恋空~春、夜空の下で~   作:雪音

10 / 20
ちょっと時間が遡ります!!銀さんが壁を殴って「何が攘夷戦争の英雄だ!!何が白夜叉だ」と乱心するちょっと前からスタートです!!今回は真選組に視点を当てつつ、全員に揃ってもらおうと思いますb

あ、ちなみに大江戸病院は携帯使用可能という設定で行きます!!いやほら原作でも、大江戸病院でさっちゃんが携帯使ってる描写ありましたからね!!

さー、では物語スタート☆


【第十訓】隣と居場所

処置室から集中治療室へと運ばれた紫苑の姿を、ただ銀時は呆然とガラス越しに見ていることしか出来なかった。

 

 

何が起きている?

 

何が起きた?

 

何故こうなった?

 

 

まさか、このまま……目を覚まさないのでは?

 

 

真っ白の部屋に横たわる紫苑の姿を見て、何度も何度も同じ言葉が銀時の脳裏を過ぎる。ただ呆然と立ち尽くしている銀時の姿を、何とも言えない表情で土方と沖田は見つめていた。

 

そして、銀時と同じように土方と沖田も考えていた。

 

何故もっと早くにこの事実が分からなかったのかと。

 

まるで運命の悪戯とでも言うかのように、銀時達万事屋と真選組が接触する時…紫苑は決まって別の任務についていたり、もしくは体調が優れずに床に臥せていたりした。また、近藤・土方・沖田を始めとした真選組隊士の殆どが、銀時のことを名前ではなく“万事屋”と呼んだり“旦那”と呼んだりする。それは紫苑の前でも例外ではなく、また紫苑もそれが何という名前の人なのかとか、その容姿とかを聞いてくる事も無かった為、万事屋・坂田 銀時の情報が紫苑に流れる事は無かったのだ。また同時に、紫苑も銀時の名前は一切口にしなかった。それは恐らく、かつて攘夷戦争に関わった人間の名前は出すべきではないと…そう思ったのだろう。指名手配となっている桂や、自分の兄である晋助のことは、既に真選組は把握していた為、そこは偽ることなく出していた。しかし、婚約者の名前だけはいつも“あの人”や“彼”としか言わなかったのだ。近藤達も、紫苑が相手の事を考えてあえて名前を出さないのだろうと思い、興味本位で聞くような事はしなかった。

 

故に、双方が紫苑の婚約者の情報を得る事が無かったのだ。

 

まさかこんな形で再会するなど思ってもいなかった。

 

そしてこんな最悪の形で再び引き裂かれるなど…誰が想像しただろうか?

 

本人達を始めとした誰もが、恐らくは予想できなかったに違いない。このような悲しい現実が待ち受けているなど…。

 

シンとした何とも言えない空気。銀時が居ればいつも騒がしくなるその場所が、やけに静かに感じる。土方も沖田も…何も言えず、ただ銀時と紫苑のことを見ていることしか出来なかった。

 

その何とも言えない空気を裂いたのは…

 

「トシ、総悟!!」

「…近藤さん…」

 

紫苑が倒れたと聞いて駆けつけた近藤の慌てた声だった。ふとそこに、本来であればいないはずの人物がいることに気付き首を傾げる。

 

「万事屋…?何故ここに…?」

 

胡乱気に聞く近藤。しかし、銀時はその言葉に全く反応を示さず…ただ呆然と、集中治療室に横たわる紫苑を見つめているだけだった。もう一度、銀時を呼ぼうとした近藤に土方が待ったを掛ける。

 

「近藤さん、ちょっと話しがある。総悟、ここは任せた。何かあったら俺の携帯に連絡を入れろ」

「分かりやした。紫苑のことも旦那の事も…何かあったらすぐに連絡しやす」

 

いつもは素直じゃない総悟も、流石にこの状況ではそんな馬鹿げたことをしている場合ではない事ぐらい理解していた。今、最も危険なのは紫苑の容態よりも、銀時の精神状態なのだ。

 

「頼んだぞ」

「はいよ」

 

そして近藤と土方は、自販機の設置してある待合室まで移動する。

 

「トシ、何があった?」

 

何があったと聞かれ、何から話すべきなのかと…土方は思う。だが、ここはやはり真選組隊士である紫苑の身体について優先的に話すべきだろうと、土方は口を開いた。

 

「まずは紫苑の容態についてだが、いつもの発作だ。紫苑の奴、走っちまってな。それが原因で発作を起こしてしまったようだ。俺が付いていながら…」

「いや、トシのせいじゃないさ。だが…紫苑自身、走れば身体に負担が掛かる事は分かっている筈だ。紫苑が走らなければならないほどの出来事が…何かあったのか?」

 

思えば治療室の前に万事屋が居たことも気になる、と付け足せば「ここからがある意味本題だ」と…土方が話し始めた。

 

「単刀直入に言うが……近藤さんも、紫苑に婚約者がいた事は知ってんだろ?」

「あぁ、確か攘夷戦争で共に戦った仲間だったとか。しかし、離れ離れになって消息どころか生死も不明と聞いていたが…それがどうかしたのか?」

「見つかったんだよ、その婚約者が」

「……おい、トシ?まさかとは思うが…!?」

「…万事屋だ…」

 

土方の言葉に、近藤は驚愕する。今…何と言っただろうか?目の前にいるこの戦友であり、それと同時に同志である彼は…今、何かとんでもない事を口にしなかっただろうか?しかし、土方がこんな悪い嘘など吐く筈がないことは、他の誰より一番近藤が分かりきっている。

 

「……こんなに近くに居て…ずっと、会えなかったとは…ッ…」

「あぁ、俺ァ…紫苑に何て謝ればいい?万事屋と何度も何度も会ってて、それでいて紫苑は会いたいはずの奴にずっと会えず…それどころかその生死すら分からず…その身を案じていた。俺達が当たり前のように会っていた万事屋に、他の誰でもない紫苑がずっと会えなかったなんて…こんな現実を…ッ…」

 

土方が悔しそうに表情をゆがめながら拳を握る。もし自分が、銀時のことを一度でも名前で呼んでいれば、それで紫苑は分かったはずだ。しかし、土方自身“万事屋”と呼ぶことが定着していた為、名前で呼ぶようなことは全く無かった。否、真選組の隊士全員がそうだろう。

 

「トシよ…あまり自分を責めるな。……誰が悪いわけでもない。今回の事は…決して、誰が悪いわけでもないんだ…」

 

強いて言うならば、こんな残酷な運命を与えた神という存在だろうか…?

 

真選組と万事屋。

 

こんなにも近くにいて、本当に会いたい者同士が会えずに長い間、想い続けていた。

 

「そりゃあ…紫苑も走りたくなるだろうさ。ずっと…探していた大切な人とやっと会えたのだからなぁ…」

 

そして、銀時もまたそれは同じだろうと近藤は思う。

 

「…万事屋の野郎…紫苑を抱きしめた時、泣いてやがった…」

「……つまり、万事屋もずっと紫苑のことを探していたという事か…」

「じゃなけりゃ、あんなに取り乱したりはしないだろう。あの様子じゃ、恐らくは万事屋も紫苑の生死については把握しきれていなかったんだろ。そりゃ、泣くほど嬉しいだろうよ…。そしてその会いたかった女が、目の前で血を吐いて倒れたら……取り乱すだろうよ…」

「万事屋の目の前で倒れたのか!?」

「万事屋の腕の中で倒れた。…幸せそうな顔をしてな…」

 

あれだけの吐血をしながら、しかし紫苑は嬉しそうに笑っていた。笑いながら…泣いていたのだ。そしてその口からは確かに言葉が零れた。

 

 

――どうして…?

 

 

何に対する疑問か、など…考えずとも分かる。

 

どうして、こんなに傍にいたのに会えなかったのだろうか?

どうして、こんな時に限って倒れてしまったのだろうか?

どうして、折角会えたのにその命は尽きようとしているのだろうか?

 

どうして?

 

たった一言の言葉なのに、その一言には色んな意味が含まれており、何気なくいつも使っているその言葉は……自分達がいつも使っている以上に、とても重い。

 

「……それで、万事屋は…あんな状態だったわけだな…」

「あぁ、あれはまだマシな方だ。今の万事屋は正直言って、何を仕出かすか分からねぇ。病院に着いてすぐ、処置室に入っていこうとする医者に掴み掛かって、「紫苑を死なせたら俺がテメェをぶっ殺す」と言いやがった。その殺気に当てられて、総悟が抜刀しそうになった。あの時の万事屋は…正直、俺でも恐ろしいと感じたぐらいだ…」

「…それで、総悟をあの場所に残してきたのか?」

「あぁ、紫苑の身体はいつもの発作らしいから暫くすれば薬も抜けて目が覚めるそうだ。容態が急変することも無いというのが今回の医者の見解だな。今、一番危険なのは…精神状態の不安定な万事屋だ。1人放置してたら、何を仕出かすか分からねぇ。俺じゃあすぐに頭に血が上るだろうし、万事屋も俺相手だったら形振りかまわねぇ。だが、総悟と万事屋は…まぁなんか得体の知れねぇ仲みたいだから…殺伐とした()り合いにはならねぇだろう」

「なるほど……それで総悟も黙ってその場に残ったという事か…」

 

誰もが危惧している事。それは、紫苑の身体もだが…銀時の精神状態も同様なのだ。紫苑から聞かされた攘夷戦争時の話では、紫苑は本隊と離れる直前に婚約者…つまり銀時と会話を交わしたと言っていた。皮肉にもそれは、互いに“絶対に死ぬな”という約束であり誓いだったという。

 

「今の万事屋には、誰の言葉も届かねぇかもな…。もし、その言葉が届くとすりゃ、それは…」

「紫苑の言葉、あるいは攘夷戦争を共に切り抜けた仲間のみ、か…」

「あぁ…。万事屋のガキ共の言葉ですら、今の万事屋には届かないかもしれねぇ」

「その場に子供達はいたのか?」

「居た。そして、紫苑が倒れるところまでしっかり見ている」

「……それで、その後は?」

「パトカーは定員オーバーだから乗せられないと言ったが、その辺りは緊急事態だと察したんだろう。黙って頷いてた…」

 

恐らく、あんなに取り乱した銀時を見たのは子供達とて初めてのはず。あの時の子供達の表情が、それを物語っていた。その後どうしたのかは分からないが、恐らくはこの大江戸病院に訪れるだろう。

 

「…トシ…こんな事は不謹慎かもしれんが……紫苑の命は…」

「あぁ、今年の春。つまり“今”が…そのタイムリミットだ」

 

思えば、医者の反対を押し切って入院することなく屯所で過ごすと決めた時は、医者に「その分、命の保証はないということだけは覚悟しておいてください」と言われた。しかし、紫苑はまるでまだ死ねないと言わんばかりに、何度倒れても、何度吐血しても絶対に生きる事を諦めなかった。

 

今思えば…会いたい人に会うまでは死ねないと…そう思っていたのかもしれない。

 

「この事実を万事屋には…?」

「言えるわけねぇだろ、今の野郎に。何仕出かすか分からねぇぞ?」

「しかし…言わねばならんことでもある。万事屋が落ち着いた時に…きちんと話そう。そして、紫苑の意識が回復した時に…確認をしよう」

「確認?」

 

土方が聞けば、近藤は少し寂しそうに笑いながら言う。

 

「真選組に残るか、除隊するか、だ…。俺達真選組は、紫苑を家族同然に慕ってきた。これは確かだ。だが、トシよ……考えてもみろ。紫苑はいつだって、遠くを見つめて想いをはせていた…。婚約者を…万事屋を想ってだ。その万事屋にようやく会えたというのに、最期の時間を真選組で過ごさせるわけにはいかんよ…」

 

例え残り少ない時間でも、“家族同然”に過ごしてきた者達と過ごすより、離れ離れになってもずっと想い続けていた“婚約者”と過ごした方がずっと幸せなはずだ。

 

「…そうだな…」

 

いつの間にか、真選組には紫苑がいて当然だと思う自分達がいた。

 

しかし本来であれば、紫苑の居場所は真選組ではなかったのだ。

 

「帰してやろう…本来の居場所に。“坂田 銀時の隣”という…本来の居場所に…」

「…あぁ…」

「それを、紫苑に選ばせよう。これは俺達が決める事ではない。紫苑自身が決める事だ…」

 

その時、紫苑がどんな選択をしても自分達は笑って見送ろう。

 

自分達はいつだって、紫苑の幸せを願ってきたのだから。

 

 

 

近藤と土方が話している頃…集中治療室の前には、呆然と立ち尽くす銀時と、通路の壁際に設置されている長いすに座っている沖田の姿があった。

 

ぼんやりと紫苑を見つめて立ち尽くしている銀時の背中を見つめながら、沖田は1人考えていた。

 

(旦那…。アンタ、一体何者ですかィ?前に土方さんが、アンタの事を山崎に調べさせたことがありやした。そん時は、結局シロという判断でしたが…あの殺気は異常でしたぜィ?普段のアンタからはとても想像がつかねぇような殺気で…俺ァ、思わず抜刀しそうになっちまった…)

 

そして紫苑の言葉を思い出す。

 

 

『私の大切な人は、凄く強くて、凄く優しい人だった。怖いって言う子達も多かったけどね……とても優しくて、強くて、そして……とても脆くて、悲しい過去を背負っている人なの。この世界を一番憎んでいる人といっても過言ではないわね。けれど…その人は、コタローや兄さんのように世界をひっくり返そうとはしていない。その理由が…私には分かるような気がするの。きっと、あの人にとって憎むべき世界でも、この世界にはそれ以上に大切な思いが沢山あるから…だから壊せないの。あの人は優しい人だから、自分が傷付けられることよりも、仲間が傷付けられることを嫌がっていた。自分が辛い思いをするより、仲間が辛い思いをする事を辛く感じていた。…私が好きになった人は…私が愛した人は…そういう人。真っ直ぐで、単純で…けど、誰よりも…傷付けられることと、失う事を恐れている人。だから、いつも口癖のように言っていたわ…』

 

 

「絶対に…護る、って…約束、してたのにな…」

 

(あぁ、確かに紫苑の言う通りだぜィ。いつも旦那は口癖のように言ってた…。眼鏡やチャイナを絶対に“護る”って…。強いお人だと思っていたが…そいつァ違ってたんだ…。旦那が護ることを第一に考えていたのは…“もう二度と何も失わない為”だったんですねィ…)

 

失った時の失望

護れなかったという絶望

約束を果たせなかったという後悔

 

それらを背負い続け、しかし銀時は…現在(いま)、己が護るものの為に何度も立ち上がってきた。

 

「何も…護れなかった…」

 

しかし、銀時は横たわる紫苑を見つめて何も護れなかったと言う。

 

(旦那、そいつは違うぜィ?万事屋のガキ共も、俺達真選組も、そして紫苑も……アンタに護られてるじゃありやせんか。紫苑を護れなかった?馬鹿を言っちゃいけやせんぜ?旦那という存在があったからこそ、短い寿命を必死に延ばしたんでィ。旦那に会いたいというその気持ちが、紫苑を護ったんでさァ。だから旦那…)

 

「すまない、紫苑…」

「そんなに、謝らないでくだせェ…」

 

もう何度目になるだろうか?2人きりになったこの空間で、銀時が謝ったのは…これで何度目だろうか?その度に、辛そうに表情を歪めながら…何度も何度も謝った。

 

「旦那…アンタが悪いわけじゃないんでさァ…」

「ごめん…」

「もっと早くに、旦那と紫苑を会わせてあげられなかった…俺達が悪いんでさァ…」

 

しかし、どんなに沖田が声を掛けても…

 

「本当に……ごめんな…。あの時…、俺と晋助がもっと…粘っていれば…、ヅラと辰馬を説得できていたら…。ごめんな…」

 

その声が、銀時に届く事は無かった。

 

(辛ェ…、そして…痛ェ…。旦那…、アンタが背負ってる苦しみに比べたらこんなもん、針で刺された程度の痛みかもしれやせん。けど…俺ァ…)

 

目を閉じれば、死んだ魚のような目で自分を見つめながらワザと名前を間違え、楽しそうに笑う銀時の姿が過ぎる。万事屋の子供達以上に子供っぽい表情を見せる銀時の姿が過ぎる。

 

そして…

 

何も言わずに、自分達を助けてくれるその強い姿が、脳裏を過ぎる。

 

だからこそ、今の銀時は見ていられなかった。

 

何度も何度も謝り続ける銀時の姿は、見ていて辛くそして苦しかった。

 

銀時の苦しみと比べれば、本当に針に刺された程度の痛みだろう。

 

それでも…

 

「やっぱり、痛いのは嫌でさァ…。だから、旦那…。謝るんじゃなくて、紫苑の為に笑ってやってくだせェ…。俺ァ、旦那のそんな辛そうな顔を見るのは嫌でさァ。だから…いつもみたいに“総一郎君”って言ってくだせェ。そしたら、俺もいつも通り、“総悟でさァ”って返しやすから…」

 

いつもとは違う、ちょっと困ったような笑みを浮かべる沖田。しかし、そんな沖田の表情も、そして言葉も…銀時には届いていなかった。

 

そして改めて、思う。

 

坂田 銀時にとって、高杉 紫苑は本当に大きな存在だったのだと。そしてまた、逆も(しか)りだったのだと。

 

(真選組から抜ければ切腹…。しかし、志願して局長・副長の合意が得られての除隊だったら局中法度には触れねェ…。紫苑、俺ァ…この先も紫苑と一緒に屯所で過ごしたいと思ってる…。けど…やっぱり、紫苑の隣は旦那じゃないと駄目でさァ。もう、命の残りは少ねぇかもしれねぇが…それでも…いや、だからこそ…)

 

心の底から紫苑が笑って過ごせるというのであれば、例え近藤や土方が反対しても…。自分が処分を食らってもいい。

 

「紫苑…俺が絶対に旦那の隣に戻してやりまさァ…」

 

自分にとって、どこか優しい姉のような存在だった紫苑。本当の姉であるミツバと同じくらい慕っていた。だからこそ、紫苑には心の底から笑っていて貰いたいのだ。

 

(あぁ…旦那が何でモテないのか分かっちまったぜィ…。モテないんじゃねェ…、自分から興味を示さなかっただけなんだ…。アンタの隣は、ずっと紫苑の為に空けていたんですねィ…)

 

常に銀時は「天パだからモテない」と言っていた。だが、明らかに好意を寄せている女性は多かった。モテないなんて言ってるが、どれだけ鈍感なんだと沖田自身何度か思った事があった。しかし…そうではない。銀時の眼中には紫苑以外の女性は、“ただの女性”でしかなく…恋愛の対象ではなかった。

 

モテなかったんじゃない、自分から遠ざけていたのだ。

 

(全く…旦那を好いている女達が泣きやすぜィ?)

 

しかし、それが銀時の選んだ道というのであれば…きっと、誰もが納得するだろう。それほどまでに、坂田 銀時という男は皆に慕われ好かれているのだ。

 

「……ずっと…一緒に居るって…約束、だったのにな…」

 

だったらその約束を今から果たせばいい…。

 

命のタイムリミットはもう残りわずかかもしれない。だが…

 

「旦那…その約束は今からしっかりと護ればいいじゃねぇですか…。紫苑だって、きっと喜びますぜィ?」

 

何せ、紫苑は諦めていたのだから。

 

自分の想い人は素敵で優しい人だから、その隣にはきっと素敵な女性がいて、もう自分の事などきっと忘れていると…。もう、銀時の隣は自分の居場所ではないのだと…。

 

(紫苑…旦那は忘れてなんかいなかったぜィ?それどころか、紫苑だけを想い続けてる…。俺ァ、2人が羨ましいでさァ…。こんなにも綺麗な愛ってやつを、初めて見やしたぜィ…?)

 

いつもよりも、とても小さく見える銀時の背中を見つめながら…沖田は思う。

 

 

こんなにも綺麗で、そしてこんなにも悲しい愛など…本当に初めてだ、と…。

 

 

ひたすら謝り続ける銀時と、その度に声を掛ける沖田。反応が返ってこないと分かっていても、沖田は決してそれをやめなかった。土方が、自分にこの場に残るよう指示した理由は、そういう事なのだろうと…そう思ったからだ。そんな事を何度か繰り返していたら、どうやら話を終えたらしい近藤と土方が戻ってきた。土方は銀時を一瞥した後、沖田に視線をやる。口に出さずとも、土方が言いたい事は分かっていた。だから、沖田も言葉にすることなく…ただ首を横に振って答えるだけだった。

 

(この様子じゃ、紫苑もまだ目を覚ましてねぇな。そして万事屋も変わらず、か…。まぁ、何も仕出かさなかっただけマシってところだな…)

 

本当に、先ほどのキレ方は尋常では無かった。沖田だけでなく、下手すれば土方も刀に手を掛けていたかもしれない。医者から銀時を引き剥がすのにどれ程苦労したことか。

 

と同時に、土方は思った。

 

(……紫苑の想い人は攘夷戦争で背中を預け合った戦友でもあったと聞く。つまりは…万事屋がその戦友…。なるほど、それなら桂や高杉との繋がりにも納得がいくって話だ…)

 

だが、攘夷戦争参加者の中で名前が表立って有名になったのは、“狂乱の貴公子・桂 小太郎”、“鬼兵隊総督・高杉 晋助”、“鬼兵隊副官・高杉 紫苑”、そして現在は攘夷活動とは無縁の快援隊社長である“坂本 辰馬”。この4名だけだ。そこに“坂田 銀時”の名は無い。しかし、さっき土方が感じた殺気は…とても、尋常ではなかった。それに、紫苑自身も言っていたのだ。

 

『私の大切な人はね、私達の中では一番強かったのよ?子供の頃からそう。私なんて、何度かしか剣で勝てたことは無いわ』

 

紫苑は得意げにそう自慢していた。それほどの腕を持ちながら、何故…その名前は露見しなかったのだろうか?

 

1人思案している土方だったが…かすかに、謝罪以外の言葉が聞こえた。

 

「こんなに待ち続けて…こんなに探し続けて…」

 

悔しそうに、そして悲しそうに顔を歪めながら…銀時は言う。

 

「何で…ッ…!!」

 

その言葉に、真選組の3人が同じ事を思った。

 

 

あぁ、どうして…

もっと早くに、この2人を会わせてあげられなかったのかと…。

 

 

――ダンッ!!

 

 

銀時が、拳を握り壁を殴る。このまま暴れるのではと、一瞬土方は構えた。

 

「旦那?」

 

沖田は心配そうに名前を呼ぶ。

 

しかし、やはりその声は届かず…

 

「何が攘夷戦争の英雄だ…何が白夜叉だ…!!結局、俺ァ…」

 

銀時はその場に崩れ落ち…

 

「最後の最後まで…何も護れなかったじゃねぇか…ッ…!!」

 

口元を自嘲に歪め、頭を抱えて静かに涙を流していた。

 

その場に居る誰もが、銀時の言葉に耳を疑う。

 

今…この男は何と言っただろうか…

 

(白夜叉…だと…!?天人は勿論のこと仲間からも恐れられていたという…、あの白夜叉か…!?攘夷戦争後期でもっとも強かったとされる英雄と言われた者ではないか…!!)

万事屋(コイツ)が…白夜叉…!?二つ名が先走りしすぎて本名すら分からず…攘夷戦争後は、その生死すら分かっていなかったという、あの伝説の…!?)

(あぁ、だから…あの時の殺気は凄かったんですねィ…。紫苑が“一番強かった”って自慢してたんですねィ…。納得でさァ…)

 

銀時の発した“白夜叉”という言葉。真選組という立場上、それは是が非でも今すぐに問い詰めたいところだった。だが……

 

(……こんな時に、んなことが出来るわけねぇだろ…ッ…)

 

肩を震わせて泣いている銀時に、尋問をするような真似など…いくら“鬼の副長”と恐れられる男でも…出来る筈がなかった。

 

それは、その場に居た近藤もそして沖田も同じで…結局、目元を抑えて泣き崩れている銀時に何と声を掛けたらよいのか…否、声を掛けるべきなのか…そう躊躇(ちゅうちょ)していた。

 

その時…

 

 

――銀…時…

 

 

声が聞こえたような気がした。自分の気のせいだろうかと、沖田は首を傾げる。しかし、その声は確かに…知った声。自分が姉のように慕っていた大切な“家族”の声。

 

 

――みんなで、帰ろう…萩に…

 

 

今度ははっきりと聞こえた。聞き逃してしまいそうなほど、小さな声だったが…それは確かに紫苑の声だった。慌てて顔を上げて、集中治療室で眠っている紫苑に視線をやる。すると、自分達の方を見つめ…必死に口を動かしている紫苑の姿があった。紫苑と目があった沖田は驚いたように目を見開くと、紫苑はフワリと笑う。紫苑が何か言ったが…残念ながら声は聞こえない。しかし、その口の動きから“大丈夫”だと…そう言っていると分かった。

 

「近藤さん、土方さん!!」

「…どうした、総悟?」

「病院だぞ、あんまりデケェ声を…」

 

首を傾げる近藤と沖田を注意する土方だったが、慌てて2人の肩を叩きながら沖田が集中治療室を指差す。その意味が分かった2人はすぐに視線をそちらに向けと、力なく笑っている紫苑の姿があった。その表情はどこか、申し訳なさそうに笑っているようにすら見える。

 

「…やれやれ、手間掛けさせやがって…」

 

一体、どちらに対しての言葉なのか…。恐らくは双方に向けての言葉なのだろう。土方は崩れ落ちたまま泣き崩れていた銀時に、視線を合わせるように座り込む。

 

「おい、万事屋。テメェがしっかりしねぇでどうする。……それじゃあ、紫苑から笑われるぜ?」

「…………」

 

やはり、反応は無い。

 

(やれやれ、いつものコイツなら憎まれ口の1つや2つは返ってくるのに…調子が狂っちまうな…)

 

バリバリと頭を掻きながら、銀時の腕を掴む。そしてその耳元で…

 

「紫苑が目を覚ました。お前の顔をしっかりと見せてやれ。いい歳したオッサンが泣いてるだらしねぇ(ツラ)をな。そして紫苑に笑われろ」

 

そう言って、乱暴に立ち上がらせる。その時…

 

「うぉぉぉっ、紫苑んんんっ!!無事でよかったぁぁぁぁ!!」

 

横から有り得ない量の涙を流しながら、そして有り得ない声を出しながら泣いている自分の上司の姿と…

 

「近藤さん、静かにしなせェ。ここ、病院ですぜィ?…駄目だこりゃ、聞こえてねぇや…」

 

その上司を何とか黙らせようとしている部下の姿があった。そんな2人に苦笑しつつ、改めて銀時に視線を向ける。

 

その表情は…驚いたように目を見開いていて、思わず土方は溜息を吐く。

 

(やっぱり、今回は命に別状が無かった事だけは伝えるべきだったか…?)

 

まるで永遠の別れを覚悟していたかのようなその表情に、土方が思わず嘆息する。銀時はガラス窓に手を付き、その中に横たわっている紫苑を静かに見つめていた。そしてまた、紫苑もそんな銀時を見つめている。

 

「銀時…私は、大丈夫よ…」

 

かすかだが…紫苑の声が聞こえた。その声にまた…銀時は泣きそうな表情を見せたが、それを隠すかのように着流しで己の濡れた顔をごしごしと拭う。

 

(バカヤロウ、今更んなことしたってバレバレだろうが…)

 

だが、次に見せた銀時の表情は…土方が見てきた中で、一番“らしくない”と思ってしまうほど…幸せそうに笑う銀時の笑顔だった。

 

「俺、医者呼んでくる!!」

「近藤さん、落ちつきなせェ…。って聞いてねぇや…」

 

後ろはとても慌ただしいのに、まるでそれを感じさせない銀時と紫苑。

 

まるでそこだけ、空間が切り取られたかのような錯覚にすら陥ってしまう…。

 

もう、自分が支えなくても己の足で立っていられるだろうと判断した土方は、掴んでいた腕から手を放そうとした。

 

その時…

 

「やっと……会えたな……」

 

銀時の声が聞こえた。

 

優しく、そしていろんな思いの詰まった…一言。

 

たった一言の言葉だがしかし、その一言にはきっと銀時のいろんな気持ちが籠っているに違いない。

 

「……ったく……」

 

やれやれと息を吐きながら、銀時から離れ沖田の元に行けば、彼も苦笑している。

 

「とんだお騒がせカップルだな、コイツらは…」

「けど、俺ァいいと思いやすぜィ?旦那らしいじゃないですかィ…」

「お騒がせで、迷惑かけっぱなしなところとか特にな…」

「違いねぇや…」

 

そんな話をしていると、恐らくは無理矢理引っ張ってきたのだろう。近藤が医者を引きずるようにして連れてきた。

 

「…まぁ、こっちも人の事は言えねぇか…」

「俺は止めたんですぜィ?それでも聞いてくれなかったんでさァ…」

「あぁ、万事屋も何を仕出かすか分からねぇが…今の近藤さんも何を仕出かすか分からねぇな」

 

そういえば身近なところにもお騒がせな人が1人居たと、頬を引き攣らせる土方である。近藤は必死に医者に目が覚めたと伝えていて、それに医者が「落ちついて下さい」と必死に(なだ)めていた。

 

「ったく、この人は…」

 

隊士達を何より大事にするが故に、こんなにも必死なのだろう。いや、こんなところで紫苑を死なせたくはない、死なせてはいけないとそう思っているのだろう。近藤 勲とは…そういう男なのだ。

 

今度は近藤を落ちつかせなければとか、何で自分はこんな役回りばかりなんだとか思っていたら、パタパタといくつかの足音がこっちに近づいてくる。

 

(万事屋のガキ共か?にしちゃ、足音の数が多いような……)

 

もうここまで来ると、否が応でも嫌な予感しかしないと再び頬を引き攣らせた。

 

最初に姿を見せたのは、新八と神楽だった。その後を追うように、お登勢とキャサリン、そしてたまの姿が。

 

「おいおい、また随分と大所帯だな…」

 

わざとらしく溜息をつけば、新八が申し訳なさそうに苦笑する。

 

「すみません、本当は僕と神楽ちゃん、あとたまさんだけで来るつもりだったんですが…」

 

そこまで新八が言うと、それ以上は何も言わなくていいと…分かっていると言わんばかりに土方が手を上げて制した。

 

(大方、万事屋の事が心配だったんだろう…)

 

何となく、子供達だけではなく下の階に住むスナックの面々も来る事は予想出来ていたため、それを咎める事はしなかった。

 

(けどまぁ、どこかで…もしかしたら桂が一緒に来るかもしれねぇと思ったが…さすがに、奴もそこまで間抜けではないか…)

 

この場に来ていれば即刻逮捕してやったものを、と内心悪態を吐きながら子供達へと視線を向けた。

 

「……銀ちゃん……」

 

その子供達は…

 

「銀さん…ッ…」

 

どこか辛そうに、表情を歪めている。思えば、彼らと別れて子供達がココに来るまで随分と間が空いたような気もする。そして子供達のこの表情。もちろん、視線の先に居るのは銀時だ。その銀時は…今にも泣き出しそうな、しかしそれでいてとても幸せそうな顔をしている。

 

(こっちはこっちで何かあったのか…?)

 

何故子供達がこんな表情をしているのか…。 “銀時を誰かに取られた”というような下らない嫉妬心を持つような子供達ではないことくらい土方も把握している。だからこそ、子供達が何故こんな…今にも泣き出しそうな表情(かお)をしているのか分からなかったのだ。

 

「おう、チャイナ。随分ヒデェ顔をしてるじゃねぇか…」

 

いつものように沖田が神楽に喧嘩を吹っ掛ける。それを「やめろ」とため息交じりに止める土方。いつもだったら、それに神楽が掴みかかるのだが……その反撃が無い。

 

何だ…?本当に何事だ…?

 

沖田までもが呆けてしまう。そして、土方と沖田は顔を見合わせ…一番事情を知っているであろうお登勢に視線をやった。一方のお登勢は、真選組の2人から視線を向けられ、小さく嘆息する。2人とも口にはしていないが、子供達のこの様子について疑問に思っているのであろうことはすぐに分かった。

 

お登勢がそれについて、口を開きかけた時…

 

「僕達は……本当に、何て馬鹿な事を思ってしまったんだろう……」

「銀ちゃん…ごめんヨ…。私、一瞬でも銀ちゃんのこと、見損なったとか……ッ、本当にごめんネ……ッ…」

 

子供達が先に口を開いた。その言葉は、後悔と謝罪の言葉。

 

(おいおい、本当に何があったんだよ…?)

 

ますます分からないと表情を歪める土方だったが、子供達はすぐに銀時のそばに駆け寄る。そして神楽が銀時の右手を、新八が銀時の左手を取った。

 

「………紫苑…、ごめんな…。ずっと、独りにさせちまって…。けど…護るから…、何があっても…絶対に俺が護るから…。もう一度、護らせてくれ…」

 

しかし、それに気付いていないのか…ただ真っすぐと、集中治療室を見つめたまま銀時は呟く。

 

(やっぱり…ガキ共でも今の野郎には……)

 

紫苑が目を覚ました事で、少しは落ち着いた銀時だったが…それでもまだ、視界には紫苑しか映っていない。溜息を吐きながら、今度こそお登勢に事情を聞こうとした時…

 

「そうネ、銀ちゃんがしっかり護ってあげればヨロシ。だから、そんなに泣かないで、銀ちゃん…」

「銀さん…僕達、家族じゃないですか…。何でこんなに辛いこと、黙ってたんですか…。1人で背負ってカッコつけて…」

「昔、マミーが言ってたネ。嬉しい事は一緒に喜んで、悲しい事は一緒に悲しむのが家族アル。私達…家族でショ?銀ちゃん……銀ちゃんは、独りじゃないヨ…」

「攘夷戦争の時の仲間に比べたら頼りないかもしれないけど…僕が居ます」

「私も居るネ。だから……」

 

泣かないで…大切な人の為に、笑ってあげて…

 

子供達の言葉に、その場にいた大人達は誰もが息を呑んだ。自分達よりもはるかに年下の子供達は、自分達大人よりもしっかりと銀時を支えようとしている。

 

どうしたらいいのか分からないと、何か仕出かさないようにと見ている事しか出来なかった自分達とは大違いだと…土方は思う。

 

声を掛ける事しか出来なかった自分とは大違いだと…沖田は思う。

 

 

そりゃ、万事屋も反応しないはずだ…。

 

「銀さん…」

「銀ちゃん…」

 

あぁ、やっぱり旦那のところのガキ達には敵いやせん…。今回ばかりは負けを認めまさァ…。

 

「……、神楽…?…新八…?」

 

だって…どんなに俺達が声を掛けようとも、反応を示さなかった万事屋が…

 

ガキ達の言葉で、我に返ったんですぜィ?こりゃ、完敗でさァ…

 

 

銀時は驚いたように、両隣りにいる子供達の名前を呼ぶ。一体、いつからそこに居たのかと…そう言いたげな表情だ。それに、神楽と新八は笑う。

 

「銀さん、まさか気付いてなかったんですか?」

「さっきから居たネ!!銀ちゃん、どんだけ鈍感アルか?」

 

あぁ、何だ…何も心配する事は無いではないか。

 

「しかも泣いたんですか?大の大人が情けないですよ…」

「それじゃあ、しーちゃんにフラれるネ!!マダオで泣き虫は、女に嫌われる男の条件ナンバー1アル!!」

 

ほら、子供達はいつものように銀時をあしらっている。

 

そして…

 

「うるせぇ…、大人だってマジ泣きする時があんだよ、コノヤロー…!!」

 

いつもよりかは、どこか言葉に力は無いが、子供達の憎まれ口に反撃する銀時の姿がある。

 

やっぱり、子供達には敵わない。

 

そこに居た大人達は皆、一様に同じ事を思いながら…微笑ましげにその様子を見守っていた。

 

その様子を、もう1人……ガラス越しに、ベッドの上から見つめている人物がいた。そう、紫苑である。さっきまではどこか瞳も虚ろで、自分の身体よりも銀時の方が心配で仕方がなかった。銀時は、松陽を亡くした後から…“大切な人の死”という場面に遭遇すると、かなり情緒不安定になる。それは、さっきの様子からも何となく分かった。自分の事を凄く心配していると同時に、銀時もまた崩れ落ちそうなほどギリギリのところにいると。

 

心配だった。

 

だが……チャイナ服を着た女の子と、眼鏡を掛けた男の子が来て…言葉を二言三言交わしただけで、その表情は紫苑のよく知り、そして紫苑が好きだと思った…その顔に戻った。

 

「今の銀時には…貴方のことを大切にしてくれる人が沢山いるのね…」

 

銀時のことは、“万事屋”として真選組内でも噂は絶えなかった。皆、好き放題言ってはいたが、しかしそこからは信頼も窺えた。近藤も土方も、遠回しではあるが…万事屋を慕っている事は分かった。沖田に関しては自ら“旦那は悪友”だと言っていた。

 

「……もう、昔みたいに悲しい思いはしてないのね……」

 

その特殊な髪色と瞳の色から、“屍を食らう鬼”と心無い言葉を浴びせられていた。

その強さから、敵はおろか味方からも“白夜叉”と恐れられていた。

 

けれど、彼の周りには今…あの頃の自分達のように、銀時を支える人達が居る。

 

「私も早く、そこに行きたいわ…」

 

 

ねぇ、銀時…?

 

その可愛いチャイナ服の女の子は誰?もし彼女だったら、コタローに“銀時はロリコン疑惑”を告げ口するわよ?

そっちの眼鏡を掛けた男の子は……あぁ、凄く優しそうな子。銀時のハイテンションに振り回されていなければいいけど…。

 

 

次第に、薬が抜けてきた紫苑の意識ははっきりとしてくる。

 

ガラスの向こう側で笑っている銀時の姿を微笑ましく見守りながら…

 

 

「ねっ、銀時…?私も混ぜてよ…!!」

 

 

紫苑は、幸せそうに笑っていた。

 

 

集中治療室の中を何気なく見た沖田は、紫苑の表情を見て…自身もまた笑う。

 

「なんでィ、紫苑も幸せそうに笑ってらァ…」

 

 

さっきまではどこか殺伐としていたこの空間が…

 

たった1人の女性と、たった2人の子供達の力で…

 

 

いつもとなんら変わらない光景に戻った。




(2011年7月13日 にじファン初投稿)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。