、カッチーンですわ兄様!!私の夢は兄様とのトリプルティアラでしてよ!それ以外は認めませんわ!」
あ、俺との接し方は昔と何も変わってないんだなとしみじみしつつ。
子どもの頃の約束を今でも大切にしてくれているのかと、驚いて。
「てか俺との約束、覚えてたんだな」
「何言ってるんですの?人付き合いも力のコントロールも苦手だった私の隣にいてくれたのは兄様じゃない!どれだけ失敗しても私の手を握って、笑顔で慰めてくれて、休んでも良いからもう一度頑張ろうって、そう言ってくれた大切な人との大切な思い出を!忘れる訳ないじゃない!!」
「ドンちゃんにとって、そんなに大きい存在になってたのか……それなのに俺が勝手に諦めてたら世話ないな……」
そして何より、そこまで言わせてしまった事を恥と感じて。
勝手に逃げて諦めるなんて、そんなのダメに決まってるよな。
「良い事?私のトレーナーは兄様ただ1人です。兄様が私と同時に何人担当するか知りませんが、貴方は私の1番であり、そして私が貴方の1番になります。覚悟してくださいね?」
「ふぅ……全く、ここまで言われて逃げるなんて流石に男じゃないよな。ああ、覚悟しておくよ」
「あ、それと」
「なんだ?」
「人前では流石に恥ずかしいので『トレーナー』と呼ばせてもらいますので。幼馴染である事も極力隠します、良いですわね?」
「分かったよ。……そんじゃ俺からも1つ良いか?」
「なんですの?」
「いや、本来スカウトを予定してた子もスカウトしてこようかと」
「……もう少し感傷に浸らせてほしかったですわ」
「うん、スマン」
そんな訳で、あの日から俺はドンちゃん――ジェンティルドンナのトレーナーとして活動している。
「あ!あたしはもう少し自主トレとかしてきますね!『ごゆっくり』〜!」
「お、おう」
もう1人の担当ウマ娘にそう言われ、トレーナー室には俺とドンちゃんだけの空間が出来る。
現在俺が担当しているウマ娘は2人、本来スカウトしようと思っていたウマ娘をスカウトしそのまま俺の担当としてデビューに備えてもらっている。
その子は実力こそ同世代のトップクラスと比べれば落ちるが相当のものを、世代さえ違えばGIを勝てそうなモノを持っている……あと何より空気読みに長けていた。ただ彼女は敢えてジェンティルドンナや、その最大のライバルと呼び声高いオルフェーヴルのいる世代としてデビューしたいと言ってきたが。
それは一旦さておき、彼女は空気読みの天才だ。
一度事故で俺とドンちゃんが幼馴染の距離感でイチャイチャしているのを目撃されて以降何かと2人きりにさせてくる上に空気を読んでは知らぬ間に消えていたり妨害しそうな人々をそれとなく誘導していたりする、学生の身でそこまで空気読みしなくて良いと思うのは俺だけだろうか。
「全く、ゆっくりする程の物事なんて無いのに不思議な事を言いますわねあの子」
「うん、それなら俺の膝の上には乗らないと思うんだ」
「あら、そうでして?嫌なら降りますわよ」
「嫌じゃないし寧ろ役得だと思ってるので是非」
「……兄様、欲望に忠実になりました?」
「ドンちゃんにしか言わない」
「ふふっ、なら許してあげますわ。……さて、戻りましょう。記者の方を待たせ過ぎるのは良くありませんし」
「だな。それまではシオンが場繋ぎしてくれるとか言ってたが」
なんというか、後で何か少しご褒美をシオンにあげといたほうが良いと思う俺なのであった。
おまけ
「あ、トレーナー!ジェンティルさん!お帰りなさい!」
「悪かったね、シオン」
「いえいえ〜」
「ジェンティルドンナさん、勝利至上主義と名高い貴方が彼女を特別気に掛ける理由があると噂で聞きました。そういったものがあるのでしょうか……?」
「彼女を?……ふふ、そうね。一つ言えるとすれば――」
「『諦めない』という力の可能性を見ていきたい……と言ったところかしら」
トレーナー(23 満24)
ジェンティルドンナに引き上げられてからは1歩引いたような態度は無くなり寧ろ積極性のある昔の姿で周りからも期待されている
ジェンティルドンナ
自分のトレーナーになるからには堂々とした出で立ちでいてもらわないと困るので今のトレーナーの姿には大満足のご様子
一見すると冷たいが2人きりになると幼少期の時の名残で超甘えん坊
トレーナーのもう1人の担当ウマ娘の事をかなり気に掛けている
???
シオンと呼ばれるもう1人の担当ウマ娘
ジェンティルドンナの鉄球ニギニギを真似するも失敗したり妙に影が薄かったり世代トップと比べると格差があったりと不憫枠だが逃げずに同じ世代にいる
空気読みが得意で『ごゆっくり〜』が口ぐせ
名前伏せててもウマ娘好きの114514%が答えられると思っている
初代担当ウマ娘
現役ラストシーズンと決めた4年目にGIを初めて勝ち取って満足して引退したトレーナーの初めての担当ウマ娘